英語が聞き取れないのはなぜ? 悩めるリスニング学習者に立ちはだかる「4つの壁」
「写真:Adobe Stock」

聞き取れない英語があった時、漠然と「リスニング力が不足している」と感じてしまうものですが、本当にそうなのでしょうか。アルクの総合英語学習アプリ「booco(ブーコ)」で提供中の「ヒアリングマラソン」のコーチ、松岡昇先生は、英語のリスニングに「4つの壁」があると言います。今の自分の壁を見つけて、ぜひ日々の学習にお役立てください。

前回は、YouTube や海外ニュースなどお気に入りの教材を1000時間の学習に取り入れる「12ステップ英語独学法」をご紹介しました。今回は、その中核であるディクテーションが、英語リスニングの「壁」に対してどのような効果を持つのか、お話しします。

英語リスニングの「4つの壁」

私たちの前には、「4つの壁」(下図)が立ちはだかっていると思われます。

① 速度の壁

多くの学習者が、ネイティブスピーカー(以下、NS)の話す英語は速くてついていけないと言います。その速度は平均秒速3ワード、つまり1秒間に3ワードの速さです。 I love you. なら1秒です。 NS に言わせれば当然のことですが、これがナチュラルなスピードです。

② 音声語彙の壁

文字で書いてあると分かるが、音声では分からないことが多い、という声もよく聞かれます。これは①の「速度」と③の「音の変化」とも関係しますが、何より、聞いて瞬時に分かる語彙が不足しているということです。

③ 音の変化の壁

NS の発音は1語1語がはっきりと聞こえない、という声も聞きます。文中で発音されると、前後にある単語の影響などで辞書の表記とは異なる音になることがよくあります。このため、「音の認識→語の理解」が困難になるのです。

④ 語順の壁

日本人にとって、英語リスニングで文法上の問題と言えば語順です。リスニングは、リーディングと違って文をさかのぼって読み返すことができません。「あなたが薦めてくれた本」であれば、the book you recommended であり、修飾語と被修飾語の語順が日本語とは逆になっています。この相反する語順が、瞬時の理解を困難にしています。

「4つの壁」を攻略

以上の「4つの壁」を攻略するためには、音読、シャドーイング、リピーティング、ディクテーションなど、さまざまな方法があります(いずれも、前回ご紹介した「12ステップ英語独学法」に組み込まれています)。

音読やリピーティングは、「② 音声語彙の壁」や「④ 語順の壁」を乗り越えるのに、また、シャドーイングは「① 速度の壁」や「④ 語順の壁」を乗り越えるのに効果的です。そして、残った「③ 音の変化の壁」の対策が、ディクテーション(聞いた音声を書き取ること)です。

英語の「音の変化」

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音の変化は実に厄介です。英語では複数の語が連続して発音されると、隣り合う語が相互に影響し、発音がしばしば変化します。代表的なものとして次の3つがあります。

文字の表記音の聞こえ方
① 連結This is a pen.Thi si sa pen.
② 同化Did you sleep well?Di dyou sleep well?
③ 脱落Take care.Ta(ke) care.

① 連結

前の語末の子音とそれに続く語頭の母音が連結する現象。上の例では、This is a pen. が「ジィ・スイ・ザ・ペン」のように聞こえます。

② 同化

隣り合う2つの音の一方が、他方の音に影響を与えて同じ音になったり、混じり合った音になったりする現象。上の Did you ... の例では「ディ・ヂュゥ」のように変化します。

③ 脱落

似た音が隣り合ったときに、一方が他方の音を吸収して、片方の音が聞こえなくなる現象。上の Take care. のでは、「テイ(ク)・ケア」のように聞こえます。

上に挙げた3つ以外にも、注意すべき発音があります。

④ 弱化

冠詞、代名詞、助動詞、前置詞、接続詞などの機能語が弱く発音され、Go and pick her up. が「ゴゥ・エン・ピッカー・ラップ」のように聞こえます。

⑤ 暗い L

will や milk のように [l] が語末か子音の前に来ると、「ゥ」に似た暗く鈍い音になり、I’ll ... が「アイゥ」のように聞こえます。

ディクテーションのアハ体験を積み重ねる

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上述したような「音の変化」は、知識として覚えるだけでは意味がありません

この知識は、ディクテーション後の弱点チェック(「12ステップ英語独学法」の STEP3)でエラーの原因を探る際に参照して、初めて意味を持ちます。

従って、ディクテーションを行った後は必ずスクリプトと照らし合わせ、エラーチェックをしてください。「あー、あの『アイゥ』と聞こえたのは I’ll だったのか」とアハ体験(「あー、そうだったんだ」という体験)を積み重ねることが、「音の変化の壁」の攻略につながります。

~参考図書~

アルクの「ヒアリングマラソン」でコーチを務める松岡先生が、1万人のテストデータをもとに、日本人のリスニングの弱点を分析。実際にディクテーションに挑戦して、自分の弱点を「見える化」することで、今まで聞き取れなかった理由を知ることができます。

予告:次回(最終回)は「ネイティブレベルにリスニング力を鍛えるなら! 英語スケッチング学習法」についてお話しします。

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ディクテーションに興味が湧いたけど、わざわざ紙を用意して書くのは面倒だな......という方にオススメしたい、アルクの英語学習アプリ。ディクテーションの対策本を含む600冊以上の書籍に対応しており、Plus プランの「ヒアリングマラソン」では、学習者が主役の応募型テスト「ディクテーション・コンテスト」に参加することができます。毎月、さまざまなジャンルの英文の聞き取りに挑戦して、一緒に「音の変化の壁」を乗り越えましょう。

松岡 昇(まつおか のぼる)
松岡 昇(まつおかのぼる)

青山学院大学大学院国際政治経済研究科修了。専門は、国際コミュニケーション、社会言語学。現在、獨協大学及び大手企業を中心に講義やセミナーを務める超人気講師。アルクの1000時間ヒアリングマラソン(デジタル版)で、「英語スケッチング」「ディクテーション・コンテスト」の執筆を担当している。著書も多数ある。

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