本当に小さな単語だから、読み飛ばしてもなんとなく意味はわかる気がする、aやthe。ただ、実際に自分が英語を書こうと思うと、どちらを選択していいのか悩んだり、結局あいまいに書き進めたり、その結果、ちょっと違う意味で伝わっていたり……といったことはありませんか?この機会にじっくり冠詞と向き合い、問題を解いて、冠詞に対する感覚を研ぎ澄ましましょう。第1回では、aの役割の1つ目をご紹介します。
冠詞はどうして難しい?
aとthe。このたった2つの語に私たちはどれほど振り回されていることでしょう。「 数えられる名詞が1つのときはaを使う」「特定できるものにはtheを使う」 というルールは知っているはずなのに、いざ英語を使う場面となるとaなのかtheなのか、あるいは冠詞が付かないのか、「この場合は、どうしたら……?」と迷ってしまうことが多いのではないでしょうか?
冠詞が難しいと感じるのは当然で、それが日本語にはないものだから です。しかし、だからといって理解ができないかというと、そんなこともありません。扱いが非常に難しい品詞ですが、基本となる考え方を身に付けていくことで少しずつ使い分けに自信が持てるようになってくるはずです。
今回は普段、なかなかまとめて学習する機会が 少ない 冠詞に対する理解を深めるために、5つのポイントと練習問題を用意しました。まずは使い方のルールを知り、いろいろな文脈の中でなぜその冠詞を使うのかを考えていきましょう。トレーニングを積むことで物事に対する「反射神経」が高まるように、冠詞の使い分け練習をすることで、冠詞に対する感覚、いわば「冠詞神経」のようなものを磨いてください。昨日までと違った英語の世界が少しだけ見えてくるかもしれませんよ?
第1回では主にaについて扱います。準備はいいですか? それでは、始めましょう。
ものを「区切る」
「英語の名詞には『数えられるもの』と『数えられないもの』がある」というのは皆さんご存じのとおりで、それぞれ 可算名詞・不可算名詞 と呼ばれます。辞書ではC(countable)やU(uncountable)という記号で示されているので、ある名詞がどちらに属すかは一目瞭然です。
ところが困ったことに、 CとUが両方とも載っている名詞も数多く存在します。これってaを付けても付けなくてもどっちでもいいってこと?いえいえ、そんなことはありません。名詞にaを付ける かどうか は英語にとって、とても大切なことなのです。
まずはじめに、いちばん大切な考え方をお伝えします。それは、 「aが付くと、名詞を数えられるものとして扱う」 ということです。 数えられる名詞だからaが付くのではなく、aが付いたら数えられるものに変化する というのがポイントです。aにはクッキーの型抜きのように名詞の形を区切って、具体化させる力があるのです。
例えば、coffeeは液体なので基本的には不可算名詞として扱われます。液体などは器に入れないと一定の形にならないので「数えられない」というわけです。しかし、ここにaを添えると、途端にcoffeeに「形」が浮かび上がってきて、数えられるようになります。どんな形になるかは私たちの常識に左右されるわけですが、一般的には「カップ」ですね。
A coffee, please.これはカフェなどでコーヒーを注文するときによく使う表現です。もちろん、a cup of coffeeという言い方をしてもいいのですが、「容器・ 単位 」を使わなくてもaという語が名詞を「 具体的な 形があるもの」だと認識させてくれるということです。コーヒー1杯ください。
「形」があれば「区別」ができる
「形」があれば、ほかのコーヒーと区別することだってできます。
This is a nice coffee.こういった具合です。あるいは、複数形でこれはおいしいコーヒーですね。
The shop stocks several coffees.とすると、coffeeの「種類」を浮かび上がらせることで、ほかとの違いを表しています。その店には何種類かのコーヒーがある。
time(時間)などの抽象名詞でも同じです。
Time passes quickly.の場合、広い意味での「時間(というもの)」なので数えられませんが、「定の時間や期間」など、区切って考えるときにはa timeを使います。時がたつのは早いものだ。
I lived in Osaka for a time.この文では、過去から現在まで続く時間の一部をaが切り取って、抜き出しているようにも思えます。大阪にはしばらくの間住んでいた。
aは名詞から「 具体的な 形」を浮かび上がらせる力を持った語 です。 自分が伝えたいことに「形」や「区切り」はあるのかを考える のが、使い分けのポイントです。
では、この考えを踏まえたとき、以下の 2つの文において、自然なのはどちらでしょうか?
2 He won a silver at the last Olympics.
オリンピックでもらう「銀」といえば、「銀メダル」ですよね。メダルも 具体的な 「形」が見えるものなので、aが付きます。よって、2が正解です。
練習問題に挑戦!
掲載されている英文にはすべて、どこか一箇所に空欄があります。それぞれ、a(an)かthe、またはどちらも必要ない場合には×を書き込みましょう。
※空所が文頭で無冠詞の場合も、最初の文字は小文字になっています。
- A: Why wasn’t Molly at school today?
B: When she woke up this morning, she had ( ) temperature.
1. ×
I stopped taking vacations because it’s hard for me to sleep in hotels since I’m very sensitive to noise.
(私は音にとても敏感でホテルで寝るのが難しいため、休暇を取るのはやめた)
解説:一般的な意味で「騒音(というもの)」が気になると言いたいので、不可算名詞のnoiseが正解です。a noiseだと工事現場や電車など「個々の騒音」になるので、ここでは適切ではありません。
2. a
A: Why wasn’t Molly at school today?
B: When she woke up this morning, she had a temperature.
(A:なぜモリーは今日学校を休んだの?
B:今朝起きたとき、熱があったんだ)
解説:モリーが学校を休んだ理由は「熱」があったからです。冠詞を付けずにtemperatureだと、単に「体温」を指します。「体温」があるから休むというのはどう考えてもおかしくなってしまいますね。
3. a
I saw on TV that when older people have something to care for , such as a cat, they live much longer than those who don’t have any pets. That’s why many doctors recommend animals as companions for the elderly.
(高齢者が、例えばネコのように世話をするものを飼うと、何もペットを飼っていない人よりかなり長生きするとテレビで見た。だから多くの医者が年配の人たちの連れ合いとして動物を勧めるのだ)
解説: 老後の過ごし方として、ネコなどのペットを飼うのがよいという話です。ペットとして飼うネコはもちろん数えることができるので、a catを使用してください。
Vol. 2~Vol.5までの連載はこちら
さらに練習問題に挑戦するなら、EJ2020年3月号で!
文:大竹保幹(おおたけ やすまさ)
神奈川県立厚木高等学校教諭。1984年、横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省 委託 事業英語教育 推進 リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーヴン・キング。12月18日に著書『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』(アルク)発刊。
※この記事は『ENGLISH JOURNAL』2020年3月号特集を再編集したものです。
【トーキングマラソン】話したいなら、話すトレーニング。
語学一筋55年 アルクのキクタン英会話をベースに開発
- スマホ相手に恥ずかしさゼロの英会話
- 制限時間は6秒!瞬間発話力が鍛えられる!
- 英会話教室の【20倍】の発話量で学べる!