英語で「白いうそ」「白いゾウ」。これってどういう意味?【ウルトラ英会話表現】

連載「ウルトラ英会話表現」の第11回。今回取り上げるのは「白/white」。英語では「白いうそ」「白いゾウ」のようなフレーズが使われますが、それがどのような意味かを、カン・アンドリュー・ハシモトさんにお話しいただきます。

white/白が持つイメージ

今回はwhiteを使った英語表現を紹介します。

みなさんはwhite/白にどんなイメージを持っていますか?「純白、無垢(むく)、高潔、真実、正義・・・」といったところでしょうか。英語圏でもほぼ同じですが、whiteを使ったフレーズにはちょっと意外に感じるものもあるかもしれません。

white lie

イメージを尋ねたことがヒントになってしまいますが、まずはwhite lieです。どんな意味だと思いますか。「白いうそ」・・・だと意味が分かりません。日常生活でもよく使う表現です。

こんなふうに使います。

My mom told me a white lie, just because she didn’t want to hurt my feelings.
母はぼくを傷つけないために(       )うそをついた。

It was just a white lie. I’m sorry, Mom.
(     )うそなんだ。ママ、ごめんなさい。

かっこには「たわいもない」とか「ちょっとした」という言葉が入ります。white lieはうそはうそでも、「罪のないうそ」「悪意のないうそ」のことです。

映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)に white lieを使ったセリフを見つけました。

トム・ハンクス演じる主人公が、戦死した友人の家族にお金を持って行った後、友人のお墓の前でそのお金について説明している場面です(1分3秒から1分18秒あたり)。長いセリフですが、人より知能が低い主人公をその話し方だけで表現しているハンクスの素晴らしい演技が堪能できます。

That’s what’s left after me saying, when I was in China on the all-American Ping-Pong team, I just loved playing Ping-Pong with my Flex-O-Lite Ping-Pong paddle, which everybody knows isn’t true. But Mom said it was just a little white lie, so it wasn’t hurting nobody.

中国に全米卓球チームで行ったとき、「Flex-O-Liteのラケットで卓球をするのが好きだった」って宣伝して、そのお金を稼いだんだ、それが本当のことじゃないってみんな分かってるよ。でも、ママはたわいもないうそなら誰も傷付けないって言ったんだ。

また『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』というギャングもののテレビドラマでも、white lieが使われているセリフがあります。

あるギャングがボスに命令されて泣く泣く弟分を殺しましたが、その後、弟分のまだ幼い息子から「パパが帰ってこない」と泣きつかれます。そこでギャングは「パパはメキシコに仕事で出かけているんだ」と答えます。それを聞いていたギャング仲間との会話です。

A: He’s in Mexico on business? What the f*ck? Give me a break!
B: You know it’s just a white lie. What else can I say?

A: ヤツが仕事でメキシコ?なんだ、それ?頼むぜ!
B: ちょっとしたうそだよ。他にどう言える?

black lie

反対に black lie という表現もあります。「悪意のあるウソ」という意味です。

ただこの表現は人種差別につながる言葉だとして、現在では使うのを避ける傾向にあります。一方、これはもともと存在する言葉であり、人種差別を意図した表現ではないのだから、その指摘自体がおかしいという意見があるのも事実です。

日本語でも「白黒つける」「グレーゾーン」「美白」など、今後もしかしたら問題になるかもしれない表現はたくさんあります。英語でもlegal gray area(法的にグレーゾーンである領域)という言葉は存在し、今でも新聞などで使われています。

ここではblack lieの例文はご紹介することは避けようと思います。色を使った表現は、慎重に扱わなければならない場合もあり、時には問題になり得ることも知っていただけたらうれしいです。

動詞のlieとtell a lieは何が違う?

ところで「うそをつく」に当たる英語には、lie(自動詞)とtell a lie(このlieはうそという名詞です)の2つがあります。

この2つを日本語にすると、どちらも「うそをつく」と同じになってしまいますが、実はニュアンスに大きな違いがあります。同じ意味ではないと言ってもいいかもしれません。誤解している日本の方が割と多いように思うので、簡単に説明します。

動詞のlieは「うそだと分かってうそをつく」、つまり、だまそうという意図を持ってうそをつくことを言います。一方、tell a lieは「間違えたり、勘違いしたりした結果としてうそを言ってしまうこと」を指します。

I went to that bar yesterday. No, I tell a lie, it was Thursday.
そのバーに昨日行ったのよ。ウソよ、ウソ、木曜日だったわ。

「Cambridge Dictionary」のI tell a lieの項には、次のような例文が載っています。

Her name is Paula, no I tell a lie, it’s Pauline.
彼女の名前はポーラだよ。そうじゃないや、うそ、うそ。ポーリーンだ。

一方自動詞のlieは悪意を持ってうそをつくわけですから、例えば「うそをつくな!」と憤慨しているような場面ではDon’t lie!またはDon’t lie to me!と言います。ウソに怒っているときにDon’t tell a lie! とは言いません。区別なく使っている人もいなくはないですが、厳密には間違っています。

white elephant

次はwhite elephant(白いゾウ)です。どんな意味だと思いますか?

アメリカでは white elephant sale(白いゾウ・セール)という催し物がときどき開かれ、町ではこんな張り紙を見かけます。

※ 画像は編集部作成

white elephant saleとはガレージセールに似た、不用品を持ち寄って交換したり買ったりという催しのことです。

このポスターにはGot junk in your trunk? とあります。junkは「不要品」のことです。「トランクに不用品はない?」と書かれているのですが、trunkは「車のトランク」「旅行鞄」という意味を持つ他、「ゾウの鼻」のことも指します。このポスターではtrunkを掛け言葉にして言葉遊びをしているのですね。

white elephantは「不要なもの」「無用の長物」のことを言います。

タイでは昔、白いゾウは神聖なものとされ、信仰の対象にさえなっていたそうです。王様は乗り物として白いゾウを飼っていたのですが、餌代などの維持費があまりに高額なため、気に入らない家来にそのゾウを贈ることにしました。

王様からの贈り物を捨てるわけにはいかない家来はそのゾウを飼い続けるのですが、結果、王様の思惑通り破産してしまいます。このような昔話から、white elephantは「本当は必要ないのに維持費だけがかかるもの」「持て余しているもの」「不要なもの」のことを指すようになりました。

このように使います。

A: Gosh! You got a Mercedes as a prize? You’re so lucky!
B: I guess it’s a big white elephant because I don’t have a driver’s license.

A: まじか!賞品でベンツをもらったって?何てうらやましいんだ。
B: いや、無用の長物だよ、オレ免許持ってないから。

次に紹介するのは、『CSI:科学捜査班』という刑事ものドラマのセリフです。チームのボスである捜査官が、最新鋭の科学技術を駆使して分析された容疑者の行動予測のドキュメントを手渡されました。old schoolな(古いタイプの)捜査官は、容疑者の行動予測を算出した、とてつもなく高価だというコンピューターを見ながらこう言いました。

This is all about him? Well, OK, whatever. But in here, just in here, it’s a white elephant.

これがヤツに関しての情報すべてだって?そうなんだ、まあいいけど。でもここでは、この部署では、それは無用の長物だな。

回はwhiteを使った英語フレーズを紹介しました。

次回もお楽しみに!

お知らせ

6月30日に日本実業出版社から「英語はリズムで伝わる!」が発売になります。僕自身が作曲したチャンツで英語フレーズをトレーニングして、伝わる英語にしよう!という本です。どうぞよろしくお願いします。

カン・アンドリュー・ハシモト
カン・アンドリュー・ハシモト

アメリカ合衆国ウィスコンシン州出身。教育・教養に関する音声・映像コンテンツ制作を手掛ける株式会社ジェイルハウス・ミュージック代表取締役。英語・日本語のバイリンガル。公益財団法人日本英語検定協会、文部科学省、法務省などの教育用映像(日本語版・英語版)の制作を多数担当する。また、作詞・作曲家として、NHK「みんなのうた」「おかあさんといっしょ」やCMに楽曲を提供している。14作目となる著作『英語はリズムで伝わる! -ネイティブに聞き返されない英語が身につくチャンツトレーニング-<音声DL付>』(日本実業出版社)が6月30日に発売。

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トップ写真:山本高裕(ENGLISH JOURNAL編集部)本文写真:Jess Bailey from Unsplash

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