ネイティブレベルにリスニング力を鍛えるなら! 英語スケッチング学習法
「写真:Adobe Stock」

一つのことを繰り返しているだけでは、英語はなかなか上達しません。真に英語をマスターするためには、赤ちゃんが母語を習得するように全神経を使うトレーニング法が必要です。アルクの総合英語学習アプリ「booco(ブーコ)」で提供中の「ヒアリングマラソン」のコーチ、松岡昇先生にお話を伺いました。

英語習得には多様な練習が欠かせない

この連載でいくつかの学習法を紹介してきました。

よく英語学習の本や学習法に「○○するだけで」とうたうものがありますが、それはその特徴を強調するための言い方に過ぎないと私は解釈しています。

本来、言葉という高度に複雑なコード(音声・文字記号)に、「○○するだけ」(特定の一つの方法だけ)で対応することはできません。母語について考えてみると分かりますが、私たちは赤ちゃんの時から全神経を使い、さまざまな角度から膨大な時間を費やして、身に付けています。

第二言語も習得のプロセスは同じです。中でも日本語と言語的に距離の遠い英語を身に付けることは、一筋縄ではいきません。ディクテーションの練習が必要なのと同じだけ、シャドーイングの練習も必要ですし、音読や英訳の練習も必要なのです。

英語スケッチングとは?

今回は、そんな日々の学習に追加で取り入れていただきたい、「スケッチング」という学習法を取り上げます。

突然ですが、自分が日本語(母語)で誰かの話を聞くという状況を思い浮かべてみてください。普通、読まれた言葉を一言一句拾い上げるようなことはしませんよね。ふむふむと聞いて、印象に残ったキーワードを基に、自然と内容を頭の中で映像化しています。

「スケッチング」とは、この「映像化」に焦点を当てた学習メソッドで、日本語と同様に英語で聞き取ったものも「映像」として捉えられるよう、聞いた話の内容をメモや絵として残す練習です。

このトレーニングは、前回の記事で紹介したディクテーションとは逆に、細部にはこだわらず、大きく全体を捉えることを目指しています。

実は、この練習は「12ステップ英語独学法」の STEP1「スケッチング」を拡大した学習法です。練習の方法を紹介しますので、皆さんの学習法の一つに加えてください。

「映像化」するための9ステップ

「写真:ヒアリングマラソン」

総合英語学習アプリ booco(ブーコ)の「ヒアリングマラソンモード」には、私が監修する「英語スケッチング」というシリーズがあります。

実際のステップを9つご紹介しますので、「映像化」の練習をする際は、いくつか取り入れてみてください。次の会話を例に説明しましょう。

Emily: Richard, could you do me a favor? I’m going to Hawaii on vacation for a week from Saturday, and I need someone to feed my cat while I’m away.

Richard: I’m sorry, Emily. I’m not very good with animals. I was bitten by a dog when I was little. Since then, I’ve tried to keep myself away from any animal that might bite.


STEP1 音声を通して聞く

最初に、音声を通して聞いて、全体の内容をざっくりと把握します。

STEP2 あらすじを録音

先ほど聞いた音声を、頭の中でスケッチし(ストーリーの映像を思い浮かべ)、分かる範囲であらすじを日本語(または英語)で話して録音します。ここでは、正確さや情報量は気にせずに行います。

STEP3 概要理解

音声をポーズ入りで聞いて、大まかな情報(Who「誰が」、Where「どこで」、What「何を」など)をつかみます。文字でも記号でも、聞こえたものを紙にスケッチ(メモ)していきましょう。(画像の黒字部分)

例文を実際にスケッチングした例。
「ヒアリングマラソン」では、松岡先生直筆のスケッチを参考に、オリジナルドラマを聞いてスケッチを描く練習をします。

STEP4 表現チェック

会話に出てくる重要表現を聞き取って、意味を確認します。

一般の教材でスケッチングをする場合は、この STEP をスキップするか、教材に語注リストのようなものがあれば、それを見て置き換えることができます。

STEP5 空所補充

音声を聞いて、単語の書き取り(ディクテーション)を行います。音声速度を調整したり、途中で止めたりして OK です。聞き取りづらいところは、文脈や文法知識から推測してみましょう。

STEP6 内容理解

もう一歩踏み込んだ内容(How「どのように」や Why「なぜ」など)まで逃さず聞き取り、スケッチに情報を付け加えていきます。(上の画像の赤字部分)

STEP7 あらすじを再度録音

これまで確認した内容を基にして、話の内容をもう一度日本語(または英語)で話して録音し、STEP2で自分が録音したものと比較します。

STEP8 詳細確認

英文と訳を見ながら、音声を再度聞きます。アプリ「booco」の「ヒアリングマラソンモード」では、スケッチ例や文法の解説、ネイティブがよく使う表現などもここで確認することができます。

STEP9 シャドーイング

仕上げに、音声を聞きながら少し遅れて英文を読むこと(シャドーイング)を行います。最初は英文や日本語訳を見ながら読み、慣れてきたら文を見ないで音だけを追いかけられるように練習します。

《会話の訳》

エミリー:リチャード、お願いを聞いてくれるかしら? 休暇で土曜日から1週間、ハワイに行くんだけど、私がいない間、うちのネコに餌をやってほしいの。

リチャード:ごめん、エミリー。僕は動物があまり得意じゃないんだ。小さい頃にイヌにかまれたことがあってね。それから、かみつきそうな動物にはなるべく近づかないようにしているんだよ。

➤ booco をインストールして、「ヒアリングマラソン」の魅力溢れるドラマを聞いてみよう!

「12ステップ英語独学法」と「1000時間ヒアリングマラソン」

「写真:Adobe Stock」

まだ英語を独習していた頃、私は当時創刊されたばかりだったアルクの月刊誌「ENGLISH JOURNAL」を使い、あの手この手で勉強していました。

その経験を、私と同じような独習者のためにまとめたものが「12ステップ英語独学法」です。「スケッチング」「ディクテーション」「ボキャビル(※ボキャブラリー・ビルディングの略。 語彙を増やすという意味)」「リピーティング、シャドーイング」「リード・アンド・ルックアップ」「リード・アンド・ルックアップ・アンド・コピー」「口頭英訳」そして「口頭要約」が、この独学法の中に組み込まれています。

実は、こうした多様な練習方法は「ヒアリングマラソン」にも出てきます。内容や難易度に応じて、コーナーごとに適した学習方法が提案されています。

練習の多様性に加え、英語コンテンツの内容やトピックもバラエティーに富んでいるので、ご自分で教材探しなどに手を煩わせたくない方には特にオススメです。


《後記》

英語は言語学的に日本語から「遠い」言語です。構造も発音も大いに異なります。英語をマスターする「航海」は壮大です。ただ、「ENGLISH JOURNAL ONLINE」をお読みの大半の皆さんは、その大海原は既に渡り終え、英語圏にいます。今の自分の英語に自信を持ち、使いながら同時に磨きをかけていく、このように考えて一緒に精進しましょう。

総合英語学習アプリbooco(ブーコ)でスケッチングに挑戦!

「英語の勉強をもっと便利に」をコンセプトに誕生した、アルクの参考書や問題集をスマホ一つで学習できるアプリ。Plus プランでは、累計発行部数530万部突破の「キクタン」シリーズなど100冊以上の書籍の本文・音声・クイズ機能などが利用できるだけでなく、「ヒアリングマラソン」も使い放題に。好評の「英語スケッチング」シリーズは、生き生きとしたドラマ音声で、自然と情景を思い浮かべてしまうこと間違いなし!

松岡 昇(まつおか のぼる)
松岡 昇(まつおかのぼる)

青山学院大学大学院国際政治経済研究科修了。専門は、国際コミュニケーション、社会言語学。現在、獨協大学及び大手企業を中心に講義やセミナーを務める超人気講師。アルクの1000時間ヒアリングマラソン(デジタル版)で、「英語スケッチング」「ディクテーション・コンテスト」の執筆を担当している。著書も多数ある。

【booco 搭載】新・ヒアリングマラソン

あの大人気通信講座が、アプリで復活!

1982年に通信講座が開講されて以来、約120万人が利用したヒアリングマラソン。
「外国人と自由に話せるようになりたい」「仕事で困ることなく英語を使いたい」「資格を取って留学したい」など、これまで受講生のさまざまな夢を支えてきました。

デジタル版の新しいヒアリングマラソンは、アルクの総合英語学習アプリ「booco」に搭載され、さらにパワーアップして復活しました。

「本物の英語力」を目指す人に贈る、最強のリスニング練習

・聞いて、話せる英語脳を作る

デジタル化に伴い、AI によるスピーキング評価機能が新たに搭載されました。質の高い英語を耳から大量にインプットし、声に出してアウトプットすることで、現地に行っても困らないリスニング力・スピーキング力が身に付きます。

・学校では習わない生きた英語

実際にネイティブスピーカーと話す時や海外映画を見る時に、教科書の英語と「生の英語」のギャップに驚いた経験はありませんか。ヒアリングマラソンには、オリジナルドラマやラジオ番組、各国の英語話者のリアルな会話など、学校では触れる機会の少ない本場の英語を届けるコーナーが多数用意されています。

・あらゆる角度から耳を鍛える豊富なコンテンツ

なぜ聞き取れないのか? には理由があります。全9種類のシリーズは、文法や音の規則、ニュース英語など、それぞれ異なるテーマでリスニング力強化にアプローチしており、自分の弱点を知るきっかけになります。月に一度、TOEIC 形式のリスニング問題を解いたり、書き取りのコンテストに参加したりすることもできるため、成長を定期的に確認することも可能です。

デジタル版ヒアリングマラソンは、現在お試し学習を実施中です。さあ、あなたも一緒にランナーになりませんか?

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