定冠詞theのいちばん重要な役割を「絞り込む」!【冠詞神経③】

a や the など、小さな単語だけどややこしさは特大(!?)の冠詞。そんな冠詞とじっくり向き合い、問題を解いて、冠詞に対する感覚を研ぎ澄ましましょう!第3回では、the の役割の1つ目をご紹介します。

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「1つ」に絞る

定冠詞 the には「その/それ」というような日本語訳が当てられることが多いものの、this や that などの指示代名詞とは違って、話し手から遠くにある必要も、視界に入っている必要もありません。

では、the はいったい何を表す語なのでしょうか。まず基本としてしっかりと覚えておきたいのは、the は対象を「1つに絞る」 ということです。もっとわかりやすく言えば、the が付いている名詞は「何を指しているかが誰にでもわかる」のが前提になっているということです。

例えば、sun や world のように、もともと世界に1つしか存在しないものに the が付くのは、誰にとっても the sun と言えば「(太陽系の)太陽」、the world なら「(今、私たちがいる)世界」だとわかるからなのです。もちろん、1つに絞り切れないときには a sun という言い方をしても構いません。その場合は、「(太陽のような)恒星」を表すことになります。the とは違って、a は「ほかにも似たようなものがいくつかある」ことを示す語で、対象が定まらないから「不定冠詞」という名前なのです。

世界中にたくさん存在するものでも、ある部屋に1つしかないものなら何を指しているかが誰にでもわかります。ドアを閉めてほしいときに Close the door, please. と言うのは、開いているドアがどれなのか、見ればすぐにわかるからです。一方で、 Close a door, please. が絶対にあり得ない表現とは言いませんが、不自然に感じるのは、「(どれでもいいから1つだけ)ドアを閉めて」という状況が、一般的には考えにくいからでしょう。

theがないとどうなる?

the を使うべきところでthe を忘れてしまうとどんなことが起こるのかを考えてみます。第2回でレモンが「果汁」に姿を変えてしまったように、冠詞がない名詞は形が一定ではなくなってしまいましたよね。

少し極端な例を紹介しましょう。

Our family went to the sea.
家族で海に行きました。

こう言えば、「海」に遊びに行ったことになりますが、仮に the を忘れてしまって Our family went to sea. になると相手はかなり驚くはずです。go to sea は「船乗りになる」ことを表すからです。同じように、go to school(学校へ通う)や go to church(教会へお祈りに行く)、by bus(バスで)や by train(電車で)など、無冠詞で使われる名詞は具体性から離れ、建物や乗り物から連想される「機能」を表すことがある のです。

the の付け忘れは、「これはあなたの知っているものとは違うよ」という間違ったメッセージを伝えかねません。1つに絞れるものには迷わず the を付けましょう。

さて、そうすると、目の前にある電話が鳴っていることを誰かに伝えたいとき、自然なのは以下のどちらでしょうか?

  1. A phone is ringing.
  2. The phone is ringing.

   ↓
   ↓
   ↓
 
【正解】
目に見える位置にある電話が鳴っているのであれば、その電話であると特定が可能なので正解は 2. です。1. は、電話が鳴る音は聞こえているけれど、それがどの電話から鳴っているのかまではわからない状況を表しています。

練習問題に挑戦!

掲載されている英文にはすべて、どこか一箇所に空欄があります。それぞれ、
 ・a(an)
 ・the
 ・どちらも必要ないので×
のどれにあたるかを判断してください。
(※空所が文頭で無冠詞の場合も、最初の文字は小文字になっています)

(1)
Sachi fell in love with Hiro because he treated her like she was (   ) only woman in the world.

(2)
A: Are you two fighting again? What happened this time?
B: I’m writing a book report and she hid (   ) book I was going to use!

(3)
The monster was catching up to the heroine as she ran down the path. Suddenly, she saw two houses ahead of her and realized this was her chance to escape. She had to choose (   ) door and hope for the best.

正解は……

    ↓   ↓   ↓   ↓   ↓

(1) the
Sachi fell in love with Hiro because he treated her like she was the only woman in the world.
まるで彼女が世界でたった一人の女性であるかのように接してくれたので、サチはヒロに恋をした。

【解説】
まるで世界に「たった一人の女性(the only woman)」のように大事にしてくれるから、恋をしてしまったようです。「1つに絞る」のは the の得意分野で、ここでの正解です。

(2) the

A:Are you two fighting again? What happened this time?
B:I’m writing a book report and she hid the book I was going to use!
A:2人はまたけんかしているの?今回は何があったの?
B:読書感想文を書いているのに、使おうと思っていた本を彼女が隠したの!

【解説】
これからa book report(読書感想文)を書くのに、「それに使う予定の本」が隠されてしまいました。どの本について話しているのかが相手にもわかるので、the book が正解です。

(3) a
The monster was catching up to the heroine as she ran down the path. Suddenly, she saw two houses ahead of her and realized this was her chance to escape. She had to choose a door and hope for the best.
主人公が小道を走っていると、怪物が追いついてきた。突然、前方に2軒の家が見え、これは逃げるチャンスだと彼女は理解した。彼女は1軒を選び、最善の結果を望むほかはなかった。

【解説】
怪物から逃げる女性の目の前には2軒の家があるようです。「どっちのドアを開けたらいいか」という場面ですので、ドアを特定していない a door が正解です。もちろん、家が1軒しかなければ、その家の特定のドアなので the door になります。


大竹保幹
大竹保幹

明治大学文学部文学科卒業。神奈川県立多摩高等学校総括教諭。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省委託事業英語教育推進リーダー。著書に『子どもに聞かれて困らない英文法のキソ』『まんがでわかる「have」の本』(いずれもアルク)『APPLAUSE LOGIC AND EXPRESSION Ⅰ~Ⅲ』(開隆堂出版)など。

・構成:江頭茉里/この記事は『ENGLISH JOURNAL』2020年3月号特集を再編集したものです。
・作成:2016年1月3日、更新:2026年4月7日

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