皆さんは、英語の名詞についてどのような印象をお持ちですか?他の複雑な文法と違って「名詞は簡単」と思う人もいるかもしれませんが、実は奥が深い名詞。今回は、someやany、itなどの「代名詞」の使い分けについて詳しく説明します。
目次
単語の使い分け、どこまでできる?
前回の記事では、さまざまな名詞の形について紹介しました。
ところで、皆さんは”some”と”any”の使い方をどのように習いましたか?someは肯定文に、anyは否定文と疑問文に使うと覚えた方も多いと思いますが、なぜ使い分けるのかについては知っていましたか?なんとなく覚えたけど、どのように使い分けるのかしっかり理解できていない単語は多いと思います。今回は、someやany、itなどの代名詞の使い分けについて説明していきます。
“any”は疑問文以外にも使えるの?
ある物が幾つ存在するかという「分量」を示すことができるのはsomeだけではありません。そう、anyはsomeとセットで覚えることが多い語です。でも、これら2語の使い分けはしっかりとできていますか?
ご存じのとおり、someは肯定文に、anyは否定文や疑問文に使うのが基本です。例文を見てみましょう。
I have some money.
ある程度お金がある。
I don’t have any money.
もう財布にいくらも残っていない。
でもこの使い分け、疑問文のときには少しだけ注意が必要なのです。
元々someはいくらかはあるという肯定的な意味を持ち、anyはいくらもないのではないかと存在に疑念を持つことを表す語です。そのためこれらを疑問文に使うと、相手に期待していることが変わってきてしまいます。
Do you want some cake?
Do you want any cake?
どちらも文法的に正しい英文です。しかし、someの方はきっと相手はケーキを食べたいと思っているんだろうなという積極的なおもてなしの気持ちを込めていることになるのですが、anyでは食べないかもしれないけど、一応聞きますよという単純な質問なのです。疑問文ならいつでもanyだと思い込んでいると、相手に不快な気持ちを抱かせてしまうこともあるんですね。逆に、状況次第ではありますが、Do you have some questions?とsomeを使うことで「ほら、質問あるんでしょ?」と質問をせかしているような印象を与えることだってあります。someとanyは疑問文のときに要注意ですね。
単数”everyone”の考え方は?
少し不思議な話ですが、everybodyやeveryoneは「みんな」を意味する語なのに、 Everyone are here. という言い方はできません。「every」が付くものは単数扱いなので、 Everyone is here.が正解です。
「みんな」は人が全員そろっているはずだから複数扱いになってもいいような気もするのですが、なぜなのでしょうか。
これは実は、頭の中にどのような情景を思い浮かべているかが関係しています。everyが表す「みんな」は、例えば教室で担任の先生が生徒の一人一人を意識して「よし、『みんな』いるぞ」と言っているような感じです。集団にいる個々の存在を意識しているからこその単数扱いなのですね。
each(それぞれ)も非常によく似ています。Each student has a textbook.なら、先生が生徒それぞれの机をよく見て持ち物を確認したことが分かります。同じように「みんな、全て」を表すallは少しだけ柔軟な語です。全員がそろった集団のわさわさ感を伝えたいなら複数扱いで、一つの集団にまとまっている感じを出したいなら単数扱いとなります。名詞の持つイメージが動詞の形に影響しているのです。
ところで、everyoneに代名詞を使うとしたら何を選択すればいいのでしょう。教室には男子も女子もいますから、heだけでもsheだけでもいけません。正解はtheyです。超伝統的な文法や非常に硬い文章ではhe or sheなどとすることもあるのですが、現在は性別を区別する必要のないtheyを使うのが一般的になっていることを知っておくといいでしょう。
英語での代名詞の考え方をチェック
会話や文章の中で既に登場した語の代わりをする「代名詞」という品詞があります。「男性」の代わりをするのがhe、「女性」ならshe、「人以外の存在」ならitを使うことで同じ語の繰り返しを避けることができ、分かりやすくスッキリとまとめることができます。
一見すると代名詞の使い分けは簡単そうですが、少しだけ注意しなくてはいけない点があります。それは、代名詞は必ずしも直前の名詞の代わりをしてくれるわけではないということです。一体どういうことでしょうか。
小学生の女の子が筆箱を自宅に忘れてきてしまったシーンを例にしてみましょう。
I forgot to bring my pen.
ペン持って来るのを忘れちゃった。
その友達が「ペンならあるよ」と言いたいとき、適切な表現は I have it. でしょうか? 残念ながら違います。というのも、代名詞itは話題に出てきた物と同一の物を指し示すからです。このままでは「君のはここにあるよー」と、女の子のペンを友達が意地悪で隠し持っていたかのような感じになってしまうのです。
英語では、話題に出てきた物と「同じ種類だけれど別の物」を表すときには、oneという代名詞を使います。I have one.と言えば「自分の筆箱からペンを1本取り出して、女の子に貸してあげる」ことができるというわけです。
この使い分けは「人」で考えるととても分かりやすくなります。I’ve got a new boyfriend. と「彼氏ができた」ことを自慢 する友人に、Oh, I really want him, too.(あら、 私もその彼が欲しいわ)と言ってしまったらどうなるか・・・略奪愛が好きな人はどうぞご自由に。
人じゃないのにsheを使って表現することがある?
代名詞を使う際、名詞が「人以外の物」であるときはそれが一つならitを使います。新しいドレスを買ってそれがとっても気に入っているので あれば、I bought a new dress, and I really like it.という感じです。こういう使い方は、私たちが英語を学び始めたときに習ったルールのままです。
では、こんな英文ではどうでしょうか。
I have a very cute dog, and I really like it.
こちらも同じルールで作られた英語なのですが、ちょっとだけ違和感がありませんか?a very cute dogは「人ではない」から代名詞はitを使うのが基本ではあるのですが、愛するペットをなんだか「物」みたいに扱っているようで、本当に好きなのかどうかが疑わしい感じすら漂っています。
日本語でも飼っている犬を「うちの子」などと言いますが、実はこの感覚は当然英語にもあって、自宅で飼っている動物などにはその性別に応じて he や she を使います。だから先ほどの英文もI really like him.(この子のこと大好きなの)と言ってOKです。
一応文法的にはbabyもitで指し示すことはできるのですが、同じような理由から性別がはっきりとしているならheやsheで表すのが普通です。
こういった用法の極端な例が car(車)やmotorbike(バイク)です。ピカピカに磨いた愛車は彼氏や彼女同然の存在ともいえますから、バイク好きな人は自身の乗り物に決してitを使いません。愛情が文法規則を超える、すてきな使い方ですね。
まとめ
いかがでしたか?
今まではぼんやりとしていた単語の使い分け方が、明確になったのではないでしょうか。文章でも会話でも使い分けを意識して、英語を楽しみましょう!
次回も、名詞に関するもやもや・疑問を徹底解決していきます。
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イラスト:Satoshi Kurosaki
編集:築地
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