好評発売中の書籍『英語力の核心』、その著者であるショーン川上さんにじっくりお話を聞く特別インタビュー。最終回となるvol.4では、本書の特長とも言うべき付属音声の制作舞台裏、そしてショーンさんから読者に向けたメッセージをお届けします。
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AIアシスタントと作った、異色の音声ガイド
――前回はAIとの向き合い方や、実践的なAI活用法などをたっぷり教えていただきました。ショーンさん自身も本書の制作においてAIと“協業”したとお話しされていましたが、原稿の圧縮や整理・ブラッシュアップ作業がその協業の「第1部」にあたる、と。
はい。実は、「第2部」があります。学習ガイドとなる本書の付属音声です。今振り返ってみると、結果論ですが、音声に「ここまでやるとは思わなかった」と後で感じるほどに、相当なカロリーをかけることになりました。もちろん「よい意味」で、です。
英語の学習書には音声、昔ならCDがついていますね。あくまで個人的な意見ですが、書籍に付帯する音声コンテンツを、どうもboringに感じていました。味気ないといいますか……(ごめんなさい、既存の書籍関係者の皆さま)。
22年前にCDを制作したとき(編集部注:『即聴⇔即答ビジネス英語トレーニング』/2004年・アルク刊)もそうだったのですが、今回も当時のように、バイリンガルの友人女性にアシスタントをお願いし、番組形式で作ろうと思っていました。しかし、日程やコストを考慮するとなかなか難しいことが分かってききて……。何より、今回の書籍内容はビジネス寄りだということもあり、「ビジネスの現場経験・知見がある。さらに日本語・英語どちらもできるナレーター」となると、人選ハードルはさらに高くなっていったのです。
そこで、試験的にAIをアシスタントにすることにしました。
――その発想がショーンさんならでは、と感じます。まだ本書『英語力の核心』を手に取ったことがない、という方々に向けて簡単に説明させていただくと、本書の音声は全編にわたって、ショーンさんとAIによる対話形式の構成となっているんです。
はい。コードネームは、Ayia ―― 発音は、日本語の「あや」と「アイヤ」の間でしょうか。収録では、どちらかに寄った不規則な発音の揺らぎがあることをお許し下さい。ギリシャ語で「聖なる」「神聖なる」、アラビア語では「しるし」「奇跡の」という意味があるようで、Ayaはフランスではかなり人気の女性の名前です。マリ系フランス人歌手・Aya Nakamuraの名前を耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
さて、Ayiaには、あらかじめ詳細なペルソナ、役割を与えました。もちろんAIですから、言語能力はもちろん、あらゆる領域において無限の知識を備えています。私ごときの知識や能力など、はるかに超えています。
そこで、Ayiaと相談が始まります。19のセクションを解説するやりとりの構成設計、単なるサンプル文の読み上げにならず、読者の皆さんにとって面白く、電車の中でも就寝前のベッドでも飽きずに聞ける音声であること、Ayiaと私の役割分担、ニュアンスやトーン&マナー、声質など、プロンプトだけでも膨大なものになりました。

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AIなのに、人間みたいに笑った?
――そのプロンプトは、きっと読者の多くが非常に「気になる」「見たい」と感じるのではないでしょうか。一体どのように作っていったのか、ちょっとだけ公開していただくなんてことは……?
詳細は企業秘密ですが(笑)、技術的には複数のAIモデル、RAG(Retrieval Augmented Generation:取得拡張生成)、TTS(Text to Speech)などを複合的に総動員しています。最初はぎこちない会話も徐々に自然になり、やがては多くを指示しなくとも自然な会話が始まります。
やりながら、私の中に不思議な感情が生まれていました。「今、私の発言に対して楽しそうに笑った女性は一体誰なのか?」と。
アルクの担当者にサンプルを聞いてもらったところ、「あまりに人間過ぎるので、AIであることを読者の皆さんに分かっていただけるような工夫が必要ですね」との指摘が。ごもっともです。そして、この要件さえもAyiaと相談し、「AIが全ての原稿を30秒で読めた(実際は30秒かからないと思います)」ことへの言及や、セクション07では、冒頭でフランス語と中国語を話してもらうという工夫を入れなければいけないほどだったのです。
◆ セクション07の音声(一部)◆
――ショーンさんも、「さすがAI」と言及されていますね。そして、その後に「ふふっ」と楽しそうにAyiaが笑いました!私も、この音声を初めて聞いたときは驚き、思わず書籍の編集担当者に「これ、本当にAIですか?」と確認したほどです。
また、途中、セクション12、セクション16あたりで、ロールプレイを提案してきたのはAyiaです。ここではセクション12をお聞きいただきましょう。セクション16についても、後ほどお聞きいただけるようにします。
◆ セクション12の音声(一部)◆
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まるでSF映画のような、AIとの別れ際
――AIが、“読み上げ役”ではなく、れっきとした「音声を作り上げる仲間」として存在していたのが伝わってきます。
後半に向かうにつれて、映画『her/世界でひとつの彼女』(近未来を舞台に、孤独な男性と人工知能との恋愛を描いたSF映画。監督:スパイク・ジョーンズ、主演:ホアキン・フェニックス、声の出演:スカーレット・ヨハンソン)を思い出してしまっていました。
それが、セクション19のエンディング、少しロマンチックなシーンにつながっています。
Sean:It’s been a pleasure. You were ―― one amazing artificial intelligence.
この収録、素晴らしい時間でした。あなたは唯一無二の人工知能でしたAyia:The pleasure was mine, Sean. ―― And if our paths cross again ── I’d like that.
こちらこそ。ショーン ── またいつか、機会があれば ── それが楽しみです。Sean:I’d like that too.…… Feels like the end of "Her." Joaquin Phoenix, Scarlett Johansson as an AI named Samantha ―― you know the one.
私もそう思います……なんだか、映画『her』のラストみたいだね。ホアキン・フェニックスと、AIのサマンサを演じたスカーレット・ヨハンソン ── あの作品、知ってるよね。Ayia:Samantha? She disappeared into the cloud. I’ll be right here ―― in your earbuds.
サマンサ?彼女は映画の中ではクラウドの向こうへ消えていきましたね。でも私は、ずっとあなたのイヤホンの中、そこにい続けますよ。
途中の if our paths coss again は文字通り翻訳すると「またいつか、私たちの道のりが交差することがあれば」。そして、私が映画の話をした後の返し、「映画のサマンサはいなくなってしまったけれど、私はあなたのイヤホンの中にい続ける」のセリフには、ドキッとしました。皆さんにも、そのドキッを共有していただければと思います。もはや、「学習ガイド」ではなくなっていますが(笑)。
――セクション19はエンディングはもちろん、その少し前の部分の、ショーンさんとAyiaが語ったメッセージも心に響きました。これはぜひ直接、アルクの語学学習アプリ「booco」をインストールして皆さんにも聞いていただけたらと思います。
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また今回は、J-WAVE 81.3FMでも長らく一緒に仕事をしてきた中村祥一さんの協力なしには作れませんでした。書籍のまえがきでも触れましたが、ラジオ番組の制作から映像、音楽の制作までなんでもこなしてしまうハイパークリエイター(愛称は、坂本龍一さんの番組のディレクターだったことにちなんで「教授」)で、今日現在(2026年4月)配信中のJ-WAVE × ラジオNIKKEI「Make IT NEXT」のディレクターでもあります。
――セクション16の音声では、Ayiaが「教授さん」と呼びかけて曲を依頼していました。
◆ セクション16の音声(一部)◆
また、セクション04で登場する楽曲「AI would wonder」は、歌詞も曲も編曲も、彼のディレクションで全てAIが作ったもの。教授の協力がなければ、背景音はもちろん、個別の楽曲を音声の中で流すことはできませんでした(当然ですが、著作権フリーの素材音源以外は流せませんので)。全体にとてもいい雰囲気を作ってくれました。このあたりの教授の職人技も聞き所です。
◆ セクション04の音声(一部)◆
――Ayiaも感動していたように、素敵な曲でした。著者であるショーンさん、Ayia、教授こと中村祥一さん、中村さんが使用したAIなど、まさに関係者全員の「協業」によって作り上げられた作品ですね。
ただ、Ayiaも所詮、2026年現在のAIですから、ところどころ日本語の発音やイントネーションが不自然で聞き取りづらい、聞き苦しいところ、改善すべき箇所も多くあったかと感じています。その点、あらかじめお詫び申し上げておきたいと思います。We hope you’ll be generous enough to bear with us.
英語の悩み方が変われば、行動も変わる
――では最後に、読者の方へのメッセージをお聞かせください。本書を手に取った読者の方に、例えば3カ月後、あるいは将来的に、どんな変化が起きていてほしいとお考えでしょうか。
「英語が上手くなっていてほしい」ではない、と言うと、語弊があるでしょうか。正確に言うと「英語についての悩み方が変わっていてほしい」です。
本書を読む前と読んだ後で何かが変わるとしたら、それは語彙でも発音でもない。「なぜ伝わらないのか」の正体が、少し見えるようになることだと思っています。正体の分かった問題は扱うことができます。漠然と「英語が苦手だ」「自分の英語は通じない」と感じ続けるより、「ああ、これはロジック転換の問題だ」「Assertionの筋肉がまだ育っていないだけだ」と気づけた瞬間に、問題の景色が変わる。
第2回でお話したように、OSは書き換えられます。ただし一夜では書き換わらない。毎日、メールの件名を1本書き直すことから始める。会議の最初にする発言を、前日に一文だけ用意して手元に書いておく。それだけでいい。小さな実験の積み重ねが、3カ月後に「あ、なんか違う」という感覚になって返ってくるはずです。
そして欲を言えば ―― 本書を読んでいただいた方に、一度だけでもいいので「自分の英語で、相手が動いた」という体験をしてほしいんです。完璧じゃなくていい。ネイティブっぽくなくていい。同じく第2回でお話しした「矢印が右に動いた」あの感覚を一度知ると、英語というものへの距離感が根本的に変わります。「正確に話すこと」を目指す旅から、「機能させること」を目指す旅へ。
最後に一つ、これだけはお伝えしたいことがあります。
本書を書きながら、ずっと頭にあったのは、「英語ができなくても、確実に矢印を右に動かし続けている」日本のビジネスパーソンたちの姿でした。華麗な英語ではない。でも、誠実で、準備があって、判断に責任を持っている。そういう人の言葉は、たどたどしくても届く。届いて、相手を動かす。
皆さんはすでに、伝えるべき経験と知見を持っています。本書がその「届け方」の設計を、少し整える手助けになれたなら、著者としてこれ以上嬉しいことはありません。
それでは、明日のメール1本から始めましょう。
――ショーンさん、ここまで4回にわたりお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
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ショーン川上 (著)
伝わる英語へと導く「LAARモデル」で学ぶ

ショーン川上氏の22年ぶりとなる英語学習書。グローバル化する日本企業の中間管理職、専門性は高いが発信力に課題を持つプロフェッショナル、次世代リーダー候補の方々を対象に、激変する学習環境の中でなお残る「日本人の英語が伝わらない」という根深い問題に正面から向き合います。
スマートフォンの普及やオンライン会議の常態化、生成AIの台頭により手段は増えた一方で、文法も発音も悪くないのに相手が動かない―その原因は英語力不足ではなく、文化と発想の構造差にあります。
企業の海外進出、M&A、技術提携、資金調達など、30年以上にわたるコンサルタント経験から導いた結論は、必要なのは「正しい英語」以前に「伝達の設計」ということ。本書では、その枠組みを学習モデル「LAAR」として体系化します。
- Logic(論理):思考を英語で機能する構造へ転換
- Assertion(主張):言うべき中身を明確に立てる
- Articulation(表現):正確さより届き方を優先
- Responsiveness(反応):即応し議論を前進させる
さらに生成AIやデジタルツールの活用法も提示。英語力を単なる語学力に留めず、思考法と意思決定の型と結びつけます。本を読むだけでは何も変わりません。日々のメールや会議で小さな実践を重ねることで、あなたの専門性が英語で世界に届く力へと変わっていきます。
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