和製英語「スキンシップ」は、英語でなんと言う?

北九州市立大学で大学教員を勤めるアメリカ人のアンちゃんが、日本の面白い和製英語について紹介するコラム。第二回目は、「スキンシップ」について紹介していただきます。

和製英語とは?

こんにちは。大好きな福岡県の田舎にある宗像市で、文化と言葉を研究しているアンちゃんです。 前回の和製英語「ペーパードライバー」 に続いて、今日は「スキンシップ」について説明するバイ。

日本語の語彙は10パーセント以上が外来語だと言われています。そのうちの、約90パーセントは英語からきています。ただ、和製英語は外来語とは違います。

和製英語は、英語っぽく作られている日本語 です。

多くの日本人にとって、和製英語と本当の英語を区別することは難しいですが、和製英語はクリエイティブでバリバリおもしろい!だからアンちゃんと一緒に和製英語の魅力を探しましょう!

今日の和製英語「スキンシップ」

「スキンシップ」はバリバリ良い単語ですが、和製英語だと知っていますか?

多分多くの日本人は、「スキンシップ」は本当の英語だと思っていると思います。響きが素敵だし、単語から意味が伝わりそうな気がします。

想像してみてください。「スキン」は肌やろ?で「シップ」は、英語の“friendship”(友情)が思い浮かぶやろ?だから、「スキンシップ」は、肌と肌を合わせることで、精神的な繋がりができる、という意味だと誰でも思うのではないでしょうか。

素敵な解釈なんやけど実は、この単語は英語ではありません。スキンシップの由来はバリバリ曖昧で色んな説があるバイ。

日本語の「肌」(skin) と、英語の「friendship」から来たのは一つの説で、何年か前に、もう一つすごく面白い説を見つけました。

それは、日本人の心理学者が、海外の学会に行き、そこで聞いたという下記の発言

A mother and baby’s kinship is very important.

の、“baby’s kinship”を“baby skinship”と聞き間違え、“skinship”という英単語をお土産として日本に持って帰って普及させた、というものです。この説は事実かどうかわからないけど、1971年には「スキンシップ」という単語が初めて日本語の辞書に登場しています。

韓国語でも「スキンシップ」という単語があります。しかし、日本語と違って韓国のスキンシップは、主に交際している2人の間に使われます。そして、男性友達の間にもスキンシップがあります。バリバリ仲が良い友達は普通にお互いを触るらしいです。スキンシップはもともと和製英語なのか、韓国語なのか、いろいろな意見があるそうです。

確実なのは、 スキンシップの由来は英語ではない ということです。マイナーな英語の辞書には、“skinship”という単語が入っているけど、私の経験と研究から見ると、ほとんどのネィティブスピーカーには通じないですね。

もし「スキンシップ」を英語で表したいなら

英語で「スキンシップ」を言う方法はたくさんあるけど、 “bonding” が一番「スキンシップ」の意味に近いと思います。

“physical intimacy”とか“physical contact”も使いますが、私はbondingの方がいいと思います。physical intimacyはちょっとエロっぽい意味があり、女性と男性の間の肉体的な関係も表します。physical contactでもいいけど、若干専門用語っぽいからやっぱりbondingがいいですね。

bondingにはいろいろなパターンがあります。

father/son bonding
父と息子間のスキンシップ

mother/daughter bonding
母と娘間のスキンシップ

mother/child bonding
母と子ども間のスキンシップ

I think nursing a baby until at least age one is crucial for bonding.
スキンシップのために、せめて赤ちゃんが1歳になるまでは授乳をするべきだと思う。

こんなふうに使います。私の研究の中で、ネィティブスピーカーに『「スキンシップ」の意味は何だと思いますか?』って聞いたら、ほとんどの人がわかりませんでした

一人は「皮のボート」と答えていました(笑)ウケるやろ?

その後、「スキンシップ」を文に入れて質問してみたら、46パーセントの人は意味がわかりました。前回取り上げた「ペーパードライバー」は、その概念自体がないから文に入れても全く通じなかったけど、スキンシップは概念があるからわかる人の割合が増えますね。

ちなみに

日本語では、「スキンシップ」という単語は主に小さい子供と親の間の感情的な繋がりを表すことが多いですね。

しかし英語では、子どもにも大人にも、bondingという単語を使います。

例えば、女性が2人で買い物に行ったり、コーヒーを飲みながらたくさん話したりしてさらに仲良くなった場合に、

We bonded over coffee today.
私たち今日お茶して仲良くなったわ。

のように、名詞だけじゃなく、動詞としても使います 。男性も使うけど、ちょっと冗談っぽくいうことが多いです。例えば、

We did some guy bonding today while playing football.
アメフトをしていたら、仲良くなったバイ!

みたいな感じです。

guy bonding(男性友達との間のスキンシップ)やgirl bonding(女性友達との間のスキンシップ)はよく英語で使います。

ちなみに、bondは「繋がり」という意味があります。日本語で接着剤の「ボンド」があるよね?だから、人と人の間にbond(接着剤)があるとくっつけてくれる、という風に覚えたらいかがでしょうか。素やろ?

わかった?今日の勉強があなたのためになれたら、バリバリうれしいバイ!

アン・クレシーニ
アン・クレシーニ

アメリカ生まれ。福岡県宗像市に住み、北九州市立大学で和製英語と外来語について研究している。著書に『アンちゃんの日本が好きすぎてたまらんバイ!』(合同会社リボンシップ)。自身で発見した日本の面白いことを、博多弁と英語でつづるブログ「アンちゃんから見るニッポン」が人気。Facebookページも更新中! 写真:リズ・クレシーニ

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