大学の出願要件・単位認定に利用されたり、外務省の入省に100点が推奨されたり、海外の大学・大学院・MBA留学に必須とされるTOEFLのスコア。この記事では、TOEFLを受験する全ての方に知ってほしい基礎的な情報を、概要から試験日程、スコアレポートの読み方から勉強法、当日の持ち物までまとめて解説します。
目次
そもそもTOEFLってどんなテスト?
正式名称
正式名称は「Test of English as a Foreign Language」といいます。英語を母国語としない人の英語力を測るために作られたテストです。現在日本ではETS Japan(※1)によって運営されています。
※1 参照元: ETS Japan
どんな技能を測るテストか
大学・大学院レベルのアカデミックな環境で必要とされる「読む」「聞く」「話す」「書く」の英語4技能を総合的に測るテストです。
なお、学校の中間テストや期末テストのように学習範囲をどれだけ理解できているかを測る「到達度テスト」とは異なり、TOEFLは0-120点(ITPは200-677点)を指標として、受験者の英語力がどの位置にあるかを示す「習熟度テスト」です。
テスト構成
TOEFLにはIBT(Internet Based Test、個人向け)とITP(Institutional Test Program、団体向け)の2種類のテストがあります。2種類のテストがあります。
IBT(Internet Based Test)
Reading、Listening、Speaking、Writingの4つのセクション
それぞれ30点、計120点満点
所要時間約3時間
ITP(Institutional Test Program)
Listening Comprehension、Structure and Written Expression、Reading(※2)
の3つのセクション
677点満点
所要時間約2時間
※2 ITPテストにはLevel 1とLevel 2があり、Level 1(スコアの範囲:310-677)ではReading Comprehension、Level 2(スコアの範囲:200-500)ではReading and Vocabularyが実施されます。
対象者
受験資格や対象年齢は特にありません。しかし、個人で受験するか、団体で受験するかによってIBT・ITPのどちらのテストを受験するかが異なります。
IBTは個人で受験します。会場受験と自宅受験(Home Edition)の2種類があります。どちらも同じテスト内容ですが、Home Edition(※3)の場合はProctorUの試験監督によるオンライン監視があり、また使用機器・受験環境の要件を満たす必要があります。
ITPは団体で受験します。マークシート形式のペーパー版、インターネット接続可能なPCを使用するデジタル版の2種類があります。(※4)
※3 参照元:TOEFL IBT Home Edition
※4 参照元:TOEFL ITPテストとは
世界や日本でどれくらい利用されているか
※この先の「TOEFL」はTOEFL IBT(Internet Based Test)を指します。
TOEFLのスコアは、学生の入学試験や留学、就職活動に利用されています。アメリカ・カナダ・イギリス・オーストラリア・ニュージーランドなどの英語圏に限らず、世界160カ国、11,500以上の大学・大学院・その他機関で活用されています。日本国内では、大学入試、大学院入試、単位認定、教員・公務員試験や国際機関の採用などでスコアの活用が広がっています。
主要国と日本の平均スコア
TOEFLは世界各国で実施されています。各国における受験者数や受験者層は異なるため、スコアが各国の英語力をそのまま表しているわけではありませんが、主要国と日本の平均スコアは、下の表のようになります(※5)。
国 | 総合スコア | リーディング | リスニング | スピーキング | ライティング |
---|---|---|---|---|---|
日本 | 73 | 19 | 19 | 17 | 18 |
アメリカ | 93 | 23 | 24 | 23 | 23 |
イギリス | 98 | 24 | 26 | 25 | 24 |
イタリア | 94 | 24 | 24 | 22 | 22 |
カナダ | 97 | 24 | 25 | 24 | 24 |
韓国 | 85 | 22 | 22 | 21 | 21 |
中国 | 87 | 23 | 22 | 20 | 22 |
ドイツ | 100 | 25 | 26 | 25 | 24 |
フランス | 89 | 22 | 23 | 22 | 22 |
この表からも分かるように、日本は総合的なスコアも主要国に比べて低い上、4技能の中でもスピーキングの力が足りない傾向にあるようです。
※5 参照元:ETS「TOEFL iBT Test and Score Data Summary 2021」
各パートでどんな問題が出る?
リーディング
3つか4つの長文を読み、それぞれ10問程度の問題に答えます。内容は自然・社会科学から芸術まで幅広い範囲で出題されます。約1時間かかりますが、終了次第自分で次のセクションに進むことができます。
リスニング
「講義」と「会話」の2種類で構成され、それぞれ約3題ずつ出題されます。全部で30題くらいです。どのシチュエーションも大学生活を想定しており、教授や大学生、大学職員などが登場します。約1時間かかります。
スピーキング
出題数は4題で、一つは身近な話題について述べるIndependent Task、残り3つは講義の内容や会話の内容を要約して話すIntegrated Taskです。約15分で終了します。
ライティング
50分の制限時間の中で、読み聞きした文章についての要約、違うトピックに対する自分の意見の記述という2題をこなします。全てタイピングで行います。
どれくらいのスコアを取ればいい?
英検とTOEFLスコアの換算表・スコアが示す英語能力レベルとは?
TOEFLのスコア、実用英語技能検定(英検)とCEFR(Common European Framework of References for Languages/ヨーロッパ共通言語参照枠)の関連性は下表のようになります(※6)。
TOEFL総合スコア | CEFRレベル | 英検 | 想定される言語レベル |
---|---|---|---|
114 - 120 | C2 | 母語話者と遜色のない熟練者 | |
95 - 113 | C1 | 1級 | 優れた言語運用能力を有する者・上級者 |
72 - 94 | B2 | 準1級 | 実務に対応できる者・準上級者 |
42 - 71 | B1 | 2級 | 習得しつつある者・中級者 |
※6 参照元:ETS「スコア」、日本英語検定協会「各種目的に応じて求められる英検®の品質についての考え方、ならびにその活用に関するガイドライン」
大学・大学院・その他機関が求めるスコア
各国の大学・大学院や国際機関では、どのくらいのスコアが求められているのでしょうか。一部を下表でご紹介します(※7)。
国 | 機関名 | 求められるTOEFLスコア |
---|---|---|
イギリス | ケンブリッジ大学(学部) | 110 |
イギリス | オックスフォード大学(学部) | 100 |
アメリカ | ハーバード大学(大学院) | Speakingで26 |
日本 | 国際基督教大学(大学) | 79(出願要件) |
日本 | 順天堂大学医学部 | 55(出願要件・加点) |
日本 | 国家公務員採用総合職試験 | 80 (加点) |
日本 | 外務省専門職採用試験 | 100(推奨) |
国際連合 | 国際連合大学(大学院) | 100 |
志望校や留学先によって求められるスコアは異なりますが、世界上位の大学進学では100、大学院・MBA留学であっても100以上が求められています。
※7 参照元:Cambridge University 「English Requirements」、Oxford University 「English Requirements」、Harvard University 「English Proficiency」、国家公務員採用総合職試験における英語試験の活用、平成29年度外務省専門職員採用試験実施計画、United Nations University Institute for the Advanced Study of Sustainability Application Guideline 2022、ETS「スコア利用実態調査」
TOEFLスコアの算出方法
TOEFLでは公式に採点基準・スコアガイドが発表されています。スコアやCEFRのレベルごとに受験者に期待される知識、スキル、能力が明確に示されています(※8)。
TOEFL IBTはリーディング・リスニング・スピーキング・ライティングで各30点の点数が付けられ、全てを合計した点数がスコアとなります。よって、スコアの幅は0~120点です。
リーディング・リスニングは選択式の問題ですが、一問一答形式で自己採点をすることはできません。それぞれの問題に難易度が付いており、その難易度を考慮した合計点数を調整して、最終的な30点の点数が算出されます。
スピーキングとライティングにはスコア基準表(Rubrics)(※9)が用いられており、、この基準表をもとに採点が行われます。このスコア基準表から受験者は、なぜそのスコアが付けられたのか、スコアを伸ばすためには何が足りないのかなどを明確に知ることができます。
※8 参照元:ETS「Performance Descriptors for the TOEFL iBT test」
※9 参照元:ETS「TOEFL iBT Independent Speaking Rubrics」、ETS「TOEFL iBT Independent Writing Rubrics」
試験日程や受験料、申し込み方法
試験日程と受験地
TOEFL IBTは会場受験であれば年82回、自宅受験であれば週4回24時間体制で受験することができます。会場は、日本全国各地にあり、土日のみ(土曜日は午後も実施)の受験が可能です。
受験料
受験料は、会場受験がUS$245、自宅受験がUS$110で、ドル円のレートに左右されます。支払い方法はクレジットカードが一般的ですが、PayPalなども受け付けています。
TOEFL iBTの申し込み方法
まず、TOEFLのサイトでアカウントを作ります(こちらからサインインできます:Sign In for Test Takers)。ログインもしくは、アカウントを新規作成しましょう。カレンダーでテスト日程を選択し、受験料を支払うと申し込みが完了します。
申し込み受付期間
申し込み締め切りは試験日の7日前(中6日)です。
試験結果はいつ分かる?公式認定書の読み取り方
公式スコアレポートの送付
TOEFLスコアの受け入れ機関には、直接公式スコアレポート(Official Score Reports)を送付することができます。事前に送付依頼をしている場合は4通まで無料で送付することができ、テスト日の約11日後(日本では4-6週間後)にETSから発送されます。
公式スコアレポートとは別に、受験者用控えスコアレポート(Test Taker Score Report)も届きます。
受験者用控えスコアレポート
受験者用控えスコアレポート(Test Taker Score Report)は、試験日の4-8日後にETSアカウント上で確認・PDFのダウンロードをすることができます。また、申し込み時に郵送を希望すると、試験日から速達配送で約2週間、標準配送で4-6週間以内に郵送されます。
スコアに有効期限はある?
TOEFL iBTのスコアの有効期限はテストの受験日から2年間です。
スコアレポートの読み取り方
TOEFL iBTのスコアレポートには、Test DateスコアとMy Bestスコアの2種類のスコアが表示されます。
Test Dateスコアは試験日の試験結果で、リーディング・リスニング・スピーキング・ライティングの各セクションのスコアと合計のスコアが表示されます。
My Bestスコアは受験者の過去2年間のTOEFL iBTテストスコアから、各セクションの最も高いスコアを組み合わせたスコアのことです。My Bestスコアが取り扱われているかどうかは受け入れ機関の募集要項をしっかり確認するようにしましょう。
TOEFLでハイスコアを狙うための参考書と勉強法
単語帳
どんな語学を学ぶにあたっても基礎となるのは語彙力です。特に、TOEFLを受験する!と決めたなら、芸術、医学、化学、生物学、地質学や歴史学などの専門的な単語も頭に入れておく必要があります。メジャーな単語帳をご紹介します。
単語の暗記は誰しもがぶつかる壁。特に中高生におすすめの単語の勉強法の記事はこちら。
Writing・Speakingのトピック集
WritingやSpeakingは受験する前からとにかく量をこなして、長文やTOEFLらしい問題形式に慣れることが大切。勉強を始めたばかりの頃は、時間制限のある中で自分の考えていることを全て出し切ることが大事です。適切なフィードバックをもらえる環境があればなお良し。次に紹介するのは、WritingやSpeakingのトピック集です。これらを活用して、量をこなしていきましょう。
Writingのトピック集
Tesr Resources: TOEFL Resourses by Michael Goodine
Better TOEFL Scores Blog: 80 TOEFL Writing Topics
TST PREP: Topics and Sample Essays for the Writing Section of the TOFL Test (2022)
Speakingのトピック集
Test Resourses: TOEFL Resourses by Michael Goodine
Exam Word: TOEFL Speaking Questions and Samples
BestMyTest: New TOEFL Speaking Topics Updated for TOEFL Speaking Task
Readingも量をこなす!
取りあえずたくさん問いて、自分の苦手な傾向をつかみましょう。また、時間制限を設けて時間内で読み切る・解き切る練習が必要です。分からない単語はまず推測することで対応しますが、解き終わった後に読み直し、違う文章でも登場しそうなものはしっかり調べます。続けて、リーディングでおすすめの問題集を幾つかご紹介します。
Listeningは公式教材で
ETSは受験者向けに公式教材を出版しています。Listeningは対策が難しいので、公式教材で過去問演習をすることをおすすめします。TOEFLテキスト公式教材ショップには、ノートテイキングや自主学習セットもあるのでぜひ、チェックしてみてください。
「聞く」ことの能力を高めるには、日々の鍛錬が必須です。毎日洋画を字幕で見たり、海外ドラマを作業中に流しておいたり、BBCやCNNなどニュースメディアのPodcastを聞いたり、英語ネイティブの先生とたくさん話したり、友達と英語で会話してみたり・・・自分から積極的に英語に触れに行く姿勢が、英語の「耳」を育てます。
TOEFLの一日と持ち物
TOEFLの1日はとっても長いです。覚悟を決めて臨みましょう。まず、コンピューターに4時間も、完全集中した状態で向き合うことがきつい!休憩はListeningとSpeakingの間の1回10分しかないので、その間にしっかり気持ちの切り替えをすることが重要です。Listeningが終わるとそれまでの点数が非公式なものとして表示されますが、惑わされず、できることを出し切ってください。
絶対に必要な持ち物は、身分証明書(原則パスポート)と申し込み確認メールの写しだけ。休憩時に食べるちょっとしたお菓子や飲み物があるとよいです。個人的に、お菓子は瞬間的な脳の糖分補給として、持ち運びもしやすくてコンビニで買えるラムネがおすすめ。筆記用具や時計、スマートフォンなどは一切会場に持ち込むことができず、ロッカーに入れる必要があります。
がんばって!!
本番当日は、今までの積み重ねを発揮するだけ!メンタルを強く持って、自分を信じて、最後まで諦めずにやり切りましょう。
TOEFL受験をするならチェックしておきたいアルクの本
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