連載「使いこなせる!英会話頻出ワード」。今回、言語学者のアンちゃんことアン・クレシーニさんが取り上げるのは、growやraise。「育つ/育てる」に関する表現です。「好きになり始める」というようなときにも使うようです。
「大きくなる」はbecome big?
「大きくなったら、何になりたいですか?」
小学生の頃に、この質問をされた人は多いのではないでしょうか。25年前、私が日本に来た頃に定番だった答えは、「サッカー選手」「お花屋さん」「野球選手」などでした。
今はどんな感じなのでしょう。2022年のランキングを見てみましょう。
1.ユーチューバー(YouTuber)
2.漫画家、イラストレーター、アニメーター(illustrator, animator)
3.芸能人(celebrity)
4.ゲームクリエイター、プログラマー(game creator, programmer)
5.パティシェ(patisserie)
6.学校の先生(teacher)
7.保育士、幼稚園の先生(preschool teacher)
8.作家、小説家、ライター(writer)
9.医師(doctor)
10.動物園や水族館の飼育員(veterinarian, zookeeper)
正直、「芸能人」というのは、よく分かりません。それは職業?また、私はカタカナ語を勉強しているので、トップ5の職業が、ほぼカタカナ語であることが気になります。
それはさておき、「大きくなったら何になりたい?」って英語で言えますか。「大きくなる」はそのまま訳すとbecome bigですが、この質問のときはgrow up(大人になる)を使います。
What do you want to be when you grow up?
大きくなったら、何になりたいですか?
私は長年、日本で教えていますが、「育つ/育てる」を意味する英語、grow (up)とraiseに関する間違いをよく目にします。そこで今回は、この2つの動詞について話したいと思います。
さて、始めましょう!
grow:成長する、大きくなる
growで最もよく知られている意味はこれでしょう。「育つ」「成長する」「大きくなる」「伸びる」など、とにかく肉体面、感情面の成長を表したいときに、英語ではgrowをよく使います。
体の成長
Kids grow up so fast.
子供は、あっという間に大きくなる。
He has grown about 20 centimeters since last year.
彼は、去年から20センチくらい背が伸びた。
He is growing like a weed.
めちゃくちゃ大きくなっている。(つまり「雑草並みの速さで育っている」ということ。)
He has really grown.
彼はめっちゃ成長したね!
He has grown into a really good-looking young man.
彼は、本当にイケメンになったね。
My feet have grown about three sizes since last year.
去年より足が3サイズ大きくなった。
アメリカでは、足のサイズを「センチ」ではなくて「インチ」で表します。ただ、普段の会話では「インチ」ではなく「サイズ」と言います。また、「足」ではなく「靴」と言います。例えば次のような感じです。
A: What’s your shoe size?
B: I am size 9.
A: 足は、何センチ?
B: 26センチ。
精神面、感情面の成長
I feel like I have really grown as a person since I started teaching.
私は、教師になってから人として本当に成長した気がする。
He used to be so immature, but he has really grown up recently.
以前、彼は本当に子供っぽかったけれど、最近はとても成長した。
You have really grown up a lot in the past year. I am so proud of you.
この1年で本当に成長したね。偉いわ。
You have grown so much as an English speaker!
あなたの英語力は本当に伸びたね!
人以外の物の成長、物が大きくなること
The grass has been growing so fast since the end of the rainy season. I have to cut it every week.
梅雨が終わってから、芝生の伸びる速さがすごい。毎週、刈らないといけない。
Unfortunately, it seems that the cancer is growing.
残念なことに、がんは大きくなっているみたい。
My resentment towards him is growing.
私の彼への恨みは大きくなっている。
子供や動物などが「大きくなる」とき
子供や動物などの成長に関しては、growをget biggerと入れ替えられる場合も多いです。
Wow, your son is getting so big!
Your kids have gotten so big!
Your dog has gotten so big!
わあ、あなたの息子さん、本当に大きくなっているわね!
あなたの子たち、とても大きくなったね!
あなたの犬、大きく育ったわね!
ただし、私の娘たちによれば、ティーンエイジャーくらいになると、getting biggerと言われるのはうれしくないそうです。場合によって、getting biggerには「ますます太ってきた」というニュアンスがあるからです。
It seems he is getting bigger. I am worried about him.
どんどん太ってきている気がする。彼のことが心配だ。
He has gotten bigger over the past few years.
ここ数年で彼は太った。
His stomach has gotten bigger
彼のおなかは大きくなった。
皆さんも気を付けましょう!
grow up:(ある環境で)育つ
grow upは「~(場所など)で育った」という場合にも使います。
I grew up in the States but moved to Japan when I was in high school.
アメリカで育ちましたが、高校のときに日本に引っ越しました。
Where did you grow up?
どこで育ったの?
We grew up together.
私たちは幼なじみです。
I grew up in an affluent family.
裕福な家庭で育った。
We grew up not knowing our parents.
私たちは、親を知らずに育った。
growとraiseの違い
ここで、「育つ」に関連するもう一つの大事な動詞raiseにも触れておきましょう。raiseはgrow (up)と同様の意味を持っていますが、使い方が異なります。
growは「育つ」という意味の自動詞でもあり、「~を育てる」という他動詞でもあります。一方、raiseは「~を育てる」という他動詞だけで、常に目的語が必要です。I raised in America.とは言えません。
My parents raised me in America.
両親は私をアメリカで育てた。
※ meが目的語。
I was raised in America.
私はアメリカで育てられた。
※ 受動態で「育つ/育てられる」。
「子供を育てる」と言うときに、I’m growing my children.とはなりません。raiseを使います。
I’m raising my children.
私は育児中です。
人以外であれば他動詞のgrowが使えます。
I’m growing vegetables.
私は野菜を育てている。
英語は難しいですね。「人」の場合、次のように考えるといいと思います。
- 「自分が成長する」はgrow up
- 「誰かが自分を育てる」はraise
つまり、
I grew up in Virginia.
I was raised in Virginia.
上の1つ目の文の動作主体は「自分」、2つ目の文は「自分を育てた人」ということです。
I grew up in an affluent family.
I was raised in an affluent family.
裕福な家庭で育った。
続けて、raiseを使った例文を見てみましょう。
I raised my kids to do the right thing.
私は、子供を正しいことをするように育てました。
I raised my kids in Japan.
私は、日本で子供たちを育てました。
I raised my kids in the Christian faith.
キリスト教の教えにのっとって、子供たちを育てました。
アメリカの親はよく自慢げに、I raised you right!(あなたをちゃんと育てたわ!)と言います。
昔、両親と一緒に「Jeopardy!」というクイズ番組をよく見ました。50年以上、平日の夜に放送されている番組です。番組を見ながら親子で対戦すると、豆知識が豊富な父がほぼ毎回勝ちました。でも、ごくまれに私が勝ちました。そんなとき、父がすねて、Well, you only won because we raised you right!と宣言したのを覚えています。
つまり、「私たちがちゃんと育てたから勝てたんだ!」という意味です。お父さん、かわいかった。
ちなみに、「生まれ育った」は、born and raisedと言います。
I was born and raised in the U.S.
私はアメリカ生まれアメリカ育ちです。
grow :~(植物など)を育てる
畑で野菜を育てることを言うときにも、growを使います。でもその前に、アメリカ英語とイギリス英語の違いについて、一つ話したいと思います。
イギリスでは家の周りにある「庭」をgardenと言います。アメリカではyardと言います。そして、そのyardの一部で、花や野菜を育てている花畑や菜園のことをgardenと呼びます。この違いが分からないと、混乱することがあるかもしれません。
もし、アメリカで庭を褒めるつもりでYou have a beautiful garden!と言ったら、花畑や菜園を作っていないアメリカ人はI don’t have a garden!と返す可能性があります。
話を元に戻しましょう。growは畑などで野菜や花を育てるときに使います。
I am growing tomatoes and green peppers in my garden.
菜園でトマトとピーマンを育てています。
I am interested in growing all kinds of vegetables in my garden.
畑でいろいろな野菜を育てることに興味がある。
また、人が育てる植物だけにではなく、勝手に「生える」望ましくない植物に関してもgrowを使います。
There are a ton of weeds growing in my garden. I wonder if the kids will pull them if I pay them.
畑に雑草が大量に生えた。子供たちにお小遣いをあげたら抜いてくれるかな。
There is some super gross mold growing in my bathroom.
浴室にとても気持ち悪いカビが生えた。
植物だけではなく、何かの状態が拡大するようなときにもgrowを使います。
My son is seriously growing an attitude these days.
最近、息子がひどく嫌な態度を取っている。
Grow up!:しっかりして!
誰かが子供っぽい態度を取ったり、すねたりしたりしたときに、次のような言葉をかけることがあります。
Oh, grow up! Stop acting like a baby!
もう、しっかりして!赤ちゃんじゃあるまいし!
grow upを使った会話を幾つか見てみましょう。
A: I can’t believe you went to the party without me!
B: Oh, grow up! You could have easily come by yourself.
A: 私を待たないでパーティーに行ったなんて信じられない!
B: なあ、しっかりしなよ。一人でも問題なく来れただろ?
A: Hey! I wanted the last piece of pizza!
B: Grow up! You are acting like a child.
A: もう!ピザの最後の1切れを食べたかったのに!
B: いい歳して!子供みたいだね。
grow out of ~:~が着られなくなる、~から卒業する
子供がいる家庭は、よくこの表現を使うと思います。体が大きくなって洋服が着られなくなったり、靴が履けなくなったりするときの便利なフレーズです。
I just bought these shoes for my daughter, but she’s already grown out of them.
この靴を娘に買ったばかりなのに、もう履けなくなった。
Kids grow out of their clothes so fast. It’s a good idea to use hand-me-downs.
子供はすぐ大きくなって服が着られなくなるから、お下がりをもらうのがいいよ。
My son was in a terrible rebellious stage, but he finally grew out of it.
息子はひどい反抗期だったけれど、やっと終わった。
grow into ~:~を着られるようになる
grow into ~はgrow out of ~の反意語です。子供の成長はとても速いので、多分、私を含めてほとんどの親は、It’s OK! You will grow into it!と言ったことがあると思います。
買おうとしている洋服や靴が今は大き過ぎるとしても、すぐに着られるようになったり、履けるにようになったりします。子育て経験のある方なら、誰もが大きめのサイズを買ったことがあるのではないでしょうか。すぐに買い替えたくありませんからね。
例文を見てみましょう。
I know the shoes are a little big, but you will grow into them.
ちょっと大きい靴だけど、履けるようになるよ。
I think I am going to order the shirt in a large. She will grow into it in no time!
Lサイズのシャツを注文しようかな。娘はすぐ着れるようになるだろうし!
仕事やリーダーシップに関してもgrow into ~ を使います。
He has really grown into his position as company president.
彼は、本当に良い社長になったね。
I wasn’t used to the job at first, but I think I have gradually grown into it.
最初は、その仕事になじめなかったけれど、少しずつ慣れてきていると思う。
リーダーシップといえば、「人材を育てる」という意味で、raise upという表現がよく使われます。
Our company is committed to raising up leaders.
わが社は、次世代のリーダーを育てることに注力しています。
We want to raise up young people to change the future of Japan.
われわれは、日本の未来を変える若者を育てたい。
grow on ~:~を好きになり始める
以前は好きではなかったこと、あまり関心のなかったことが好きになってきたときに、grow on ~が使えます。
例文を見てみましょう。
I used to hate natto, but these days it has started to grow on me.
以前は納豆が嫌いでしたが、最近は好きになってきています。
I wasn’t a big fan of Tokyo when I first moved here, but after 10 years it has started to grow on me.
引っ越してきたばかりの頃は東京があまり好きではなかったが、10年住んで好きになり始めている。
まとめ
私の生徒や周りの友人たちは、永遠にgrow upとraiseに悩まされている気がします。一方、私は、日本語の「育つ」「育てる」「育てられる」などの違いに悩んでいます。日本に住んで22年もたちますが、いまだによく間違えます。
他の動詞の変化はかなり理解しているつもりですが、なぜか「育つ」だけは、なかなか頭に入ってきません。この記事を書くことで、少しでも理解が深まっていたら、うれしいです!
外国語を勉強するときは、どうしても自分の母語に影響されてしまいます。そのため、学んでいる言語が使えるようになるまでに、少し時間がかかってしまいます。
しかし、語学は時間がかかるからこそ意味があると思います。私も皆さんと一緒に、諦めることなく頑張っていきたいと思います!いつか、「育つ」を正しく使えるようになると信じています!
本文写真:Kenny Eliason, Ilya Pavlov, Francesco Gallarotti, The Nix Company from Unsplash
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