「ニワトリ」と「鶏肉」を区別するのに必要なたった一つの単語とは?

解いて磨こう冠詞神経【2】

本当に小さな単語だから、読み飛ばしてもなんとなく意味はわかる気がする、aやthe。ただ、実際に自分が英語を書こうと思うと、どちらを選択していいのか悩んだり、結局あいまいに書き進めたり、その結果、ちょっと違う意味で伝わっていたり……といったことはありませんか?この機会にじっくり冠詞と向き合い、問題を解いて、冠詞に対する感覚を研ぎ澄ましましょう。第2回では、aの役割の2つ目をご紹介します。

連載第1回はこちらから読めます。

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「丸ごと」を表す

「リンゴが1つある」と言われたとき、皆さんならどんな形のリンゴを思い浮かべますか?おそらく、普通は「リンゴ丸ごと1個」だと考えるはずで、まさか切り刻まれたり、すりおろされたりしたリンゴが1個分だと思う人はいないでしょう。

aにはこのように、数えられるものが「丸ごと」の状態であることを伝える機能があります。つまり、逆を言えば、可算名詞であってもaがないと「元の形を失っている」ことを意味するということです。
pizzaやcakeで考えるとわかりやすいでしょう。a pizzaは「ピザ丸ごと1枚」でa cakeは「ホールケーキ1個」です。食欲旺盛な方ならこのまま全部食べてしまうかもしれませんが、一般的には切り分けたものを食べますよね?そんなわけで実際にピザを食べたときには次のようになるわけです。

I ate pizza for breakfast.

朝食にピザを食べたよ。

これは、ピザが元の形から切り離されているからです。

レモンティーを英語ではtea with lemonと表現しますが、どうしてtea with a lemonにならないのかも同じ理由から説明できます。紅茶に添えるレモンは「丸ごと」ではなく、「スライスされたもの」や「果汁」を使うからですね。

ニワトリと鶏肉の違い

動物もaの有無でだいぶ意味が変わってきます。a chicken(ニワトリ1羽)やa fox(キツネ1匹)などの動物は、aがあればニワトリやキツネそのままの姿を表しますが、無冠詞だとその動物の「肉」や「毛皮」などを意味することになります。だから、chicken(鶏肉)、pork(豚肉)、beef(牛肉)などの食肉類はすべて不可算名詞なのです。動物と食肉で使う語が違うブタ(pigとpork)なら、たとえaの有無を間違えたとしてもそこまで困ることはないかもしれませんが、ニワトリ(a chickenとchicken)や子羊(a lambとlamb)のように同じ語が両方の意味を兼ねているときには気を付けなくてはいけません。英語を習いたてのときによく言ってしまうI like cat.も、普通なら「文法を間違えているのかな」と察して流してくれるとは思いますが、場合によっては「ネコを食べるの!?」と勘違いされる可能性もあるのです。I like cats.と複数形にしてネコ全般を指すようにすれば、「ネコ好き」であることが正確に伝わります。

aは名詞が「丸ごと」存在していることを伝える力があります。特に食べ物については、それがどのような形をしているのかを意識することが大切です。

では、ごはんを食べた後、友達の顔に付いた食べ残しを注意したい場合、以下のどちらの言い方が適切でしょうか?

1. You’ve got an egg on your chin.

2. You’ve got egg on your chin.

正解

あごに付いていておかしくない卵の形は食べ残した一部なので、正解は2です。1だとあごに卵が丸ごと1個くっついていることになってしまいますが……そんなこともたまにはあるのでしょうか?

練習問題に挑戦!

掲載されている英文にはすべて、どこか一箇所に空欄があります。それぞれ、a(an)かthe、またはどちらも必要ない場合には×を書き込みましょう。

※空所が文頭で無冠詞の場合も、最初の文字は小文字になっています。

1. Miyuki is learning how to cook at school. She even boiled (   ) egg the other day!

2. A: That’s an unusual belt you have there. Why have I never seen you wear it?

B: This belt belonged to my grandmother. It’s made of (   ) alligator, so I don’t want to use it, but I also can’t throw it away.

3. It’s interesting to think about advice from the past. For example, can (   ) apple a day really keep the doctor away? I don’t think it’s as simple as that, but it’s not a bad idea to try and follow a healthy diet.

正解

1. an

Miyuki is learning how to cook at school. She even boiled an egg the other day!

(ミユキは学校で料理を習っている。この間、彼女はなんとゆで卵を作ったんだよ!)

解説:ゆで卵を作ったことがあれば、卵は殻に入ったままでゆでるのだとわかりますよね?卵が「丸ごと」の形で使われているので、an eggが正解です。もし、溶き卵をゆでるなら……無冠詞でeggなのでしょうね。

2. ×

A: That’s an unusual belt you have there. Why have I never seen you wear it?

B: This belt belonged to my grandmother. It’s made of alligator, so I don’t want to use it, but I also can’t throw it away.

(A:君が持っているのは珍しいベルトだね。今までそれをしているのを見たことがないのは、どうして?

B:このベルトは祖母の物だったの。ワニ革でできているので使いたくないのだけれど、処分することもできないのよ)

解説:ベルトが何でできているかを考えてみましょう。まさかワニが丸ごと1匹使われていることはないので、ここでは無冠詞にして、alligator(ワニ革)と考えるのが正解です。

3. an

It’s interesting to think about advice from the past. For example, can an apple a day really keep the doctor away? I don’t think it’s as simple as that, but it’s not a bad idea to try and follow a healthy diet.

(過去のアドバイスについて考えることは興味深い。例えば、1日1個のリンゴで本当に医者はいらなくなるだろうか?そんなに単純ではないと思うが、健康的な食事を試してみるのは悪いことではない)

解説:An apple a day keeps the doctor away.(1日1個のリンゴで医者いらず)という英語のことわざが基になっています。これは冠詞の有無を文脈で判断するというより、知識問題でもあります。これを機に覚えておきましょう。

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大竹保幹

文:大竹保幹(おおたけ やすまさ)
神奈川県立厚木高等学校教諭。1984年、横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省委託事業英語教育推進リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーヴン・キング。12月18日に著書『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』(アルク)発刊。

構成:江頭茉里

※この記事は『ENGLISH JOURNAL』2020年3月号特集を再編集したものです。