「名詞」について皆さんはどこまでご存じですか?他の複雑な文法と違って、「名詞については大丈夫」と思う人もいるかもしれませんが、実はよく理解できていないことや、モヤモヤした疑問がそのままになっている内容もあるのでは?今回は、「名詞」にまつわる皆さんのさまざまな疑問を解消するためのポイントを紹介します。
※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2022年2月号に掲載した内容を再編集したものです。
目次
英語上級者でも難しい?名詞の「使い方」
皆さん、名詞の「使い方」についてはどのくらい知っているでしょうか?例えば、名詞の中には「数えられるもの」と「数えられないもの」がありますが、その区別の仕組みは結構複雑です。appleは「物」だから数えられて、waterは「液体」だから数えられない。それなら、「お金」を意味するmoneyは「物」なのにどうして数えられないのでしょうか?
名詞の数の考え方は日本語の感覚と違うところがたくさんあって、本当にややこしい問題です。実際、英語上級者になっても名詞の使い分けはなかなか自信が持てない分野であると言ってもいいくらいです。今回は、「数えられるもの」「数えられないもの」の英語での捉え方や、不可算名詞の数え方の表現を学んでいきましょう。
数えられない名詞はどんなもの?
英語の名詞は、その性質によって「数えられるもの(可算名詞)」と「数えられないもの(不可算名詞)」という分け方をします。日本語では身の回りにあるような物なら全て数えることができそうな気がするのですが、英語では「数えられないもの」の感覚がちょっと違います。「液体」、「物質」、「抽象的なもの」は数えないのが基本です。これらの例として、下ような単語が挙げられます。
液体
water(水)
beer(ビール)
物質
ice(氷)
silver(銀)
抽象的なもの
beauty(美)
kindness(優しさ)
数えられない一番の理由は、一定の形をしておらず誰もが同じ形を思い描きにくいためだといわれています。waterは「コップ」に入っていれば個数を数えられますが、こぼれた水はどうしようもありません。iceだって「冷蔵庫の中のもの」と「氷山にあるもの」ではまるで別物ですよね。
ちなみに、pig(ブタ)やchicken(ニワトリ)などの「動物」は誰もが同じ形を想像できるので、数えられる名詞です。しかし、食肉用に切り分けられてしまうと大きさが一定ではなくなるため、pork(豚肉)や chicken(鶏肉)は不可算名詞の仲間に入ることになります。見方を変えてみると、aが付けば数えられるようになり、付かなければ数えられないものになるともいえます。上で例を挙げた単語にaを付けるとどんな意味になるか、見てみましょう。
a beer(グラス一杯のビール)
a silver(銀メダル)
a beauty(美人)
このように、英語の名詞は割と柔軟に可算と不可算を切り替えることができることを知っておくといいでしょう。
moneyはなぜ、数えられない名詞?
日本語の感覚的には「可算名詞」なのに英語では「不可算名詞」というものは結構ありますよね。
money(お金)
furniture(家具)
fruit(果物)
などは典型例です。
こういうのは挙げれば切りがないのですが、例えばmoneyはお金という存在そのものを表していると考えてみましょう。そもそもa bill(お札)やa coin(硬貨)など形状が一定ではないですし、yen(円)やdollar(ドル)などのように通貨が異なります。つまり、総称的なものは数えられないという理屈です。
furnitureもa bed(ベッド)、a desk(机)などさまざまですし、fruitだってan apple(リンゴ)やa melon(メロン)などが集まった集合体です。「○○類」という意味の名詞は数えたくても数えるのが難しい、というのが英語の考え方なのです。ちなみに、fruitはその「種類」がたくさんあると意識しているときにはfruitsになります。こういう例外は出合ったものから丁寧に覚えていくようにしましょう。
数えられないものを数えるときは、どうしたらいい?
furniture(家具)などの「数えられないもの」は、本当に数えられないのでしょうか?もちろんそんなことはありません。形が一定でないならイメージを共有すればいいということで、英語では「形状」や「分量」を表す語句を付けて、大抵の不可算名詞の数を表現できるようにしています。
便利に使えるものの一つにa piece of ~(一つの~)があります。
a piece of furniture
家具1点
a piece of cake
ケーキ一切れ
a piece of advice
一つの助言
というように、食べ物から助言のような「形のないもの」まで、さまざまな名詞に使えます。まるで日本語の「~個」「~つ」のように使い勝手の良い数え方ですね。
bread(パン)などの食べ物は「形状」が大切なことがあります。例えば次のように表現できます。
a slice of bread
食パン1枚
a loaf of bread
食パン1斤
teaやwineなどの「液体」なら 次のように表します。
a cup of tea
紅茶1杯
a glass of wine
グラス1杯のワイン
a bottle of wine
ボトル1本のワイン
これによってみんなが同じ形を思い描くことができます。
料理では「分量」が大切です。
a spoonful of sugar
スプーン1杯の砂糖
a pinch of salt
塩ひとつまみ
a cup of rice
米1カップ
このような表現がなければ、同じレシピを再現できません。
こういった「形状」「分量」を表す語句を文法用語で「部分詞」と言ったりもしますが、あまり知られていないものだと、a pride of lions(ライオンの群れ)、a spell of work(ひと仕事)など実に多彩です。a school of fish(魚の群れ)という表現は小さい頃に歌った童謡みたいですね。
クイズにチャレンジ
ここまでで取り上げた表現に関するクイズに挑戦してみましょう。空所に入る語を(A)~(D)より1つ選んでください。
- The price of the dishes on the menu does not include -------, which should be ordered separately.
(A) rice
(B) a rice
(C) the rices
(D) rices
【正解】
(A) rice
【訳】
メニューに載っている料理の値段にライスは含まれていないので、別途注文する必要がある。
【解説】
rice(ご飯、ライス)は不可算名詞です。ご飯を食べるときに「今、何粒食べたな」といちいち数を意識することはありませんよね?数えるとしたら「茶わん」を単位としてa bowl of riceやa grain of riceと言いましょう。
- I’m having a lot of problems with my car, but I don’t have ------- to buy a new one just now.
(A) the money
(B) little money
(C) moneys
(D) one money
【正解】
(A) the money
【訳】
私の車にはいろいろな問題が起こっているが、今のところ新車を買うお金がない。
【解説】
money(お金)は数えられません。まとまった量のお金を表すときはsomeやtheと共に用いるので(A)が正解です。littleは「ほとんどない」という否定語なのでここには入りませんね。
まとめ
今回は、数えられる・数えられない名詞の考え方の違い、数え方の表現についてまとめてみました。今日からぜひ会話に取り入れてみてくださいね!
次回は名詞の複数形について解説します。
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