映画のシーンを感情をこめて"モノマネ"しよう!デンゼル・ワシントンの英語をシャドーイング

映画のセリフを使って、楽しく英語を学ぼうという本企画。映画スターが話す英語をあとに続いてシャドーイング、つまり「モノマネ」することで、英語力アップを目指します。

はじめに                                       

映画スターの英語をモノマネすることで、楽しく英語を学ぼうというこの連載。前回のブラッド・ピットに続き、今回はデンゼル・ワシントンに英語の先生になってもらいます。アカデミー賞の常連である彼は幅広い役柄を演じ、『トレーニング・デイ』ではアフリカ系アメリカ人俳優として初めて、2つ目のオスカー像を手にしました。

アフリカ系アメリカ人特有の、なまりのある英語を話す役柄も多い俳優ですが、今回は比較的分かりやすい英語のシーンを使って、英語を学んでいきます。

まずはゆっくりしたスピードから                                  

次のシーンでは、ロシアのマフィアに対して警告を告げています。シリアスなシーンなので会話スピードがゆっくりと、そして明瞭な英語が話されるので、シャドーイングしやすいシーンです。

Teddy : You certainly have my attention.
テディ:面白い野郎だな。

Robert : Because I can keep going. Brick by brick. Dollar by dollar. Body by body. Or, you can call your boss and tell him to shut down his operation. Tonight.
ロバート:組織を潰し続ける。ひとかけらずつ。1ドルずつ。一人ずつ。嫌ならボスに電話をかけて、ビジネスをやめるよう伝えろ。今夜にだ。

(『イコライザー』より)

英語表現では、A by A「Aずつ」に注目です。日常英会話でも、one by one「一つずつ」やday by day「日ごとに」などはよく耳にします。上のシーンでは、brick「レンガ」やdollar「ドル」やbody「体」を使うことで、マフィア組織を少しずつ潰すぞ、という警告がうまく表現されています。また、tell 人 to ~「人に~するように言う」の表現も頻出表現ですので、おさえておきましょう。

なお、上の発言のあとには下のセリフがあります。直訳は「雨を求めて祈るなら、ぬかるみにも対処せねばならない」ですが、このシーンでは「何かを求めるなら、その代償も覚悟しろ」という意味で使われています。pray for ~「~を懇願する」や、deal with ~「~に対処する」などがチェックできます。

When you pray for rain, you gotta deal with the mud too.
雨ごいをするなら、ぬかるみも覚悟しろ。

日時の表現や、同じ動詞の変化形の発音をチェック                    

次の会話は、飛行機事故の原因解明のために開かれた、公聴会でのものです。フォーマルな場面ですので、丁寧な英語が話されるので聞き取りやすいです。デンゼル・ワシントン演じるウィトカー機長のセリフを、審査官の問いに返すようにリピートしてみましょう。

Whitaker : I drank the vodka bottles on the plane.
ウィトカー:私が機内でウォッカのボトルを飲みました。

Block : Captain Whitaker, on the three nights before the accident, October 11th...
ブロック:ウィトカー機長、事故前の3日間、10月11日・・・

Whitaker : October 11th, October 12th, and 13th and 14th, I was intoxicated. I drank all of those days. I drank. In excess.
ウィトカー:10月11日、10月12日、13日、14日、私は酔っぱらってました。ずっと飲んでいました。飲んでいた。大量にです。

Block : On the morning of the accident...
ブロック:事故当日の朝も・・・

Whitaker : I was drunk. I’m drunk now. I’m drunk right now, Miss Block. Because I’m an alcoholic.
ウィトカー:酔っていました。今も酔っています。

(『フライト』より)

この会話では、数字の後ろにthを足すという、日付の表現方法が多く確認できます。特に数字の12(twelve)は、「12日」になるとtwelfthのように/v/の発音が/f/になるので、リピートしながら意識しましょう。また、日本語では「ウォッカ」と呼ぶお酒は、英語では「ヴォッカ」のように最初が/v/の発音になる点も注意です。

さらに、drinkの変化形であるdrank(過去形)やdrunk(過去分詞形)も一度に確認できます。drunkと同じく、「酔っぱらった」の意味を持つintoxicatedも出ているので、語彙力の強化を目指す人は同時におさえておきましょう。 

感情を込めてささやこう、父親の愛のセリフ                          

最後は、映画ならではの英語学習です。次のシーンでは、重病の息子を救うために死を覚悟した父親が、今後こんなふうに生きてほしい、と息子に優しく語りかける英語を体験できます。一度に全部をリピートするのが困難であれば、分割するのも効果的です。それぞれのセリフの間には十分な空白があるので、父親を “モノマネ” することを意識し、感情を込めて、リピートしましょう。

①You always listen to your mother. You understand? Do what she tells you to do. She’s your best friend. Tell her you love her every day.
いつもママの言うことを聞け。分かるな。言いつけを守れ。ママは一番の友達だ。毎日愛してると言え。

②Now, you... You’re too young for girls right now, but there’s gonna come a time. When it does, you treat them like princesses, because that’s what they are.
恋人を作るにはまだ早いが、その日は来る。そしたら、王女様のように扱え。本当に王女だからな。

③When you say you’re gonna do something... When you say you’re gonna do something, you do it. Because your word is your bond, son. It’s all you have.
何かをやると口にしたら・・・。何かをやると口にしたら、必ずやれ。約束は果たす。大事なことだ。

④And money. Hey, you make money, if you get a chance, even if you gotta sell out once in a while, you make as much money as you can. Don’t be stupid like your father. Everything is so much easier with money, son.
そして金だ。チャンスがあれば金は儲けろ。多少のズルをしてもだ。パパみたいなバカになるな。金があれば人生助かる。

⑤Don’t smoke. Be kind to people. If somebody chooses you, you know, we talked about this, you stand up, you be a man.
タバコは吸うな。人に親切に。誰かに頼られたら、男らしく立ち上がってベストを尽くせ。

⑥And you, you stay away from the bad things, son. Please. Don’t get caught up in the bad things. There’s so many great things out there for you.
悪いとこには近づくな。頼むぞ。悪いことに関わるな。これから楽しいことがいっぱいあるからな。

(『ジョンQ 最後の決断』より)

まとめ                                        

今回は、デンゼル・ワシントンが登場する映画シーンを取り上げました。せっかく映画のセリフを使って英語学習をするのです。今回は、シリアスに相手に警告を述べるセリフや、涙ながらに息子に語りかけるセリフといった、一般の英語学習教材ではあまり出会えない英語をご紹介しました。

特殊な状況下の会話ではありながらも、これらもリアルな英語の一面を見せてくれる、貴重な教材です。活用しない手はありません。次回も映画ならではの英語に着目しながら、楽しく英語を学習していきます。

飯田泰弘
飯田泰弘

岐阜大学教育学部准教授。趣味である映画鑑賞と、中学校から大学までの教員経 験を活かし、映像メディアを活用した英語学習や英語教育を考え、発信している。 とりわけ、一般の英語学習書には出てこない実例採取が大好き。博士(言語文化学)。研究対象は、言語学と英語教育。

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