「今日はTabataをやります」で海外のフィットネス・ジムがざわめくわけ【世界のニホンゴ調査団】

「世界のニホンゴ調査団」の第23回は、アメリカ・カリフォルニアからライターの角谷 剛さんがリポートします。取り上げるニホンゴは「Tabata」。フィットネス・ジムやアスリートの間で広く知られる言葉だそうです。さて、その意味は?

ジムや学校の部活で広く使われる言葉

日本国内より海外で有名な日本人は少なくありません。私が専門とするスポーツやフィットネス関連の分野では、立命館大学教授の田畑泉氏がそうした日本人のひとりです。田畑氏の名前から取られた「Tabata(タバタ)」という言葉が海外のジムや学校の部活動でも広く使われています。

例えば、あなたがアメリカでどこかのフィットネス・ジムに行ったとしましょう。そこでもしインストラクターが「今日は○○をTabataでやります」と言えば、そこにいるほぼ全員が聞き返すことなく、そして「うわー、きつそー」といった反応を示すはずです。○○の中には、「腕立て伏せ」とか「ジャンピングスクワット」とかのありとあらゆる種類のワークアウト名が入ります。

そもそもTabataとは何か?

田畑泉教授のオリジナル研究は固定自転車を用いて行われた。

Sandwich(サンドウィッチ)伯爵が発明したと言われる食べ物を表す言葉が普通名詞として世界各地で使われているように、Tabataもまた田畑教授の名前から離れて、あるトレーニング方法を示す言葉として使われています。

ちなみに、オックスフォード英語辞典のオンライン版にもTabataという単語がnoun(名詞)としてちゃんと記載されています。そこではTabataの意味を以下のように定義しています。

form of exercise in which you do short periods of very hard physical activity with shorter periods of rest in between, typically over a period of four minutes
非常に激しい身体活動を短時間行い、その間にさらに短い休憩を挟む運動形式で、通常は4分間で行われる。

Tabata workouts usually involve a person performing 20 seconds of intense exercise, followed by 10 seconds of rest, repeated eight times.
タバタ・ワークアウトとは、通常20秒間の強度の高い運動の後に10秒間の休息を取り、それを8回繰り返すというものである。

つまりはTabataとは合計所要時間がたった4分間足らずのインターバル・トレーニングのことなのです。

田畑教授の研究の結果、この方法によってアスリートの心肺能力が飛躍的に向上することが証明されました。しかも通常なら同時に鍛えることが困難なはずの有酸素エネルギー運動能力(長距離走など)と無酸素エネルギー運動能力(短・中距離走など)の両方に大きな効果があることも分かっています。

たった4分間だけでそんな効果があるとはまるで魔法のようだ、と思う人は多いでしょう。しかし、1回だけでも実際にやってみると、これがとてもとてもきついトレーニングであることが実感できるはずです。

Tabataの後で、アスリートたちが床に転がって息も絶え絶えになっている光景はさほど珍しくありません。

よく売れているTabata関連商品の数々

Tabata Timerの一例

Tabataの人気がいかに高いかは、その名を冠した様々な関連商品が数多く販売されていることでも分かります。たとえば、英語版のAmazon.comでTabataと検索してみてください。たくさんの書籍やDVDがヒットするはずです。

スマホ用アプリにはいくつものTabata Timerが見つかりますし、Tabataに特化した楽曲プレイリストを提供するTabata Songsという名の会社まであります。

タイマーにしろ、楽曲にしろ、要するに20秒オン、10秒オフを8回繰り返すだけのシンプルなものなのですが、こうした商品が実際によく売れているのです。

Tabata Songs はYouTubeにも公式チャンネルを持っています。その中にある動画の一つは、あの映画『ロッキー3』の勇壮な主題歌『Eye of the Tiger』をバックに縄跳び二重跳びをTabataの時間形式で行っているものです。なんとなく、海外のジムでTabataがどのように行われているかを想像してもらえるでしょうか。

Tabataはどのように解釈されているか

Tabata 縄跳び二重跳びを終えて倒れ込む筆者。

「What is TABATA?」(タバタとは何か)とタイトルが付いた上の動画ではインストラクターが次のように説明しています。

A Tabata workout is 20 seconds of work followed by 10 seconds of rest, repeated eight times for a total of four minutes. The goal here is to choose an aerobic exercise that you feel you can do safely at a high intensity for the entire duration of a workout.

タバタ・ワークアウトは20秒間の運動の後に10秒間休み、それを8回繰り返し、合計で4分間です。ここでの目標は、あなたが安全かつ高い強度でワークアウト時間中ずっと行うことができる有酸素運動を選択することです。

アメリカのジムに行って、インストラクターにタイトルと同じ質問をすると、多分似たような答えが返ってくるでしょう。そうでなければもぐりかもしれません。

Tabataは名詞だと先に述べましたが、その時間形式のワークアウトを行うという意味の動詞としても使われることもあります。

例えば、世界最大のフィットネス団体であるクロスフィットのワークアウトの一つに「Tabata This」と呼ばれるものがあります。ロウイング、スクワット、懸垂、腕立て伏せ、シットアップを順番にTabataのセットで行い、各セット間に1分間の休息を挟むものです。

まとめ

日本のトレーニング科学は遅れているとはよく言われることです。実際、最新の理論と呼ばれるものの多くが欧米から輸入されたものです。その意味で、日本発祥のTabataが海外で広く受け入れられている事実は注目されるべきでしょう。田畑教授の功績は非常に大きいと言えます。

トレーニング好きの友達ができたら、「タバタをやろうよ」と誘ってみましょう。正確な文法で話すことを心掛けるなら、“Let’s do a Tabata workout.”と言うべきですが、もっとくだけて、“Let’s TABATA !”でもきっと通じます。

海外書き人クラブ
文・写真:角谷 剛

米国カリフォルニア州アーバイン在住(ロサンゼルス近郊)

海外書き人クラブ:https://www.kaigaikakibito.com/blog/

連載「世界のニホンゴ調査団」

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