英語“肺活量”検査 発音する前に大切なこと

英語を勉強する多くの人が一度は憧れる、ネイティブのような美しい英語の発音。イングリッシュ・ドクター西澤ロイの「英語健康診断」連載3回目では、英語の発音が良くなる呼吸法をアドバイスします。肺活量をチェックして、劇的に発音が良くなる練習法を試してみませんか?さっそく、英語健康診断スタート!

英語“肺活量”検査:ティッシュを1枚ご用意ください

今回は、英語の発音に関する検査を行います。まずは、ティッシュペーパーを1枚ご用意ください。そして以下のイラストのように、顔の前に垂らす形で持ってください。

※画像は『 頑張らない英語学習法 』(あさ出版)より引用。以下も同様

 

検査内容

顔の前にティッシュペーパーを垂らしたまま、大きな声で「Pen!」と言ってください。このときに、ティッシュがどれだけ揺れるかを測定します。一番近かったものを選んでください。

A.ほとんど動かなかった
B.少し揺れただけだった
C.大きく動いた(約30~45度)
D.ティッシュの向こうが見えるほど大きく動いた(約60~75度)

改善 策">診断:解説と 改善

「息の強さ」が多くの人の盲点になっている

今回の検査は、息の強さを測るものです。日本語と英語では、発音の仕方が大きく違いますが、日本語の感覚のまま、英語の発音をしようとしている人がかなり多いのです。

日本語の「ペン」という発音では、ティッシュは全く、もしくは ほとんど動きません 。しかし、英語の正しい発音ができると、強い息が一緒に出ますので、ティッシュは 大きく動く のです。

pen に含まれる /p/ の音は「 破裂音 」と呼ばれます。息を一度せき止め、強く破裂させるため、そのような名前が付いています。破裂音には、他にも /t/ や /k/ などの無声音と、声帯を震わせる/b/、/d/、/g/ などの有声音がありますが、無声音の場合に、特に息が強く出ます。

唇を使って出す無声の破裂音である /p/ が、息が一番強く出る音であり、ティッシュが(D)のように大きく動くべきなのです。75度ほど動くくらいが理想ですのでぜひ練習してみてください。

ポイントとしては、/p/ の音を出す前に、唇のところでしっかりと息をせき止めます。そして、最初は唾が飛んでも構いませんから(笑)、息をティッシュにぶつける感じで発音してください。

息が強くないと相手は聞き取れない

なぜ発音ではなく、息の強さの検査を行ったかといいますと、これが発音よりも重要だからです。

英語では例えば、s(例:sink<沈む>)と th の音(例:think<考える>)を区別します。sink(スィンク)が「シンク」という sh の音になってしまわないように、また th の音が、舌先を上の歯に触れさせてきちんと発音できるように、練習したことのある人もいるでしょう。

しかし、それらの音を区別して発音できるようになったとしても、もし息が弱かったならば、相手には伝わりません。なぜなら、これらの音を区別するポイントは、音の明瞭度の違いであり、それには息がどれだけ通るかが重要なのです。th の音は、強く出すことができない音であり、逆に s はハッキリと聞こえる音なのです。

日本語は「胸式」呼吸、英語は「腹式」呼吸

日本語は、子音だけで発音することがあまりなく、「あいうえお」の母音がくっつくことの多い言語です。そのため、特別なトレーニング(例えば歌を歌うための発声練習など)を受けていない人は、 胸式呼吸 と言われる呼吸法(特徴は息を吸うと胸が膨らみます)をしている場合がほとんどです。

その状態で英語をしゃべると息が弱いため、モゴモゴとしゃべっている感じに聞こえてしまいます。発音の良し悪し以前に、声が小さいために、何を言っているのか相手が聞き取れないケースも非常に多いのです。

ですから、発音の練習をする際には、一緒に息を強く出すことも練習しましょう。英語では、腹筋を使った 腹式呼吸 (息を吸うときにおなかが膨らむのが特徴)が基本です。腹式呼吸をしないと、強い息は出ないのです。

腹式呼吸と言われてもよく分からないという人は、腹筋に力を入れて「ハッ、ハッ、ハッ」と声を出しながら息を吐いてみましょう。息が強く出やすいことが感じられると思います。英語の発音をするときには、常にそのように、腹筋を使いながら息を吐くのです。

ではあらためて、腹筋を意識しながら「pen」の発音をしてみてください。さっきよりも、息が強く出やすくなったのではないでしょうか。

なお、息を強く出すことを特に意識すべきなのは、/p/ などの無声の破裂音が、pen のように単語の先頭にある場合です。語中(例:upside)や語尾(例:up)にある場合には、音が飲み込まれる(脱落する)ケースも多いですし、破裂をさせても軽いですから、息の強さとしてはティッシュが少し揺れる程度で大丈夫です。

/t/ や /k/ の音も含めて練習してみよう

ティッシュが動く角度の目安としては、以下のイラストを参考にしてください。

以下に練習のための単語を列挙しておきます。
  • 語頭の /p/ - pen、pick(目安は70度)
  • 語尾の /p/ - up、leap(目安は30度)
  • 語頭の /t/ - time、talk(目安は45度)
  • 語尾の /t/ - it、what(揺れる程度)
  • 語頭の /k/ - cat、coat(目安は30度)
  • 語尾の/k/ - look、sick(揺れる程度)

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執筆:西澤ロイ

イングリッシュ・ドクター(R)(英語のお医者さん)。
英語への「苦手意識」や「英語嫌い」を解消し、英語が上達しない 原因 である「英語病」を治療する専門家。獨協大学英語学科卒業。TOEIC満点(990点)、英検4級。アメリカのジョージア州に1年間の留学経験あり。「英語感覚」や「英語の考え方」を分かりやすく日本語で伝えるスキルには定評があり、「長年の疑問がすっきり解消した!」「そんな風に英語を捉えたことがなかった」「目からウロコ!」という多くの感動や喜びの声が寄せられている。著書に「頑張らない英語」シリーズ(あさ出版)、「TOEIC L&Rテスト最強の根本対策」シリーズ(実務教育出版)など、計9冊で累計15万部を突破。メディア出演多数。木8(木曜夜8時)の英語バラエティ ラジオ番組「スキ度UPイングリッシュ」の他、コミュニティFMにてレギュラー番組・コーナーを4本オンエア中。

公式HP: https://english-doctor.co.jp/

YouTubeチャンネル: https://www.youtube.com/user/990english

写真:山本高裕

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