定冠詞theの意外な得意技って?

解いて磨こう冠詞神経【4】

本当に小さな単語だから、読み飛ばしてもなんとなく意味はわかる気がする、aやthe。ただ、実際に自分が英語を書こうと思うと、どちらを選択していいのか悩んだり、結局あいまいに書き進めたり、その結果、ちょっと違う意味で伝わっていたり……といったことはありませんか?この機会にじっくり冠詞と向き合い、問題を解いて、冠詞に対する感覚を研ぎ澄ましましょう。第4回では、theの2つ目の役割をつかみましょう。

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「話の流れ」に乗る

世の中に1つしかなかったり、部屋に1つしかなかったりといった「物理的な状況」以外からも、theは対象を1つに絞ることがあります。それは、「話の流れ」から判断するときです。

一度話題に出てきたものにはtheを、初めて話すことにはaを付けるというのは、まさにこのポイントのことです。しかしその際に注意しなくてはならないのは、「theが付くのは前に出てきた語と『同じ語』とは限らない」ということです。まずは例文を見てみましょう。

I left a book in my room this morning, so I went home to get the book.

今朝、部屋に本を忘れてきちゃったから、[その本を]家に取りに帰ったんだよ。

これは基本的なaとtheの使い方を表している英文です。家に取りに帰ったのはthe bookなので「(今朝、部屋に忘れてきた)本」ですね。初めて本を話題に出しているときにaが使われているのは、「この時点では相手はまだ、どの本のことなのか1つに絞れない」と話し手が判断しているからです。急にtheを使うと「えっ、どの本のこと?」と相手が困ってしまいます。

もちろん、後半部分で so I went home to get a bookと言ってしまうと、忘れたのとは別の本を取りに行ったという不思議な行動を表すので、aとtheには気を付けなくてはいけませんね。

急に出てくるthe

では、次にもう1つ例文を見てみましょう。

The students traveled to Okinawa. I heard the trip was really exciting.

生徒たちは沖縄旅行に出掛けた。その旅はとても楽しかったらしい。

少しだけ難しくなるのは、この英文のようにtheが急に登場してきたときです。とはいえ、trip(旅行)という語が話のどこにも登場していなくても、最初の文のtraveled to Okinawaからthe tripが「沖縄旅行」であることはすぐにわかりますよね。このように theは急に登場して「話の流れ」を作ることもできるのです。

ちなみに、travelとtripほど似ている語でなくても、I heard the flight was really exciting.(フライトがとても楽しかったらしい)のように、travelから想像できることであれば、theでつなぐこともできてしまいます。

このように、aとtheは今自分が何を話題にしているのかを、間違いがないように伝える大切な役割があります。相手がすぐにわかることかどうか基準に、aとtheを意識して使い分けましょう。

さて、以下の2つの文で2人の人物が同じ学校に勤めていることになるのは、どちらでしょうか?

1. Naoto is a teacher. Yuri works in a school, too.

2. Naoto is a teacher. Yuri works in the school, too.

正解

1では、ナオトとユリは 2人とも学校で働いていますが、それぞれ別の学校に勤務しています。2では2人が同じ学校に勤めていることを表しています。

練習問題に挑戦!

掲載されている英文にはすべて、どこか一箇所に空欄があります。それぞれ、a(an)かthe、またはどちらも必要ない場合には×を書き込みましょう。

※空所が文頭で無冠詞の場合も、最初の文字は小文字になっています。

1. A: This math assignment is impossible! How am I going to get it done?
B: I have (   ) idea. Why don’t we work on the problems together?

2. A: Bob seemed like a nice guy, so why did the two of you break up?
B: To be honest, I liked (   ) idea of having a boyfriend, but he wasn’t my type.

3. In the 1850s, many people had gold fever. They traveled from all over the world to California to try to get rich. However, (   ) journey was very dangerous, and hundreds of travelers died on the way there. Many books have been written about their struggles.

正解

1. an

A: This math assignment is impossible! How am I going to get it done?

B: I have an idea. Why don’t we work on the problems together?

(A:この数学の宿題は手に負えない! どうすれば終えられるだろう?

B:いい考えがあるよ。一緒に問題に取り組まない?)

解説:「数学の宿題が難し過ぎる」と嘆いているAさんに、「いい考えがある」と提案しています。提案内容は相手にとって「初めて知ること」なので、不定冠詞のan ideaが正解です。

2. the

A: Bob seemed like a nice guy, so why did the two of you break up?

B: To be honest, I liked the idea of having a boyfriend, but he wasn’t my type.

(A:ボブはいい人みたいだったのに、2人はどうして別れたの?

B:正直言って、彼氏がいるということが気に入っていたのであって、彼は私のタイプではなかったの)

解説:友人と「恋バナ」をしている状況です。「誰かと付き合うこと」が2人の共通の話題になっていると考えましょう。「彼氏がいるということ」はここでは前提となっている話なので、定冠詞を使ったthe ideaを選びます。

3. the

In the 1850s, many people had gold fever. They traveled from all over the world to California to try to get rich. However, the journey was very dangerous, and hundreds of travelers died on the way there. Many books have been written about their struggles.

(1850年代は多くの人々が金に夢中で、裕福になろうと、世界中からカリフォルニアへ繰り出した。ところがその旅はとても危険で、そこへたどり着くまでに何百人もの旅人が亡くなった。その人たちの奮闘について、多くの本が書かれている)

解説:They traveled from all over the world to California(世界中からカリフォルニアへ繰り出した)という部分を受けて、「その旅(the journey)は」と続けるのがよいでしょう。 a journeyでは、ほかの旅の話に変わってしまいます。

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大竹保幹

文:大竹保幹(おおたけ やすまさ)
神奈川県立厚木高等学校教諭。1984年、横浜市生まれ。明治大学文学部文学科卒業。平成23年度神奈川県優秀授業実践教員(第2部門)表彰。文部科学省委託事業英語教育推進リーダー。趣味は読書。好きな作家はスティーヴン・キング。12月18日に著書『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』(アルク)発刊。

構成:江頭茉里

※この記事は『ENGLISH JOURNAL』2020年3月号特集を再編集したものです。