頑張って英語学習を続けているのに、一向に英語力の上達を感じられない!と思ったことはありませんか?本連載では、イングリッシュ・ドクターの異名を持ち、1万人以上の英語学習者を見てきた西澤ロイさんが、あなたの英語の悩み「英語病」の解決方法を処方します。第1回は、英語の上達を感じられない原因について紹介します。
英語が上達しない原因
英会話やリスニングの学習をしていて、一向に上達が感じられない――ということはありませんか?
そこで多くの人が「教材が良くない」、もしくは「その学習法が自分には向いていない」と思うかもしれません。また、「自分の努力がまだまだ足りない」のだと考える人もいるでしょう。中には、「自分には英語の才能/センスがない」などと誤解し、挫折してしまう人もいるかもしれません。
しかしそこで、イングリッシュ・ドクターである私は、いつも次のようにお伝えしています。英語が上達しないのは全て「英語病」が原因であり、それさえ治してしまえば必ず上達します――と。
英語は言語であり、誰でも身につけられるものです。センスや才能なども一切関係ありません。正しいやり方で学ぶことができれば、英語は誰でも上達します。これは、外国語習得に関する専門家の間でも言われていることです。
25年以上、英語上達法の独自研究をしてきました
しかし実際には、うまく上達していない人や、挫折してしまう人もたくさんいます。うまくいかない大きな理由は、英語が日本語とは大きく異なる言語であること――。
文字も音の響きも全く異なる上、語順もほぼ正反対ですし、冠詞や関係代名詞などといった日本語にはない文法もいろいろと存在します。そのため、考え方の違いに戸惑ってしまいやすく、うまく理解ができていない人が非常に多いのです。
私自身、今でこそTOEIC満点(990点)を持っておりますが、いきなり英語ができたわけではありません。高校までは受験英語、つまり暗記型の英語学習であり、今振り返ると、単語や文法を知ってはいましたが、全然「理解」できていませんでした。英語が深く理解できるようになったのは大学で言語学を学び、「英語の考え方」が掴めてからなのです。
そしてそれから25年以上になりますが、英語病に関する研究を重ねた結果として、日本人(日本語を母語とする人)がつまずきやすい50個のポイント(英語病)をまとめた本が、ディスカヴァー21から出版した『英語学習のつまずき50の処方箋』です。
この本では、英語学習を「英会話(表現)」「リスニング」「リーディング」「ボキャブラリー」「発音」「資格試験」「英語学習全般」という七つの分野に分け、つまずきをどのように解消していくべきかについて解説しています。
この書籍『英語学習のつまずき50の処方箋』の目玉は、英語病のセルフ診断が行なえることです。今回は、学習姿勢や心構えに関する「英語学習全般」をテーマにした英語病の診断チャートをご紹介します。
「学習姿勢」に関する英語病診断チャートに挑戦してみよう
以下のチャートで、質問に対して「はい」「いいえ」を選んでいってください。行きついた英語病に関して、罹っている恐れがあることが判定できます(「罹っている」と断定するものではありません)。
各英語病に関する概要と改善ポイントは以下の通りです。
【英語病】 01. エゴイヤ病
【概要】英語への苦手意識や嫌いという思いがあるために、「やる気不全」を引き起こしてしまう英語病
【改善ポイント】「英語を頑張らなきゃ」と思ってしまう人は要注意。まずは英語に触れることをもっと楽しんでください。
【英語病】 02. ジパング症候群
【概要】英語を身に付けたいのに、日本文化に浸り、勉強時間以外は日本語だけで生活を送る英語病
【改善ポイント】「英語が生活の一部として存在する環境」を作ることが大切です。
【英語病】 03. デイドリーマー病
【概要】英語の教材や学習法、上達度合いなどに関して、理想を夢見すぎる傾向があり、実際の学習が進まない英語病
【改善ポイント】ペラペラやネイティブのような英語力を求めるのではなく、分かる単語や使える表現を一つずつ増やすべし。
【英語病】 04. ハングリーバード症
【概要】特に英語の初心者が、おなかを空かせたひな鳥が口を開けているかのように、受け身の姿勢で学ぼうとしてしまう英語病
【改善ポイント】「やる気を出す」や「きちんと理解する」など、学習者本人にしかできないことに責任を持ちましょう。
【英語病】 05. Dame(デイム)病
【概要】英語がうまく上達できていない自分に対して、厳しく当たってしまう英語病
【改善ポイント】「できている」ことはきちんと肯定すべきです。「できない」ことについては、できない理由を一つずつ解消していきましょう。
【英語病】 06. 疑問ネグレクト症
【概要】 疑問が出てきても、それを質問/解消する努力をしない英語病
【改善ポイント】「疑問=つまずき」です。ぜひ責任を持って、疑問を解消するための努力をしていきましょう。
【英語病】 07. ダブルラビット病
【概要】「二兎追う者は一兎も得ず」ということわざのとおり、二つ以上のことを同時に学ぼうとして逆に効果が出ない英語病
【改善ポイント】あれこれと手を出してしまうのではなく、学習テーマを絞ることで、槍の穂先による「一点突破」が効果的です。
【英語病】 08. 偏食ラーニング症
【概要】学習方法が偏ってしまっているために、成果が上がりづらくなってしまう英語病
【改善ポイント】学習しているのになかなか上達しない・・・という場合には、学習方法が偏ってしまっていないか振り返る良いチャンスです。
今回は、これら8個の英語病の中でも危険度がとても高く、上達を激しく阻害してしまう「疑問ネグレクト症」について詳しく取り上げます。
上達を大きく阻害してしまう「疑問ネグレクト症」
先ほどもお伝えしたように、英語学習でつまずいてしまう大きな理由は、日本語と英語が言語として大きく異なっていることであり、「英語の考え方」がうまく理解できていないケースが非常に多いのです。
先生から「英語はそういうものだから覚えなさい」と言われた人もいるでしょうし、多くの人が英語を「暗記科目」だと思ってしまっています。
以前「英語が納得できなくても丸暗記で大丈夫か、という人へのアドバイス」という記事に書きましたが、英語をひたすらに丸暗記して覚えようとするのは「ウノミー(別名:暗記病)」です。これは、教わったことを「鵜呑み」にしてしまう英語病です。
本来、人が何かを学ぶときには、必ず疑問が出るものです。うまく理解ができないと、もっと詳しい説明が欲しくなるでしょう。「こういう場合はどうなの?」と質問したくなったり、「こういう理解で合っていますか?」と確認したくなったりすることもあるはずです。
しかし、そういった疑問を放置してしまうことにより、理解が深まらず、上達が遠のいてしまう英語病が「疑問ネグレクト症」です。典型的な症状には以下のようなものがあります。
- 恥ずかしくて質問ができない
- 何を質問してよいか分からない
- 出てきた疑問をメモに取っていないため、忘れてしまう
- うまく理解できない時に「難しい・・・」と思い、思考停止してしまう
- しつこく質問するのが申し訳なく、深い疑問は尋ねるのを諦めてしまう
「疑問がある」=「つまずき」
「疑問」というものに対して「理解できずにつまずいている」という捉え方を、きっと多くの方がしていないと思います。疑問を解消することがどれだけ重要なのかを分かっていただくために、敢えて「無視」や「放置」を意味する「ネグレクト(neglect)」という強い言葉を使っております。
私は「理解の階段」と呼んでいますが、きちんと疑問を解消し、理解が深まることはその階段をのぼることに当たります。逆に言うと、疑問を解消しないでいることは、つまずいているのと同じであり、階段を上れずにいつまでもそこに留まることなのです。
また、疑問の解消(言い換えると「理解」)は、自分自身でやるしかないことです。誰かに代わりにやってもらうことはできません。ですから、責任をもって出てきた疑問を解消する――というのが、学習者の心構えとして極めて重要だと言えます。
質問する相手はきちんと選ぼう
もちろん、誰でも構わず質問すればよいわけではありません。分からないことを馬鹿にしたり、答えることをめんどくさがったり・・・ということを決してしない人を選ぶことがまずは大切です。
なお、「どう質問したらいいか分からない」「何が分からないかも分からない」からといって質問をしない人が多いですが、これは非常にもったいない考え方です。
「どう質問したらいいか分からないのですが・・・」のように前置きにした上で、自分が何を分かってい(ると思ってい)て、何が分からないかを説明すれば大丈夫ですから、ぜひ積極的に質問してみてください。
また、すぐには解消のできない疑問もたくさんあることでしょう。それらは、きちんとどこかにメモしておいて、疑問として持ち続けることが大切ですよ。
学習姿勢や心構えだけで8種類ものつまずきポイントがある
今回の記事では、「英語病」を治すことから始めようという提案をしましたが、どれだけ頑張って英語を学んでいても、「疑問ネグレクト症」に罹っていたら、それだけで理解の階段を上ることができずに上達が遠のいてしまうことがお分かりいただけたかと思います。
今回、学習姿勢や心構えに関する英語病を取り上げましたが、このテーマだけで8種類のつまずきポイントがありますのでどうぞご注意ください。脅したいわけでは全くなく、1万人以上の日本人英語学習者を見てきた分析の結果ですから、ぜひ参考にしていただけましたら幸いです。
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