「名詞」について皆さんはどこまでご存じですか?他の複雑な文法と違って、「名詞については大丈夫」と思う人もいるかもしれませんが、実はよく理解できていないことや、モヤモヤした疑問がそのままになっている内容もあるのでは?今回も「名詞」にまつわる皆さんのさまざまな疑問を解消するためのポイントを紹介します。
※本記事は『ENGLISH JOURNAL』2022年2月号に掲載した内容を再編集したものです。
目次
さまざまな「名詞の形」
前回の記事では、可算名詞・不可算名詞の考え方と、不可算名詞の数え方について紹介しました。
さらに、名詞の中には「-s」が付くのに単数形の単語があったり、単数形と複数形が同じ形を取ったりする単語があるのはご存じですか?日本語と英語では数の認識が異なるため、複雑に感じる問題です。今回はそんな特殊な形をとる英単語・表現についての謎を解消していきます。
単数形と複数形が同じ形の名詞があるって本当?
ものが複数あることを示すときには、その名詞に「-s」を付けて表すのが基本ですが、中には不思議な形で複数を表す名詞もあります。代表的なものはpeople(人々)でしょうか。この語はperson(人)の複数形として使われる語で、「-s」も何も付いていないのに「2人以上の人」を表します。
一方、複数形でも形を変えない、頑固な名詞もあります。
fish(魚)
sheep(ヒツジ)
fishはone fish、two fish、one hundred fish・・・と、何匹いてもfishのままです。sheepも同じように何匹いたってsheepから形を変えません。こういう名詞を「単複同形」と言います。他にはcarp(コイ)、salmon(サケ)、deer(シカ)など、狩猟対象の野生動物に多い印象ですね。
単語内が変化するものもあります。いくつか例を見てみましょう。
tooth/teeth(歯)
foot/feet(足)
goose/geese(ガチョウ)
そうそう、普段よく目にするmedia(メディア)やdata(データ)がそもそも複数形だということ を知っていましたか? 元々はmediumとdatumという単数形から生まれた語なのですが、今では 「複数形が主役になっている」という特殊な名詞です。そのため単数と複数どちらで扱ってもよいことになっています。
最後に一つ、mouse(ネズミ)についてです。複数形がmice であることはご存じの人も多いでし ょうが、実はこの語にはもう一つmousesという形もあり、「ネズミ」ではなく、パソコンと使う「マウス」が複数あることを表すときに使う形です。英語には不思議な形の複数形がまだまだたくさん存在します。「あっ、この形は面白いな!」と楽しみながら学ぶことが大切です。
「一つのもの」を複数形で表す単語って?
日本語を使っている私たちからすれば「一つ」なのに英語では「二つ」になってしまう、そんな不思議な名詞を知っていますか?例えば次のようなものがあります。
glasses(眼鏡)
scissors(はさみ)
このように、後ろに「-s」を付けて一つのものを表す単語があります。
眼鏡にはいつだってレンズが2枚付いていますし、はさみは2枚の刃が組み合わさってできています。こんなふうに、英語では左右に似たようなパーツが使われている名詞を複数形で表すことがあり、「絶対複数」と言ったりもします。
絶対複数で意外なのはpantsやjeansなどの「ズボン類」です。右側のpantと左側のpantを合わせてpantsということなのでしょう。常にペアになっている認識をしておくことは大切です。というのも、これらを数えるときには次のような表現を使うからです。
a pair of ~(1組の~)
a pair of glassesは眼鏡が一つ、three pairs of glassesなら三つです。ではthese glassesはどんな意味になるでしょうか?文脈次第ですが、「この眼鏡」と「幾つかあるこれらの眼鏡」のどちらにもなるようです。なんだかちょっと曖昧な感じですね。
もちろん、ペアで使うことが多くても片方だけなくなってしまうものは単数形にして構いません。さすがにあまりないかもしれませんが、shoes(靴)の片方をなくしてしまったときは、I lost my shoe in Ikebukuro.(池袋で靴の片方をなくした)などと言うことになりそうです。シンデレラでない限り、ちゃんと両方の靴を履いて帰りましょう。
「仲間」が必要な名詞ってどんなもの?
英語の名詞は、ある特定の熟語の中では常に複数形でないと意味がおかしなことになってしまうものが幾つかあります。例えば、
make friends with ~
(~と友達になる)
この表現は、make a friend with ~とはなりません。互いを友達だと認め合うからこそ、friendsという複数形を使っているというわけです。一人ぼっちの状態では友達をつくることはできませんよね?このように、お互いを意識して複数形になっているものを「相互複数」と言ったりします。
shake hands with ~
(~と握手する)
相手がいて初めて成立するので、必ず複数形にしましょう。
「会話やゲームなどで順番を交代する」ことを意味するtake turnsも相手を意識した複数形です。もちろん、相手は「人」でなくても構いません。change trains(電車を乗り換える)は乗り換え先の電車があるからこそ成立することですし、change lanes(車線を変更する)も車線一つだけでは動きようがありません。相互複数の熟語はそんなにたくさんあるわけではありませんが、だからこそ見つけたときにはそっとメモしておくといいですよ。
あなたが食べたいのはcake?それともa cake?
英語の名詞は「a」が付くか付かないかで、その姿形を変えることができます。実際にどのような意味に変わるか、例を見てみましょう。
a cake (ホールケーキ一つ、カップケーキ一つ)
cake (切り分けられたケーキ)
切り分け方がいつも同じ形状ではないため、「数えられないもの」になってしまうのですね。こういった不可算名詞はa piece of ~(一つの~)など特別な数え方をするというのは前回触れましたが、ざっくりとした分量を表すsomeという語を使っても構いません。
Can I have some cake?(ケーキをちょっと頂けるかしら?)と言えば、切り分けたものをもらえるでしょう。でもCan I have a cake?は「丸ごとちょうだい」と欲張りな感じに聞こえることもありますから、よほどの食いしん坊でない限り使用は控えてくださいね。
名詞の形によって文の印象が変わるのは、「単数と複数」でも同様です。「アイデアがあります」という意味のI have an idea.とI have ideas.では、当然ideasの方がアイデアをたくさん持っていることになりますし、実はこのような違いは否定文でも変わらないのです。
I have no idea.とI have no ideas.はわずかな違いですが、元々期待されているアイデアの数が違います。社内の会議などでたくさん企画案を出すことが要求されているのであればno ideasがぴったりで、「いろんな考えが浮かばない」となります。「何もない」ことを表していても、そこに「あるべき名詞の数」がいつも表現されているのです。
まとめ
今回は、さまざまな形の名詞や表現を紹介しました。英語のものの捉え方を意識して、ぜひ会話や文章に取り入れてみてくださいね!
次回は名詞に付けるanyやsome、代名詞についての謎に触れていきます。
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イラスト:Satoshi Kurosaki
編集:築地
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