
生成AIを英語学習に活かすための軸となるのが、「メタ認知」「メタ言語」「プロンプトエンジニアリング」という3つのスキルであることを前回の記事でお伝えしました。そして、学習の成功には、自分の学習を客観的に捉え、調整する「メタ認知」の力が欠かせません。この記事では、メタ認知を知識と活動の観点から詳しく解説し、生成AIを活用して学習プロセスを最適化する方法を紹介します。
目次
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メタ認知とは、英語をどう学ぶのか考えること
前回の記事で述べたように、プロセス全体を「コントロールする」能力、つまり「自分の学習について考える力」のことです。これは、英語学習をはじめ、「学ぶ」というプロセスを考える上で非常に重要です。
学習とは、とくに最近では、「何を学ぶのか」よりも「どう学ぶのか」が重視されています。英語のような語学は、長い時間をかけて少しずつ前に進めていくものです。そのため、モチベーションの保ち方や効果的な学び方に関する知識が非常に重要となります。
書籍『ChatGPT英語学習術 新AI時代の超独学スキルブック』(以下、『ChatGPT英語学習術』)でも、生成AI を活用した学習について「何を学ぶのか」よりも、「生成AIを使ってどう学ぶのか」に焦点を当てています。そして、この学び方を支える鍵となるのが、「メタ認知」という考え方です。
成功している学習者とその人のメタ認知能力の間には高い相関性が見られます。つまり、メタ認知能力を高めることが英語学習の成功において非常に重要であり、これを欠かすことはできません。
これまでの学習方法では、メタ認知のサポートを主に教師や指導者が提供したり、共同学習の場でペアが助けたりする形で、学習者が気づきを得る契機を作ってきました。しかし、これからは生成AIが学習者のメタ認知を強力にサポートしてくれるようになります。
それでは、もう少し詳しくメタ認知の考え方を解説していきましょう。下の図をご覧ください。メタ認知は、大きく「メタ認知的知識」と「メタ認知的活動」の2つに分けられます。そして、これらはさらに細かく分類することができます。それぞれの考え方を以下で詳しく見ていきましょう。

メタ認知的知識:学び方に関する知識
メタ認知的知識とは、自分の学び方に関する知識のことです。これには以下の3つの側面があります(*2)。
*2(参考文献):Sato, M. (2022). Metacognition. In S. Li, P. Hiver, & M. Papi (Eds.), The Routledge Handbook of Second Language Acquisition and Individual Differences (pp. 95–110). London: Routledge. https://doi.org/10.4324/9781003270546-8
【メタ認知的知識の側面1】人に関する知識
どのようなやり方が自分には学びやすいのか、何が得意で何が苦手かを知ることです。
例:「自分は単語を覚えるのが得意だけど、長文読解が苦手」
これまでは、自分自身で苦手な点を認識したり、教師やメンターなどの支援を受けたりして、気づきを得ていました。しかし、これからは生成AIがこの自己認識のプロセスを支援してくれるようになります。
【メタ認知的知識の側面2】タスクに関する知識
学ぶ内容や課題がどのくらい難しいのか、それにどれだけの努力が必要なのかを理解することです。
例:「簡単な日常会話はすぐにマスターできそうだけど、アカデミックな英語はもっと時間がかかる」
『ChatGPT英語学習術』では、これを英語という学習対象に関する知識と拡大解釈しています。たとえば、「アカデミックな英語」を「語彙」や「パラグラフ構成」といった観点に分解し、それが普通の英語とどう異なるのかを考える知識として捉えています。
このように学習対象を細かく分解して理解するための知識、すなわちこれらの言葉を、『ChatGPT英語学習術』では「言語学のメタ言語」と呼んでいます。これらの言葉を生成AIへのプロンプトに含めることで、学習の解像度を高めることができます。具体例については、後で詳しく解説します。
【メタ認知的知識の側面3】方略についての知識
どう学べば効率的か、どの方法が自分に合っているかを理解することも重要です。たとえば、音読がリスニング力を高めるのに効果的だと知っている場合、それを実践に生かすことができます。つまり、これは英語の学習方法に関する知識と言えます。
学術的に立証された効率的な学習方法もいくつか存在します(*3)。たとえば、「分散学習」や「アクティブ・リコール」といった学習方略です。『ChatGPT英語学習術』では、これらを「英語学習方法のメタ言語」として整理し、読者に方略に関する知識として提供しています。このような方略の知識を生成AIへのプロンプトに含めることで、学習効率を大きく向上させることが期待できるのです。
*3(参考文献):中田達也. (2020). 最新の第二言語習得研究に基づく 究極の英語学習法. KADOKAWA.
メタ認知的活動:学びを調整する行動
ここまで見てきたメタ認知的知識に対して、もう1つのスキルとしてメタ認知的活動があります。
メタ認知的活動とは、学びながらそれを調整する行動のことです。学びを進める中で、常に自分を観察し、計画し、必要に応じて修正するプロセスを指します。実際の学習の活動になります。主に以下の3段階があります。
【メタ認知的活動の段階1】計画する(Planning)
学習を始める前に、目標や方法を計画すること。
例:「今日の目標は10個の単語を覚えることだから、まずフラッシュカードを使って暗記しよう」
【メタ認知的活動の段階2】監視する(Monitoring)
学習中に、自分の進み具合や理解度をチェックすること。
例:「この文法、何度も間違えるな。ルールをちゃんと理解できていないかも」
【メタ認知的活動の段階3】調整する(Regulating)
学習がうまくいかないと感じたときに、方法や計画を見直すこと。
例:「リスニング問題が難しいから、スクリプトを見ながら一度ゆっくり聞いてみよう」
生成AIを活用することで、このプロセスの各ステージで支援を受けることができます。たとえば、モニタリングの段階で「この文法、何度も間違えるな。ルールをちゃんと理解できていないかも」という自分のパフォーマンスの評価と判断を、生成AIにしてもらうこともできるわけです。自分に適した問題の作成や、解答の添削、パフォーマンスの評価も生成AIが対応可能です。
書籍『ChatGPT英語学習術 新AI時代の超独学スキルブック』では、学習における生成AIの活用方法を、このメタ認知的活動の各ステップに即して解説しています。生成AIの支援を受けながら、学習者自身が能動的にメタ認知を実践することで、生成AIのメリットを最大限に享受できるようになります。
【POINT】
- 成功している学習者とその人のメタ認知能力の間には高い相関性が見られる。
- メタ認知は、自分の学び方に関する知識の「メタ認知的知識」と、学びながらそれを調整する行動の「メタ認知的活動」の大きく2つに分けられる。
次回は、2つ目のスキル「メタ言語」について詳しく解説しますのでお楽しみに!
(※この記事は『ChatGPT英語学習術 新AI時代の超独学スキルブック』を基に作成しました)
「ChatGPT」スキルブックシリーズ
《第1弾》 AI翻訳研究の第一人者が教える! ChatGPTの翻訳活用術!
ChatGPTなどの生成AIの登場によって、ChatGPT語を使ったコミュニケーションに、新たな時代の扉が開きました。本書では、AIによる翻訳技術を上手く使いこなし、外国語の壁を乗り越える「これからの時代に求められる」英語スキルを身につけられます。英語のメール、プレゼン、広告、レポート、etc...、あらゆる英語の発信に対応するためのノウハウが満載です。
【本書の特長】
まず、AIを上手く操るために言語をどのように捉えればよいのかを理解し、ChatGPTへの指示(プロンプト)をどう書いていくのか、という活用方法を深めていきます。
技術の進化に左右されない核心的な言語スキルが身につく一方、今日からすぐに使える便利なテクニックも満載です。
本書の構成
Chapter 1 AI翻訳の進化の核心を掴む
Chapter 2 AI翻訳を駆使する「言語力」を身につける
Chapter 3 ChatGPTで翻訳する
Chapter 4 実践で学ぶChatGPT翻訳術
Chapter 5 AIと英語学習の未来予測
購入特典:プロンプトテンプレート集
本書掲載のプロンプト(ChatGPTへの指示)のテンプレートを集めたウェブサイトを用意しました。本書の内容を、今日からすぐに実践に移すことができます。
《第2弾》 新時代の独学スキルを身につけて、生成AIと英語の壁を乗り超える!
ChatGPTなどの生成AIは、英語学習のあり方を劇的に変えています。その力を活用することで、習得までの距離はグッと縮まります。活用しない手はありませんが、いざ目の前にすると、うまく使えていないなあ、と思う人が多いのではないでしょうか。
本書は、AIと英語を知り尽くした研究者が、AIを「最高の学習パートナー」にするためのノウハウを書いたものです。これからのAI時代に、英語を学ぶ人の必読書になっています。
【本書の特長】
AIで英語独学する思考が身に付く
ツールの単なる機能や、プロンプト(生成AIへの指示)の例を紹介するだけでは「使いこなす」ことにはつながりません。本書では、生成AIの能力を引き出すスキル・フレームワークを理解することで、AIを使って自分の力で学び抜く思考術を身につけます。真の意味でAIを使いこなすための内容になっています。
多様な英語に挑むノウハウを伝授
TOEICなどの英語試験、ビジネス英語、英会話、ライティングなど、様々なジャンル・技能に関する実践例を収録しています。今、あなたが必要としている英語力を向上させるためのヒントが、必ず見つかるはずです。
AIの力を借りる英語実践術も紹介
最終章では、生成AIに英語の仕事を遂行させる実践的な活用法を紹介します。自分自身の英語力だけではなく、AIの力も借りてタスクに挑む、総合的な英語力が身につけられます。
本書の構成
Chapter 1 英語学習とAI活用の土台を築く
Chapter 2 AIの力を最大化 ―英語学習のメタ言語―
Chapter 3 TOEICの壁をAIと超える
Chapter 4 ビジネス英語の壁をAIと打ち破る
Chapter 5 AIに仕事を遂行させる英語実践術