AI時代に求められる「新・通訳」 ― 夢とスキルアップを叶える【6日間の通訳訓練 in LA】

英語を高いレベルで習得すると、翻訳や通訳といったキャリアの選択肢が広がります。一方、AI時代の今、さまざまな現場で必要とされるのは、ただ言葉を訳す技術だけではありません。求められるのは、「新・通訳」としてのスキル。日本映像翻訳アカデミー(JVTA)がロサンゼルス校で実施する短期集中プログラムと、その受講者の体験を通して、現場で本当に求められている「新・通訳」の具体像に迫ります。

ただ訳すだけではない、現場で求められる「新・通訳」

英語の習得は、翻訳や通訳をはじめとする多様なキャリアへの道を開きます。しかし、AI技術の急速な進化により、単に言葉を正確に置き換える作業は機械へと移行しているのが現状です。

そんな中、現場で求められているのは、コミュニケーションの仲介者としてその場のコミュニケーションを円滑にし、状況に応じて進行やサポートまで担う「新・通訳」のスキル。では、実際にそのスキルをどのように習得し、キャリアにつなげていくべきでしょうか。

今回、映像翻訳者として活躍しながら、2025年9月にアメリカ・ロサンゼルスで行われた日本映像翻訳アカデミー(JVTA)の通訳訓練プログラム「新・通訳ブートキャンプ」(6日間)に参加された近田レイラさんに、現地での新たな知見や、これからのキャリアにおける明確な展望についてお話を伺いました。

留学経験なし、それでも続けた英語学習

近田レイラさんは、大学卒業後に外資系企業に就職しました。インド系の会社だったため、社内で英語を使用する機会や、数カ月間にわたるインド出張の経験はあったものの、正式な留学経験はありませんでした。家族が英語教育に携わっていたため、幼少期から英語は近田さんの身近にあり、学生時代も積極的に学んでいましたが、一つだけ心残りが――。

「英語を仕事で使いながらも、留学経験がないことにずっとコンプレックスを感じていました。また、以前働いていた会社でのやりとりが多かったインド英語には抵抗がなかったのですが、いわゆる英語ネイティブが話すような発音や言い回しについて、一度しっかりと学んでみたいという思いを抱えていたんです」

いつかは留学をしてみたい、海外の文化に触れてみたいという、キャリアアップへの漠然とした思いをどこかに持ちながら日々を過ごしていたと言います。

「これだ!」と思えた新・通訳ブートキャンプとの出会い

英語に加え、映画が好きだった近田さん。その両方を活かせる「映像翻訳」の仕事に魅力を感じ、JVTAで英日映像翻訳のコースを受講しました。全コースを修了した後に受けたJVTAのプロ化試験に見事合格し、映像翻訳者としての道を歩み始め、現在は映像翻訳の仕事と並行して、映画配給会社で宣伝業務を担当しています。

さらに、海外から監督を招くイベントでは、通訳者として現場に入る機会も多いと言います。

「外資系企業での勤務経験から、今の会社で通訳を依頼されるようになりました。しかし、通訳を専門的に学んだことがないため、英語と同じように自分で調べながら、独学でそのやり方を習得していったのです」

仕事の質と幅を広げるには通訳をきちんと学びたい。そう考えスクールを探しましたが、ほとんどの学校は「会議通訳」がメイン。近田さんが扱うような「エンタメ通訳」などに関するコースは見つかりませんでした。

そんなある日、映像翻訳を学んでいたJVTAのメールマガジンを開いた時に、まさに求めていた「新・通訳ブートキャンプ」の参加者募集が目に飛び込んできたのです。

「新・通訳」という新しい価値観

JVTAが実施する「新・通訳ブートキャンプ」は、一般的な通訳訓練とは一線を画しています。その最も大きな違いは、「活躍する場面」と「求められる役割」です。

従来の会議通訳が、大規模な会議や重要な商談で正確な逐語訳をメインとするのに対し、「新・通訳ブートキャンプ」が育成するのは、JVTAが提唱する「新・通訳」です。これは、「ちょっと英語が使える」程度では対応できない、多様な現場でコミュニケーションを円滑にする人材を指します。

「新・通訳」は、いわば「コミュニケーションの仲介者(メディエーター)」です。通訳業務に加え、会議の進行、イベントの司会、アテンド業務など、その役割は多岐にわたります。そこで必要なのは、単に正確な言葉を訳すことだけではなく、場の状況を読み取り、英語での案内や、イベント運営のサポートまで行う幅広い対応力です。近年は近田さんが活躍するエンターテイメントの世界をはじめ、多くの現場でこの「新・通訳」的なスキルが求められています。

「新・通訳ブートキャンプ」は、JVTAロサンゼルス校で6日間にわたって学ぶプログラムで、従来の通訳という枠にとらわれず、そうした幅広い対応力を習得することを目的としています。

しかし、「新・通訳ブートキャンプ」はロサンゼルス校での対面授業のみのプログラム。初めてのアメリカ、しかも仕事を休んでの参加となれば、不安は当然あります。近田さんはまず個別相談に参加し、詳細を確認。申し込み締め切りのギリギリまで迷いました。しかし、「次に進むための第一歩だ」と決心し、プログラムへの参加を決意しました。

徹底的に鍛え、そして「答え合わせ」もできた6日間

約1週間という短い期間、近田さんが学んだのはアメリカ、カリフォルニア州トーランス市にあるJVTAロサンゼルス校。毎日、午前と午後に授業があり、アメリカ国内でプロとして活躍する通訳者である講師から、通訳に必要な基礎的なスキルから実践的なトレーニングまで、徹底的な指導を受けました。

「新・通訳ブートキャンプ」の授業風景。

授業は座学だけでなく、実際にクラスメートの前に立ち、流れてくる音声を訳す実践形式のトレーニングも行われます。近田さんがこれまで経験したことがあるのはオンラインでの通訳がほとんどだったため、目の前に人がいる状況で訳すというのは新しい挑戦でした。

「メモの取り方も、これまで自分で調べながらやってはいましたが、何が正解なのかが分からない状態でした。今回、講師からその方法を指導してもらえたことで、自分のやり方が間違いではなかったことの『答え合わせ』ができました。さらに、より効率的で効果的な方法も学ぶことができました」

クラスメートの通訳経験に関する背景は様々でしたが、複数の人の前に立って通訳するのは初めてという受講生がほとんどだったそうです。近田さんにとっても、独学でやってきたことが訓練でどう活かせるのかを確認する有意義な時間となりました。スキルを学ぶだけでなく、実際の通訳現場の裏側について講師から直接聞けることも貴重な経験だったと言います。

映画祭で試す、学んだスキルを「アウトプット」する醍醐味

プログラムの最終日に、学んだスキルを試すことができるのが「新・通訳ブートキャンプ」の醍醐味のひとつです。近田さんが参加した時期は、日本作品を集めたJapan Film Festival Los Angelesの開催時期と重なっており、受講生たちは最終日のアワードセレモニーでサポートを行いました。

会場での役割には、登壇者の通訳、来場者の語学サポートなどの選択肢がありましたが、近田さんは迷わず登壇者の通訳を担当しました。準備時間が短い中、登壇する予定の監督に積極的に声をかけて情報を集めました。また、通訳中にどうしても聞き逃してしまった重要な情報は、講師からアドバイスを受けた通りに監督に確認した上で訳すことを心がけました。

アワードセレモニーで登壇者の
通訳を担当した近田さん。

「このプログラムに参加したからには、できることはすべてやろうと思い、登壇者の通訳を選びました。これまで私が担当した通訳は十分な準備期間があることがほとんどでしたが、映画祭ではそうはいきません。準備時間が少ない状況でいかに情報を整理し、分かりやすく伝えるかという貴重な経験ができました。この経験によって、今後通訳として対応できる幅が広がったと思います」

最初は緊張からメモを取ることに夢中でしたが、徐々に慣れてきたことで自分自身を客観的に見る余裕も生まれ、後半では堂々と監督たちのメッセージを会場の人々に届けていました。

LAの街も“上質な授業” ― ハリウッド、野球観戦、映画を満喫

授業以外の時間を宿題に費やすことも多かった近田さんですが、初めてのアメリカを満喫する時間もしっかりと確保できたと言います。ブートキャンプが始まる前日にはハリウッド観光へ。運よくある映画のプレミアイベントを行っており、誰もが知るハリウッドスターを見ることができたそうです。

さらに、ロサンゼルスで欠かせないのが野球観戦です。授業が終わった直後に教室を飛び出し、クラスメートと一緒にドジャースタジアムに向かい、大谷翔平選手の雄姿をしっかりと目に焼き付けることができました。

大谷選手のフィギュアと一緒に。

その他に、JVTAロサンゼルス校の目の前にある映画館で映画鑑賞も満喫。

「映画館で欲しいグッズについて係の方と英語で会話したり、買い物をしたりすることで、自分の英語がどこまで通じるのか試す機会にもなりました。積極的に行動して、現地の人たちと英語でコミュニケーションを取るのは本当におすすめです。」

映画を楽しむのはもちろん、自身の
英語力を確認できる場にもなった映画館。

日本にいても通訳の勉強はできますが、それ以外の時間にも英語に触れることができるのがこのプログラムの大きな特徴です。近田さんのように、何事にも臆せずに挑戦する姿勢こそが、機会を最大限に生かす鍵となります。

スキルを定着させ、目指すは「新・通訳」

近田さんは新・通訳ブートキャンプから帰国した翌日に、仕事である作品の監督のインタビュー通訳を行いました。そのインタビューでは、ロサンゼルスで学んだことを反芻しながら挑んだと言います。スキルを定着させるには、トレーニングを継続し、学んだことを実践で少しずつ生かすことが重要です。

最後に近田さんは、これからの目標について、こう話します。

「新・通訳ブートキャンプで基礎的なトレーニングを受けることができたので、これからはさらにスキルを磨き、エンタメ通訳者として活躍することが大きな目標です。しかし、ジャンルにとらわれずに、様々な場面で必要とされる『新・通訳』を目指していきたいと思います」

【参加者募集中】近田さんも学んだ「新・通訳ブートキャンプ」

近田さんが参加した「新・通訳ブートキャンプ」は2026年2月にも実施されます。今回は新たにピッチング(企画や作品を短時間で売り込むプレゼンテーション)に対する通訳スキルを学ぶ授業や、映画の記者会見を想定した演習なども行われ、充実した内容で訓練を受けることができます。

また2月は翌月に行われる米アカデミー賞で街が盛り上がる時期でもあります。近田さんのような経験者はもちろん、これから学びたいという方も、ご興味がある方は、ぜひ個別相談にお申し込みください。

「新・通訳ブートキャンプ」の詳細・申し込みはこちら

JVTAロサンゼルス校「新・通訳ブートキャンプ」にご興味をお持ちの方には、個別相談を実施中です。詳細は特設サイトをご覧ください。

「新・通訳ブートキャンプ」開催期間:2026年2月23日(月)~2月28日(土)
特設サイトは こちら

記事執筆:日本映像翻訳アカデミー
記事執筆:日本映像翻訳アカデミー

1996 年に「映像翻訳」のプロを育成する職業訓練校として設立。「英日映像翻訳」、「日英映像翻訳」のコースを運営しています。同時に、修了生に映像翻訳や通訳などの実務を発注するエージェント部門を併設。
2008年には米国ロサンゼルスに法人を設立し、翌年カリフォルニア州教育局の認可校であるロサンゼルス校を開校。通訳・実務翻訳の正規コースをもつのが特長で、現地生に加え、職業訓練学生ビザ(M1)による多くの留学生を受け入れてきました。また現地でも実務の受発注部門を併設。ハリウッドのエンターテイメント系企業などをクライアントとしています。
公式HP:https://www.jvtacademy.com/

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