ランドセル、アンケート、アルバイト。どれも和製英語ではありません【アンちゃんが語る和製英語の魅力】

日本で言語の研究を続けるアンちゃんが、日本で生まれた和製英語を取り上げる連載の第2回。今回はちょっと視点を変えて、和製英語ではない「外来語」についてお話しいただきます。

カタカナ言葉が和製英語とは限らない!

「和製英語」という言葉をよく耳にしますが、「和製英語」って一体なんでしょう?考えたことはありますか?

まず、和製英語は英語ではありません。和製英語は日本人が独自に作った、日本人のためにある日本語です。これまでに和製英語の本や辞書をたくさん読んできましたが、この「和製英語」がややこしいのは、本によって定義が違うことです。ときには「あれ?それは和製英語じゃないでしょ?」と思うこともあります。

そこで回は、よく和製英語に間違えられるカタカナ言葉について話しますね!つまり、英語ではない言葉から取り入れられた外来語です。

では、始めましょう!

アルバイト(ドイツ語)

ある和製英語の本に「アルバイト」という単語が出ていました。でも、「アルバイト」はドイツ語から入ってきた外来語です。ドイツ語のarbeitには「働く」という意味があります。

古い外来語の多くはヨーローパから来ています。最も古い単語は「パン」だと言われています。ポルトガルの宣教師たちと一緒に入国したバイ。ポルトガル語では「pao」と言います。

なお、最近の外来語の8割以上は英語から来ています。だから、多くの日本人は外来語が全部英語から来たと思い込んでいます。私の学生たちの多くも、英語以外の外来語が区別できなくて、そのまま英語の文中に「アルバイト」を入れたりします。例えば・・・

Sensei, I have my arbaito today.

私が「は?」と聞き返すと、頭が良い学生は、他の作戦を考えます。発音を変えてみるんです。こんなふうに。

I have my ARUbaito today!!

はは。発音をどう変えても、英語じゃない単語は英語にはならないバイ!と、私は笑いながら学生に言います。「アルバイト」を「バイト」に略す学生もいますね。

I have my bite.

笑える。言葉は本当に面白い!ドイツ語の「アルバイト」を略した「バイト」は、「和製ドイツ語」と言っていいかな?ちなみに 、「アルバイト」は英語でpart-time jobと言います。

I’m broke , so I have to look for a part-time job.
お金がないから、アルバイトを探さないといけない。

でも、part-time jobという言葉自体は、それほど多く使われません。時間や頻度(明日、週3回、去年など)を交えて、workを使うのが一番いいでしょう。

I work at a convenience store three times a week.
週3回コンビニでバイトしています。

I have to work tomorrow, so I can’t go to karaoke.
明日バイトがあるから、カラオケに行けない。

Where do you work?
どこでバイトしているの?

part-timeと言わなくていい理由は、学生ならpart-timeで働いていることが当たり前だからです。

I gotta work today.
今日はバイトに行かないと。

I work at McDonalds.
マクドナルドでバイトしています。

こんなふうに言いましょう。

アンケート(フランス語)

次は「アンケート」についてしましょう。アンケート はフランス語のenquetteから来ました。これも学生に言われたことがあります。

Sensei, can you write this anketo?

やっぱり、多くの学生は全ての外来語は英語だと思っているようです。英語では次のように言います。

Can you fill out this questionnaire?
この アンケート に答えていただけますか。

「アンケート」は、英語でquestionnaireと言います。そして、この場合、write(書く)ではなくて、 fill out (空欄などに記入する)が正しいです。「 アンケート 」に似ている単語には、surveyががありますが、こちらは日本語の「調査」に近いですね。これもfill outと一緒に使います。

Can you fill out this survey?
この調査に回答いただけますか。

少しスラングっぽく言うとこんな感じです。

Can you do this survey?

マルシェ(フランス語)

来週、私のの中学校では「マルシェ」が開かれます。私はこの単語はなんとなくフランス語っぽいと感じていました。でも、この「マルシェ」も多くの日本人は英語だと思っているかもしれません。

いろいろ調べたところ、「マルシェ」は思った通りフランス語から来ていました(marche)。フランス語での意味は「市場」ですが、主な意味は「朝市」だそうです。日本語の「マルシェ」の使い方は幅広いです。野菜や果物を販売する場合もあれば、ハンドメイドの物を売るときもあります。

私のイメージでは「マルシェ」は「市場」よりおしゃれな感じがします。それが外来語の魅力でしょうか?外来語で表現すると、なんとなく格好よくておしゃれな感じがすると考える人は少なくありません。ちなみに私が今年行ったマルシェでは、ハンドメイドの雑貨が多く売られていました。

では「マルシェ」は英語でなんと言えばいいのでしょう?

アメリカでは、野菜や果物、手作りの物が売られる「市場」をfarmer’s marketと呼ぶことが多いですね。私の故郷のfarmer’s marketは、毎週土日に開かれます。そこでは肉や野菜、手作りのお菓子、洋服などが販売されています。

「マルシェ」に似たような単語に、「フリーマーケット」があります。出店などが並ぶイメージは一緒ですが、やっぱり「マルシェ」がカッコイイバイ!フリーマーケットは英語でflea market。中古品が多く出されているところです。

日本の人はよく、このfleaをfreeと間違えます。flea marketの語源はフランス語の「のみの市」です。売っている物が古いから、ひょっとしたら「のみ」がいるんじゃない?というのが名前の由来という説があります。もう一つの説は、人がバリ多くてのみのようにいるから、そう呼ばれるようになったというもの。ちなみに日本で初めて「フリーマーケット」が開かれたのは、1979年だそうです。

マルシェと同じで屋台が並んでいても、音楽演奏などがメインのイベントはfestivalと言います。日本語も「フェスティバル」ですが、略した「フェス」や「フェスタ」のほうをよく耳にします。英語では、festivalをfesと略すことはないので、「フェス」と言っても通じないかもしれません。

で、ここでの結論はというと・・・「マルシェ」という単語はバリカッコいい!!

カッパ(ポルトガル語)

日本ではがよく降るから、「カッパ」は大事です。「カッパ」の語源は英語ではなくて、ポルトガル語の「capa」です。

私は「ポルトガル語」という言葉がなかなか言えません。これより言いにくいカタカナ語はないと思う!まあ、「離乳食」という日本語も発音しづらいですけれど・・・。

話が脱線しました。戻します!「カッパ」は英語ではraincoatです。そのままレインコートとカタカナにもなっていますね。

It’s going to rain today, so don’t forget your raincoat!
今日、雨は降るからカッパを忘れないでね!

ランドセル(オランダ語)

数カ月前、「ラン活」という言葉を初めて聞きました。増税前に新1年生のランドセルを必死に探すことに意味があるんだそうです。さすが、想像力がハンパない日本人だ!

ランドセルの語源となったオランダ語の「ransel」という単語は、たまに英語の文書で見かけます。もともとは日本の兵士たちのリュックみたいなものでしたが、1885年に通学かばんとして使われるようになったそうです。

アメリカにはランドセルは存在しません。その代わり、毎年入学する前に新しいリュックサックを買う習慣があります。「リュックサック」はイギリス英語で、アメリカではbackpack(バックパック)と言います。

You forgot your backpack in the library.(アメリカ)
You forgot your rucksack in the library.(イギリス)
図書館にリュックを忘れたよ。

ここで問題がもう一つ出てきます。それは、「リュック」は和製英語かどうかということです。アメリカで使われていないからといって、他の英語圏の国でも使われていないとは限りません。他の国で使っているなら、それは和製英語とは言えないと私は思います。その点で、「リュックサック」はイギリスで使われているから和製英語ではありません。ただ「リュック」に略すと、和製英語になってしまいます。面白いやろう?

他にも同じようながあります。

アイスクリーム(外来語) アイス(和製英語)
サンドイッチ(外来語) サンド(和製英語)
スマートフォン(外来語) スマホ(和製英語)

まとめ

英語ではない和製英語は他にもたくさんあります。でも、この記事の字数がバリ多くなるから、今回はここで終わりにします!皆さんに覚えていただきたいことは、全ての外来語が英語ではないということ。そして、英語ではない外来語が全て和製英語ではないということです。

これからもアンちゃんと一緒に、楽しく外来語と和製英語を勉強しましょう!

アン・クレシーニ
アン・クレシーニ

アメリカ生まれ。福岡県宗像市に住み、北九州市立大学で和製英語と外来語について研究している。著書に『アンちゃんの日本が好きすぎてたまらんバイ!』(合同会社リボンシップ)。自身で発見した日本の面白いことを、博多弁と英語でつづるブログ「アンちゃんから見るニッポン」が人気。Facebookページも更新中! 写真:リズ・クレシーニ

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