連載「ここから始める英検準1級」。今回、取り上げるのは、1次試験のライティングです。『完全攻略!英検準1級』(アルク刊)の著者、神部孝さんに詳しく教えていただきましょう。
目次
ライティングの概要
今回取り上げるライティングは、下の表の色が付いているところです。
ライティングの注意点
ライティング問題では次を注意しなければいけません。
- リーディング問題の一部なので、他のリーディング問題と込みで90分で仕上げる。
- 独立したセクションとして採点され、満点だと750点が付く。
ライティングの評価点
ライティングは次の4つのポイントで評価され、それぞれ4点で合計16点になります。その16点が750点に換算されます。
内容:課題で求められている内容が含まれているか
構成:英文の構成や流れが分かりやすく論理的であるか
語彙:課題にふさわしい語彙を正しく使えているか
文法:文構造のバリエーションが正しく使えているか
英検のサイトではライティングに対するアドバイスが書かれています。参考にしましょう。
読んでもらえる文章を書く
英検2級のライティングの記事でも書きましたが、読む人を考えて書くことが大事です。「読め!」ではダメ。読んでもらえる文章を書くことが大事です。
読み人ファーストに!
私の字は奇麗ではありません。小学校のときに「○△小学校の三大悪筆」の一人でした。今でも奇麗に書けないまま年をとってしまいました。しかし、試験のときには努力をして「採点者が読みやすい文字で、正しい文章を書く」ことを心掛けています。
筆記体よりブロック体
奇麗な筆記体は読んでいて気持ちがいいものです。そんなすてきな字を書く皆さんを尊敬しますが、テストではブロック体で書きましょう。筆記体だとスペリングが正しいのかどうか、採点者が判断できない場合があります。試験ではぜひともブロック体で書いてください。
筆記体の例
ブロック体の例
例題
それでは、実際の試験と同型式の問題を見ながら、ライティングの基本を見ていきます。最初の数字の4は「大問4」の番号です。まず、指示文を読みましょう。
[4]English Composition
● Write an essay on the given TOPIC.
● Use TWO of the POINTS below to support your answer.
● Structure: introduction, main body, and conclusion
● Suggested length: 120-150 words
● Write your essay in the space provided on Side B of your answer sheet.
Any writing outside the space will not be grades.
TOPIC
Agree or disagree: The number of people who go to movie theaters will decrease in the future.
POINTS
● Video games
● Luxurious theaters
● Online videos
● Cinema complex
指示文の訳
英作文
● 所定の「トピック」についてエッセーを書きなさい。
● 下記の「ポイント」のうち「2つ」を使い、あなたの解答を裏付けなさい。
● 文章の構成:導入、本文、結論
● 推奨される長さ:120~150語
● 解答用紙のB面に当たる所定の場所にエッセーを書きなさい。
所定の場所以外に書かれたものは採点されません。
トピック
賛成あるいは反対:映画館へ行く人々の数は将来、減少する。
ポイント
●テレビゲーム
●豪華な映画館
●オンラインで配信される動画
●複合型映画館
指示文ではIntroduction、Main Body、Conclusionを書くように指示しています。2級では2つの理由を述べるだけですが、準1級からは文章構成が重要になってきます。それでは、順を追って説明しましょう。
【Step 1】Introduction(導入)部分
第1文では「言い換え」と「強い主張」が大事です。トピックを見ましょう。
Agree or disagree: The number of people who go to movie theaters will decrease in the future.
このトピックのままに解答すると:
I agree that the number of people who go to movie theaters will decrease in the future.
面白くないですし、皆さんの作文能力が高くないように感じてしまいます。それでは、TOPICにある表現を変えてみましょう。
解答例
I quite agree with the statement that people will go to the movie theater less often in the future.
(将来、人々が映画館へ足を運ぶ頻度が下がるだろう、という考えに大いに賛成します)
下線の部分が大事です。TOPICにある表現を言い換えています。
そして、文の出だしはI agree with the statement (idea) that ... とし、もっと強く意見を主張したいときには、quite、strongly、certainlyなどの副詞を使いましょう。また、強調のdoも有効です。
I do believe that ...(私は・・・と強く信じる)
【Step 2】Main Body(本文)部分
Step 2では、理由付けとなるMain Bodyの書き方を見ましょう。
POINTSを選択
準1級では2つの理由付けをPointsから選択します。1つでも3つでもダメです。必ず2つ選択してください。私は、次の2つを選択しました。
● Video games
● Online videos
実は私はテレビゲームをしないので、よく知らないのですが、書きやすいと思いビデオゲームを選びました。2つ目のオンラインビデオは見ています。それでは、書き方を見ましょう。
2つのBodyの書き出しは次のようなペアが分かりやすく、楽だと思います。
First、Second
Firstly、Secondly
For one thing、On the other hand
1つ目の理由(Body 1)は:
First, young people have got used to playing video games.
(第1に、若い人たちはビデオゲームで遊ぶことに慣れてきています)
2つめの理由(Body 2)は:
Second, we can enjoy watching movies online.
(第2に、私たちはオンラインで映画を見ることができます)
1文だけではなく、それぞれのBodyに肉付けをすれば2つのBodyが完成します。
【Step 3】Conclusion(結論)部分
conclusionの書き方には2通りあります。
① Summary Conclusion
要約と言われるものです。日本語では「上記の理由により~だ」という流れ。Body 2の段階で既に130語を超えていそうな場合には、summary conclusionが有効でしょう。
② 情報を追加する結論
Body 2の段階で100語程度の場合には、①のsummary conclusionだけでは語数が足りなくなります。情報を追加することにより、要求される120~150語の間に持っていきます。
それでは、それぞれの書き方を見ましょう。
Summary Conclusionの書き方
Bodyの内容を要約するのですから、書き出しは次のようになります。
For these reasons, ...(これらの理由から)
In conclusion, ...(結論として)
On the whole, ...(全体として)
これらの書き出しの後に、まとめの文章を入れるのがよいです。
情報を追加する結論の書き方
書き出しには以下のようなものがあるでしょう。
In addition, ...(加えて)
Furthermore, ...(さらには)
気を付けてほしいのは、ここで加えるのはBodyで挙げた2つのポイントの補足だということです。この結論部分にもう1つポイントを付けた場合には、減点される可能性があります。
Conclusionの仕上げ
それでは、映画館の観客数のトピックに戻りましょう。ここでは、要求される語数を満たすため、①のSummary Conclusionと②の情報を追加する結論を作ります。
まず、Summary Conclusionです。
For the reasons stated above, I definitely believe the popularity of movie theater will decline in the future.
(上記の理由で、映画館の人気は将来、落ちることになるだろうと強く思います)
次に、情報を付加する結論を作ります。映画自体は衰退するとは述べていませんから、次のような内容はどうでしょうか。
I do believe that people will continue to enjoy watching movies because people like stories.
(人々は物語が好きなので、引き続き映画を楽しむことは間違いないと思います)
このままでは結論になりません。ですから、①と合体しましょう。
そのままつなげて①→②の順序だと、不自然な流れですね。最後に「人は映画が好きだから見続ける」という内容を持ってくるのは、ロジックとして厳しいと思います。
それでは、②→①の順序だとどうでしょうか?そうすると、すっきりしそうです。ここでは、however(しかしながら)を接続副詞として使ってみます。
I do believe that people will continue to enjoy watching movies because people like stories. However, for the reasons stated above, I definitely believe popularity of movie theaters will decline in the future.
(人々が引き続き映画を楽しむことは間違いないと思います。人は物語が好きですから。とはいえ、上記の理由で、映画館の人気は将来、落ちることになるだろうと強く思います)
Introduction→Body 1&2→Conclusionの流れが出来ました。最後にBodyを肉付けして解答を完成させましょう。
ここではインデントスタイル(※)で書いてみます。3文字程度をインデントします。英検S-CBTでタイプするときも、3文字インデントが奇麗に見えます。
※ インデントスタイル:パラグラフの第1文の字下げをする方法です。このスタイルでは、パラグラフが見分けやすくなります。
解答例
I quite agree with the statement that people will go to the movie theater less often in the future. My opinion is based on the following considerations.
First, young people have got used to playing video games. They are accustomed to virtual reality. What is more, they can enjoy movie-quality games on their smartphones. Thus, younger generations may ①prefer games to movies.
Second, we can enjoy watching movies online. I myself use an online video service. Furthermore, I sometimes go to video rental shops to borrow videos. Prices for these types of services are considerably ②lower than those of movie theaters. ③If there were no such services, I would visit movie theaters.
I do believe that people will continue to enjoy watching movies because people like stories. However, for the reasons stated above, I definitely believe popularity of movie theaters will decline in the future.
(145語)
解答例訳
将来、人々が映画館へ足を運ぶ頻度が下がるだろう、という考えに大いに賛成します。私の見解は、以下の考察に基づいたものです。
第1に、若い人たちはテレビゲームで遊ぶことに慣れてきています。仮想現実に親しんでおり、さらには、映画品質のゲームをスマートフォンで楽しめてしまいます。ですから、若い世代の人たちは映画よりもゲームを好むかもしれません。
第2に、私たちはオンラインで映画を見ることができます。私自身、オンラインの動画配信サービスを利用しています。さらに、時々ビデオ・レンタル・ショップへ行き、ビデオを借りています。この種のサービスの価格は、映画館の入館料よりもはるかに安いものです。もし、こうしたサービスがなければ、映画館を訪れることになるでしょうが。
人々が引き続き映画を楽しむことは間違いないと思います。人は物語が好きですから。とはいえ、上記の理由で、映画館の人気は将来、落ちることになるだろうと強く思います。
加点対象
「構文・語法の多様性」を文章に持たせることにより加点対象になります。それでは、解答の3カ所のマークを見ましょう。
① prefer A to B
動詞を正確に用いることにより、語法の多様性を持たせています。
② 比較級
比較級が使えることを示します。比較級や最上級は比較的使いやすい構文です。
③ 仮定法
仮定法も使いやすいです。正確に使うことにより加点対象となります。
普段の勉強
普段から英字新聞や英文のネットニュースに触れて、さまざまなトピックに対処できる力と自分の意見を述べる力を養うようにしましょう。
面接のスピーキングと同様に、ライティングによりoutputする能力を磨くことは国際社会の中では重要なサバイバル能力だと思って努力しましょう。
参考図書
準1級に合格した先、英検1級、IELTS、TOEFLへの挑戦を考えている方は、上のテキストが良いかもしれません。ディベートの練習に最適です。このテキストの良いところは一つ一つのトピックについてPro(賛成)とCon(反対)の両方の意見を掲載している点です。
『総合英語One』は、構文や語法の確認のための文法書としておすすめです。その他、次の参考書もライティングを学ぶのにおすすめです。
神部孝さんの著書
トップ写真:Jeremy Cai from Unsplash
SERIES連載
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