Dutch(オランダ人)を使う英語表現が、どれもネガティブな理由とは?【スーパー英会話表現】

Dutch(オランダ人)を使う英語表現がどれもネガティブな理由とは?【スーパー英会話表現】

英語にはDutch(「オランダ人」または「オランダ人の」)を使う表現が数多くあることをご存じですか。最終回となる今回は、アンドリュー・カン・ハシモトさんがオランダ人の友人と久しぶりにやりとりしたことから始まった、Dutchという英語に関する話で盛り上がっていただきます。

オランダ人の友人が連発するジョーク

クリスマスパーティーに行かないかと、オランダ人の友人から連絡をもらったのは12月の初旬でした。ポットラック(potluck、料理や酒を持ち寄るパーティー)だと言うので、一緒にワインを選ぶことにしました。彼が指定してきたワインショップが郊外にあったので、僕が理由を尋ねると彼の答えは、

They have a great selection.
ここは品ぞろえがいいから。

ではありませんでした。

I’m glad you asked.
よくぞ聞いてくれた。

そう言ったあと、彼はニヤニヤしながらこう答えました。

Because of my Dutch generosity.
オレがケチだからだよ。

僕は言いました。

Are we here just because you wanted to say that? It’s not funny at all.
そのジョークを言いたいためにこの店にした?それ、全然面白くないから。

彼は大げさに頭を抱えて言いました。

Oh, you’re a Dutch uncle!
厳しいなぁ!

そして僕の顔をのぞき込み、さらに言いました。

Am I in Dutch with you?
オレ、君に嫌われてる?

うまく表現できていないからかな。こういう会話は日本語訳を書いてもニュアンスを伝えるのは難しいです。ちょっと説明させてください。

オランダ人はみんなケチ?

オランダ人である友人は、「オランダ人」「オランダ人の」という意味のDutchが用いられた英語の慣用句を、アメリカ人やイギリス人よりもオランダ人である自分が使うのが一番面白いと信じて疑いません。

出会った人全員にDutchがらみの慣用句を連発するので、彼と初めて会う人は誰もが面白がってくれます。しかし彼と長年知り合いの友人たちはみな、彼のジョークをキレイに聞き飛ばして会話を続けます。長身でハンサムだし、髪もフサフサなのに、世界一おしゃべりなアメリカ人女性たちからもこう言われます。

He’s a good guy, but too talkative.
いい人だけど、しゃべりすぎ。

別の友人は以前、彼の目を見ながらこう言いました。

That’s very funny.
すごく面白いよ。

これは真顔で言うと「さっぱり面白くない」という意味の決まり文句です。しかし彼は、そんなことを言われたくらいではめげません。僕はこの日会ったのが久しぶりだったので、彼のこのクセを忘れていました。

Dutch generosityとは、言葉通りに取ると「オランダ人の寛容さ」ですが、実際には「ケチ」という意味です。「品ぞろえもいいけど、オレはケチだから安いこの店が好きなんだ」と言いたかったのかもしれません。ただDutchを使いたかっただけかもしれません。

a Dutch uncleはtalk like a Dutch uncleとして使われる方が多いです。「オランダ人のおじさん」とか「オランダ人のおじさんのように話す」ということではなく、a Dutch uncleは「厳しいことを言う人」、talk like a Dutch uncle「厳しいことを言う」という意味です。

be in Dutch with someoneも「誰かとオランダ人の中にいる」ではなく「〜を怒らせる」とか「〜に嫌われている」という意味です。

Dutchを使う表現がネガティブな本当の理由

オランダ人の友人が連発するので僕も意識をするようになったのですが、英語にはDutchを使った表現が数え切れないほどあります。

よく使われるのはgo DutchやDutch treatです。「割り勘にする」という意味ですね。これを含めて思い付くのは、ほとんどがオランダ人にとってひどい内容の表現だということです。

Dutch headacheと言えば「オランダ人の頭痛」ではなく「二日酔い」という意味ですし、a Dutch concertは「出来の悪いコンサート」という意味もありますが、一般的には「酔っ払いの大騒ぎ」。

Dutch bargainは、酒を飲みながら交渉をする「いい加減な契約」「どちらか一方が得をする契約」という意味です。酒が弱い人は酔っ払ってしまい、不利な契約をされても分からない、ということから来ている表現です。

飛行機が揺れて蛇行している状態を Dutch rollと言い、日本語でも使われます。オランダ人兵士が行進をしても酔っていてまっすぐに進めないことから生まれた表現です。

Dutch widowは「オランダ人の未亡人」ではなく「娼婦」、Dutch talentは「オランダ人の才能」ではなく「知性ではなく筋力に物を言わせている、その能力のこと」、It’s Dutched.は「取り消された」「キャンセルになった」という意味です。

こんなものもあります。

I’m a Dutchman, if I do.

これもオランダ人にとって相当失礼なフレーズです。「もしも僕がそれをするなら、僕はオランダ人だ」が直訳ですが「絶対にイヤだ」という意味の決まり文句です。

If not, I’m a Dutchman.

これも文字通りにとらえると、「もし違うなら僕はオランダ人だ」と言っている訳ですが、意味は「絶対正しい!」ということ。

こんな表現ばかり耳にしていると、オランダ人はいい加減でケチで酒飲みばかりなのかと思ってしまいそうです。

しかしDutchを使った表現にネガティブなものが多いのは、もちろんそういう理由からではありません。イギリスとオランダは17世紀から18世紀にかけて何度も戦争をしていて、当時、イギリスにとってオランダが最大の敵国だったことがこれらの表現を生みました。

こんなにDutchを使ったフレーズが多いなんて面白いよね、と僕が言ったとき彼は肩をすくめました。

English is double Dutch to me.
英語って訳が分からないよ。

あ、またやられた!double Dutchは「訳が分からないもの」「意味の分からない言葉」という意味です。

オランダ人、インド人、ドイツ人が話す英語の特徴

オランダ人は英語が上手なことで知られていますが、友人もアメリカの新聞社の東京支社で仕事をしているので、外国語である英語を彼はまったく不自由なく扱っています。ただし発音はとても特徴的です。今日は本当はそういう話しをしたかったのです。

彼は th の音を必ず d と発音します。

thisはdis、

theseはdeeze、

That’s it! はDats it! と発音しています。

そして f はとても強く、特に語頭に来るときには v に近い音に聞こえます。

family は vamily、

fantastic は vantastic、

Is it far? は Is it var? のような感じ。

ですから、That’s funny. は Dats vunny. のような音になるのですが、それが理由で発言が分かりにくかったこと、誤解が生まれたことは、僕との間では一度もありません。

先日、インドなまりの英語をレコーディングしました。英語ではHinglishといいます。アメリカや日本で出会うインド人は英語が母語、または母語のレベルである人がほとんどです。しかし、彼らは概して早口で発音がとても特徴的なので、慣れないと聞き取るのは難しいかもしれません。

レコーディングできちんとディレクションができるように、僕も録音前にHinglishをYouTubeで散々聞いて準備したのですが、インド人を演じるアメリカ人ナレーターは大喜びで言いました。

I’m BeRRuRY good at it. (I’m very good at it.)
オレ、それ大得意なんだ。

彼はノリノリでインド英語を話してくれました。

インド英語でも th の音を t か dで発音します(必ず)。

Thank you. は Tank you.

That’s it! はオランダ英語と同様に Dats it! となります。

Samanthaという友人がインド人男性と付き合っていたとき、彼女は彼からSamantaと呼ばれていたので、僕たちもみんなそう呼んでいました。

そしてナレーターがまねしたように、r の音は日本語のラ行に近い発音をします(日本語より少しだけ強いかもしれません)。

Peter は PeteRRu(ピータル)、

party は PaRRuTy(パルティ)、

court は coRRuto(コルト)のような感じ。

よく知られていることですが、彼らはWednesdayは文字の通り、Wedo-nes-day(ウェドネスデイ)と言うのです。書かれているその通りに読むのもHinglishの特徴の1つです。

僕の弟の奥さんはドイツからの移民です。彼女の両親が話す英語はドイツ人が話す特徴的な発音です。

th の音はドイツ語に存在しないので、 s か z の音に変わります(日本の人とまったく同じです)。

threeはsree

thirstyはsirsty

thisはzisと発音します。

ですから、That’s it! は Zats it! となるわけです。

w が v に変わること、長母音を短く発音することなども、ドイツ人が話す英語の特徴です。サッカー選手のインタビューなどで気付くときがあるかもしれません。

wonderfulはvonderful

woolはvool

womanはvomanのように、

また、heartはhut

sleepはslip

feelはfillのように聞こえます。

オーストリア生まれであるアーノルド・シュワルツェネッガー(Arnold Schwarzenegger)の英語にも、ときどきドイツ語の音に影響されているこれらの特徴を感じることがあります。

日本人も英語の発音にユルくなろう

世界にはいろんな英語があるなあと、国籍の違う人たちと話していると実感します。発音指導の本も書かせてもらっているので、ちょっと言いにくいのですが、僕はやはり日本の人たちの多くは英語の発音を気にしすぎているような気がするのです。

「日本の人たちは正確なことが好きだから」とオランダ人の友人は言いました。

We’re very laid-back.
オランダ人は適当だから。

とも。

世界の言語の数だけ、英語の発音が存在してもいいのかもしれません。いろんな英語の発音があってそれはそれで楽しいかな、と思うのですが、どうでしょうか。

最終回だからと思って、張り切ってたくさん書いてしまいました。またどこかでお会いできたら光栄です。

今回も最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

 

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カン・アンドリュー・ハシモト

カン・アンドリュー・ハシモト
アメリカ合衆国ウィスコンシン州出身。教育・教養に関する音声・映像コンテンツ制作を手がける株式会社ジェイルハウス・ミュージック代表取締役。英語・日本語のバイリンガル。公益財団法人日本英語検定協会、文部科学省、法務省などの教育用映像(日本語版・英語版)の制作を多数担当する。また、作詞・作曲家として、NHK「みんなのうた」「おかあさんといっしょ」やCMに楽曲を提供している。9作目となる著作『外国人に「What?」と言わせない発音メソッド』(池田書店)が発売中。