〔映像翻訳者インタビュー〕英語学習の原点はNHKのラジオ講座 とにかく翻訳が好きというモチベーションでプロデビューへ

ストリーミング配信などを通し、世界中の映像作品に触れることができる昨今。その日本語字幕版や吹き替え版の制作に欠かせないのが「映像翻訳者」です。そんな映像翻訳者として活躍する3名へインタビューするのがこの連載。それぞれのバックグラウンド、キャリア形成や働き方、そして映像翻訳に必要なスキルなどについて詳しく伺います。

第3回:南部恭子さん(学習編)

第3回は、大学卒業後、接客業や講師を経て、製造メーカーなどで主に翻訳に携わりながら、日本映像翻訳アカデミー(JVTA)とアルクが共同運営する「映像翻訳Web講座」を受講して映像翻訳者になった、南部恭子(なんぶきょうこ)さんのインタビューをご紹介します。

英語学習の原点はNHKのラジオ講座

南部さんは映像翻訳Web講座のプロフェッショナルコース修了後にJVTAが実施するプロ化試験(トライアル)に合格し、映像翻訳者としてのキャリアをスタートさせました。はじめの1年ほどは英語講師との兼業でその後独立し、フリーランスの映像翻訳者として今年8年目を迎えます。

子どもの頃から児童文学が好きで外国文学の翻訳作品も読み、海外ドラマを見ていたという南部さん。現在はリアリティ番組やドラマ、映画祭上映作品など様々な作品の字幕を手がけています。

英語学習の原点はNHKのラジオ講座です。高校生くらいから始めて、基本的にずっと聴き続けています。最初の数年はテキストも買っていましたが、今は集中して耳で聴くことがよいトレーニングになっています。ただボーッと聴くのではなく、口を動かしてフレーズを自分に染み込ませるようにしています」

とにかく語学が好きで常に学んでいた南部さんは、あるメーカーで技術者のサポートとして、メールや資料、マニュアルなどの翻訳に携わるようになります。

いずれは翻訳者としてフリーランスになりたいと考え、週末に翻訳・通訳の訓練を専門とするスクールにも通学。しかし医療など専門的な得意分野もなく、独立して仕事にするのは難しいと感じていました。モヤモヤを抱えつつも、「やはり翻訳しかない」と思いながら、ふと目にした映像翻訳Web講座の受講も始めます。

映像翻訳Web講座の丁寧な添削で疑問はすべてクリアに

映像翻訳Web講座はレベル別に4コースで構成されています。日本国内ならどこにいても受講ができることもあり、関西在住の南部さんは最初の「ベーシックコース」を軽い気持ちでスタート。「プロになれるのは宝くじが当たるようなものと思いながらも純粋にやってみたかった」といいます。

「映像翻訳者の記事を読み、いいなと思ったものの、競争率が高そうで当時は現実に仕事になるというイメージは湧きませんでした。ただ始めてみると、とにかく課題に取り組むのが楽しくて自然と最終のプロフェッショナルコースまで進級していました」

映像翻訳Web講座では課題提出後、個別に添削を受けることができます。南部さんは不明な点をすべて添削の講師に質問し、疑問に思ったことをその都度クリアにしていきました。「質問して理解し、実践する」の繰り返しだったそうです。

添削で印象に残っているのは、「視聴者を導いていってあげてください」という言葉でした。それはつまり、常に視聴者目線を意識し、分かりやすく自然に流れていく字幕を作るということ。南部さんは今でもその言葉を意識して字幕作りをしています。

「そのように教えてくださった先生は、いつも丁寧に対応してくださり、私の憧れでした。実はプロになった後、その方と翻訳者として一緒にお仕事をする機会に恵まれたのですが、本当に感無量でした。今は『もう先生って呼ばなくていいですよ』と言われるのですが、同じ翻訳者の立場になっても、やはり最初の先生として、またその仕事ぶりから人間的にも尊敬しています」

ラジオ講座やTOEIC受験が字幕づくりに生きた

ラジオ講座に加え、TOEICも地道に受験し続け、これまでの平均のスコアは880点。独学でバランスよく英語を学習し続けてきたことや、翻訳学校で難しい課題をこなしてきたことが字幕づくりに必要な翻訳スキルの習得につながりました。

映像翻訳の仕事では多くの場合、映像に加えてスクリプト(原稿や台本)が支給されます。このスクリプトを読み込むことも大切であり、英文の読解力が必要とされます。

さらに英日映像翻訳の場合、作品の魅力をきちんと伝えるための日本語力も重要です。南部さんは、日頃からドラマや映画を観て気に入ったセリフや心に残ったフレーズをメモしており、パソコンのディスプレイや、デスクの見えるところに置いています。

南部さんが実際に使用しているパソコン。
心に響いた言葉をいつも目にしながら、
一つひとつの仕事に取り組む。

「数年前から、日本語の作品を見る時も日本語字幕(聞こえない、聞こえにくい人のための字幕)を表示しながら見ています。元々は聞き取れないセリフを確認するためでしたが、字面としてさまざまな日本語を見ることが字幕作成にも役立っているかもしれません」

実務翻訳に携わっていた時はテキストの翻訳がメインでしたが、映像翻訳を手掛けるようになってからは「リスニング力があった方がいい」と感じています。

「実務翻訳と違い、ドラマや映画は登場人物のセリフを訳します。内容を音から理解できれば、より訳語のイメージが湧きますし、口調や言い回し、声のトーンなども字幕づくりの参考になります」

さらに南部さんは大学で学んだフランス語の学習も独学で続けており、名作「星の王子さま」は原書で読破。そして今では、原語がフランス語である映像作品の字幕作成にも携わっています。

「英日翻訳者なので、フランス語の作品に携わる際は、フランス語から英語に訳されたスクリプトを基にして日本語字幕を作ります。ただ、原語の素養があるのはやはり強みです。英語字幕になった段階で、原文から少し意味が離れてしまうこともよくあるので、フランス語のリスニングができて原語のニュアンスが分かると、内容をより正確に伝えられるからです」

映像翻訳を学ぶことは、楽しくて仕方がなかったという南部さんですが、プロデビューまでは、さらに学びの期間が続いたそうです。

次回は、南部さんがプロの映像翻訳者としてデビューを果たすまでの道のりや、今現在の働き方、映像翻訳者という仕事の醍醐味などをうかがいます。

〔映像翻訳者インタビュー〕前回までの記事

第1回、第2回では、同じく「映像翻訳Web講座」を受講して映像翻訳者になった、西飯 仁徳(にしい ひとのり)さんへのインタビューを掲載しています。ぜひこちらも併せてご覧ください!

【第1回】
ホテル勤務 → 映像翻訳の道へ TOEIC300点台から始まった学習記録・キャリアチェンジ体験記

【第2回】
プロ映像翻訳者×学び場の運営 2足のわらじを両立させる働き方の姿勢とスケジュール管理


記事執筆:日本映像翻訳アカデミー
記事執筆:日本映像翻訳アカデミー

1996年設立。海外の映画、ドラマ、ドキュメンタリー、音楽番組、スポーツ放送、企業PR映像など、字幕や吹き替え原稿を作成する「映像翻訳」のプロを専門に育成する。
映像翻訳の受発注を行う部門も併設しており、日本語・英語だけでなく、多言語の翻訳も行っている。また、映像産業振興機構(VIPO)から受託を受けコンテンツビジネス業界におけるグローバル人材育成トレーニングの開発と実施を担っている。
青山学院大学、明星大学、東京外国語大学、ニューヨーク大学、ゲント大学など、国内外の学校教育機関でも指導実績多数。
公式HP:https://www.jvtacademy.com/

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◆ 時間や場所にとらわれずに仕事ができる!

映像翻訳の仕事の魅力は、パソコンとインターネットがつながる環境があれば、時間や場所にとらわれず仕事ができることです。「子育てをしながら手の空いた時間に翻訳をする」「海外で生活しながら翻訳をする」。そんなライフスタイルも実現できます。長く活躍できることも大きな魅力。翻訳にはさまざまな人生経験を生かせることから、「年齢を重ねた方に仕事がない」ということもなく、いくつになっても能力が発揮できます。また、英日映像翻訳者の絶対数は不足しているため、活躍の場は広がり続けています。

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