TOEIC満点でも英検1級の受験には苦戦したという英語コーチの星名亜紀さんが、英検の二次試験対策でやるべきことについて、ご自身の経験を交えて紹介します。星名さんは初受験の失敗から何を学んだのでしょうか。
英検1級合格までの道のり
皆さんこんにちは!英語コーチの星名です。第4回の今回は、英検1級二次試験(スピーキング)の学習法と、私が失敗から学んだことについてお話ししたいと思います。
私の英検合格までの道のりは下のような感じでした。
- 2019年12月 英検1級を受けようと決める
- 2020年6月 初受験
解答速報で恐らく一次は合格できそうなことを確認後、二次対策をスタート- 2020年8月 二次試験受験
不合格 588/850(合格基準602)惨敗!
スコアシートを日本に置いて渡米してしまったので詳しい各スコアが分からないのですが、最初のショートスピーチが全然できずに10点中5点しか取れなかったことを覚えています。- 2020年11月 2回目の二次試験受験
合格 634/850(合格基準602)
Short Speech 8/10
Interaction 9/10
Grammar and Vocabulary 8/10
Pronunciation 7/10
合格したときのスコアも合格基準を大幅に上回るスコアではありませんが、1回目の受験時と比べると手応えもありましたし、試験官と「話して楽しい」と思えるくらい会話をすることができました。
ここからは1回目の失敗を通して、何が間違っていたのか、どうしたらより効果的な学習ができたのかを振り返ってみたいと思います。
実は、一次対策から間違っていた?
二次試験のスピーキング対策として、一次試験の英作文対策をしっかりと行うことが実はとても効果的です。私は英検を受けると決めるまで、語彙や文法を学んだり、リスニング教材を使ってシャドーイングをしたり、長文問題を精読したりと、TOEICのリスニングとリーディングをメインに学習してきました。この学習は全ての基礎となるので決して無駄にはなりませんし、インプットを十分にしないと、アウトプットはできるようになりません。
しかし、読めて聞けるからといって自動的に話せたり書けたりできるようになるわけではありません。私はこのとき、スピーキングとライティングの自分の学習スタイルを確立していませんでした。英作文の対策といってもどんなことをやったらよいのかよく分からずに、一次対策としては、TOEIC試験対策でなじみのあるリスニングと語彙問題、長文読解しかほぼ行いませんでした。英作文は後からやろうと思いつつ、なんとなく英作文のテキストを音読したり、書き写したり、これで力が付いているのだろうかと疑問に思いながら、最後まで実力の伸びを感じられる対策ができていなかったのです。
英作文の対策をする中で、「国際問題」「経済」「環境」「教育」などについて情報収集をし、自分の意見をまとめる。テキストの模範解答に頼らず、テキストほどの洗練された文章でなくても全く問題ないので、自分の意見とその具体例(意見の根拠となるもの)を述べられるようになる・・・ということをしっかり行うことが、二次の対策にも直結します。書いた英作文はしっかりと添削をしてもらい、その完成した英作文を何度も音読することも効果的です。テキストの丸写しではなく、自分の調べた情報で、自分の感情を込めて書いた文章だからこそ、その中で使った語彙や表現が定着するはずです。
さらに、「英作文で得点を稼いで合格する!」という戦略を立てている方がたくさんいるほど、英作文はしっかり対策すれば得点源となります。ですので、二次対策としてだけでなく、一次に最短ルートで合格するためにも英作文の対策は大切なのです。
使いこなせない難しいテキストに手を出していた
英検二次対策としては、『英検1級 面接大特訓』をメインに使用しました。
面接での頻出トピックのランキングが明記され、16のテーマ、43問のQ&Aトレーニングが掲載されています。また、一方の立場からの意見だけでなく、反対の立場で話すのであればどのような論点があるかも掲載されています。「試験官の反論にはこのように答える!」のコーナーも大変参考になりました。
しかし、ここで私のした失敗は、この著者がとても良かったので、同じ著者の他のテキストにも手を出してしまったことです。二次対策としてはこちらの1冊で十分すぎるほどの情報が盛り込まれているにもかかわらず、新しいテキストを手にすることで得られる安心感が欲しく、つい新しいテキストを購入してしまいました。結果、どれからやるべきかいつも迷うようになり、どのテキストも中途半端になってしまったのです。
TOEIC学習でも同じですが、まずは1冊を繰り返し解き、ボロボロになるまでやり込むことが大切なのをすっかり忘れていました。1回目で不合格となった後は、テキストは『英検1級 面接大特訓』のみ。このテキストを信じて、この1冊のみに取り組みました。
自分の言葉で表現する練習をしていなかった
二次対策として、テキストの模範解答を暗唱したり、論点をそのまま覚えたりしようとする方もいるかもしれません。テキストを読んで、「そんな考えもあったのか」と新しい論点に気付くことは効果的です。しかし、私が思う大切なことは、「自分の言葉で表現する」ということです。
テキストには立派すぎるほどの模範解答が書かれているので、そのまま使いたくなる気持ちも分かります。しかし、その模範解答はあなたの意見ではありません。模範解答のような立派で洗練された回答ができなくても、十分合格点はもらえます。試験は暗唱大会ではなく、トピックについて自分の意見を論理的に話すことができるか、試験官とのコミュニケーションが図れるかが評価されます。
1回目の受験では、私はショートスピーチで10点中たったの5点しか取れませんでした。「医療」に関するトピックを選んだのですが、話している間中、テキストで覚えた英文をどのように組み合わせて自分のスピーチのようにするかに必死でした。結果、私の考えや思いの全くこもっていない説得力のないスピーチとなりました。
不合格となってからは、それぞれのトピックの背景にあるものや、話題になっていることをインターネットやニュースで調べ、それに対して自分はどう考えているのかを書き出すようにしました。テキストに書かれた論点を参考にしつつ、必ず自分のスピーチを作るようにしました。そして、そのスピーチを暗唱するくらいまで何度も音読しました(当時住んでいたアパートから歩いて5分のところに海があったので、よく一人で砂浜を散歩しながらスピーチ練習をしたものです・・・)。
2回目の受験では、ショートスピーチは8点だったものの、その後の試験官からの反論にしっかり意見を述べることができ、質疑応答(Interaction)では9点を取ることができました。一つずつのトピックに関してさまざまな情報を集めて背景知識を身に付けたことと、気持ちを込めて自分の言葉で表現する練習をしっかり行ったことが役立ったと感じています。
一見遠回りのように見えることが、試験対策だけでは終わらない、皆さんの「本当に使える英語のコミュニケーション力」を伸ばしてくれます。今回お伝えしたことを参考に、ぜひ二次試験対策に取り組んでみてください。
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