TOEIC対策のカリスマ講師、ハマーこと濵﨑潤之輔さんの新連載「明日の風を今日吹かせよう」。第1回は短距離走と長距離走(マラソン)の話。さて、そのココロは?英語学習での目標達成に必要なプロセスを、ハマーさんと一緒に考えてみましょう。
コロナ禍を経て変化したこと
ENGLISH JOURNAL(以下EJ):まずは久しぶりにお会いできたということで、濵﨑さんの近況をお聞かせいただけますか。
濵﨑潤之輔(以下濵﨑):ええ、コロナ禍の間、仕事は基本的に全部というか、ほとんど家で行っていました。大学の授業も、今は週3日大学に行ってますが、当時は全部、オンライン。授業は全部Zoomでした。
そして去年あたりから、大学の授業も対面で授業を行うようになって。ただ、まだ学生に登校することを強制できなかったので、登校できる学生は対面で受ける、登校できない学生はZoomで受ける、という感じになりました。で、今年(2023年)に入ってようやく全ての授業が対面になりました。
書籍関連の方の執筆も、共著を含めて5冊くらいが今、進行中で、こっちに関しては順調ですね。
あと、僕が運営しているオンラインサロンでTOEICの講義をやっているんですが、それが4年目に入りました。コロナ禍に作ったオンラインのサロンですが、これはそのまま今も順調にやってるという感じです。
実は僕自身もコロナにかかったんです。昨年末(2022年)ですね。もう、1年くらいたつんですけど、コロナにかかった後に肺炎にかかってしまったんです。肺炎にかかったのは初めてで、呼吸器内科に行ったら、肺が83歳です、みたいな感じで言われて。で、その治療をしていたら、今度は気管支ぜんそくにもかかってしまったんです。僕は入院とか、重い病気をわずらったことがなく、ずっと健康で過ごせてきたんですが・・・。
大人になってからのぜんそくって、なかなか治らないらしいんですよ。完治しない人が結構いるみたいです。ただ、僕の場合は徐々に良くなってきました。とはいえ、今も月1で呼吸器内科に通院していて、吸引を、薬を吸う治療をしています。これをやると、声がかすれるんですけれどね。
Zoomのオンラインの授業であればマイクを使って話すのであまり問題はないのですが、対面の授業だとわりと大きな声を出さないといけないじゃないですか。声を出そうとすると、ちょっと声が裏返ったり、かすれたりして・・・、肉体的にはそういうマイナスの部分の影響もあったコロナ禍でした。
自身のTOEICスコアを公開し続ける訳
EJ:ところで、今もX(旧Twitter)で、毎回TOEICのスコアを公開されていますよね。
濵﨑:そうですね。ただ、コロナ禍ではしばらく受けることができない時期もありました。試験が再開してからも抽選の時期があって、そのときは軒並み当たらなかったですね。4、5回くらい、受けられないときがありました。
それ以外は全部受けています。僕がスコアを公開しているのは、教える立場としてちゃんと試験で満点を取れる力があることを示すためです。その方が信頼されると思うんです。
例えばTOEICで900点といえば、結構高いスコアです。ただ、900点というのは、単純計算で全200問の1割程度が不正解だったということです。10問に1問くらい間違えている。教える立場として、それってどうなの?と思う方もたくさんいると思うんですよね。10問教えたら、そのうちの1問は間違いを教えるという先生は、いかがなものかという意見を時々ネット上でも見かけることがありますし。
満点(990点)を取るのは、今でもなかなか厳しいです。僕もたまに問題を落とすことがあります。でも、ちゃんと今も現在進行形で満点が取れるということを見せておけば、信頼度は格段に高くなりますよね。あと、ここだけの話ですが、仕事の依頼が増えます(笑)。Xの投稿を見た方や出版社などからの英語関連の仕事のオファーが来ます。だから、いいことしかないですね。
もちろん、満点を取り続けるために、私自身、そのための勉強をずっと続けています。スコアを公開すると決めておくと、自分を追い込む部分もあるので、勉強せざるを得ない。何もしないで満点が取れるほどの英語力があればいいですが、そういうわけではありませんし。
夢と現実のはざまで
EJ:それでは、今日の本題に入りましょう。英語学習において多くの人に共通すること、というテーマでお話しいただけますか?
濵﨑:いろいろありますが、一つは、皆さん、すぐに結果を求めたがる、ということですかね。まあ、それは当然ですね。早く結果を出せるに越したことはありません。例えば、僕がやっているTOEICのオンラインサロンでは、参加者のほとんどの方が社会人です。TOEICを受験する理由はというと、多くの場合は「転職」したいというのがその理由なんです。スコアを取って転職したいっていう人が多いんです。
早く、いわゆる良い仕事が欲しい。でも、今より良い条件の仕事となると、今のままではダメなことが多いんです。なぜなら、あなた自身が今より良い仕事の条件に見合ってないのでは?と。自分が相手の条件に合わせる努力をしていないのに、 次の会社に多くを求める、という人が少なくない気がします。
とにかく、結果をすぐに出したいのは分かりますが、自分の足元を見ずに先のことだけを見ていても希望はかなわないと思うんです。例えば、ビジネス書や自己啓発書を読んで学んでいますとか、ビジネススクールに通ってスキルを身に付ける努力をしていますとか、次に向けて何らかの努力をしている人ならいいのです。でも、それすらせずに、短絡的に結果を求める人が多くて。
筋トレに例えさせていただくと、今、ベンチプレスで50キロを挙げられます、という人が、日本チャンピオンに今日最高の指導を受けたとしても、明日100キロを挙げられるようになるわけがありません。最高の指導家が付いたとしても、それは無理なことなんです。
何が言いたいかというと、目の前の本当にやるべきことをやらずして結果は出ない、と。だから、転職の場合も、自分の足元を冷静に見て、6カ月後とか1年後を目標に、そこから逆算します。やらなければいけないことを、しっかりブレイクダウンして、その一つひとつを積み重ねていこう! 僕はそう言いたいのです。
TOEICのスコアにしても同じです。来月、800点を取りたいと思うのは自由です。でも、今のスコアが500点であるのなら、取れるはずがないのです。今500点の人が来月700点、800点を取るのは非常に難しい。現実を見て、3カ月後なり6カ月後なりのゴールを明確に設定して、そこから逆算して勉強していこう、ということです。
今日のハマーのコトバ
濵﨑:英語学習ではなく、僕が好きな筋トレの話をします(笑)。僕が初めて入ったジムは、東中野にある「ゴールドジム」という所でしたが、周りの人はみんな、ベンチプレスで100キロ以上を当たり前のように持ち上げるんです。で、僕も、それくらいを挙げないと恥ずかしい気がしてくるんです。
最初は、50キロを2、3回挙げられる程度で、120キロが挙がるようになるまで4年かかりました。で、どうやってそこにたどり着くかというと、1カ月に5キロか10キロを上乗せしていくんです。今月50キロだったら、来月は60キロ上げようと。
ベンチプレスでは、重さと回数の2つの項目から練習内容を見直すようにします。 例えば今、50キロを8回上げることができるとしたら、次は50キロを10回挙げられるようにする。そんな感じで1、2週間単位の目標を立てていきます。で、その次の週は12回にする。12回挙げられるようになったら、今度は50キロを55キロにして、8回からスタートするんです。
ただ、そのときに8回挙げられなかったら6回に減らす。で、6回できるようになったら8回。8回できるようになったら12回。12回挙がったら、今度は重さを60キロにする。そんな感じで徐々に上げることのできる重量と回数を増やしていくんです。
勉強もこれと全く一緒です。「流暢さは短距離走では得られない、だからマラソンの練習をするんだ」というところに戻ってくるわけです。
要するに、英語を話すときに、すぐにペラペラになりたいと思う人が多いのですが、それは、まあ無理なんです。でも、短距離走自体を否定しているわけではありません。日々の単位では必要です。今日1日でできることが短距離走で、例えば1週間が中距離。そして1カ月が長距離という感じです。
今日1日を生きるという意味では短距離走でいいと思うんです。今日やれることは、もちろん全力でやる。 今日、全力を尽くすっていうのは大事です。
でも、段階を追って先を見据えることがさらに大事なんです。1カ月後に10キロ走れるようになるためには、今日、ちゃんと5キロ走れるようにしようと。で、来週は7キロ走ろう。再来週は8.5キロ走ろう。で、4週間後は10キロ。さらに、その距離を1時間で走れるようになる、というような段階を追うのです。TOEICのスコアも英語力も、何事もそうだと思いますが、力はそうやって徐々にコツコツと積み上げて伸ばしていくものです。
濵﨑潤之輔さんの本
濵﨑潤之輔さんの新刊!『観光客を助ける英会話』
困っている外国人観光客を手助けしよう!
困っている外国人観光客を手助けするためのシンプル英語を学ぶ本です。街中や観光地で、外国人が困っているらしい姿を見かけたことはないでしょうか。たとえば、道に迷って目的地にたどり着けない、駅構内で乗るべき電車が分からない、飲食店で日本語のメニューしか用意されておらず注文できない、など。そんな場面で、なんとか力になりたい、と思ったことがある方は少なくないはず。本書はそんな方々が対象読者です。
●英語に苦手意識があっても大丈夫
本書は、英語に苦手意識がある方、学生時代に学んで以降、ずっと英語から離れていた方などを想定して、そうした方々が無理なく使えるように、1つの文のワード数はできるだけ少なくしました。シンプル英語だから、英語が初級レベルでも学びやすく、そして忘れにくいです。
●40場面、240フレーズを収録
外国人観光客と比較的多く遭遇するであろう、駅、観光スポット、小売店、飲食店などの代表的な40場面を選び、計240のフレーズと、そのフレーズを使った対話例を収録しています。たとえば以下のようなフレーズです。
「途中まで一緒に行きましょう。」
「観光案内所で無料Wi-Fiを使えます。」
「スマホにQR コードを表示させてください。」
「食物アレルギーはありますか。」
1人ですべてを解決できなくても、一次的な対応をする場合に使える表現や、英語ができる人につないであげる際に使える表現も収録しています。付属音声で練習して、実際に街中で使ってみましょう。
SERIES連載
思わず笑っちゃうような英会話フレーズを、気取らず、ぬるく楽しくお届けする連載。講師は藤代あゆみさん。国際唎酒師として日本酒の魅力を広めたり、日本の漫画の海外への翻訳出版に携わったり。シンガポールでの勤務経験もある国際派の藤代さんと学びましょう!
現役の高校英語教師で、書籍『子どもに聞かれて困らない 英文法のキソ』の著者、大竹保幹さんが、「英文法が苦手!」という方を、英語が楽しくてしょうがなくなるパラダイスに案内します。
英語学習を1000時間も続けるのは大変!でも工夫をすれば無理だと思っていたことも楽しみに変わります。そのための秘訣を、「1000時間ヒアリングマラソン」の主任コーチ、松岡昇さんに教えていただきます。