真意はどこに?誤解しがちなネイティブの英会話表現5選

親しいゆえに仲間内で多用されがちな、英語の「距離感」が近い口語表現、特にアメリカの英会話表現を、日英バイリンガルのカン・アンドリュー・ハシモトさんが紹介します。「私たち、カッコいい?」の意味だと勘違いした英文の真意とは?

医師である友人が疑問に思った英会話表現を紹介

英語学習にとても熱心な日本人の友人が僕にはいます。僕は去年、アルクのこのWebメディアで連載を半年くらい受け持っていて、彼はそれをとても楽しんでくれました。

その連載の中で何度か、アメリカ人の友人たちとお酒を飲んでいるときの様子を書きました。その友人はそれにとても興味を持ち、「次にその人たちと飲む機会があったら、ぜひ俺も誘ってほしい」と何度も連絡をくれました。彼は海外の学会で英語の論文を発表することもある、大学病院の医師なのですが、「俺、日常会話がまるで苦手だからさ」と。

僕は最初、恋人でもないその友人を、彼とはまったく面識のないアメリカ人やイギリス人やカナダ人たちとの飲み会(英語ではget-togetherと言います)に連れて行くのは気が引けていました。そこは、日本人に対してのちょっとした愚痴や不満などをぶつけ合うことも多い場でしたから。しかし結局、彼の強い押しに負け、僕は夜更けの会に彼を連れて行きました。

今回は、その友人が僕にくれた質問をいくつか紹介したいと思います。それらの多くは僕にとって興味深いものでした。

「私たち、カッコいい?」という意味だと勘違い!

飲み会で友人は、酒を交えた会話にもかかわらず、聞き慣れない表現や意味のわからない言葉が出てくると、メモを取ったり、iPhoneで録音し始めたりしたので、警戒して席を移動する友人もいました。しかし、その行為はすべて純粋な向学心がさせたものでした。

そして会の翌日から数日間、時にはメモやiPhoneの録音データの添付とともに、彼は僕に例えばこんなメールをくれました。

「昨夜、Candas(仮名)がKanを見つけたとき、俺たちのそばに来ていきなり言ったろ?『私たち、カッコいい?』って。訳がわからない質問だと思ったけど、Kanも別にフツーに答えてた。『ああ、オレたちはカッコいいよ。完全にね』って。あれ、何?今、みんなああいうこと言うの?ああいうあいさつ、はやってるの?」(彼のメールの文章、ほぼそのままです)

いくら酔っ払って覚えていないとしても、そんな会話はあり得ないと僕は思いました。Candasは美人かもしれないけど、久しぶりに会っていきなりそんなこと言うとは考えにくいし、僕もどんなに酔ってもそんなセリフ、言うかな・・・。

話は結局こういうことでした。

僕とCandasはその数カ月前、仕事のことで小さな行き違いがありました。行き違いの内容は、翌月に一緒に行うレコーディングについて事前に説明すると僕が言ったのにしなかったとか、Candasはそれに抗議するメールを僕に送ったのにその返信もなかったとか、そんなことでした。

実は、僕がレコーディングについて説明をしなかったというのも、抗議のメールに返信を出さなかったというのも、事実とは異なりました。僕のメールがなぜかその時期だけCandasのPCで迷惑メールとして処理され、ジャンクメールの箱に入ってしまっていたことが、行き違いが生まれた原因だったのです。

僕とCandasが直接話したことで誤解は解けたのですが、その後、何カ月か僕とCandasの共通の仕事は途絶えていました。それは決して僕が彼女を避けていたわけではなく、たまたまそういう機会がなかっただけなのですが、Candasはそれを気にしていました。

My rude remarks might have turned you off.
私の失礼な発言にきっとひいたよね。

No biggie. Everything’s fine.
心配は要らないよ、何の問題もないから。

※no biggie:大したことはない

そんなメールのやりとりをしました。

そして同時期に偶然、飲み会で僕を見つけた彼女はこう言ったわけです。

Hey, Kan, are we cool?

僕は答えました。

Yes, Candas. We’re cool. Absolutely.

友人の質問は、この会話に関するものでした。

ここでのcoolは「カッコいい」とか「素晴らしい」とかいう意味ではありません。 「互いに問題はない」「わだかまりはない」 という意味です。

Are we cool?

私たちの間にもう問題はないよね?/お互いOKだよね?

このように、Are we cool?は、例えば恋人たちがけんかして仲直りした後に交わしたり、ギャングたちが抗争の後に和解のテーブルで口にしたりする表現です。手元の辞書にはその使い方の解説は見つかりませんでしたが、実生活や映画ではわりと耳にします。

I dig it.って、何を掘るの?!

日本人の友人が僕に送った質問を続けますね。ここから先は、読者の皆さんも一緒に考えてみてくださるとうれしいです。

A:Peterに言われたらムカつくことをMikeに言われても頭にこない、どうしてだろう?
B:PeterよりMikeの方が親しいからじゃないの?
A:いや、それはむしろ逆なんだよね。
C:俺は、Mikeの言い方のせいだと思う。Mikeはイギリス人なだけあって説明が長いだろ?直接的じゃないから、わかりにくい分だけカチンとこないんだよ。
A:Hmm … I dig it.

このI dig it.はどんな意味でしょうか?

digはもともと「掘る」「掘り出す」、そこから転じて「深く調べる」という意味もあります。ここでは「僕はそれを掘り返す」という意味ではもちろんなく、 「僕はその意見に賛成だ」 と言っているのです。

I dig it.

その意見に賛成。

Aは香港出身のカナダ人ですが、digは特にアフリカ系アメリカ人がさまざまな表現で使う単語で、スパイク・リー(Spike Lee)の映画には必ずと言っていいほど出てきます。

アフリカ系アメリカ人のミュージシャンたちと音楽を作っていた頃、演奏が終わるたびに彼らから Dig it! という声が聞こえました。それはAll right!とかYes, I like it!といったニュアンスで、 「今の、よかった」「サイコーだ」 という日本語に近いです。

また、何かを説明してもらった後に、 Dig it? と尋ねられることがあるかもしれません。それは You understand?(わかった?)という意味 です。

That’s life.は大げさな表現、ではない

次に行きましょう。

自分の愛車カマロを中古車ディーラーに査定してもらったChrisが怒っていました。

Chris:いくらだと思う?2000ドルだよ!たった2000ドル!It is worth way more than that!(もっと価値のある車だ!)
Peter:Well… That’s life.

That’s life.はどんな意味でしょう?

これは It can’t be helped.とも言い換えられます「仕方ないよ」 という意味です。「人生ってそんなもの」というふうに考えられなくもないですが、決まり文句として「しようがないね」といった意味合いで使う表現です。

That’s life.

仕方ない。/そういうものだ。

よく聞くand stuffは日本語ならどういうニュアンス?

次です。

僕が抱えていたギターケースをゴルフバッグだと勘違いした友人が言いました。

Wow, Kan, do you play golf and stuff ?

どういう意味でしょう?

stuffも多くの使い方がある言葉です。通常は「物」という意味で使われます。しかし、「君はゴルフと物をプレーするのか?」では意味不明です。これは、「え、カン、おまえ、ゴルフとかやるの?」ということです。

~ and stuffは 「~とかそういうもの」 という意味で、とてもよく使われます。日本語でも「~とか」という表現をよく聞きますよね。

~ and stuff
~とか

「え、好きな果物?そうだな、I like strawberries and stuff.」と言えば、「いちごとか好きだよ」という意味です。日本語では「とか」を使うことで1つに決めず幅を持たせているわけですよね。英語もそれとまったく同じです。

失敗したときにも食事するときにも言うI’m done.

後です。

仕事の愚痴を書いたメールを恋人に出すはずが、間違えて上司に出してしまったという友人が、このように言っていました。

Oh, shoot! I’m done.

それを聞いて、別の友人は言いました。

Ha ha ha! You’re a dead man.

これは簡単かもしれませんね。Oh, shoot! I’m done.は、「ああ、やっちゃった!俺はもう終わりだ」という意味です。レストランなどでウエーターにI’m done.と言えば、「もう食事は終わっています」ということで、それと同じ表現です。

それを聞いた友人は笑いながら、「おまえはもう死んでいる」、つまり「確かに終わりだね」と言っているわけです。

I’m done.

もう終わりだ。

※「もうやめた」「飽き飽きした」「(準備などが)終わった」といった意味でも使われる。

どの言語も同じだと思いますが、英語も口語の方がむしろいろいろな表現があります。初めて聞く言い方はあったでしょうか?楽しんでいただけたのなら、うれしいです。

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カン・アンドリュー・ハシモト
カン・アンドリュー・ハシモト

アメリカ合衆国ウィスコンシン州出身。教育・教養に関する音声・映像コンテンツ制作を手掛ける株式会社ジェイルハウス・ミュージック代表取締役。英語・日本語のバイリンガル。公益財団法人日本英語検定協会、文部科学省、法務省などの教育用映像(日本語版・英語版)の制作を多数担当する。また、作詞・作曲家として、NHK「みんなのうた」「おかあさんといっしょ」やCMに楽曲を提供している。9作目となる著作『外国人に「What?」と言わせない発音メソッド』(池田書店)が発売中。

編集:ENGLISH JOURNAL ONLINE編集部

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