「ナウい」はどんな英語に訳すとナウいの?【アンちゃんの死語の世界】

連載「今よみがえる 死語の世界」の第2回。今回取り上げるのは、昭和の死語を一つ挙げるとしたら?と問われて真っ先に思い浮かぶ人も多い「ナウい」。この言葉を英語で表現するにはどうすればよいかを、アン・クレシーニさんと一緒に考えてみましょう。

片仮名が使える日本語は外来語の宝庫

『広辞苑』の第7版によると、日本語の語彙の約2割は外来語だそうです。なんで日本語はこんなに海外の言葉を取り入れるの?――そんなことを考えたことはありますか?

理由はいろいろあると思います。一つは、海外の文化に憧れている人が多く、外来語には「かっこいい」「おしゃれ」というイメージがあるということ。もう一つは、外来語を表せる片仮名やアルファベット文字の存在です。特に片仮名のおかげで、外来語をとても取り入れやすい状態になっています。

さらに面白いことに、日本語はとても柔軟性があります。外来語に平仮名の「る」を付けるだけで新しい単語が誕生します。例えば:

ググる:ネットで検索すること(to look something up on the internet)
タクる:タクシーに乗ること(to take a taxi)
サボる:やるべきことをしないこと(to blow off something A is supposed to do)
タピる:タピオカティーを飲むこと(to drink bubble tea)
バズる:ネットで突然拡散されること(to go viral)
スタバる:スターバックスに行くこと(to go to Starbucks)
スタンバる:待機すること(to be on standby)

面白いでしょう?日本語はとても楽しめる言語です。同じように、外来語に「い」を付けると、新しい形容詞が生まれます。最近はやっているのは:

エモい:感情的な(emotional、sentimental)
チルい:のんびりするような(laid back、relaxing)
グロい:不快な、異様な(gross、disgusting)

しかしたら、この言語ファミリーのご先祖様は、昭和時代を代表する「ナウい」かもしれません。だから、今日は、この影響力が半端ない「ナウい」について話したいと思います。今日もアンちゃんと一緒に死語の世界の旅に出よう。

「ナウい」の語源は何?

「ナウい」は、英語のnow(今)と日本語の形容詞を示す接尾辞の「い」でできた単語です。意味は「今」ではなく、「今風の」「はやりの」「今どきの」「現代的な」などです。ちなみに「ナウい」がはやり出したのは1970年代後半とのことですが、1970代初期に似たような形容詞「ナウな」が先に誕生しています。

私はこれを学んだとき、「面白い!」と思いました。外国人は日本語を勉強するときに、形容詞に2種類あることを学びます。「い形容詞」と「な形容詞」です。「い形容詞」は「寒い」「暑い」「美しい」「高い」「安い」などで、「な形容詞」は「奇麗な」「親切な」「元気な」「静かな」などです。この「い形容詞」「な形容詞」という2種類の存在を知っていると、「ナウな」が生まれてその後「ナウい」という形が出てきたことは、とても興味深く感じられます。

ちなみに「ナウなヤングにバカ受け」という表現も同時期にはやり出しました。「今どき」の「若者」に「好かれる」という意味です。「ナウな」は最初「NOWな」という形で使われていましたが、すぐに片仮名表記が主流になりました。「ナウい」のちょっと後に、同じ意味の「イマい」もはやりましたが、寿命は短かったです。時代をさかのぼると1960年代に同様の意味の「モダンな」、そしてその前には「ハイカラな」という単語がありましたが、どれも今はほぼ死語です。

では、「ナウい」の代わりに今はどんな言葉が使われているかというと、「ファッショナブル」「今どきの」「今風の」「流行の」「おしゃれな」「イケてる」「ダサくない」など、いろいろあります。

ところで「ナウい」の反対語は「ダサい」です。どちらも1970年代に生まれましたが、「ナウい」は死語となった一方、「ダサい」はいまだに使われています。面白いですね。

「ナウい」ファッションを英語で表現すると?

「ナウい」の使い方は、前回紹介した「アベック」と違って割と簡単です。ちなみに、「ナウい」と「アベック」は「使うと年寄り扱いされる昭和言葉」のランキングでベストワン&ツーでした!

参考:要注意!使うと年寄り認定される「昭和言葉」ランキング(gooランキング)

さて、英語で「ナウい」を表すとどうなるかを考えてみましょう。

Her dress is super fashionable.
彼女のワンピースはナウいね。

There are a lot of trendy shops in Shibuya.
渋谷にはナウいお店がたくさんある。

Your outfit is so chic!
あなたの服、ナウいね!

Harajuku is famous for cutting-edge fashion trends.
原宿はナウいファッションで有名です。

「キマッてる」のナウい英語

話が少しそれますが、アメリカの若者言葉で、コーデや髪の毛がめっちゃキマッているときに、slayという単語を使います。次のように使います。

That outfit is so slay!
そのコーデ、めっちゃキマッてる!

You are slaying that outfit.
その着こなしはキマッて見える。

元々、slayは「~を殺す(kill)」という意味で、killにもYou killed it!やYou are killing it!のような使い方があります。「ばっちりだよ!」とか「絶好調だね!」という意味です。コーデがキマッているときには次のように言えます。

You are totally killing that outfit!
そのコーデ、ほんとキマッてるね。

rockという動詞にも、「かっこいい」「すごい」など、slayやkillと同様の意味があります。

You are rocking that outfit!
そのコーデ、かっこいい!

つまり、ちょっと物騒に聞こえるkillもslayも、ファッション的にはめちゃくちゃ褒め言葉です!!私みたいに立派な年になると使う機会があるか分かりませんが、若者言葉を理解できるだけでも、とにかく気持ちいいです!

「センスがナウい」はどう言えばいい?

この昭和の代表的ともいえる表現のことを語る前に、「センス」という和製英語について話す必要があります。日本では「センスが良い」は最強の褒め言葉ですよね?言われたくない人はいないと思います。日本語の「センスが良い」は、服装やスポーツ、美術など「物事に対する感覚が優れている」という意味で使われます。一方、英語の「sense」は使い方がさまざまです。

常識 common sense
ビジネスの才能 business sense
ユーモアのセンス sense of humor
五感 five senses
感覚 sense
理解できる、分かる make sense

日本語の「センスが良い」にぴったり当てはまるものは、英語にはありません。いろいろな言い方を見ていきましょう。

(洋服の)センスが良い。
You have a really good sense of fashion.
You have a good taste in clothes.

(ビジネスの)センスが良い。
He has so much business sense.
He has a head for business.

(音楽の)センスが良い。
You have great taste in music.

(美術の)センスが良い。
You have great taste in art.

(スポーツのプレー)センスが良い。
You are so athletic.

では、このセクションの冒頭でした、「センスがナウい」は英語でなんと言えばいいでしょうか。

次のように言えばよいと思います。

He is so sophisticated.
He is so cultured.
彼のセンスはナウい。

日本語の会話では、「○○のセンス」の「○○の」を省くことが多いです。

「彼女は会話のセンスが良い」
「彼女はファッションのセンスが良い」
「彼女はアートのセンスが良い」

などと言ってもいいですが、多くの場合は文脈で何のセンスが良いのかは分かります。だからシンプルに「センスが良い」「センスがナウい」と言うことができます。

英語はというと、You have a good sense of ~. とかYour taste in ~ is good.のように、具体に何のセンスかを言わなければなりません。You have good sense.とだけ言うと、「あなたはまともな人間だ」という意味になるので、気を付けてください!

まとめ

「ナウい」「ナウな」は死語になってしまいましたが、SNSのおかげで遠い親戚の「~なう」はかろうじて生き残っています。2008年、Twitterが日本に登場したおかげで、「~なう」(今、私は~にいますよ!)という表現が流行しました。ちなみに、私が住んでいる福岡では、いまだに外国人向けのフリーペーパー「FUKUOKA NOW!」はとても人気があります。

「~なう」を見かける機会も今では減りましたが、たまに誰かがSNSの投稿で使っているのを目にします。

「東京タワーなう!」
「渋谷なう!」

写真に「~なう」という文字が添えられた投稿も見かけます。なぜでしょうか?

もしかしたら、代わりに使える単語が今は他に存在しないからかもしれません。「ナウい」の場合、それに代わる新語がたくさん生まれたため、必要とされなくなりました。しかし、「~なう」のように「今ここにいますよ!」を短く簡単に表せる語はまだ現れていません。そのため、ダサいから使いたくないと思う人は多いかもしれませんが、代わりに使える単語がないので、古臭くても「~なう」を使ってしまうのかもしれません。

言葉は生き物です。人間と同じように生まれて、そして寿命がきたらなくなる。そのなくなるタイミングは、後に生まれる類語次第だと思います。「~なう」の代わりに使えるかっこいい今どきのSNS用語が登場したら、すぐ「~なう」は消えてしまいそうです。

死語の世界は不思議で奥深い!次回もアンちゃんと一緒に死語の世界を楽しく旅しましょう。

アン・クレシーニ
アン・クレシーニ

アメリカ生まれ。福岡県宗像市に住み、北九州市立大学で和製英語と外来語について研究している。著書に『アンちゃんの日本が好きすぎてたまらんバイ!』(合同会社リボンシップ)。自身で発見した日本の面白いことを、博多弁と英語でつづるブログ「アンちゃんから見るニッポン」が人気。Facebookページも更新中! 写真:リズ・クレシーニ

本文写真:Harper Sunday, raf vit from Unsplash

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