ぜったい死なない(?)動詞「kill」の活用法【アンちゃんの英会話頻出ワード】

連載「使いこなせる!英会話頻出ワード」。言語学者のアンちゃんことアン・クレシーニさんが、「英語のネイティブスピーカーがよく使うけれど、日本語では理解しづらい言葉」を徹底解説します!今回紹介するのは「kill」という動詞の日常会話での使い方。マスターしたらあなたもきっと、世界最強の「殺し屋」になれるかも!?

「食べ物を殺す」ってどういうこと?

私の父は言葉の達人でした。本業は大学の教員でしたが、趣味は書籍や脚本を書くことでした。私の子供の頃、晩ご飯が終わった後にほぼ毎日、父は私にいろいろなクイズを出くれました。政治、宗教、歴史。そして、英語。私の語彙力をどうしても上げたかったようです。最も記憶に残っているのは、ubiquitousという単語でした。意味は「どこを見てもある」です。

In Japan, convenience stores are ubiquitous.
日本では、どこにみてもコンビニがある。

この難しい英単語を知っているアメリカの子供は少なかったと思いますが、小さいアンちゃんは使いこなせました!父のおかげで言葉が大好きになりました。

難しい言葉をたくさん教えてくれましたが、同時にお父さんならではの独特な表現もありました。一番覚えているのは次の表現です。

Can I kill these leftovers?

つまり、「昨日の残り物を食べてしまっていいかな?」という意味です。killは「食べてしまう」という意味で、「食べ物を殺す」ではありません。

これが一般的な英語なのか、方言なのか、それかとも父の独特な言い方なのか、いまだによく分かりません。考えたら、他の人がこの表現を使っているのを聞いたことがありません。旦那に聞いてみたら、「うーん、それは知らんよ」と答えました。

しかし、私が小さいとき、父は毎日のように言っていました。

You wanna kill this?
Can I kill this?
Kill these leftovers. など
少しえぐいテーマかもしれませんが、英語のkillには「~を殺す」以外の意味があります。ポジティブな意味も意外とたくさんありますよ!そこで今日は、そのさまざまな使い方についてお話します!

さて、始めましょう!

バッチリだった!うまくできた!

英語で何かがうまくできたときに、よくI killed it!と言います。

A: How was the exam?
B: I totally killed it.
A:試験、どうだった?
B:ばっちりだったよ!
I killed my audition.
I killed the speech.
I killed the presentation.
オーディション/スピーチ/プレゼンはばっちりだった。

killと似たような言葉は、nail、crush、aceです。

I totally nailed my audition.
I nailed the speech.
I nailed the presentation.
I aced the test.
I crushed the final exam.
I aced my interview.
オーディション/スピーチ/プレゼン/テスト/期末試験/面接はばっちりだった。

これは全部スラングですが、日常会話によく出てきます。特に、映画やドラマによく出てきます。文ではなかなか面白さが伝わらないと思いますが、誰かが何をうまくできたときに、歌っているよう声でNailed it!!と言います。

スラングではない表現を使いたいなら、It went really well.と言ってもOKです。

A: How was your exam?
B: I think it went really well.
A:試験、どうだった?
B:すごくうまくいったよ!

面白過ぎる!超?ウケる!

これは、killのもう一つのポジティブな使い方です。ちょっとイメージしてください。誰かがめちゃくちゃ面白いことを言って、お腹が痛くなるくらい笑ったとします。本当に笑いが止まりません。そんなときに英語で次のように言います。

Ha-ha!! Seriously, stop!! You’re killing me!
ハハハ!!マジ、やめて!面白過ぎる!

日本語でも笑い過ぎて「やめて!死ぬ!」と言うことがありますよね。それと同じです。

killの仲間で形容詞のdeadも、同じ状況で使えます。I’m dead.と言えば、直訳の「私は死んでいます」という意味ではなくて、「超?ウケる!オモロイ!」という意味です。

ちなみに、日本語の「ウケる」を表す英語表現はたくさんあります。

That’s hilarious!
You crack me up!
That so funny!
That’s epic.
You’re a hoot.
That’s a riot.
I’m dead.

ちなみに「死ぬ」もそんなときに使うことができて、die laughingと言うと「笑いすぎ(で死ぬ)」という意味になります。

His jokes were so hilarious. We all died laughing.
彼のジョークは面白すぎて、めちゃくちゃ笑った。

さて、You’re killing me.に話を戻しましょう。この表現は、言うときの声のイントネーションや文脈で意味が変わってきます。

呆れているようにYou’re killing me.というと、「いい加減にしろ!」という意味になります。

Please stop. You’re killing me.
もうやめて。いい加減にして。

超?親に怒られる!やばい

英語を話す子供なら必ず、この表現を使ったことがあると思います。

何か悪いことをしたときに、こんなふうに言います。

My parents are gonna kill me!

親のに傷を付けてしまったり、門限を守らなかったりしたときに使う、定番のフレーズです。もちろん、実際に親に殺されるわけではなく、「(親が)超?怒る!やばい!」という意味です。

I failed all my classes my first semester of college. My parents are gonna kill me.
大学の前期の授業を全部落とした。親に殺される。
I got fired from my part-time job. My mom is gonna kill me.
「バイトを首になった。母がめっちゃ怒る。

もちろん、親だけではなくて、自分がやったことが原因で誰かが怒る、さまざまな場面に使えます。

Your girlfriend is gonna kill you if she finds out you cheated on her.
浮気がバレたら、マジで彼女に殺されるよ!
My sister is gonna kill me for breaking her smartphone.
姉のスマホを壊しちゃった。殺されるに決まってる!

ここでも仲間のdeadが使えます。

I failed all my classes my first semester of college. I’m so dead.
大学の前期の授業を全部落とした。もう駄目だ。
I broke my sister’s smartphone. I’m so dead.
姉のスマホを壊しちゃった。殺される。

死ぬほど痛い

日常生活では、この意味でkillをよく使います。体のどこかが死ぬほど痛いときに使います。「痛みに殺されている」という感じです。

My stomach is killing me!
My head is killing me!
My back is killing me!
My ear is killing me!
My tooth is killing me!
おなか/頭/腰/耳/歯が死ぬほど痛い!
My head is killing me. Do you have any medicine?
頭が死ぬほど痛い。薬、ある?
My back is killing me. I want to lie down.
腰が死ぬほど痛い。横になりたい。

ちなみに、痛み止めの薬は英語でpainkillerと言います。そして、「痛みを止める」は、kill the painと言います。日本人は痛みを「止める」。アメリカ人は痛みを「殺す」。さすがアメリカ人は極端だね!笑笑。

「痛みを止める」文を見ていきましょう。

My back is totally killing me. I need some painkillers.
腰が死ぬほど痛い。痛み止めが欲しい。
My tooth is killing me. Can you give me something to kill the pain?
歯がとても痛むんです。痛みを止める薬を出してくれますか?

kill the painはnumb the painも言えます。numbは「~を麻痺させる」という意味です。

Can you give me something to numb the pain?
痛みを止めるものをくれますか?

欲しくてたまらない

ハリウッドの映画やドラマで、次のような表現は聞いたことはありますか?

I would kill for some Mexican food right now.
今、メキシコ料理が食べたくてたまらない。
I would kill for some of my mom’s homemade chocolate chip cookies.
母の手作りチョコチップクッキーが食べたくてたまらない!
I would kill for an ice-cold beer right about now.
今、冷たいビールがめっちゃ飲みたい。
I would kill to see her right now.
彼女に会いたくてたまらない。

母の手作りクッキーを手に入るため、さすがに人を殺さないと思いますが(多分)、「人を殺すことを考えるくらい何かが欲しい」と言いたいときには、この表現がぴったりです。よくright now(今)と一緒に使います。

つまり、「今」、母のクッキーが食べたくてたまらない!!後で、ではなくて、今!

killだと強すぎるかもと思うなら、それに近い次の言い方でもいいでしょう。

I am dying for some Mexican food.
I am dying for some of my mom’s homemade chocolate chip cookies.
I am dying for an ice-cold beer.
I am dying to see her.

* 意味は全てwould killを使ったものと同じ。

killほどとがった言い方ではありませんが、意味は大体同じです。食べたくてたまらない!会いたくてたまらない!飲みたくてたまらない!という意味合いです。

ほかにもたくさん!killの使い方

killとdieを使っている他の例も見てみましょう。

Gas prices these days are killing me.
最近、ガソリン代が高くて困るわ。
A: How was the basketball game yesterday?
B: We got killed.
A:昨日のバスケットボールの試合、どうだった?
B:ボロ負けだった。
A: Can I open my birthday present now?
B: No, not yet.
A: The suspense is killing me!
A:誕生日プレセントを開けてもいい?
B:「まだだよー」
A:早く知りたくてたまらない!
Can you kill the music?
音楽を消してくれる?
A: What are you doing?
B: Nothing really. Just killing time till it’s time to go.
A:何してるの?
B:別に。出掛けるまで時間を潰しているだけ。
I killed two birds with one stone.
一石二鳥だ。
The wind is finally dying down.
やっと風が落ち着いた。
I’m dead tired.
I am dead on my feet.
めちゃくちゃしんどい。

* dead on my feet=extremely tired
I thought I had died and gone to heaven!
超?うれしかった!
You are dead wrong.
もあなたは完全に間違ってるよ。
My phone is dying. Do you have a charger?
スマホの充電があまりない。充電器を持ってる?
My phone is dead.
スマホが切れた。

この表現は本当によく使います。イメージ的には、充電が少ないとき、スマホは死にかけています。そして、完全に充電切れになって、スマホが死んでしまった、ということです。

まとめ

英語の表現は、日本語の表現と同じようにずっと変わっています。言葉は生き物なので、それは当たり前なことです。私は若い時、I’m deadは「超?やばい!」という意味で使っていましたが、今の若者はそれに加えて「超?ウケる!」という意味でも使っています。

もしかしたら、あなたは、「もうダメだ!英語のイディオムについていけない!」と思っているかもしれません。ご心配なく!ネイティブの私もついていけませんよ。でもそれは言葉の面白いところだと思います。自分の母語でも永遠にわからない表現がありますので、勉強が終わりません!その終わらない勉強を一緒に楽しみましょう!

アン・クレシーニ
アン・クレシーニ

アメリカ生まれ。福岡県宗像市に住み、北九州市立大学で和製英語と外来語について研究している。著書に『アンちゃんの日本が好きすぎてたまらんバイ!』(合同会社リボンシップ)。自身で発見した日本の面白いことを、博多弁と英語でつづるブログ「アンちゃんから見るニッポン」が人気。Facebookページも更新中! 写真:リズ・クレシーニ

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