「分かった」で終わる「怠惰の罪」――知っているだけでは英語は使えるようにならない【英語学習 七つの罪】

問題を解いて正解し、解説を読んで「分かった」。そこで勉強を終えてはいないでしょうか。英語学習者が陥りがちな思い込みを「七つの罪」になぞらえて考える本連載。第3回は、理解しただけで満足し、「できる」状態にするための練習まで進まない「怠惰の罪」です。「分かる」と「できる」には、実は大きな隔たりがあります。知識を使える英語に変えるには何が必要なのか。毎日のわずかな時間をどう生かせばよいのか。濵﨑さんに教えていただきます。

第2回の記事はこちら▼

「分かった」で止まる「怠惰の罪」

今回の「怠惰」は、やるべき努力を避け、行動を後回しにすることです。英語学習に置き換えるなら、勉強して「分かった」と満足し、それを実際に使える状態にするところまで進まないことだと思います。

一言で言えば、「分かる」と「できる」は違うということです。

英語を勉強していると、「分かった」「解けた」という瞬間がたくさんあります。参考書を読み、説明に納得する。問題集を最後まで解く。正解を確認する。それ自体はもちろん必要な勉強です。でも、そこで終わってしまう人はかなり多いと思います。

よく「この問題集は全部解きました。次は何をやればいいですか」と言う人がいます。確かに一度は全部解いたのでしょう。でも、「では、もう一度やったら全部解けますか」と聞くと、それは分からない。

TOEICのリスニングでも同じです。設問に正解できたからといって、その会話やトークを全て聞き取れたとは限りません。選択肢は選べても、内容を聞くと分からないところが残っていることがあります。

最初に問題と向き合うときは、正解を選べるかどうかでいいんです。ただ、正解したところが勉強の終わりではありません。そこからがスタートです。

正解した後に、初めて勉強が始まる

例えば、TOEICのリスニング問題を一度解いたとします。

まず、なぜその選択肢が正解なのかを確認します。次に、会話やトークをもう一度聞いて、内容を全て理解できるか確認する。分からないところがあれば調べる。設問や選択肢に知らない単語があれば、それも確認する。

そうやって、「こういう話をしているから、この選択肢が正解なんだ」と自分の中でつながって、初めてその問題を使って勉強したと言えると思います。

ところが、問題を解いて丸付けをし、解説を一度読んだだけで、「この問題は分かった」と考えてしまう人は少なくありません。僕の感覚では、それは10段階のうち、まだ2ぐらいまでしか来ていない状態です。ゼロではありません。問題も解いたし、解説も読んだ。でも、そこから「できる」に持っていくまでには、まだやることがあります。

問題集に答えを書き込み、一度最後まで進んだら、そのまま次の本へ行く。そういう使い方をすると、「たくさん勉強した」という感覚は得られます。でも、本当に見るべきなのは、何ページ進んだかではありません。

その問題を使って、以前できなかった何ができるようになったのか。

そこを確認した方がいいと思います。

英語は「知識」だけではなく「技能」

なぜ、「分かった」と「できる」を混同してしまうのでしょうか。

英語学習は、机の上だけでも勉強できてしまうからだと思います。参考書を読んで理解すると、それだけで学習が完結したように感じやすい。

でも、英語は本来、スポーツに近いところがあります。

例えば、サッカーのボレーシュートの打ち方を動画で見て、「なるほど、こうやって蹴るんだ」と理解したとします。では、実際にボールが飛んできたときに、その通り蹴れるでしょうか。

やってみたら、ボールにかすりもしないかもしれません。それでも不思議ではないですよね。打ち方を「分かった」ことと、実際に「できる」ことが違うのは、スポーツなら誰でも分かります。

野球も同じです。バットの振り方を教えてもらい、「なるほど」と理解しただけでは打てません。実際に何度も振らなければ、自分の体では再現できない

英語も、話す、書く、聞く、読む、問題を解くという技能です。

知識を頭に入れただけでは足りません。それを使って、自分で何かができる状態にしなければならない。スポーツでは当たり前のことなのに、英語になると「説明を理解したから、もうできる」と思ってしまう。そこが一つの落とし穴だと思います。

1問を深めることと、たくさん解くことは両方大切

では、一度解いた問題を何度も繰り返し、1冊を徹底的にやればいいのでしょうか。

それは大切です。ただ、僕は新しい問題をたくさん解くことにも意味があると思っています。

1.一つの問題を深く学ぶ

一度解いた問題について、なぜその答えになるのかを確認し、英文の意味を理解し、知らない単語や表現をなくす。さらに、もう一度同じ問題を解いても正解できる状態にする。

このように一つ一つの問題を深く使えば、そこで扱われている知識を確実に自分のものにできます。

2.新しい問題をたくさん解く

一方で、初めて見る問題をたくさん解くことにも価値があります。

新しい問題に向き合うときは、毎回自分で考えなければなりません。「これは何を問われているのか」「どれが正解なのか」と考え、持っている知識を使って判断する。その経験は、新しい問題に挑戦しなければ得られません。

たくさん問題を解いていると、「こういう問題が出るんだ」「こういう間違いの選択肢があるんだ」という感覚も少しずつ身に付いてきます。スポーツで言えば、一つの動きを繰り返し練習することと、実際に試合に出ることの違いに近いかもしれません。

一つ一つを深く学ぶことと、新しい問題で実践を重ねること。この二つは両輪です。

理想は両方できることですが、最初から完璧に両立させる必要はありません。少なくとも、「一度正解したから、この問題はもう終わり」と考えないことが大切です。

「知っている」なら、自分で証明してみる

僕は、「知っている」という言葉も少し疑った方がいいと思っています。

「この問題は知っています」

「この文法は分かります」

「この単語は見たことがあります」

では、本当に知っているのか。

「知っている」というなら、それを自分で証明してみてください。

問題なら、もう一度解いてみる。なぜその答えになるのか説明してみる。単語や熟語なら意味を言ってみる。英文なら、自分で意味を説明してみる。

これができれば、「知っている」から「使える」にかなり近づいています。

人に説明することも、とても良い練習になります。予備校や塾の先生は、生徒に教えるためにものすごく勉強します。授業で質問されても答えられるように準備し、「なぜそうなるのか」を自分の言葉で説明できるようにしておかなければならない。

だから、実は授業で一番勉強しているのは先生だったりするんです。

誰かに本当に教える必要はありません。「自分が先生だったら、この問題をどう説明するだろう」と考えてみるだけでもいい。

理解したつもりだったところに、自分でも説明できない部分が見つかるはずです。

アウトプットは意識しないと増えない

英語を勉強していれば、インプットは自然に発生します。参考書を読む。単語を見る。英文を読む。音声を聞く。何かしらの形で、英語を自分の中に入れる時間はあります。

でも、アウトプットは意識しなければ、なかなか増えません。

ここでいうアウトプットは、英会話だけではありません。

  • 問題を解く
  • 英文を書く
  • 英語を話す
  • 音読する
  • 覚えた内容を自分で言ってみる

どれでも構いません。

問題を解くことだって、立派なアウトプットです。自分の中にある知識を取り出して、答えを決めているわけですから。

「英会話をする時間がないからアウトプットできない」と考える必要はありません。自分で知識を取り出す活動を、毎日の中に少しずつ入れていけばいいんです。

インプットは放っておいても増えやすい。アウトプットは、自分で時間を取らないと増えにくい。

ここは意識しておいた方がいいと思います。

英語の優先順位を上げられる環境を作る

英語が身に付いていく人は、結局、学習する頻度と時間を確保しています。もう一つ大きいのが、生活の中で英語の優先順位が高いことです。

人は、優先順位の低いものをなかなかやりません。見たいドラマが五つあっても、時間がなければ上位のものから見ますよね。下の方にあるものは、そのまま見ずに終わってしまいます。英語も同じです。

ただ、「今日から英語の優先順位を上げよう」と思っただけで、本当に上がるかというと、それは難しいと思います。

だから、英語に触れている時間が少しでも楽しくなる環境を作ることが大切です。勉強していることをSNSに投稿するのが楽しい人なら、それでもいい。仲間と一緒に勉強することで続けやすくなるなら、それでもいい。

自分が英語に関わっている時間に、「ちょっと楽しい」と感じられる仕組みを作る。そうすると、生活の中で英語の順位が少し上がります。

続けるためには、努力だけではなく、英語に触れたくなる環境を自分で作ることも必要です。

「5分しかない」ではなく「5分もある」

忙しい社会人に「毎日まとまった勉強時間を取ってください」と言っても、難しいことがあります。

だから僕は、5分、10分という時間をばかにしないことが大切だと思っています。

5分あれば、スマートフォンで問題を何問か解けます。単語を確認することもできるし、短い英文を読むこともできます。一回では大した量に見えないかもしれません。でも、それを毎日積み重ねれば、かなりの学習量になります。

そのためには、「時間が空いたら何をするか」をあらかじめ決めておくといいと思います。

えば、

  • 5分あったら、問題を解く
  • 15分ほどあったら、少し長めの復習をする
  • 30分以上あったら、音声や会話文を使った練習をする

というように、短い時間、中くらいの時間、長い時間でやるものを用意しておく。

が来るまでの5分、待ち合わせまでの15分、移動中の30分。そういう時間ができたときに、すぐ始められるようにしておくんです。

僕自身も通勤時間が長いときがあります。そういうときは仕事をすることもありますが、『ラジオ英会話』のような短い会話を使って、一文ずつ覚えていくこともできます。

声を出せない電車の中でも、英文を見ながら頭の中で繰り返すことはできます。短い会話一つでも、自分で言えるところまで持っていけば、自分の中から出せる英語が一つ増えます。

問題を解くのでもいい。短い会話を覚えるのでもいい。大切なのは、「まとまった時間ができたら勉強しよう」と考えて、何もしないまま一日を終えないことです。

今日から「1日1文」を声に出す

「分かった」で終わることが多い人に、今日から一つだけ変えてもらうなら、すごく小さいことでいいと思います。

1日1文だけ、英文を声に出して読んでみてください。

教材に載っている英文で構いません。ただ読むだけではなく、その英文が何を意味しているのかも、自分で言ってみる。

まずは、これだけです。

英文を1文選ぶ

声に出して読む

意味を自分で言う

時間がある人は、二つ、三つと増やしても構いません。もっとできるなら、見ないで言えるところまで暗唱してもいいでしょう。でも、最初からたくさんやる必要はありません。

1文だけでも、自分の口を動かし、自分の頭から意味を取り出せば、「読んで分かった」で終わる学習から一歩先へ進めます。

やればやっただけ、「知っている」が「できる」に近づきます。

「知っている」を「できる」に変える時間を作る

英語の説明を読んで理解することは大切です。問題に正解することも大切です。

でも、それだけで英語学習を終えないでください。

分かったところで終わらず、度は自分で使ってみます。

  • 問題を解いてみる
  • 声に出してみる
  • 説明してみる
  • 覚えた英文を、自分で言ってみる

そういう時間があって、初めて知識が技能へ変わっていきます。

何時間も必要なわけではありません。

5分しかない日なら、その5分を使えばいい。1文しかできない日なら、その1文をやればいい。

「分かった」の先にある練習を怠らないこと。それが「知っている」を「できる」に変えていきます。

今日の5分を、「分かる」で終わらせず、「できる」に変える時間にしてください。

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濵﨑潤之輔(はまさき・じゅんのすけ)
濵﨑潤之輔(はまさき・じゅんのすけ)

大学・企業研修講師、書籍編集者。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。
これまでにTOEIC L&Rテストで990点(満点)を100回以上取得。
明海大学、獨協大学、神戸女学院大学、早稲田大学EXT、福岡女学院大学など、全国の大学で講師を務めるかたわら、ファーストリテイリング、楽天銀行、SCSK、エーザイ、オタフクソース、ブシロードといった大手企業においても、TOEIC L&Rテスト対策の研修を行っている。
著書に、『改訂2版 中学校3年間の英語が1冊でしっかりわかる本』(かんき出版)、『TOEIC L&Rテスト 990点攻略』シリーズ(旺文社)、『TOEIC L&Rテスト 総合対策特急 絶対ハイスコア』(朝日新聞出版)などがあり、累計発行部数は100万部を超える。
TOEIC L&Rテスト対策のESB(オンラインスクール)主催。

Xアカウント:@HUMMER_TOEIC
Instagramアカウント:junnosuke_hamasaki

取材・構成:山本高裕(ENGLISH JOURNAL編集部)

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