6と86と143。数字ではないとしたらどんな意味?【ウルトラ英会話表現】

カン・アンドリュー・ハシモトさんの連載「爽快ウルトラ英会話表現」。今回は6、86、143など、単なる数字に見えるのに実はそうではない数字を取り上げます。さて、Will you 86 it?ってどんな意味でしょう?

Watch your six!

知っている単語なのに意味不明!と思う人が割といるのでは?と僕が勝手に思う、そんな表現を紹介する連載の2回目です。今回は数字を使った英語表現を取り上げます。

まずはWatch your six!という表現。どんな意味だと思いますか?「あなたの6を見ろ!」ではありません。比較的よく使われる表現です。例えば同じ意味でこんな言い方もあります。ヒントになるでしょうか。

I’ve got your six.

これも、「あなたの6を取った」・・・ではありません。

Watch your six.はWatch your back.ということで、つまり「後ろに気を付けて」。I’ve got your six.はI’ve got your back.とかI’m behind you.または I’ll protect you.と同じ。「君のことは僕が守るよ」とか「僕がついているよ」という意味です。

どういうことでしょうか。

時計をイメージしてください。時計の一番上の数字12を前と考えると、下の6は後ろに当たりますね。例文は6を「後ろ」という意味で使っているので、両方ともsixをbackに置き換えることができます。「あなたの後ろを見ろ」「僕はあなたの後ろにいるよ」ということなのです。

元々は軍隊で使われていた表現のようですが、日常生活でも使います。映画や刑事ドラマなどでよく出てくるのは「11時の方向」や「2時の方向」といった表現です。例えば、刑事たちが物陰に隠れてギャングを見張っているようなシーンで、次のような使い方をします。

A: Can you see? Where are they?
B: At 2 o’clock.

A: 見えるか?奴らはどこにいる?
B: 2時の方向です。

Will you 86 it?

次は86という数字。上の英語は「それを86にしてくれる?」だと意味不明ですね。86は「~をキャンセルする」、または「~を抜く」「~を追放する」という意味です。

例えばあなたがダイナーで時間をつぶしているとします。まだ時間があると思ってグラスワインをもう1杯注文したところで相手から連絡が入り、すぐに店を出なくてはならない――そんなとき店員さんに「ごめん、それ、キャンセルしてくれない?」というようなときにWill you 86 it? を使うことができます。日常生活で頻繁に使う表現ですが、由来ははっきりしません。

アメリカの禁酒法時代に、酒を出す店がニューヨークの「86 Bedford Street」にあったとか、86が「~を拒否する」という意味のnix(主に新聞などで使われる言葉です)と音が似ていた、など諸説あります。

ところで、ホテルの朝食でオムレツに何を入れますか?入れて欲しくないものはありますか?と聞かれたとします。僕は嫌いな物はないので大抵こう言います。

With the works, please.
全部入れてください。

でも、例えば「カロリーが高いからチーズはなしで」と思うなら、

Eighty-six the cheese, please.
チーズ抜きでお願いします。

トマトが嫌いな人は、

Will you 86 the tomatoes?
トマト抜きでお願いします。

と言えばいいのです。86を動詞として使うことがポイントです。

「人にケンカを売った」「うるさい」などの理由で、飲み屋さんに出入り禁止になった人がいるとします。いつもいるはずの彼が店にいない――そんなときに、次のように使います。

A: What happened with Chris?
B: He was 86ed for fighting.

A: クリスはどうしたの?
B: ケンカで出禁だよ。

86は動詞ですから、このように受動態にもなります。

命令文でも使います。ギャング映画でこんなシーンがありました。

A: Tell me what to do, Pa.
B: Eighty-six him.

A: 親父、どうすればいい?
B: ヤツを消せ。

ウェブサイトなどにログインしたいとき、二段階認証のコードが必要になることがあります。コードはえば5分とか10分間だけ有効だったりします。

僕は急かされているような気がして「〇分だけ有効なパスワード」というのが苦手です。例えば、隣にこんなふうに声を上げる人がいると最悪です。

Hurry up! It’ll be 86ed in a minute!
急いで!あと1分で無効になっちゃうよ!

I’ll be back in two ticks.

これはどうでしょう?

tickは「(カチカチという)時計の音」のこと。時を刻むという動詞になることもありますがここでは名詞です。「カチカチと2回音がする間に」と考えれば想像しやすいかもしれません。「2秒で」ではなく「すぐに」「たちまち」という意味です。

I’ll be back in two ticks.
すぐに戻るよ。

ちなみにカチカチが1つになっても意味は同じです。in a tickは「1秒で」ではなく、in two ticksと同様に「すぐに」です。

The bus is leaving in a tick!
すぐにバスが出るよ!

That was just my two cents.

「それは私のただの2セント」ではありません。

実はtwo centsとは「価値のないもの」という意味もあります。「電話やメールなどがまだない時代、自分の思いを伝える手段だった手紙の切手代が2セントだったから」など、これも由来は諸説あります。

これに所有格代名詞を付けてone’s two centsとすると、「あまり求められていない誰かの考え」という意味になります。自分の意見であればmyを使います。例えば、自分の意見を謙遜して言う場合です。

That was just my two cents.
私がそう思っただけです。

I’d like to put my two cents in.
私見を述べさせてください。

謙遜ではなく「個人的な意見である」という意味の場合もあります。ソーシャルメディアで、こんな表現を見かけたことがあります。

Smoking should be illegal ... just my two cents.
喫煙は違法にするべきだよ・・・個人的な意見だけどね。

143

次はこちら。主にメールで使います。

僕自身は使ったことがありませんが、大学生のめいのメールにこの表現が書かれているのを目にしてしまったことがあります。これはI love you.という意味で、主に恋人同士で使われます。数字は単語の文字数を表します。メールの最後にこの数字を入れて気持ちを表現するのです。

文字数を表しているので、4はloveではなくmissになる場合もあり、I miss you.として使われることもあるそうです(知りませんでした)。また最初に「-(マイナス)」を入れると、反対の「嫌い」の意味に変わるらしいです(これも知りませんでした)。そして3文字である、youも文脈によっては同様に3文字のhimやherを表すこともあるようです(全く知りませんでした・・・)。

How do you find the difference? (その違いはどう判断するの?)と僕が尋ねると、めいは笑いました。It depends.(そのとき次第よ)。クラスメートとメールでこんなやりとりをするそうです。

Brad? Seriously? You know, -143!
ブラッド?マジで?私、あいつ、嫌いだもん!

若者言葉ですが、たまに映画やドラマでも見かけることもあり、興味深いですよ。

今回はここまで。最後までお読みいただきありがとうございました。次回も数字を取り上げます。お楽しみに!

カン・アンドリュー・ハシモト
カン・アンドリュー・ハシモト

アメリカ合衆国ウィスコンシン州出身。教育・教養に関する音声・映像コンテンツ制作を手掛ける株式会社ジェイルハウス・ミュージック代表取締役。英語・日本語のバイリンガル。公益財団法人日本英語検定協会、文部科学省、法務省などの教育用映像(日本語版・英語版)の制作を多数担当する。また、作詞・作曲家として、NHK「みんなのうた」「おかあさんといっしょ」やCMに楽曲を提供している。9作目となる著作『外国人に「What?」と言わせない発音メソッド』(池田書店)が発売中。

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