英検1級合格者を育てる達人の中西哲彦さん。連載「楽しい!英検1級」では、徹底的に4技能を磨き上げ、英語がますます好きになる勉強の方法を教えます。5回目は、英検1級スピーチが楽しくなる、とっておきのトレーニング法を紹介します。
こんにちは。中西哲彦です。今回のテーマは、スピーチです。
『 完全攻略! 英検(R)1級二次試験 』に、スピーチへの対策が、事細かに書かれています。ぜひ、参考にしてください。また、ここまで付き合ってくださった皆さんは、すでに、リスニング、リーディング、ライティングの勉強を通じて、スピーチへの準備方法が見えてきているはずです。
ここでは、さらに紙面に書き切れなかったこと、付け加えたいことをお伝えしたいと思います。
二次試験は英語ができる教養人との出会いと考えよう
一次試験を突破し、二次試験に向かうときは、こんな気持ちで会場へと向かいましょう。
・今日も、誰か、これまでに会ったことがない人たちに会える。
・英検の面接官をされるぐらいだから、英語力は抜群、教養も高い人たちだろう。
・そこで、英語を使って、何かの話題について、語り合える。
・しかもまずは、自分の意見を述べることから始まる。
思考力(内容を思い付く力)を試される、知識を試される、英語力を試される、と不安や緊張に悩まされる人が多いようですが、もっと広く「英語でのコミュニケーション能力」を試される、と考えましょう。どんな人に会えるのだろう、どんなことを語り合うことになるのだろう、楽しいだろうなぁ、と、ワクワクした気持ちで入室されることをお勧めします。
自分の体験や生活での出来事をスピーチに交えよう
背伸びをしたスピーチにならないように、自分の体験や、生活での出来事を交えたスピーチにしましょう。
自分が知っていること、自分が考えられること以上のことは、語れない。さまざまなことについて問題意識を持った教養人ではありたいのだが、「政治家、経済学者、歴史学者などの専門家ではない。彼らのように受け答えができるはずがない」と、身の程を知っておくと、気楽に身近なことと関連付けて語ることができます。後の質問に対する受け答えも楽になります。
とっておきの練習方法3つ
録音、録画しよう
一次試験が終わったら、合格したものと考えて、毎日何かのトピックを自分に課し、「1分間考えて、2分間で語る」練習をしましょう。練習する相手がいればいいのですが、いなければ、自分でやるしかありません。
練習なので、好きなトピックではなく、ランダムに、これ!と決めるといいでしょう。
- スマホの機能を使って、2分間語る様子を録画、あるいは録音する。
真剣な表情だけれど、引きつった顔になっていませんか。コミュニケーション能力には、顔の表情、声の調子なども大切な要因ですよ。
見直すと、ああ言えばよかった、こう言えばいいんだ。これ、間違っている かもしれない ので、こう言い直そう、と自分なりに校正ができます。1分、2分という時間の感覚も身に付きます。
【動画1】を見て実例に学ぼう
面接試験の準備をしている人を装った私の練習、スピーチの例を、ビデオを交えて紹介します。
トピックは「 Agree or disagree: More should be done to ensure global sustainable fishing」です。スピーチの流れを、みなさんも1分考えてみましょう。その後、【動画1】をご覧ください。
【動画1】の見どころ
- スピーチの構想
Introduction から結びまで、どんな構想を持って挑んだか、ポイントを掲げています。
- 構想を基に、2分間スピーチをしてみました。その様子を、スクリプトと共に見ていただくことができます。スクリプトの赤字部分は、見直して訂正した部分です。ビデオでは、「拙い」表現のまま語っています。
Introduction ">Scene 1: Introduction
「つかみ」と立場の表明に、26秒程度かかりました。
Scene 2:Body
国際的な取り決めを守る、海洋汚染、温暖化のストップ、2つやらねばならぬことを、理由とともに挙げました。1分30秒ほどかかりました。
Conclusion ">Scene 3: Conclusion
もう一度、結論を繰り返しています。魚の養殖技術にも触れています。時間が少なくなり、「いつまでもおいしい魚、鮪、ウナギが食べられるといいです」など、が付け加えられなくなりました。時間を意識して、あわてています。全体で8秒超過するスピーチになりました。「10秒程度余裕をもって終われるぐらい」を意識するといいと思います。
【動画1】でのスピーチはいかがでしたか。スクリプトの中で、聞き直して、訂正を加えたところは、赤字になっていました。訂正したスクリプトは、ここからダウンロードできます。【動画2】を見て実例に学ぼう
見直してみると、いろいろなことに気付きますね。さらに、手直しして練習をしてから、もう一度スピーチを録画しました。時間超過、また、英語表現にも拙い点があった【動画1】と比べてみてください。
【動画2】の見どころ
約2分間、通しての動画となっていますが、スピーチの流れやスクリプトを確認しながら見ていただけるようになっています。
2回目のスピーチは、いかがでしたか。【動画2】にあるスピーチのスクリプトは、ここからダウンロードできます。【動画1】のスクリプトと、比べられるようになっています。
身近なことから発想して、時間内に余裕をもって収まるように、削れるところは削って、表現も、より的確なものに変わっているのがよくわかると思います。
さいごに
いかがでしたか。私は、最初のスピーチも、なんだか、ほのぼのとしていて、いいなあと思うのですが、欲張り過ぎて時間超過になっていましたね。発想するときは、身近なことから思いついたポイントを使って、【動画2】のようなスピーチにすればいいと思います。最初から評論家のように考えようとすると、とても固くて、手持ちの表現では、どうにもならないスピーチになってしまう 可能性 が高くなるかと思います。
見直したり、聞き直すために、録画、録音をする大切さも、おわかりいただけたでしょうか。面接試験本番では、少なくとも、【動画2】のスピーチのように語れるといいですね。
スピーチをしている場面を、私は皆さんに見せてしまいました。皆さんは、人に見せるわけではなく、自分で見るだけですから、恥ずかしくも、なんともないはずですよ。頑張ってくださいね!
英検の概要
英検(実用英語技能検定)1級の試験内容は、日本英語検定協会の下記サイトをご参照ください。
https://www.eiken.or.jp/eiken/exam/grade_1/detail.html
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- 作者: 中西 哲彦
- 発売日: 2020/04/22
- メディア: 単行本
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中西哲彦 愛知教育大学教育学部外国語教室卒。三重県立高校 、大手英語学校で教壇に立ち、日本福祉大学国際福祉開発学部国際福祉開発学科にて准教授。現在はアルファ英語会、茅ヶ崎方式英語会顧問、自らも英検1級、準1級を狙う学習者を対象に「英語上級者への道」を開講し幅広い層に英語を教えている。過去には、英検セミナー派遣講師として各地の特別授業や英語教育セミナーにて活躍し、日本英語検定協会の学習サイト「 めざせ1級!英語上級者への道~ Listen and Speak III 」にも登場。また、同サイト上に英検1級、準1級を目指す学習者向け自習学習教材「 英語上級者への道・Listen and Speak 」を連載(ダウンロード可)。茅ヶ崎方式英語会が発行する季刊誌「 季刊LCT 」で連載「ここに注目」を執筆。『 完全攻略!英検1級 』(アルク)を執筆。また、『 完全攻略!英検1級 二次試験対策 』(アルク)では、コラム「発音発話ワンポイント」解説担当。
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