「英会話なんて、余裕のよっちゃんだよねー」ってサラッと言えるとカッコいい・・・かもしれない!【アンちゃんの死語の世界】

連載「今よみがえる 死語の世界」第8回。今回は、「楽勝」「朝飯前」といった意味で使われていた「余裕のよっちゃん」を取り上げます。「余裕」はともかく、そもそも「よっちゃん」って誰!?言語学者のアンちゃんことアン・クレシーニさんが解説します!

きっとみんな「余裕」が欲しい

今のような不安定な時代に、多くの人が一番求めているのは「余裕」なのかもしれません。お金の余裕、時間の余裕、精神的な余裕・・・。しかし、全ての「余裕」を手に入れるのはなかなか難しいと思います。

例えば、お金の余裕はあっても、毎日忙しすぎて時間の余裕もなければ精神的な余裕もない。あるいは、時間の余裕はあるけれど、使えるお金の余裕がない。全てにおいて「余裕」があったら、どれだけ人生は楽になるでしょうか。

「珍しく深い話だな」と思ったでしょ?私はふざけた文章もよく書くけれど、大学では宗教や哲学を専攻していたんです。だから、実は普段からいろいろな物事について延々と深く考えています。

とはいえ今日は、もうちょっとライトな「余裕」について書きたいと思います。1970~80年代にはやった「余裕のよっちゃん」です。「何それ?聞いたことない!」という若い読者の方もたくさんいると思いますが、当時はバリバリの流行語だったこの表現を分析することによって、英語もたくさん学べます!

え?「アンちゃん、うまく解説できるの?」って?はい、余裕のよっちゃんです!それでは、みんなで一緒に楽しく「余裕のよっちゃん」について見ていきましょう!

「余裕のよっちゃん」の語源

画像出典:よっちゃん食品工業株式会社 公式サイト

この連載でこれまで紹介してきた言葉や、そのほかの死語と同じように、「余裕のよっちゃん」も語源に関してさまざまな説があります。だけど、一番有力な説が全然面白くないんだよなあ・・・。それが、「余裕」と「よっちゃん」を組み合わせると同じ「よ」で語呂がいいから、という「ただの言葉遊び」説なのです。

そしてもう一つが、同じ時期に人気を博した駄菓子「よっちゃんイカ」との組み合わせ説。よっちゃんイカとは、1959年創業の「よっちゃん食品工業株式会社」が開発した、ロングセラーの駄菓子「カットよっちゃん」のこと。ちなみに「よっちゃん」は創業者の愛称だったそうです。

どちらの説が本当なのか定かではありませんが、私はどっちも正しいと思いたい!頭の中で勝手に想像しているのは、うれしそうによっちゃんイカを食べている人が、友人に「ねえ、そのイカ一人で全部食べ切れるの?」と聞かれて、「うん、おなかに余裕があるから、よっちゃん全部入るよ~!」と自信満々で答えている光景です。

私も、いつか流行語を生み出してみたいなあ、なんて思います。日本語を勉強し始めた頃、「楽しい」と「面白い」の両方を表す日本語が存在しないことが気に入らなくて、「たのしろい」を勝手に作りました。残念ながらはやりませんでしたけど。ぴえん・・・。

「余裕」は意外と訳しづらい

「余裕のよっちゃん」は、「苦労せずに何かを簡単にできる」と言いたいときに使った表現です。「朝飯前」「楽勝」「楽ちん」「めっちゃ簡単」みたいなニュアンスといえるでしょう。

「ね、今日中にこの仕事を仕上げてもらえる?」
「オッケー!余裕のよっちゃん!」

こんな感じです。誰かの質問に対して返事をするときによく使われていました。

「余裕のよっちゃん」の英訳について解説する前に、まずは、意外と訳しにくい「余裕」について話した方がいいでしょう。

私が初めて「余裕」という日本語に出合ったのは、日本に来て間もない頃だったと記憶しています。当時の私はあまりお金がなくて、I can’t afford it.という英語の文章がよく口をついて出ていました。そんなある日、「これって日本語ではなんて言うの?」と日本人の友人に尋ねてみたところ、「お金の余裕がない」だと教えてくれたのです。

ちなみに、3人の子を育てている現在の私も、当時と同じ頻度でWe can’t afford it.と言ってる気がする・・・。

「余裕」を調べると、次のような英訳が出てきます。

  • surplus, margin, leeway, room, space, time, allowance, flexibility, scope
    (出典:Weblio英和・和英辞典内、「JMdict」による検索結果)

「余裕」の英文いろいろ

文脈によって意味も変わるので、まずは幾つか例文を見ていきましょう。

I don’t have the flexibility to do something like that.
そんなことをする余裕がない。

I wanna buy a new car, but I just can’t afford it.
新しい車を買いたいけど、そのの余裕がない。

I don’t have the time [energy] to study English.
英語を勉強する時間[気力]がない。

There just isn’t enough space to put a washing machine in there.
そこに洗濯機を置くスペースが全くない。

There is no margin for error here.
ここでミスは許されない。

Do you have time to do this?
これをやる時間はある?

There is no room for you in the car. Sorry.
あなたが車に乗るスペースがない。ごめん。

I have plenty of time.
時間はたくさんあるよ。

You have a little leeway.
君は少し余裕があるね。

You should allow at least ten minutes for traffic.
渋滞を考えて少なくとも10分は余裕を持った方がいいよ。

「お金の余裕」について言うafford

上の2番目の文に出てきたaffordという単語について、もう少し見てみましょう。この単語は「お金の余裕がある」という意味を持っています。

I can’t afford to go to college.
大学に行くお金の余裕がない。

I can afford to spend about 2000 dollars on a plane ticket.
飛行機のチケットに2000ドルくらいなら出す余裕がある。

I can’t afford to take my whole family back to the U.S. this summer, so I’ll go by myself.
今年の夏、家族全員をアメリカに連れて帰るお金の余裕はない、だから一人で行く。

You shouldn’t buy it if you can’t afford it.
お金に余裕がないなら、それを買うべきではない。

Can you afford that?
それを買うお金の余裕があるの?

I can’t even afford to pay for my utilities.
光熱費を支払う余裕さえない。

How much can you afford to spend?
お金の余裕はどのくらいある?

「お金の余裕」については、affordを使わずに、 I have the money(お金の余裕がある)、I don’t have the money(お金の余裕がない)と言うこともできます。

I don’t have the money to go to college.
大学に行くお金の余裕がない。

You shouldn’t buy it if you don’t have the money.
お金の余裕がないなら、それを買うべきではない。

Do you have the money for that?
それを買うお金の余裕があるの?

「お金がない」「金欠」を表すI’m brokeというスラングもあります。

I wanna go to karaoke with you, but I’m seriously broke.
一緒にカラオケに行きたいけど、マジで金欠だ。

I lost my job, so now I'm broke.
失業したので、お金がない。

ちなみに、affordはお金以外の余裕についても述べることができます。

I can’t afford to go out today. I have a test tomorrow.
今日は出かける余裕がない。明日、試験があるんだ。

You can’t afford to be wasting time like that. Your report is due next week.
そんなふうに時間を無駄にしている余裕はないよ。レポート締め切りは来週だよ。

じゃあ「余裕のよっちゃん」は英語でなんて言う?

いよいよ本題です。「よっちゃん」という言葉は英語にはないものの、「余裕のよっちゃん」に似た英語表現で、ちゃんと伝えることができますよ。楽しみながら見ていきましょう!(※編集部注:頻出している博多弁の日本語訳も楽しんでくださいね)

piece of cake

piece of cakeは、「一切れのケーキをペロリと食べるように、とても簡単なこと」という意味です。

A:How was your test today? 今日のテストはどうだった?
B:It was a piece of cake! 余裕のよっちゃんよ!

The driving test was a piece of cake. I passed it on my first try.
運転免許の実技試験は余裕のよっちゃんやった!1回で受かったよ。

breeze

「そよ風」が心地よい、または問題がないという意味合いを持つため、何かが簡単に達成できるというニュアンスを表現できます。

The final exam was a breeze! I studied way too much.
期末試験は朝飯前やった!勉強し過ぎたわ。

That was a total breeze!
あれは超簡単やった!

walk in the park

公園での散歩はリラックスして楽しめ、特別な努力や技能を必要としません。そのため、比喩的には何かが簡単であることを表すのに使われます。

His semi-final tennis match was a walk in the park. He won 6-0, 6-0, 6-0.
準決勝は楽勝だったね。彼は6-0、6-0、6-0で勝った。

The audition was a walk in the park.
オーディションは楽勝やった。

nothing

「何もない」または「存在しない」という直訳的な意味から派生して、何かが非常に簡単なことを示すために使われます。

A:That’s so much for helping me today. 今日、いろいろ手伝ってくれてありがとう!
B:No, don’t worry about it. It was nothing. 全然大丈夫だよ!

cinch

cinchの語源は馬具から来ています。馬の背にくらをしっかり固定するための帯の一部を指します。ここから「確実なもの」や「簡単な任務」を意味するスラング表現として使われるようになりました。

The final exam was such a cinch! The midterm was much more brutal.
期末試験は余裕のよっちゃんやった。中間テストの方がよっぽどむずかったわ。

Wow, that was such a cinch!
めっちゃ簡単やったわ。

child’s play

直訳すると「子供の遊び」で、何かがとても簡単で、子供でもできるほどだというニュアンスで使われます。

Man, that was so easy. It was child’s play for me!
あれは本当に簡単だった。朝飯前やね。

easy as pie(ちょっと古いかな・・・)

この表現の起源は明確ではありません。「パイ」は一般的に食べるのが簡単で、作るのも簡単と考えられています。そこから、何かが非常に簡単で、労力を必要としないという意味で使われるようになったと考えられています。

That was as easy as pie!
めっちゃ楽ちんやった!

cakewalk

19世紀のアメリカ南部の伝統的なダンス競技に由来する表現だそうです。この競技で、参加者はエレガントに歩き、最も優雅に歩いた者がケーキを賞品として受け取りました。ここから「cakewalk」は、比較的努力を必要とせずに獲得できる賞品を指すようになり、やがて「何かが簡単なこと」を表す比喩的な意味を持つようになりました。

The championship game was a cakewalk for them.
決勝戦は楽勝やった。

もちろん、オーソドックスなreally easyやso easyなどを使ってもいいけれど、たまにはこういった表現に言い換えたら面白いかもしれません。

like stealing candy from a baby

赤ちゃんからキャンディを盗むことが非常に簡単行為であることから派生しています。ただし、文字通りの意味から、文脈によっては道徳的に不適切になることもあり、注意が必要です。

それにしても、面白い英語だよね。誰がこの表現を最初に考え付いたんだろう。実際に赤ちゃんからキャンディを盗んだことがあるのかな・・・。

That was the easiest thing I have ever done. It was like stealing candy from a baby.
今までの人生で一番楽ちんやった!
(直訳:赤ちゃんから飴を盗むことと同じぐらい簡単だったよ!)

それでは最後に、いろいろな表現をまとめて復習しましょう!

A:TOEICで900点を取れると思う?
So, do you think you can get 900 on the TOEIC?

B:もちろん!余裕のよっちゃんだ!
Yeah, sure, piece of cake.
Yeah, no problem. It’s breeze.
Walk in the park.
Yeah, 900 is nothing.
No problem. It’s a cinch.
900? That’s child’s play!
Getting 900 on TOEIC is as easy as pie.
900 is a cakewalk for me.
900 is super easy to get for me.
900 on TOEIC? That is like stealing candy from a baby.

最後の例文は特に自信があふれています。「僕にとっては900点なんて大したことじゃないぜ。めっちゃ余裕だ」みたいな感じ。

全部を紹介しきれませんでしたが、他にも「余裕のよっちゃん」として使える英語はたくさんあります!

  • effortless(努力を要しない、楽な)
  • a snap(簡単なこと)
  • no sweat(お安いご用だ、容易に)
  • as easy as falling off a log(とても[全く・極めて]簡単な)
  • simple as ABC(非常に簡単な)
  • like shooting fish in a barrel(いともたやすい)
  • easy-peasy(とても[めっちゃ・超]簡単な、ちょろい)
  • duck soup(簡単にできること、朝飯前)

まとめ

「余裕のよっちゃん」も英語のpiece of cakeも、「とても簡単にできる」という意味でした。「僕/私にとって超簡単だよ!任せて!」のように、自信に満ちあふれた表現なので、「簡単/It’s easy.」「できる/I can do it.」だけだとちょっと物足りない気がしてきます。

ちなみに、英語のpiece of cakeは、およそ90年前に初めてアメリカで使われました。日本語の「余裕のよっちゃん」の誕生は約50年前です。piece of cakeは元気よく年をとっている一方で、「余裕のよっちゃん」はすでに死語の世界に旅立ってしまいました。

言葉というものは、いつまで生き残るかわかりませんね。私の大好きな「ぴえん」はわずか5年前に使われるようになったばかりですが、この間、「もう死語に近い」と現役の若者に言われました。

たとえその単語が死語になっても、その後で学べることはたくさんあると思いませんか?だから次回も、死語に感謝しつつ、私と一緒に楽しく言葉を勉強しましょう!

アン・クレシーニ
アン・クレシーニ

アメリカ生まれ。福岡県宗像市に住み、北九州市立大学で和製英語と外来語について研究している。著書に『アンちゃんの日本が好きすぎてたまらんバイ!』(合同会社リボンシップ)。自身で発見した日本の面白いことを、博多弁と英語でつづるブログ「アンちゃんから見るニッポン」が人気。Facebookページも更新中! 写真:リズ・クレシーニ

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