「教材が悪い」「先生が悪い」「勉強する時間がない」。思うように成果が出ないとき、原因を自分の外側に求めたくなることがあります。もちろん、本当に教材や環境に問題がある場合もあるでしょう。今回の英語学習への当てはめでは、不満や怒りにとらわれ、自分では変えられないことばかりに目が向いてしまう状態を「憤怒の罪」と考えます。第6回では、変えられない条件とどう向き合い、その中で何を変えていけばいいのかを濵﨑さんに教えていただきます。
第5回の記事はこちら▼
目次
成果が出ないと、外に理由を求めたくなる

英語を勉強しているのに、思うように伸びない。そういうとき、「教材が悪い」「先生が悪い」「勉強する時間がない」と思うことはあると思います。
実際、教材が自分に合っていないこともあります。教わっている先生の説明が分かりにくいこともあるでしょう。仕事や家庭の事情で、本当に勉強時間を確保しにくい人もいます。ですから、成果が出ない理由を全て「本人の努力不足」で片付けるつもりはありません。
ただ、そこで「○○が悪いから、自分にはどうしようもない」と考えて終わってしまうと、自分から変えられるものまで見えなくなってしまいます。
今回一番考えてほしいのは、「誰のせいなのか」ではなく、「今の条件の中で、自分に何ができるのか」ということです。
本当に教材が悪いこともある
例えば教材については、「これは自分には合わないな」と感じることは当然あります。僕自身、勉強を続けてある程度分かるようになってくると、「これは本番のTOEICとは少し違うな」と感じる教材に出合うこともありました。そういうときは、別の教材に変えればいいと思います。
ただし、「教材が悪い」と感じる前に、一度確認してほしいことがあります。
そもそも、その教材は自分の目的に合っているでしょうか。
以前、僕が書いたTOEIC対策の本に、「この本を勉強しても英語が話せない」という趣旨の低い評価が付いたことがありました。でも、それはTOEIC対策の本なんです。英会話ができるようになることを目的に作った教材ではありません。
英語を話せるようになりたいのに、何となく「英語といえばTOEIC」と思ってTOEIC対策の本を選んでしまえば、期待した成果が出ないのは当然です。それを教材のせいにしても、問題は解決しません。
これは第1回でもお話しした教材選びの話にもつながります。目的だけでなく、レベルが合っているかも重要です。知らない単語ばかり出てくる、問題がほとんど解けないというのであれば、教材が悪いのではなく、今の自分には難し過ぎる可能性があります。
初心者なのに、いきなり730点を目標にした総合対策本を開けば、「何を言っているのか分からない」となっても不思議ではありません。そんなときは、もう少し基礎的な教材から始めればいいんです。
「教材が悪い」と決める前に、自分の目的と現在地に合っているかを確認してみてください。
「時間がない」は、実際にある
「勉強したいけれど、時間がない」という話は、本当によく聞きます。これは簡単に「時間は作るものです」と言って終わらせられる話ではありません。
仕事をしていれば忙しいですし、家庭があればやることも増えます。小さなお子さんがいれば、夜にまとまった睡眠時間すら取れないこともあります。
実際、僕の周りにも、小さなお子さんを育てながら英語学習を続けている人がいます。夜中に起きたタイミングで、「今日はこれだけできました」と学習記録を投稿している人もいます。そういう人に向かって、「もっと時間を作ればいい」と簡単に言うことはできません。
問題は、時間がないこと自体ではなく、「時間がないから何もできない」と考えたところで思考を止めてしまうことだと思います。
第3回でも、「5分しかない」のではなく「5分もある」と考える話をしました。時間が限られているなら、その条件の中で何ができるかを考える。5分しか取れない日は5分やる。少し増やせそうなら、その分だけ増やしてみる。
第5回でもお話ししたように、大切なのは理想的な勉強時間を確保することではなく、自分の生活の中で続けられる形を作ることです。
「全部自分のせい」と考える必要はない
成果が出ない理由を周囲に求める方が、心理的には楽なことがあります。「教材が悪かった」「先生のせいだった」「環境が悪かった」と考えれば、自分は何も変えなくて済みます。
一方で、「自分にも何か変えられるところがあったのではないか」と考えると、次に何をするかを考えなければなりません。僕自身は、何かうまくいかないことがあったとき、「自分の側で変えられることはなかったか」と考える方です。その方が、次の行動につながりやすいからです。
ただ、何でも自分のせいにして、自分を責めればいいという話ではありません。
もともと「全部自分が悪い」「自分は何をやっても駄目だ」と考えやすい人が、さらに自分を追い詰める必要はありません。考えたいのは責任の所在ではなく、自分が動かせる部分が残っていないかということです。
「誰が悪かったのか」を決めることと、「次に自分が何をするか」を考えることは別です。
同じことをしても、同じ結果になるとは限らない
「同じ教材を使っているのに、あの人は伸びて、自分は伸びない」と思うこともあるかもしれません。でも、人は一人一人違います。
同じものを食べても体重の変化が違うように、同じ教材を使い、同じ時間勉強したからといって、全員が同じ速さで伸びるわけではありません。
第4回でもお話ししましたが、学習歴や得意・不得意、使える時間は人によって違います。他人と同じことをやって同じ結果が出なかったからといって、自分の勉強が全て間違っていたとは限りません。
時間がかかっているだけかもしれない。今のやり方の一部を調整すればいいだけかもしれない。まず見るべきなのは、他人の結果ではなく、自分の変化です。
一度の失敗で、勉強法を全部変えない
TOEICのような試験では、前回よりスコアが下がることもあります。例えば順調に700点まで伸びてきたのに、次に受けたら600点だった。勉強量を減らしていなくても、そういうことは起こります。
試験は毎回問題が違いますし、体調や会場などによっても結果は変わります。ですから、一度結果が悪かったからといって、それまでの勉強法が間違っていたとは限りません。
そこで「全部駄目だった」と判断して、教材も勉強法も一気に変えてしまうのは、僕はおすすめしません。それまで成果が出ていたのであれば、まずはマイナーチェンジでいいと思います。
例えば、
- 単語を覚える量を少し増やす
- リスニングの時間を10分増やす
- 苦手だった文法に少し多く時間を使う
といった具合です。
これまで積み上げてきたものを全部捨てるのではなく、足りなかったところを少しだけ上積みする。その方が、それまで身に付けてきた学習のリズムも生かせます。
伸びなくなったら「今までと同じ量」で足りるかを見る
順調にスコアが伸びていたのに、あるところで止まった。そんなとき、「教材が悪い」「勉強法が悪い」と考える前に、もう一つ見てほしいことがあります。
今までと同じ学習量のままで、その先まで行こうとしていないでしょうか。
例えば、毎日1時間の勉強で700点まで来たとします。でも、そこから先に進むためには、今までと同じ1時間では足りない可能性があります。
もちろん、「勉強時間を増やせば必ずスコアが上がる」と言っているわけではありません。ただ、より高いレベルを目指すのであれば、それまでと同じ量だけを続けていても、どこかで伸びにくくなることはあります。
伸びが止まったときは、今までと同じ量で足りるのかを一度見直してみてください。必要なら、弱いところに使う時間を少しだけ増やしてみる。それも一つの調整です。
「何点取るか」だけでなく「何を仕上げるか」を目標にする

TOEICを勉強しているなら、「800点を取りたい」「900点を取りたい」という目標を持つのはいいことだと思います。ただ、「3カ月後に800点を取る」という目標は、自分だけでは完全にコントロールできません。
試験問題は選べません。体調も毎回同じとは限らない。勉強していても、その日に必ず800点が取れるとは限りません。
一方、
- 3カ月後までに、この問題集をどの問題でも説明できる状態にする
- このリスニング教材を、全て内容が分かる状態にする
- この単語帳を、英語を見たら日本語の意味が出てくる状態にする
という目標なら、自分の行動で達成できます。
結果目標を持つなということではありません。「800点を取る」という大きな目標があって、そのために「この教材を仕上げる」という、自分でコントロールできる目標を置く。そして実際に試験を受けたら、その結果を効果測定として見る。
自分で達成できる目標を一つずつ超えることが、自信や経験につながっていきます。
変えられることと、変えられないことを分ける
英語学習では、自分では変えられないものがたくさんあります。学校で指定された先生は変えられないかもしれません。仕事の勤務時間も、子どもの生活時間も、自分だけの都合では動かせないことがあります。試験問題も選べません。
でも、自分の時間の使い方や、何を勉強するか、何をやらないかは自分で決められます。
変えられないものにずっと腹を立てていても、そのもの自体は変わりません。だったら、一度「自分が変えられる範囲はどこまでだろう」と整理して、その中で何をするかを決める。
それだけでも、次の行動はかなり見えやすくなると思います。
壁にぶつかった僕が変えたこと
僕自身、TOEICのスコアが800点台半ばで伸びなくなった時期がありました。それまでは、一つの参考書を1周したら次の本を買う、という勉強をしていました。それである程度までは伸びたので、そのやり方でいいと思っていたんです。
でも、そこで壁にぶつかりました。その頃、ヒロ前田さんのセミナーに参加する機会があり、勉強法についてアドバイスをいただきました。
そこで言われたのが、教材を次々と変えるのではなく、ある程度絞って、同じ問題を何度もやり、細かいところまで疑問がなくなる状態にしてみる、ということでした。それまでの「広く次々に進む勉強」から、「絞った教材を深く繰り返す勉強」に変えたわけです。
すると、その後またスコアが伸びました。
自分では分からないときには、信用できる人に相談することも一つの行動です。そして、アドバイスを受けたら、自分が変えられるところを変えてみる。
壁にぶつかったときに必要なのは、怒ることでも、諦めることでもなく、次に変えられるものを探すことだと思います。
今日から「変えられる行動」を一つ決める
環境のせいにしてしまっているかもしれない、と感じた人は、今日一つだけ、自分で変えられることを探してみてください。大きなことを変える必要はありません。
勉強時間を10分増やす。単語を5個覚える。使う教材を一つ決める。今週のうちに問題集をここまで終える。それくらいでいいんです。
また、毎日完璧に計画をこなせるとは限りません。飲み会が入ることもあれば、仕事が長引くこともあります。第4回や第5回でも触れたように、最初から余裕のないノルマを作らないことも大切です。
例えば毎日7日間ぎっしり勉強を入れるのではなく、5日間を基本にして、残りの日をリカバリーに使えるようにしておく。一度予定が崩れただけで、「もう駄目だ」と全部やめてしまわないための余白を作っておくんです。
変えられない予定が入ったとしても、その後どう立て直すかは自分で決められます。
変えられないことより、変えられる行動を見る
英語学習をしていれば、思い通りにならないことは必ずあります。教材が合わないこともある。先生を選べないこともある。時間が取れない日もある。試験で思ったような結果が出ないこともあります。
そういうときに、「全部自分が悪い」と考える必要はありません。でも、「全部周りが悪い」と考えてしまえば、自分からできることもなくなります。
今、自分で変えられることは何か。
そこに目を向けてください。
変えられないものに怒り続けるより、変えられる行動を一つ変える。その積み重ねが、次の成長につながっていくと思います。
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取材・構成:山本高裕(ENGLISH JOURNAL編集部)
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