【英語にまつわる疑問にマヤ・バーダマンさんが答えます】「Thank you in advance.」、実は丁寧じゃないかも…?

仕事場で「How are you?」と聞かれたら、あなたはどう答えますか?また、英文メールで見かける「Thank you in advance.」の使い方に戸惑ったことはありませんか?ビジネスの現場で直面しがちな疑問や悩みに、アルクの新刊『 英語の仕事で壁にぶつかったら読む本 』の著者マヤ・バーダマンさんが詳しく答えます。

「How are you?」に「I’m fine.」と答えてはいけない!?

【相談】
How are you? に対して、I’m fine. やFine, thank you. And you? と返事してはいけませんか?英語の教科書でしか習わないと聞きます。

「How are you?」に対して I’m fine. や Fine, thank you. And you? と返すと「笑われる」、あるいは「ネイティブはそんなこと言わない」――そんな風に聞いたことがある人がいらっしゃるでしょう。ですが、実際にはこの受け答えは、礼儀正しく丁寧であり、フォーマルな場面で使われる返答です。

一口に「英語」と言っても、アメリカ人が使う英語、イギリス人が使う英語、オーストラリア人が使う英語など、国によって英語は異なります。さらに、地域や年齢、職業、その人が普段関わっている人たち、これまでの経験・育ってきた環境などの違いは、使う英語の表現にも影響を及ぼします。

「○○とは言わない(使わない)」とはつまり、「その人(・・・)は聞いたことがない」「その人(・・・)が過ごしてきた環境や経験では使われなかった」ということ。一人の意見を元に、「言ってはいけないんだ」と断定して、使える表現の幅を狭めてしまうのはもったいないです。さまざまな英語に触れて、実際に使われる場面と表現をセットで知ることが大事と言えるでしょう。

How are you? へのさまざまな返し方

では、他にどのようなバリエーションでHow are you? に返事をすればいいのか、いくつか見ていきましょう。

◆ オフィスですれ違った場合

【Hi, how are you? に対して】

  • Great, thank you!(元気です、どうも!)
  • Doing well, thank you. How about yourself?(元気です、ありがとう。あなたは?)

 
【How are things going?(最近どうですか?)に対して】

  • Things are going great/well!(順調ですよ[うまくいっています]!)
  • Things are pretty good!(うまくいっていますよ!)
  • Great, thank you!(うまくいっています、ありがとうございます!)

この場合、相手は具体的な答えを期待しているというよりも、単なるあいさつや声かけの目的で聞いているので、相手を立ち止まらせないような、短く、軽い返事で問題ありません。

◆ 少し時間に余裕がある場合
  • And you?(そちらは〔いかがですか〕)?
  • How about you?(そちらはいかがですか?)
  • How are things with you?(そちらは〔いかがですか〕)?
◆ 上司などとのミーティングの場合

A =上司、B =ナオコ(社員)

A:Hi, Naoko. How are you doing?(ナオコ、調子はどうですか?)
B:I’m doing well, thank you.(順調です、ありがとうございます)
A:That’s great.(それは良かった)

ミーティングの場合は、このような会話から始め、本題に入ることがあるでしょう。こちらからあいさつをする場合は、状況によってHello. やHi.、 Good morning.、 Good afternoon. などと声をかけ、How are you? と尋ねるのも自然です。同僚から取引先まで幅広く使えます。


実は失礼!?なThank you in advance.に要注意

【相談】
メールで何かを依頼されるとき、時々Thank you in advance. という言い方を見かけます。適切な使い方を教えてください。

この質問の通り、英文メールでよく目にするフレーズの一つに、Thank you in advance. があります。日本語にすると「前もって感謝申し上げます」に近く、事前に「ありがとう」と伝えることで丁寧な印象を与える、と考えて使う方も多いようです。

しかし、このフレーズは場合によっては相手の都合への気配りがなく、依頼を受けることが可能か、そして受ける意志があるかどうかを尋ねずに、「当然受け入れてもらえるもの」と決めつけるような印象もあります。受け取った相手は、断るという選択肢がない、逃げ場を失ったと感じてしまうかもしれません。

相手の受け取り方はコントロールできない

メールでは声のトーンや顔の表情が分からず、文字しか情報がありません。このフレーズに対する読み手の考え方、本人のその日の体調や機嫌など、さまざまな要因によってメールの印象は左右されます。送り手にそのような意図はなくても、受け手はネガティブに感じるかもしれません。また、そもそも相手の受け取り方や感情はコントロールできません。

他のフレーズにも言えることですが、「メールでよく目にする表現 = どんどん使っても良い」とは限りません。Thank you in advance [for] ... は、こうした理由からも誤解を招いたりネガティブな印象を与えたりする可能性があるため、できるだけ避けつつ他の表現を使う方が無難です。

相手の都合を考慮しつつ感謝を伝える表現は?

では、相手がこちらの依頼を承諾する前のやり取りにおいて、どのような表現で感謝を伝えればいいのか、見ていきましょう。

◆ 依頼を検討していることへの感謝

Thank you for considering this request.(依頼をご検討いただきありがとうございます)

上の表現であれば、こちらの依頼を相手が「検討していること」に対しての感謝なので、受けるかどうかは関係なくなり、相手が検討する余裕もできます。

  • I would be grateful if you could consider my request.(この依頼をご検討いただけますと大変ありがたいです)
  • I would greatly appreciate it if you could help with this.(この件について、ご協力いただけますと大変ありがたいです[助かります])

上記のような表現であれば相手の都合を考慮していることが表せます。if you could ... の部分が、相手に何かすることを一方的に求めるのではなく、相手に選択肢を残すからです。

◆ 相手の都合を考慮した表現例

最後に、依頼を受けていただけるとありがたいと伝えたいときの表現や、依頼する際に相手の都合を尋ねる丁寧な表現をご紹介します。

  • I realize that the schedule is tight, but it would be extremely helpful if you could help with this.(スケジュールがタイトで申し訳ございませんが、ご協力いただけますと大変助かります)
  • Would it be at all possible for you to get back to us by tomorrow?(明日までに折り返しいただくことは可能でしょうか?)
  • I’m sorry for the short notice, but would it be possible to change one of the slides for tomorrow’s presentation?(直前のご連絡で申し訳ないのですが、明日のプレゼンのスライドを1 枚変更することは可能ですか?)
  • Please let me know if this works for you.(ご都合に合うか教えていただけますと幸いです)

感謝以外の表現で締めくくる方法もあります。

  • If you have any questions or concerns, please let me know.(ご質問や気になる点などございましたらお知らせください)
  • We look forward to hearing from you.(お返事をお待ちしております)

依頼を受けてもらったときや、お願いした業務が完了したときにも、忘れずに感謝を伝えるようにしましょう。

英語を「壁」ではなく「チャンス」に

『英語の仕事で壁にぶつかったら読む本』には、42個の質問・悩みに答える形で、実践的かつ安心して使っていただける表現を厳選して入れました。いずれの質問・悩みも、ビジネスの現場で英語を使って仕事をしている方々から寄せられたものです。

キャリアが進むにつれ、仕事で直面する場面も変わりますが、きっとこの本の中で皆さんそれぞれの悩みに当てはまるもの、あるいは応用できそうなものが見つかるのではと思います。また、「他の人も同じように悩んでいるんだ」と知ることで、少しホッとしていただけるのではないでしょうか。ページをめくって心に響くものがあれば、ぜひご活用ください。

私自身も、「壁」を感じたり悩みに向き合ったりしながら働いています。仕事では日本語と英語の両方を使っていますが、必ずしも日本語と英語は一対一で対応しないことを知っているからこそ、どう表現すればよいか迷うことは少なくありません。日常表現は日々変化していくので、キャッチアップも必要だと思っています。

この本が皆さんにとってなんらかのヒントになったら、そして、英語が「壁」ではなく、何かの「機会」や「チャンス」につながるカギだと思えるようであれば嬉しいです。


(*この記事は、『英語の仕事で壁にぶつかったら読む本』の内容、ならびにマヤ・バーダマンさんへのインタビューを基に作成しました)

マヤ・バーダマン/ Maya Vardaman
マヤ・バーダマン/ Maya Vardaman

仙台市生まれ。上智大学卒業。ハワイ大学留学。外資系企業に勤務し、医学英語に携わる。公衆衛生大学院を修了し、現在、東京医科大学国際教育研究センターにて勤務。著書に『英語で仕事をすることになったら読む本』(アルク)、『英語のお手本 そのままマネしたい「敬語」集』『英語の気配り マネしたい「マナー」と「話し方」』(朝日新聞出版)、『外資系1年目のための英語の教科書』(KADOKAWA)などがある。

英語に磨きをかけ、力強くビジネスに取り組む!

「メールの返信を丁寧に催促したい」
「相手の間違いや問題点を指摘したい」
「会議が定刻に終わりそうにないのだけれどどうすれば?」

日々直面しがちな疑問や悩みに応えるビジネス英語の実践書。それが本書『英語の仕事で壁にぶつかったら読む本』です。これらの疑問・悩みに回答するのは、ビジネス英語の第一人者であるマヤ・バーダマンさん。

【この本の特徴】
  1. ビジネス英語のエキスパート、マヤ・バーダマンさんが回答 → そのままマネしてOK。配慮のある英文を紹介しています。
  2. 丁寧さのレベルや使われる場面も解説 → 相手や状況に合わせた適切な表現が分かります。
  3. 英語を使って働く人が抱く疑問に答える → The Japan Times Alpha掲載の大好評連載のビジネス英語Q&Aを再編集しています。
  4. 知っておくと役に立つ、ピンチを切り抜けるヒントが満載 → 英語でも言いたいことをしっかり伝えられるようになります。

英語を話すときやメールを書くとき、自分の英語やマナー・態度の適切さを確認したいときにも手元にあると便利です。より高いレベルの英語力を身につけ、状況に応じた柔軟なコミュニケーションで、力強くビジネスに取り組みましょう。

本書は、好評発売中の『英語で仕事をすることになったら読む本』(マヤ・バーダマン著/アルク刊)の続編としてもお使いいただけます。

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