「チョベリバ」「チョベリグ」を今どきの英語で表現すると?【アンちゃんの死語の世界】

連載「今よみがえる 死語の世界」の第3回。今回、アン・クレシーニさんが取り上げる死語は1990年代に流行した「チョベリバ」「チョベリグ」。この代わりに今使われている日本語は?そして、今どきの若者英語で表現するとどうなるのでしょうか。

常に進化し続ける若者言葉

私には高校生の娘が2人、中学生の娘が1人います。長女は今、アメリカ留学中です。次女と三女は日本の公立学校に通っていますが、彼女たちが話す言葉になかなかついていくことができずに困っています。ただ、私は日本に住んでいるので、英語よりも日本語の若者言葉の方が理解しやすい気がします。今日は、娘が「とりま、テニスコートに連れて行ってくれる?」と言いましたが、「とりま」は「取りあえず、まあ」の省略であると、すぐに分かりました。ちょっと自慢げに「了解!」と答えました。

取りあえず「やばい」「エグい」「怪しい」「キモい」「ビミョー」「奇麗くない?」「ダルっ」くらいが分かれば、娘たちとなんとか会話ができます。でも、アメリカにいる長女が使う言葉は、私には知らない外国語のように聞こえます。

常に進化する若者言葉は、よく大人の批判対象となりますが、私は大好きです。というのも、若者言葉は、その時代の価値観や想像力を表すものだと思うからです。言葉は生き物ですから、今の高校生が使っている言葉はそのうちに消えてしまうでしょう。「とりま」もいずれ死語になるに違いありません。そして別の、新しい想像力があふれるものが代わりに生まれてきます。

1990年代、私の世代が高校生だった頃に使っていた言葉は、今の若者には通じないものが多いです。分かったとしても、「ダサい!使わないで!」と言われそうです。

今回は、そんな90年代の女子高生の言葉を代表する「超ベリーバッド」と「超ベリーグッド」について話していきたいと思います。

それではアンちゃんと一緒に、死語の世界を楽しく旅しましょう!

「チョベリ」兄弟の誕生

「超ベリーバッド」は、90年代の典型的なコギャル語です。コギャル語は、ギャルの女子高生が使う言葉でした。日本語の「超」と英語の「very bad」から生まれた単語です。「超」は「すごく」の意味なので、意味は very, very badです。略すと、「チョベリバ」になります。一方、「超ベリーグッド(チョベリグ)」は反対の意味で、very, very goodです。

なぜこの言葉は、はやり出したのでしょうか。理由はいろいろあると思いますが、英語のveryとbadが元々日本人になじみがあり、とても発音しやすいことが大きいと思います。例えば、reallyはveryとほぼ同じ意味です。また、terribleはbadと似ています。しかし、発音の難易度から考えると、「超〜リアリーテリブル!」が日本語に定着することはなさそうだと簡単に想像がつきます。

さて、この「チョベリ」兄弟は90年代の半ばに急激に人気が出ました。テレビドラマで使われたおかげで、超ベリーバッドは1996年に「ユーキャン新語・流行語大賞」のベストテンにも入りました。SMAPの「SHAKE」という曲で「チョーベリベリ最高」と歌うほどで、しばらくの間、チョベリ語は絶好調でした。でも今は、若者が一番使いたくない、恥ずかしい若者言葉にランクインするようになっています。

では、の若者はその代わりに何を使っているのでしょうか。

皆さんもご存じだと思いますが、今の若者が主に使っているのは「最高」「最悪」「やばい」「エグい」などです。「やばい」の語源については別の記事が書けそうなほど面白いです。元々の意味は「悪い」とか「危ない」ですが、いつの間にか「やばい」は「最高」と同じ意味にもなりました。つまり、「極めて良い」「極めて悪い」という2つの意味があるので、文脈がないとその意味は分かりません。自分のテストの結果を見て「あ、やばっ!」と言った人がいても、実際、結果が良かったのか悪かったのかは、その発言だけでは判断できない、ということもあるでしょう。

「エグい」は「やばい」の親戚です。元々、「気持ち悪い」「醜い」「グロい」というような意味でしたがこれも「やばい」と同様、「最高」と同じ意味を持つようになりました。

つまり、今の「やばい」と「エグい」は、90年代の「超〜ベリーグッド」と「超〜ベリーバッド」の両方を意味します。

「やばい」と「エグい」については、若者言葉に詳しい方は分かるかもしれませんが、中高年にはハードルが高いかもしれません。ある日、英語で交流することが目的のイングリッシュカフェに行ったときに、高齢の方に「アン先生は大学で教えているから、よく若者と話すよね?『やばい』って一体どういう意味ですか?どうしても知りたいんです」と聞かれたことがありました。

せっかくなので、「やばい」の例文と英訳を幾つか紹介します。

これはおいしすぎる、やばっ!
Wow, this is like totally amazing!

明日はテストやけど、ちっとも勉強してない。やばッ!
I have a test tomorrow, but I haven’t studied at all. OMG, I am in trouble!

成績がやばすぎて、きっと両親にめっちゃ怒られる。
My grades are so bad. My parents are seriously gonna get mad at me.

推しが私の写真を「いいね!」をしてくれた。やばい!
My stan liked my picture on Instagram. I’m freaking out here!

「チョベリグ」と「チョベリバ」は英語で?

「最高」と「最低」を表す英語の形容詞は数多くあります。ここでオーソドックスな単語と若者言葉を紹介していきたいと思います。

まずはオーソドックスな単語をリストアップします。

最高最低
amazingterrible
terrific awful
wonderfuldismal
greatwoeful
unbelievablehorrible
fantasticdreadful
awesome

very「ベリー」の類語もたくさんあります。例えば、really、so、super、terribly、totally、seriously、unbelievablyなどです。

では次の日本語は英語でどう表現したらよいでしょうか。

試験はどうだった?
チョベリバ!

バリエーションを紹介します。

So, how was the test?

I did horrible on it!
It was really awful!
I did so bad!
I did terrible!
My score was dreadful!
It was seriously bad!
Dreadful!
I did super bad!
My grade was totally awful!
I did really bad on it!
It was unbelievably horrible!
I bombed it!(スラング)
I totally flunked it!(スラング)
I f@@ ked it up!

最後は下品な言い方なので(@)を入れました。実は最初、この記事に入れない方がいいのではと迷いましたが、試験の結果が「チョベリバ」のときに高校生が最もよく使っている言葉だと娘に教わり、入れることにしました。

次に、「チョベリグ」を見てみましょう。

So, how was the test?

I did totally awesome on it!
It was great!
I did fantastic on it!
I did really well.
I aced it!(スラング)
I so nailed it!(スラング)
I totally killed it!(スラング)

ちなみに最もよく使われているのは、最後の3つのスラングだそうです。

もう2つのシナリオを見てみましょう。

クッキー作ったよ!食べてみて!
チョベリグ!

Hey, I made some cookies! Want some?

These are amazing!
These are so yummy!
Wow, these are incredible!
Unbelievable!
These are crazy good.
Wow, they are awesome!
These are so delicious!
Wow. They are really fantastic!

今日、どうだった?
チョベリバ。

How was your day?

It was terrible.
I had an awful day.
It was really horrible.
I had a totally horrible day.
Dreadful.
It was so bad.
I had a really bad day.
It sucked. (スラング)

アメリカの今の高校生が使う言葉は?

次に、アメリカの若者言葉を見ていきましょう。私は今、アメリカに住んでいませんし、若者でもありませんから、あまり自信がありませんが、娘たちと相談しながら説明していきます!

では、アメリカの高校生はどういう言葉を使っているか少し見ていきましょう。

まず、「超ベリーグッド」や「やばっ!」を表す若者用語は、次のような感じです。

lit
fire
awesome
bussin
smacks
hits
it

アメリカにいる娘いわく、litとfireは少し古いそうですが、まだ使っている人はいるそうです。awesomeはタイムレスで全世代に使われていますが、特に若者に人気です。また、bussin、smacks、hitsは全てvery good を表しますが、「とてもおいしい」の代わりによく使われているそうです。

次に挙げるのは「おいしい」という意味での文です。

This is fire.
This is so lit.
This sushi is bussin.
This pizza really hits .
This restaurant is it.

逆に「おいしくない」ときは、次のように言います。

This restaurant isn’t it.
The pizza doesn’t hit.
This restaurant sucks.

まとめ

「チョベリ」兄弟の寿命は長くありませんでしたが、日本語への影響は大きかったと思います。今、使われている「やばい」や「エグい」の勢いは止まらなさそうですが、これらもいずれ死語になる可能性は高いでしょう。ただ、若者だけではなく、中高年の方々が使い出したら、ひょっとすると日本語に定着するかもしれません。もし、85歳のおばあちゃんが「このお寿司はやばっ!」と言い出したら、日本語として長生きしそうですよね。

残念ながら、「チョベリ」兄弟は若者に使われなくなったため、日本語から消えてしまいました。でも、復活する可能性はあります!「チョベリ」兄弟を気に入っているなら、もう一回使ってみませんか。若者から「やばい!ダサい!やめて!」と言われるかもしれませんが。

アン・クレシーニ
アン・クレシーニ

アメリカ生まれ。福岡県宗像市に住み、北九州市立大学で和製英語と外来語について研究している。著書に『アンちゃんの日本が好きすぎてたまらんバイ!』(合同会社リボンシップ)。自身で発見した日本の面白いことを、博多弁と英語でつづるブログ「アンちゃんから見るニッポン」が人気。Facebookページも更新中! 写真:リズ・クレシーニ

本文写真:Taisiia Stupak, Zachary Nelson from Unsplash

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