写真引用元: ロケットニュース24
マサイ族と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか。青い空、白い雲。すごく高くジャンプする。視力のよさが半端ない。そんなところではないでしょうか。しかし!今やグローバル化、デジタル化の波はマサイ族が住むケニア共和国アンボセリにまで及び、なんとマサイ族の中には、海外の編集者と英語でやり取りしてWebマガジンで連載を持つだけでなく、共著を出版した者までいるのです。今回は、マサイ族の戦士にしてWebライターのルカ・サンテ氏とGO羽鳥氏の著書『マサイのルカがスマホで井戸を掘る話』を紹介します!
マサイ族の戦士がライターデビューしたわけ
この本の著者の一人は、正真正銘のマサイ族の戦士、ルカ・サンテ氏。ライオンと闘って勝ったこともあるホンモノです。 ちなみに 31歳で妻子あり。ケニア共和国のアンボセリという地域で暮らしています。
そんなルカ氏がライターになったのは、Webマガジン「ロケットニュース24」の編集長、GO羽鳥氏との出会いが きっかけ 。アンボセリに取材に来た羽鳥氏に「村の井戸が壊れたから援助して♪」と頼んだら、激しく怒られてしまったのです。 「ダメだ!自立しろ!ライターになれ!レポートを送ってこい!カメラがないなら、スマホを送ってやらァ!!」 。
その後、日本に帰国した羽鳥氏から送られてきたスマホを手に、ルカ氏のライター修行が始まりました。「ロケットニュース24」での連載名は、その名も 「マサイ通信」 !
ちなみに 、原稿料は日本人ライターと同額。月末締めの翌月払い。えこひいきは一切なしだそうです。さらに、 きちんと貯金していなかったら連載は即打ち切り という鬼の条件付き。
目標金額は、井戸の修理代10万ケニア・シリング(約11万円)なり。さてどうなるのでしょう?
記事はどうやって作られている?
ルカ氏の母語は、マー語。 ちなみに 、マサイ族というのは「マー語を話す人」という意味なのだそうです。ケニア共和国の公用語であるスワヒリ語、英語も使えるようですが、「マサイ通信」の記事はどうやって書いているのでしょう?
まずは、ルカ氏がスマホを使ってマサイ族の生活の様子をパシャパシャ撮影。この写真を、編集者の羽鳥氏に送ります。
ルカ氏、なかなかの名カメラマンで、この本にも彼が撮影した写真がいっぱいです。
写真は、ルカ氏の家族やご近所さん、 同僚 ?の戦士たちまで。じつにさまざま。生活上の大事なパートナーであるウシさん&ヤギさん、野生動物の写真もあります。ルカ氏から 先に 写真を送ってネタの きっかけ にすることもあれば、羽鳥氏がネタを振るばあいもあるそう。 ネタが決まったらFacebookメッセンジャーを使って2人の間で英語でやり取りを重ね、内容を掘り下げます 。
このセッションの結果を羽鳥氏が日本語に「超訳」し、記事が完成するというわけ。
海外の編集者とSNSを使って英語でやり取りし、最終的に本まで出版するなんて……。いやあ、カッコいいですね!
次の目標は、学校を建て直すこと!
先ほど「さてどうなるのでしょう?」と書いたのにあっさりばらしてしまうのもなんですが、連載開始時のルカ氏の目標「井戸を直す」は、連載100回目にして達成されました!おめでとうございます!
水が出てからしばらくの間、ルカ氏は興奮状態で、井戸の写真を撮りまくったそうです。そして、もっと大きな井戸を直して、もっとたくさん水を使えるようにしようと思ったルカ氏ですが、目標を変更することに。 「デカい井戸じゃ問題解決しない」 と気づいたのです。
もともと羽鳥氏と出会ったときに、「井戸を直して♪」のついでに「学校も直して♪」とお願いし、「テメーの力で何とかしろ」と言われていたのでした。
そこで初心に立ち返り、学校を直すことに。この学校には、6歳から17歳まで、250人ものマサイ族の子どもたちが通っています。ルカ氏の母校でもあり、彼が英語を学んだのもこの学校でした。
既に教室が7つあるものの、8つ目が資金 不足 のため、工事の途中で放置されているのです。これを仕上げるために必要な金額は、30万ケニア・シリング(約33万円)!
井戸の修理費の3倍にもなりますが、「マサイ通信」の原稿料と、今回刊行された本の印税で何とかなるのでしょうか。
きちんと勉強できるマサイ族がもっと増えたら、そこで学んだ知識や語学を活かして、オレみたいにチャンスをモノにできるマサイ族も増えるだろ。いま直面している「干ばつピンチ」を救う方法を考えつくマサイ族も出てくるかもしれんだろ。そしたら マサイの未来も明るい だろ。数年後には、日本のメディアで連載を持つマサイ族がもっと増えるかも!?
おまけ
「いまどきのマサイ族はみんなスマホを持っている」というウワサもありますが、ルカ氏によればこんなのは大ウソ。持っている人もいますが「みんな」というほどではないそう。
電気はもちろん、水すら来てないこの村で、みんながスマホを持ってるわけねえだろバッファロー(バカ野郎)!テキトーなネットのガセ情報ばっか信じてねえで、首都ナイロビからクルマで6時間かけてアンボセリに来い!! もし可能なら、そのときついでにモバイルバッテリーも持ってきて~!おっしゃる通り。しかし、電気もガスも水道も通っていますが、有休消化率は世界最低なのが日本人です。
そろそろゴールデンウィークの予定が気になる時期ですが、土日祝日+αのお休みをとっても、アンボセリまではなかなか行けないという方、まずはこの本を手に取ってみませんか?
構成・文:浦子
GOTCHA!のエディター兼ライター。海外メディアでライターデビューできるくらいの英語力を身に付けたいものです。
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