
インターネットのストリーミング配信を通して世界中から映像作品が届く昨今。日本語の字幕版や吹き替え版を作るために必要な人材が「映像翻訳者」です。映像作品の増加に伴い、映像翻訳者のニーズも増加しています。映像翻訳者はどんなバックグラウンドを持ち、どんな働き方をしているのか ―― この連載では、現在映像翻訳者として活躍する3名にインタビューをし、十人十色のキャリア形成や働き方、そして映像翻訳に必要な経験やスキルついて深掘りしていきます。
第1回:西飯仁徳さん
第1回は大学卒業後にホテルに就職し、その後、日本映像翻訳アカデミー(JVTA)とアルクが共同運営する「映像翻訳Web講座」を受講して映像翻訳者になった、西飯 仁徳(にしい ひとのり)さんのインタビューをご紹介します。
TOEIC300点台からのスタート。英語力向上のきっかけ
西飯さんは大学卒業後、仕事をしながら、映像翻訳Web講座の受講をスタート。コース修了後にJVTAが実施するプロ化試験(トライアル)に合格し、映像翻訳者としてのキャリアをスタートさせました。現在は中高生向けの学習スペースの運営と並行して、映像翻訳者として活躍しています。
ドラマやドキュメンタリー、企業PR動画などで、字幕・吹き替えの英日翻訳を多数手掛けている西飯さん。しかし、元々英語が得意だったわけではありませんでした。英語学習に本腰を入れるようになったのは、大学受験がきっかけだったと言います。
「勉強は元々苦手で、成績も中ぐらいでした。そんな中で、他の教科よりも多少成績が良かったのが英語。それをなんとか受験で生かしたいと思い、外国語大学を受験したんです」
そして無事に外国語大学に入学。しかし、その後も英語には高い壁を感じたと言います。受験用として勉強した英語だけでは、大学での授業に太刀打ちできなかったのです。
「英語が他の教科より優れていたと言っても、大学入学時の自分の英語力はTOEICで言ったら300点台くらい。大学では受験英語が全く通用しなかったので、一から英語をやり直すことにしました」
大学での授業を乗り切るためには、他に選択肢がなかったと言う西飯さん。しかしながら、一から英語をやり直したことが結果的に良かったそうです。

さらに西飯さんはアメリカへ1カ月の短期留学も果たしました。その留学を通し、英語に対する見方が大きく変わります。
「実際に英語で会話することで、英語の楽しさや幅広さ、英語ができることで進める道が広がるのを感じました。また、留学中に『主体的に学ばないと身につかない』ということも実感し、それがとても良かったですね」
留学で英語に対する姿勢が大きく変わった西飯さんは、帰国後に大学で留学生のアシスタントをしたり外国人講師に話しかけたりと、積極的に英語を使うようになりました。その結果、TOEICも700点を超え、英語力が各段に上がりました。
大学卒業後はホテルに就職。しかし・・・
大学を卒業し、西飯さんはホテルに就職。とはいえ、「英語を使って仕事をしたい」と強く考えていたわけではないそうです。
「外国語大学という性質上、英語関係の仕事の紹介は多くありました。けれど自分はそこまで英語にこだわっていたわけではなく・・・。ホテルでのインターンが楽しかったことと、接客が好きだったという理由が大きいですね」
ホテルで正社員として働く中で、さまざまなゲストと関わるようになります。するとゲストを通して、これまで自分の中になかった考えに触れるように。それは「世の中には色々な道がある」ということです。
「自分では大学卒業 → 就職が一般的な道筋だと考えていました。けれど、ホテルのお客様の中には大学を中退して新たな道に進んでいたり、自分で事業を立ち上げている人などがいたりして、とても刺激を受けたんです。たくさんのお客様と関わる中で、自分ももっと挑戦してみたい、自分の能力をもっと生かしたいと思うようになりました。」
自分の能力を生かしてもっと挑戦したい。そう思うようになった西飯さんは、英語力を生かしつつフリーランスで働ける道として「映像翻訳者」という可能性にたどり着きます。

翻訳業界には「産業翻訳」や「出版翻訳」などさまざまな種類があります。そんな中、映像翻訳を選んだ理由は何だったのでしょうか?
「たとえば字幕翻訳であれば、映画のエンドロールの最後に翻訳者の名前が出ますよね。映像翻訳は『映画の最後に名前が出る』という、ゴールが分かりやすいと思ったんです。そのゴールに至るまで、自分を磨いてスキルアップをしたいと考えました。それに映画の最後に名前が出るなんて、壮大な作品世界の一員になれるようで夢が大きいとも思いました」
映像翻訳の学習を始めてぶち当たった壁
こうして映像翻訳者を目指し始めた西飯さん。ホテルでの勤務と並行して、映像翻訳Web講座の受講をスタートします。学びの場として映像翻訳Web講座を選んだ理由は、地方在住で東京のスクールには通えなかったことと、ホテルの勤務シフトに影響されることなくWebで自由に受講できることでした。
受講をスタートしてすぐ、西飯さんは再度「英語の壁」に直面することになります。西飯さんの英語力は、大学卒業時に受けたTOEICで700点ほど。さらにホテル就職後は思いのほか英語を使う機会が少なかったため、英語力が下がっていたそうです。
「映像翻訳Web講座のパンフレットに書いてあった必要な英語力の目安は、当時860点くらいだったと思います。つまり、単純に英語力が足りなかったんですね。なので、映像翻訳の学習と並行して、改めて英語力の底上げを図りました」
映像翻訳者に必要な英語力の目安・TOEIC860点を独学で目指した西飯さん。英語力は順調に上がりましたが、次は字幕の作成で苦戦をすることになります。
「字幕の字数制限や、適切な言葉が思いつかないなど、翻訳を字幕に落とし込む作業でまた壁にぶつかりました。そこで映像翻訳Web講座の講師への質問シートを活用し、相談しました。すると何人かの講師から『他の作品を見て写経するのが良い』とアドバイスをもらい、それに取り組みました」
ここで言う写経とは、「映像作品を見て、プロの翻訳者が作った字幕や吹き替えのセリフを書き起こす」という作業です。原文と最終的な字幕や吹き替えを見比べることで、「良い字幕」「良い吹き替え」がどんなものであるかを学ぶことができます。
西飯さんもこの写経によって学ぶことが多かったと言います。写経に取り組んだことで「なぜこのような字幕・吹き替えになったのか?」「自分ならどうするか?」と分析するようになり、自身の翻訳に生かされるようになりました。
映像翻訳者を目指し、ついにホテルを退職。学習中の思いは?
映像翻訳Web講座には、ベーシック、プラクティス、アドバンス、プロフェッショナルとレベル別にコース設定がされており、基本的に順番に受講を進めていく形式です。西飯さんはプラクティスコース受講まではホテル業務と並行。その後は映像翻訳学習の時間をより確保するため、ホテルを辞めて塾のアルバイトをしながら学習を続けました。

学習中に大変だったことは何かと尋ねると、西飯さんは「精神面が一番大変だった」と言います。
「正社員のホテルを辞め、塾でアルバイトをしながら翻訳者を目指したわけですが、今思うと無謀だったなと思います。安定した生き方と違う状況に自分を追い込んだので、なかなか芽が出ない時期はつらかったですね。20代半ばで、自分の周りがキャリアアップしていく姿を見ると余計に。ですが、『翻訳者になってからの自分』を想像し、成功した時のビジョンを思い描いて頑張りました」
映像翻訳者になるまで、いくつもの壁を乗り越えてきた西飯さん。大学で一から英語を学習し直し、映像翻訳者として必要な英語力を目指して再度英語力を磨き、さらに映像翻訳の力をつけるために写経に取り組み ―― 決して楽な道のりではありませんでしたが、西飯さんは一つひとつの課題に向き合い、乗りこえるために具体的な計画を立てて取り組み続けてきました。その努力が実を結び、今映像翻訳者として活躍しています。
次回は、西飯さんがプロの映像翻訳者としてデビューを果たすまでの道のりや、今現在の働き方、映像翻訳者として働く面白さなどを伺います。
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