「国際?(きき)酒師」の資格を 取得 しよう!と決めたら、試験対策に向けた学習が必要ですね。日本酒の資格っていったいどんな学習が必要なの?試験対策はどうすればいいの?といった疑問について、国際?酒師で、シンガポールで同資格の試験監督も務める藤代あゆみさんに教えていただきます。今回は、第二次試験と第三次試験の概要と試験対策のポイントについてです。
- 日本酒を香りと味わいで4つのタイプに分ける
- テキストと試験の順番が逆?!
- 第二次試験対策
- 第二次試験と第三次試験は同時に対策できる!
- 例題にチャレンジしてみよう!
- 【1】 Questions regarding the serving of the sake. Answer each question from (1) to (3).
- 【2】 Questions regarding the sales promotion of the sakes.
- 【3】 Questions regarding the appearance within tasting sake. Answer each question from (1) to (3) after you have tasted the sample sake A. (Use alphabet to answer the multiple-choice questions. Write your answer in the answer section for the essay question.)
- 【4】 Questions regarding the total impression of the sake. Answer each question from (1) to (2) after you have tasted the sample sake A and B. (Use alphabet to answer the multiple-choice questions. Write your answer in the answer section for the essay question.)
- おわりに
- 藤代さんの書籍
日本のことを英語で受験できる珍しい資格、「国際?酒師」。TOEICや英検とは違って、マーケティングの観点を押さえた記述問題やテイスティングの実技もある、非常に総合的な試験で、合格後も実務や趣味に生かせる資格です。最終回の第3回では、第二次試験と第三次試験のヒントと対策についてお話しします!
今回も、国際?酒師の公式テキストである『 日本酒の基 NIHONSHU-NO-MOTOI The textbook for INTERNATIONAL KIKISAKE-SHI 』(以下、テキスト)がお手元にあるとより充実して学べますので、購入された方はぜひご準備ください。
日本酒を香りと味わいで4つのタイプに分ける
日本酒といえば、「純米大吟醸」や「本醸造」といったプレミアムな特定名称酒が8タイプあり、そこに属さないものを「普通酒」と呼んでいますが、SSIでは香りと味わいを基に4つのタイプに分ける手法を使っています。
“ classification according to flavor characteristics [4 types]”(香味特性別分類[4タイプ])と言ったり、“the four sake classifications”(日本酒の4タイプ分類)と言ったりします。
この4つのタイプに分けることが、 第二次試験と第三次試験、どちらにも関わってくるので、テキストp.168の Classification according to flavor characteristics [4 types] をまずは理解しましょう。
画像提供:日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)
テキストと試験の順番が逆?!
第二次試験では、 日本酒のサービス・セールスプロモーション について問われ、第三次試験では、 テイスティング がメインですが、実はテキストの順番と逆になっています。第一次試験も含め、主な範囲を表にまとめましたので、試験直前の勉強や、再受験される場合などにお役立てください。
試験 | 試験内容 | 主な対応ページ |
---|---|---|
第一次試験 | 【筆記】選択式(一部記述式) ・日本酒に関する専門知識(原材料、歴史、製造方法、法律など) ・酒類をはじめ飲食全般に関する基礎知識 | p.1?p.165 |
第二次試験 | 【筆記】選択式(一部記述式) ・日本酒のサービス、セールスプロモーションに関する設問 | p.167?p.173p.203?p.279 |
第三次試験 | 【テイスティングの実技を伴う筆記】記述式(一部選択式)・日本酒のテイスティングを通じた品質の評価、個性の 抽出 | p.167?p.173p.175?p.201 |
※国際?酒師の試験は、総合的に内容を理解しておく必要がありますので、すべてのページに目を通してくださいね。
第二次試験対策
出題範囲
「日本酒のサービス、セールスプロモーション」と聞くと少し抽象的に思われるかもしれませんが、つまるところ、日本酒を提供するときに大事なことや、どのように販売・おすすめすれば注文され、買ってもらえるのか、を問われるものです。
一部記述式とありますが、第一次試験に比べると記述問題がたくさんあります。おもてなしの形は人それぞれありますから、正解は一つではありませんが、日本酒の特徴をよく理解していることが根底にあり、かつ筋が通っていることも必要です。採点者の人に納得してもらえるような回答を書けるようにしましょう!
p. 203~Ⅶ Services
プロとして、日本酒を提供するときに必要な知識や姿勢に始まり、日本酒の管理方法、酒瓶の取り扱い方など、勉強してみると案外知らないことがたくさん書いてあるかもしれません。しかし、丸暗記するというよりは、しっかり読んで理解できていれば大丈夫なので、試験に問題が出たときに焦ることはないでしょう。
ただし 、p. 220~5 Sake vesselsでは日本酒を楽しむ醍醐味(だいごみ)の一つ、「酒器」についてかなり詳しく解説されています。酒器そのものの歴史などは覚えなくても問題ありませんが、日本酒の4タイプ分類のうち、どの酒器がどの日本酒に合うのか、その理由は何か、という点を覚えておきましょう。
また、p. 214~の4 Serving temperatureについては、前連載の「 日本酒オタクのおもてなし英語(第7回) 」でも紹介しておりますので、そちらを参考にしてくださいね。
p. 247~Ⅷ Sake sales promotion
人の好みは十人十色。華やかな日本酒(薫酒)が好きな人もいれば、力強いもの(醇酒)が好みな人もいます。日本酒をあまり飲んだことのない人と、私みたいな日本酒オタクを相手にするのとでは、おすすめするお酒も変わってきますよね。相手の好みに準じておすすめすることが大事なため、日本酒は販売したことがないけれど、営業やマーケティングの経験がある方には、案外解きやすいかもしれません。
4タイプ別ではありませんが、「 日本酒オタクのおもてなし英語(第4回) 」で掲載した日本酒をおすすめするためのチャートや、 第11回 で解説した季節やペアリングも参考になりますので、テキストと併せて読んでみてくださいね。
第二次試験の記述問題を攻略!
日本酒のセールスプロモーションについて2つ記述問題が出ます。自分のポジションを「レストランのサービススタッフ」もしくは「お酒の小売店のスタッフ」のどちらかに設定したり、どのようなお客さまをターゲットにするか決めたり、4タイプ分類の中からどのような日本酒をおすすめするかを提案したり。逆にターゲットや季節、日本酒が決められている場合もありますので、とにかく設問をよく読むことが大事です!
また、答えの 整合性 も大事ですから、例えば、暑い夏に冷やして飲みたい日本酒という流れで回答しているのに、合う食事が鍋となると、ん?となりますよね。繰り返しになりますが、正解は一つでないので、自分が導き出す「正解」の筋が通ることを意識しましょう。
同時に 対策できる!">第二次試験と第三次試験は 同時に 対策できる!
第二次試験と第三次試験のいちばんの対策は、なんと、日本酒を飲むこと!(笑)
もちろん、ただ飲むだけではありません。日本酒を飲み、ノートに情報をまとめ、コメントを書くことが、対策です。テキストにもサンプルの表がありますが、空欄の表は付属されていないので、ぜひ以下の表を印刷して書き込んでみてくださいね。
日本酒のラベルから「基本情報」を記録しよう
まずは、日本酒のラベルを確認して、これからテイスティングする日本酒の基本的な情報を記録します。せっかくテイスティングをしても、あとで復習するときに、どの日本酒だったかわからなくなってしまったら、意味がないですよね!また、ラベルの情報を書くことで、難解な日本酒用語の味わいが経験的に理解できるようになりますので、隅々まで読んで書いていきましょう。
外観 ・香り・味について記録しよう">「テイスティング」をしながら 外観 ・香り・味について記録しよう
日本酒の基本的な情報を書き終えたら、いよいよテイスティングです!第三次試験のメインの出題範囲ですね。テイスティングをする際は、お猪口(ちょこ)・・・ではなく、お持ちでしたらワイングラスを使用しましょう。
実際の試験ではISO(国際規格)のワイングラスを使用するからです。「 日本酒オタクのおもてなし英語(第1回) 」で書いたとおり、日本酒の楽しみはさまざまなタイプの酒器で楽しめることなのですが、酒器が変われば味も変わるもの。常に同じ条件で比較することで、その日本酒の個性を 判断 し、ほかの日本酒との違いを見つけていくのです。
実際に日本酒を飲みながらここまで書いてきて・・・お気付きでしょうか?そう、項目の中に「おいしい」か「おいしくない」か、は含まれていないのです!「 日本酒オタクのおもてなし英語(第10回) 」で書きましたが、「おいしい」というのは、味だけのことではなく、さまざまな要因が関わってきます。
また、日本国内の?酒師や国際?酒師は、 そもそも 日本酒とそれを飲む人の橋渡しをする役割がありますから、自分の好みを 主張する のではなく、相手の好みを察知して、それに合わせて適切なお酒を提供できるようになることが大事です。
会員限定記事だから、またまた言っちゃいますが、私にだって自分の好みはあります。ですから、自分はそこまで好きじゃないけど、この人が、こんな食事をするなら、きっとこの日本酒が喜んでもらえるのでは・・・とおすすめすること、よくあるんです。その方の好みに合致して楽しい時間を過ごしてもらえたのなら、こんなにうれしいことはありません! ちなみに 、私の好みは内緒です(笑)。
少し話がそれましたが、前述の「余談」は第一次試験で出題される「とある」頻出問題を解くヒントにもなりますので、読み飛ばした人は 改めて 読んでみてくださいね。そして、テイスティングのノートにはまだまだ書くことがありますので、次にいきましょう!
テイスティングを基に日本酒の個性まとめよう
今度は、テイスティングをした日本酒の個性を 抽出 していきます。「個性を 抽出 」なんて聞くと、なんだか難しそうですが、ただ単にまとめです!(笑)資格だから仕方がないとはいえ、いちいち表現が難しいんですよね、日本酒って。
ちなみに 、国際?酒師として、実際にお客さまなどと交流するときは、この「まとめ」をお話しすることになります。一つ前に紹介した「テイスティング」用ノートは、どちらかというとレストランのシェフや卸売、小売のバイヤーといったプロの方とお話しするときに必要な情報ですので、常に相手に合わせた日本酒の説明をすることを心掛けてくださいね。
効果的な販売方法を考えよう
ようやく最後のノートです!第二次試験範囲の日本酒のセールスプロモーションは、実際の試験ではいくつかの条件が問題用紙に記されていますが、どんな条件になるかは受けてみないとわかりません。ですから、テイスティングのトレーニングで飲んだ日本酒をどのようにプロモーションするかを考えることが対策になるのです!
こんなに考えながら、書きながら、日本酒を飲んだことありましたか??酒師や国際?酒師はどんなことをしているのだろう?と疑問に思っていた方も、このようなことを考えながら日本酒を飲んでいると知ると、どうして?酒師の人の話が長いのかわかったかと思います(笑)。
第一次試験とは違い、テイスティングやマーケティングの観点も問われる第二次・三次試験のトレーニングを重ねることは、試験合格後もとても大事なことですので、こちらのフォーマットはぜひ保存してくださいね。
例題にチャレンジしてみよう!
第1回 でも書きましたが、国際?酒師試験の出題範囲は2020年に改訂されています。
現在(2020年10月時点) SSIのWEBサイトに掲載されている過去問 は、改訂前の出題範囲のままとなっていますので、 今後 受験される方は参考までにご確認ください。
以下の【1】は答えを最後に書いていますが、【2】と【3】、【4】の問題は試験によって答えが異なりますので、参考までにご覧ください。
regarding the serving of the sake. Answer each question from (1) to (3). "> 【1】 Questions regarding the serving of the sake. Answer each question from (1) to (3).
(1) State the value of ichigo indicated by a traditional Japanese measurement unit , using the figure written on the answer sheet.
○○ ml
(2) Choose from the following the correct explanation of sake when it is chilled.
B:more umami and sweetness
(3) State three characteristics of Japanese cuisines.
regarding the sales promotion of the sakes.">【2】 Questions regarding the sales promotion of the sakes.
regarding the appearance within tasting sake. Answer each question from (1) to (3) after you have tasted the sample sake A. ( Use alphabet to answer the multiple -choice questions. Write your answer in the answer section for the essay question.)">【3】 Questions regarding the appearance within tasting sake. Answer each question from (1) to (3) after you have tasted the sample sake A. ( Use alphabet to answer the multiple -choice questions. Write your answer in the answer section for the essay question.)
(1) State your evaluation of sample sake A in terms of its clarity.
(2) State your evaluation of sample sake A in terms of its color.
(3) Choose from the following your evaluation of sample sake A in terms of its viscosity.
A:low
B:a little low
C: medium
D:a little high
E:high
regarding the total impression of the sake. Answer each question from (1) to (2) after you have tasted the sample sake A and B. ( Use alphabet to answer the multiple -choice questions. Write your answer in the answer section for the essay question.)">【4】 Questions regarding the total impression of the sake. Answer each question from (1) to (2) after you have tasted the sample sake A and B. ( Use alphabet to answer the multiple -choice questions. Write your answer in the answer section for the essay question.)
(1) State two total impressions of sample sake A.
(2) Choose from the following the classification of sample sake A.
A:Kun-shu
B: So -shu
C:Jun-shu
D:Juku-shu
答え
(3)1] using [diverse , fresh ingredients and respecting their original taste.
2] healthy eating habits [with excellent nutritive balance .
3] expressing the transitioning seasons and the beauty of [nature . など。
※(3)は3つ書かなければいけないことに注意
おわりに
私の連載をすべて読んでくださっている方は、もうお気付きかもしれませんが、全11回にわたって書いた連載「 日本酒オタクのおもてなし英語 」って、実は国際?酒師の試験対策にもなるんですよ?!
連載の 第5回 でご紹介した『 白熱日本酒教室 』(著者:アザミユウコ/原作:杉村啓/発行元:星海社COMICS)も、テキストを読み込むのに行き詰まったときに漫画でわかりやすく理解できるのでおすすめです。
国際?酒師の試験対策でいちばん大事なことは、テキストを丸暗記することではなく、日本酒やそれに関するサービス・プロモーションを理解することです。TOEICや英検と違い、英語の単語や文法を覚えるのではなく、日本酒を理解した上で、英語で説明できるようになる資格です。
また、本連載の 第1回 でも記しましたが、国際?酒師の資格を持つことはゴールではなく、通過点です。私もまだまだ知らないことがたくさんあり、日々(飲みながら)一生懸命勉強しています。オンラインでいつでもどこでも世界中とつながれる今、日本にいても英語ができれば世界はいくらでも広がっていきますから、「Youはどこにいるの?」と聞かれたときに「日本にいるよ!日本といえば、日本酒というおいしい飲み物があってね・・・」なんて会話を広げられたら、英語を身に付けたかいがありますよね。英語が話せる人が増えている中、英語で日本のことを話せる人への需要はまだまだありますから、ぜひ国際?酒師を目指してみてください!
私の Instagramアカウント では、定期的に日本酒の知識をわかりやすく日本語と英語(いつか中国語でも!)で説明しており、フォロワーの皆さんからコメントなどもいただいてますので、ぜひぜひフォローして気軽に絡んでくださいね?!
藤代あゆみさんの過去連載
連載「日本酒オタクのおもてなし英語」では、国際?酒師および日本酒学講師の資格を持つあゆみせんせいが、日本酒の知識や日本酒にまつわる英語表現などを紹介しています。外国の方とコミュニケーションを取る きっかけ や話題のネタにもなる「日本酒」を英語で学びましょう!連載 第5回 では国際?酒師のお仕事についても触れています。
▼連載第1回はこちら!
ej.alc.co.jp藤代さんの書籍
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藤代あゆみ 平成元年、東京生まれ、共立女子大学文芸学部劇芸術コース卒。日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)公認国際?酒師・日本酒学講師・酒匠。「日本酒オタクのあゆみせんせい」として、シンガポールを中心に、アジア、オセアニア、ヨーロッパ、北米、南米など世界20カ国以上の人に向けて日本酒を広める活動を経験。好きな漫画は『推しが武道館いってくれたら死ぬ』(平尾アウリ著、徳間書店)
Official Website: https://www.ayumi-and-sake.tokyo/
Twitter: @ayumi_and_sake
Instagram: @ayumi_and_sake
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