「名詞」についての謎、皆さん解決できていますか?「名詞については大丈夫」と思う人もいるかもしれませんが、実はよく理解できていないことや、モヤモヤした疑問がそのままになっていることも。今回は名詞の種類や数を表す主語について説明します。
※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2022年2月号に掲載した内容を再編集したものです。
目次
名詞の種類いろいろ
前回は、anyやsome、itなどの代名詞について解説しました。
皆さんは、「無生物主語」など名詞の種類や、「○○%」などの数字の捉え方をマスターしていますか?ぼんやりとしか理解しないまま問題を解いたり使ったりすることもあるかと思います。そこで、TOEICの英語問題を解く際にも役立つ名詞の形や、そこに付随するbe動詞、その他の名詞の種類を今回は解説します。
「無生物主語」について理解しよう
「無生物主語」という言葉を聞いたことがありますか?「生物でないもの」が主語になるというのが文字どおりの意味ですが、例としてこの文を見てみましょう。
This book will teach you how to speak English.
この本が英語の話し方をあなたに教える。
まるで本が私たちの先生になってくれるかのように表現されています。このように物が擬人化しているかのような表現方法を「無生物主語構文」と言います。日本語でも擬人化は時々ありますが、英語ではもっと頻繁に使われるため、とても英語らしい響きがあるといえます。
日本語にするときは「この本を読めば、英語の話し方が分かるよ」と、主語にifやwhenといった副詞節があるかのように訳すのがこつです。ちょっと練習してみましょう。次の二つの英文を日本語にできますか?
(A) This medicine will ease your pain.
(B) The heavy snow prevented us from leaving.
訳し方は人それぞれですが、私だったら (A)「この薬を飲んだら痛みは楽になりますよ」、(B)「大雪のせいで僕たちは出発できなかったんです」とします。もちろん、「薬さん」が治療してくれたり、「大雪さん」が必死に出発を食い止めていたりするかわいらしい姿を想像してもらっても構いません。
「名詞構文」について知ろう
英語は、動詞や形容詞で表せるようなことも「名詞」に形を変えて伝えるのが好きな言語です。主語や動詞を使って説明するよりもコンパクトにまとまるからでしょうか。これは日本語ではあまり頻繁に使われない「名詞構文」という表現方法で、訳しにくいことで有名です。試しに名詞構文が使われている次の英文を訳してみましょう。
We worry about his frequent absence from school.
英文の太字部分がややこしいことになっていると思いませんか?直訳すると「私たちは彼の頻繁な学校の欠席を心配している」となるわけですが、意味は分かるものの非常に怪しい日本語です。こんな感じで英語は抽象的な名詞を使って表現するのが好きなのです。
読み解くヒントは「名詞を解きほぐす」ことにあります。名詞構文は、元は動詞や形容詞だったものが「名詞化」されているわけですから、逆に主語と述語がある「文」のように元に戻して考えると案外スッキリするんです。
his frequent absence from school
彼の頻繁な学校の欠席
→ He is frequently absent from school.
彼はよく学校を休む。
文に解きほぐしたものをWe worry aboutとつなげれば、「私たちは彼がよく学校を休むのが心配なんです」となります。これなら日本語として十分自然ですよね。最後にあと一つだけ練習をしてみましょう。
He went out without my knowledge.
my knowledgeは「私の知識」ですが、動詞のように「私が知る」と捉えるのがポイントです。そうすれば「私の知らないうちに彼は出て行ってしまった」という訳の完成です。日本語としてギョッとするような意味に捉えることがないように、名詞を解きほぐす練習を重ねましょう。
この名詞は単数?複数?
名詞の「単数形」と「複数形」は、動詞の形にも影響します。be動詞のisとareのどちらを使うかはさすがに理解できているという方も多いでしょう。でも、「これってどっち?」と思わず迷ってしまうようなものも結構あります。例えばpercentが付いている語はどうですか?
(A) Twenty percent of my salary ( ) deducted for income tax.
給料の20%が所得税に取られている。
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空欄に入る正解はisです。percentが付いている語はofの後ろが単数か複数かで判断します。
では、この二つの文はどうでしょうか。
(B) There ( ) a bunch of bananas on the table.
(C) There ( ) a bunch of people in the room.
↓
↓
↓
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↓
正解は(B) is、(C) areです。両方ともa bunch of ~(一束の~、多数の~)という同じ表現を使っていますが、(B)はバナナが一つの房にまとまっているので「単数扱い」で、(C)は人がごちゃっとたくさんいるので「複数扱い」なんです。このように、語句によっては何をイメージしているかどうかで単数・複数の扱いが変わることもあります。
実はfamilyやgovernmentといった集団を表す名詞も同じように使うことができます。My family are all fine. は「うちの家族はみんな元気ですよ」と家族全員の顔を思い浮かべながら話しているから「複数扱い」になります。これは主にイギリス英語の用法ですが、主語の形よりも意味が優先されているというのが面白いですよね。
では最後にあと一つだけ、次の( )にはどんな語が入ると思いますか?
England are my favorite ( ).
動詞がareになっているので、主語が複数であることを表しています。バンド名やスポーツのチーム名はイギリス英語では基本的に複数扱いですから、teamを入れるのがよいでしょう。国名ではなく、「イングランド」というサッカーやラグビーの代表チームが大好きだと言っているのです。
「補語」は主語と同じ数でしか表さない?
主語が単数か複数かによってbe動詞以下の「補語」の形は変わるのでしょうか。
My daughter is a teacher.
うちの娘は教師です。
We are police officers.
われわれは警察官だ。
上のように言うときは、ご覧のように主語と補語の数はそろえるのが普通です。でも、いつもそうとは限りません。
例えば、「一般的なもの」について話をするときです。猫が好きならMy favorite animal is cats.と、複数形を使うのが普通です。世の中にはいろいろな猫がいるわけですし、全部を含めたい気持ちがcatsという複数形にさせるわけですね。
今度は主語が複数の場合です。
Greenhouse gases are a serious problem.
温室効果ガスは深刻な問題だ。
と言うときには、補語は単数形を使うことになります。これは温室効果ガスというものが、水不足や空気汚染など世の中にたくさんある解決すべき問題のうちの「一つ」だと考えているからです。機械的に主語と補語を同じ数にそろえるのではなく、伝えたい意味に基づいて形を変えるのが鉄則です。
「手を挙げる」は単数のhand?
それでは「目的語」の場合はどうなるのでしょうか。当たり前のことですが、I have a cat.(猫を1匹飼っています)やI have a lot of books.(本をたくさん持っています)などの場合は、自分の持ち物の数によって名詞の形は変わってきます。問題になるのは、複数の人物が主語になるときです。
次の英文では、先生が教室の生徒全員に向けて「既に終わっていたら、手を挙げてください」と言っていますが、( ) にはhandとhandsのどちらを入れたらよいと思いますか?
Please raise your ( ) If you’ve already finished.
この場合は単数形のhandを使います。教室にはたくさんの生徒がいるので複数形のhandsを使いたくなるかもしれませんが、挙げてほしいのは「片方の手」ですよね。生徒一人一人を意識して発言しているからこその表現ともいえます。
何人も手が挙がっている状況を客観的に見ているときにはSome students raised their hands in the classroom.と複数形を使うことが多くなるようですが、その場で質問を投げ掛けているときには「手を何本挙げてほしいのか」を伝える方を優先するということです。
名詞の謎を解いて、英語を楽しもう
今回まで、4回に分けて名詞の謎を追ってきました。もやもやが解消され、「そういうことだったのか!」と気付けると英語学習はより楽しくなりますよね。これからも、一緒に英語を楽しんでいきましょう!
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