王室離脱で話題となったイギリスのroyal protocolとは?【ニュースな英語】

今回の「ニュースな英語」は、つい先日、イギリスで大きな話題となったヘンリー王子とメーガン妃の王室離脱ニュースにまつわる言葉、royal protocolを取り上げます。

ハリー王子とメーガン妃の王室離脱

1月は、イギリスのハリー王子(イギリスでは「ヘンリー」のニックネームである「ハリー」を使って「ハリー王子」と呼ばれています)とメーガン妃が王室から離脱するというニュースが、かなり大きく報じられました。イギリスの欧州連合(EU)からの離脱「ブレグジット」(Brexit)になぞらえて、 「メグジット」(Megxit) などと表現されています。

女王をはじめとする王室メンバーとハリー王子夫妻は、サンドリンガムにある王室別邸で家族会議を開き「離脱の条件」を話し合いましたが、2人が 希望 したような好条件での離脱を引き出せなかったことで、「ハード・メグジット」などと言われています。

この家族会議の結果、2人は 今後 、「Royal Titles」(王族のための敬称)の「His/Her Royal Highness」(殿下・妃殿下、略してHRH)は使えなくなることになりました。王室から退いてもハリー王子が王位継承順位第6位であることには 今のところ 変わりなく(王位継承順位は法律で定められており、変更には英議会の 承認 が必要となります)、「サセックス公爵・公爵夫人」という称号は 引き続き 使えるそうです。

決めるべき問題はまだまだ山積のようですが、2人が王室から離脱するのは今年の春ごろと見られています。

今回のニュースな英語

royal protocol
さて、前置きが長くなってしまいましたが、ハリー王子夫妻の王室離脱で話し合いが必要だったように、イギリス王室には守るべき「お約束事」がたくさんあります。そしてそれは、「royal protocol」と呼ばれています。

「protocol」を辞書で引くと、「外交儀礼」「外交習慣」などの言葉が並んでいますが、理解できたような、できないような、複雑な気持ちになりませんか?こんなときは、英英辞書を調べた方が分かりやすいこともあります。 ちなみにCambridge Dictionaryには下記のように載っています *1

The system of rules and acceptable behaviour used at official ceremonies and occasions.公式な式典や行事で用いられる、体系化されたルールや許容される振る舞いのこと。
つまり「royal protocol」は、平たく言えば「王室のルールやエチケット」ということになります。王室のメンバーが守るべきルールと、一般の人が王室メンバーに謁見(えっけん)する際に守るべきエチケットという2つの側面があります。

例えば、王室メンバーが守るべきroyal protocolには、「公務の際に自分で車のドアを閉めてはいけない」というものがあります。ささいなことのように思えますが、ハリー王子が自分で車のドアを閉めたときは ニュースにもなりました

逆に、一般人が王室メンバーに会うときのエチケットについては、王室は公式ホームページで、「義務付けられている行動規範はありません」としています。それでも、女王や王室メンバーに挨拶するときは男性は頭のみで会釈、女性はちょこんと膝を曲げて左足を一歩下げる(curtsyと言います)のが「伝統」だと記されています。

www.royal.uk

公式ホームページはまた、女王への呼びかけは、最初は「Your Majesty 」(陛下)とし、以降は「Ma’am」とする、としています。「Ma’am」の発音は、「Jam」(ジャム)と同じ「a」の音で「マム」と発音するように、とも書かれています。ここまで細かく発音が指定されているのって興味深いですね。

どんなふうに使われる?

王室のルールやエチケットは明文化されていないことも多く、また常に守られているかというとそうでもないようです。ついうっかりと破ってしまう人も少なくありません。

有名なところでは、2009年に当時のオバマ米大統領とミシェル夫人がエリザベス女王に会った際、ミシェル夫人がついうっかり女王をハグしてしまったことがありました。

当時ガーディアンは、こんなふうに報じました。

America’s first lady broke royal protocol by doing the unthinkable: she gave the Queen a hug .アメリカのファーストレディは、ありえないことをして王室エチケットを破った――女王をハグしたのだ。
www.theguardian.com

「ハグ」と言っても、ミシェル夫人が女王の肩に手を回し、女王はそれに応えるようにミシェル夫人の腰に手を回したものなのですが、本来は女王に触れてはいけないのがroyal protocolとされているため、世間はかなり驚きました。とはいえ、女王はミシェル夫人のこの「エチケット違反」を全く気にしていなかったという話です。

まとめ

protocolは、すっきり理解するのがなかなか難しい単語ですが、「royal protocol」といえば、「王室メンバーが守るべきルール」と「一般人が王室メンバーに会うときに守るべきエチケット」のことです。

いつの日か女王に謁見するときのために、どんなエチケットがあるのか覚えておくのもいいかもしれませんね?!

文:松丸さとみ

フリーランス翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで計6年強を過ごす。現在は、フリーランスにて時事ネタを中心に翻訳・ライティング(・ときどき通訳)を行っている。
Blog: https://sat-mat.blogspot.jp/
Twitter: https://twitter.com/sugarbeat_jp

記事中画像: Dennis LarsenPixabay
*1 :なお、辞書のProtocolページには3つの意味が載っていますが、Kyoto Protocol(京都議定書)などで知られるProtocolはこちらの意味ではなく、「a formal international agreement 」(正式な国際合意)の方です。

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