ChatGPTで英語学習を成功させるカギの一つ、「メタ認知」を詳しく解説

生成AIを英語学習に活かすための軸となるのが、「メタ認知」「メタ言語」「プロンプトエンジニアリング」という3つのスキルであることを前回の記事でお伝えしました。そして、学習の成功には、自分の学習を客観的に捉え、調整する「メタ認知」の力が欠かせません。この記事では、メタ認知を知識と活動の観点から詳しく解説し、生成AIを活用して学習プロセスを最適化する方法を紹介します。

※上記リンクが表示されない方は、下記をコピーしてご利用ください。
 https://amzn.to/4imGmJA


メタ認知とは、英語をどう学ぶのか考えること

前回の記事で述べたように、プロセス全体を「コントロールする」能力、つまり「自分の学習について考える力」のことです。これは、英語学習をはじめ、「学ぶ」というプロセスを考える上で非常に重要です。

学習とは、とくに最近では、「何を学ぶのか」よりも「どう学ぶのか」が重視されています。英語のような語学は、長い時間をかけて少しずつ前に進めていくものです。そのため、モチベーションの保ち方や効果的な学び方に関する知識が非常に重要となります。

書籍『ChatGPT英語学習術 新AI時代の超独学スキルブック』(以下、『ChatGPT英語学習術』)でも、生成AI を活用した学習について「何を学ぶのか」よりも、「生成AIを使ってどう学ぶのか」に焦点を当てています。そして、この学び方を支える鍵となるのが、「メタ認知」という考え方です。

成功している学習者とその人のメタ認知能力の間には高い相関性が見られます。つまり、メタ認知能力を高めることが英語学習の成功において非常に重要であり、これを欠かすことはできません。

これまでの学習方法では、メタ認知のサポートを主に教師や指導者が提供したり、共同学習の場でペアが助けたりする形で、学習者が気づきを得る契機を作ってきました。しかし、これからは生成AIが学習者のメタ認知を強力にサポートしてくれるようになります。

それでは、もう少し詳しくメタ認知の考え方を解説していきましょう。下の図をご覧ください。メタ認知は、大きく「メタ認知的知識」と「メタ認知的活動」の2つに分けられます。そして、これらはさらに細かく分類することができます。それぞれの考え方を以下で詳しく見ていきましょう。

*1(参考文献):三宮真智子. (2020). メタ認知:学習力を支える高次認知機能. 新曜社

メタ認知的知識:学び方に関する知識

メタ認知的知識とは、自分の学び方に関する知識のことです。これには以下の3つの側面があります(*2)。

*2(参考文献):Sato, M. (2022). Metacognition. In S. Li, P. Hiver, & M. Papi (Eds.), The Routledge Handbook of Second Language Acquisition and Individual Differences (pp. 95–110). London: Routledge. https://doi.org/10.4324/9781003270546-8

【メタ認知的知識の側面1】人に関する知識

どのようなやり方が自分には学びやすいのか、何が得意で何が苦手かを知ることです。

:「自分は単語を覚えるのが得意だけど、長文読解が苦手」

これまでは、自分自身で苦手な点を認識したり、教師やメンターなどの支援を受けたりして、気づきを得ていました。しかし、これからは生成AIがこの自己認識のプロセスを支援してくれるようになります。

【メタ認知的知識の側面2】タスクに関する知識

学ぶ内容や課題がどのくらい難しいのか、それにどれだけの努力が必要なのかを理解することです。

例:「簡単な日常会話はすぐにマスターできそうだけど、アカデミックな英語はもっと時間がかかる」

『ChatGPT英語学習術』では、これを英語という学習対象に関する知識と拡大解釈しています。たとえば、「アカデミックな英語」を「語彙」や「パラグラフ構成」といった観点に分解し、それが普通の英語とどう異なるのかを考える知識として捉えています。

このように学習対象を細かく分解して理解するための知識、すなわちこれらの言葉を、『ChatGPT英語学習術』では「言語学のメタ言語」と呼んでいます。これらの言葉を生成AIへのプロンプトに含めることで、学習の解像度を高めることができます。具体例については、後で詳しく解説します。

【メタ認知的知識の側面3】方略についての知識

どう学べば効率的か、どの方法が自分に合っているかを理解することも重要です。たとえば、音読がリスニング力を高めるのに効果的だと知っている場合、それを実践に生かすことができます。つまり、これは英語の学習方法に関する知識と言えます。

学術的に立証された効率的な学習方法もいくつか存在します(*3)。たとえば、「分散学習」や「アクティブ・リコール」といった学習方略です。『ChatGPT英語学習術』では、これらを「英語学習方法のメタ言語」として整理し、読者に方略に関する知識として提供しています。このような方略の知識を生成AIへのプロンプトに含めることで、学習効率を大きく向上させることが期待できるのです。

*3(参考文献):中田達也. (2020). 最新の第二言語習得研究に基づく 究極の英語学習法. KADOKAWA.

メタ認知的活動:学びを調整する行動

ここまで見てきたメタ認知的知識に対して、もう1つのスキルとしてメタ認知的活動があります。

メタ認知的活動とは、学びながらそれを調整する行動のことです。学びを進める中で、常に自分を観察し、計画し、必要に応じて修正するプロセスを指します。実際の学習の活動になります。主に以下の3段階があります。

【メタ認知的活動の段階1】計画する(Planning)

学習を始める前に、目標や方法を計画すること。

例:「今日の目標は10個の単語を覚えることだから、まずフラッシュカードを使って暗記しよう」

【メタ認知的活動の段階2】監視する(Monitoring)

学習中に、自分の進み具合や理解度をチェックすること。

例:「この文法、何度も間違えるな。ルールをちゃんと理解できていないかも」

【メタ認知的活動の段階3】調整する(Regulating)

学習がうまくいかないと感じたときに、方法や計画を見直すこと。

例:「リスニング問題が難しいから、スクリプトを見ながら一度ゆっくり聞いてみよう」

生成AIを活用することで、このプロセスの各ステージで支援を受けることができます。たとえば、モニタリングの段階で「この文法、何度も間違えるな。ルールをちゃんと理解できていないかも」という自分のパフォーマンスの評価と判断を、生成AIにしてもらうこともできるわけです。自分に適した問題の作成や、解答の添削、パフォーマンスの評価も生成AIが対応可能です。

書籍『ChatGPT英語学習術 新AI時代の超独学スキルブック』では、学習における生成AIの活用方法を、このメタ認知的活動の各ステップに即して解説しています。生成AIの支援を受けながら、学習者自身が能動的にメタ認知を実践することで、生成AIのメリットを最大限に享受できるようになります。

【POINT】

  • 成功している学習者とその人のメタ認知能力の間には高い相関性が見られる。
  • メタ認知は、自分の学び方に関する知識の「メタ認知的知識」と、学びながらそれを調整する行動の「メタ認知的活動」の大きく2つに分けられる。

次回は、2つ目のスキル「メタ言語」について詳しく解説しますのでお楽しみに!

(※この記事は『ChatGPT英語学習術 新AI時代の超独学スキルブック』を基に作成しました)


ENGLISH JOURNAL編集部
ENGLISH JOURNAL編集部

「英語を学び、英語で学ぶ」学習情報誌『ENGLISH JOURNAL』が、英語学習の「その先」にあるものをお届けします。 単なる英語の運用能力にとどまらない、知識や思考力を求め、「まだ見ぬ世界」への一歩を踏み出しましょう!

【1000時間ヒアリングマラソン】 ネイティブの生音声を聞き取る実践トレーニング!

大人気通信講座が、アプリで復活!

1982年に通信講座が開講されて以来、約120万人が利用したヒアリングマラソン。
「外国人と自由に話せるようになりたい」「仕事で困ることなく英語を使いたい」「資格を取って留学したい」など、これまで受講生のさまざまな夢を支えてきました。

アプリ版「1000時間ヒアリングマラソン」は、アウトプット練習や学習時間の計測などの機能を盛り込み、よりパワーアップして復活しました。

「本物の英語力」を目指す人に贈る、最強のリスニング練習

・学校では習わない生きた英語

実際にネイティブスピーカーと話すときや海外映画を見るとき、教科書の英語と「生の英語」のギャップに驚いた経験はありませんか? 1000時間ヒアリングマラソンには、オリジナルドラマやラジオ番組、各国の英語話者のリアルな会話など、学校では触れる機会の少ない本場の英語を届けるコーナーが多数用意されています。

・こだわりの学習トレーニング

音声を聞いてすぐにスクリプトを確認する、一般的なリスニング教材とは異なり、英文や日本語訳をあえて後半で確認する構成にすることで、英語を文字ではなく音から理解できるようにしています。英文の書き取りやシャドーイングなど、各トレーニングを一つずつこなすことで、最初は聞き取りが難しかった英文も深く理解できるようになります。

・あらゆる角度から耳を鍛える豊富なコンテンツ

なぜ英語が聞き取れないのか? には理由があります。全15種類のシリーズは、文法や音の規則、ニュース英語など、それぞれ異なるテーマでリスニング力強化にアプローチしており、自分の弱点を知るきっかけになります。月に一度、TOEIC 形式のリスニング問題を解いたり、書き取りのコンテストに参加したりすることもできるため、成長を定期的に確認することも可能です。

1000時間ヒアリングマラソンは、現在7日間の無料トライアルを実施中です。さあ、あなたも一緒にランナーになりませんか?

SERIES連載

2025 06
NEW BOOK
おすすめ新刊
仕事で伝えることになったら読む本
詳しく見る

3分でTOEICスコアを診断しませんか?

Part別の実力も精度95%で分析します