連載「LONDON STORIES」は、今回が最終回。イギリスを愛し、ロンドンに20年以上暮らす宮田華子さんが、心を込めてイギリスのおすすめスポットを紹介します。イギリスへ旅行する際に、ぜひ訪れてみてください。
目次
桜が美しい春のロンドン
4月になったものの、いつコートを手放せるのか想像できないぐらい寒い日が続いている。
しかし不思議なことに、毎年桜だけは早く咲く。そして普通の桜と八重桜(花が重なって咲く八重咲きの桜の総称)が同時に咲くのもロンドン(&イギリス)の特徴だ。
今年の春は雨が多く、また強風の日も多い。
先日の強風を耐えた庭の草木。
— 華子です in London (@hanakolondon_uk) April 17, 2024
1本も折れなかった。
草木って強いな…。#イギリス#ロンドン pic.twitter.com/AeyUYXWPKI
こんなに天気が悪いのに、庭の芝生の緑も日に日に濃くなり季節の移ろいを感じることができている。寒いけれど花の多いロンドン。遅い春を楽しむ日々を過ごしている。
ロンドン旅行の際に「ぜひ訪れてほしい場所」
当コラム「LONDON STORIES」は、月刊誌『ENGLISH JOURNAL』で2020年4月号(2020年3月発売)から始まった連載だ。『ENGLISH JOURNAL』の休刊後は同名のウェブメディア「ENGLISH JOURNAL」に移行し、合計で丸4年に渡り書かせていただいたが、今回が最終回である。
そこでこの記事では、感謝の気持ちを込め「私が好きなロンドン」を大放出させていただきたい。
20年以上ロンドンに暮らしていると、風景は変わり、新しいお店もできては消え、さまざまに変化したが、下記に紹介するのは「今、おすすめの場所」である。
建築物や遺跡、ミュージアムなどの観光地はガイドブックで簡単に探せると思うので、ここでは「私の好きなお店」、特に飲食関係の店を紹介したい。「ロンドンに旅行に行ってみようかな」と考えている読者の方の参考になることを願いつつ書いてみたい。
おいしい「イギリス料理」が食べられるレストラン
「イギリスはおいしい」を長年訴えてきた私。観光客に愛されている店に行くよりも、せっかくロンドンに来るなら奮発して、思い出に残る食事をしてほしい・・・そう願いつつ、たくさんあり過ぎる候補の中から2店を厳選した。
パブで食べる食事の最高峰 「 Harwood Arms 」
Always start with the Venison scotch eggs
— The MICHELIN Guide (@MichelinGuideUK) June 19, 2021
Harwood Arms #Fulham#MICHELINStar pic.twitter.com/M39iNXlrrG
「Harwood Arms」はミュシュランの星を持つロンドン唯一のガストロパブ。「ガストロパブ」とは食事もできるパブのこと。「パブ」なのでビールだけ飲みに行くのもOKだが、せっかく行くならぜひ食事もしてほしい。
骨太なイギリス料理が食べられるのが特徴。特にゲーム(ジビエ)の時期がおすすめ。ボリュームたっぷりのプディング(焼き菓子)も見逃せないので、前菜・メインの量を調整し、デザート分の胃袋を開けておかないと後悔するかも。
イマドキのイギリス料理を食べたいなら「 Lyle’s 」
ヨーロッパをはじめとする世界各地の食材や調理法を取り入れた、モダンブリティッシュ・キュイジーヌ(新イギリス料理)を食べられるお店。
ランチはアラカルトで注文可能だが、ディナーは8品がサーブされるテイスティングメニュー(現在の価格は95ポンド+税)のみ。決して安くないが、インダストリアル感のあるおしゃれなインテリアも含め、「今のロンドン」が味わえる店として人気だ。こちらもミシュラン1つ星。
歩き疲れたら、立ち寄ってほしいカフェ
「紅茶の国」だが「コーヒーも大好きな国」であるイギリス。特にロンドンはカフェがひしめく街。観光に疲れたら、ふらりと立ち寄って一休みしてほしい「お茶処」2つを紹介。
「物語」のある深煎りコーヒーの店「 Redemption Roasters 」
ロースター(焙煎所)直営のカフェ。店名「Redemption(贖い)」は、この店のロースターが刑務所の中にあることに由来する。受刑者が焙煎技術を身に付ける研修所としても機能する社会的企業として立ち上げられた。そんな背景にある物語も興味深いが、何より私はこの店の深煎りコーヒーの大ファン。直営カフェは現在ロンドン内に9店舗あり、どんどん増えているのも人気の証拠。煉瓦や漆喰など、イギリスの建物の質感を生かしたインテリアがくつろげる雰囲気を醸し出している。
圧巻のインテリア「 V&A Café 」
サウスケンジントン地区にあるヴィクトリア&アルバート博物館の中にあるカフェ。世界初のミュージアムカフェとしても知られている。飲食はケータリング会社「Benugo」が提供しているので、びっくりするほど美味!ではないものの安定した味。特筆すべきはインテリア。ウィリアム・モリス、エドワード・ポインター、ジェームス・ギャンブルがデザインした3つの部屋からできている。
高い天井と豪華な内装を眺めつつ、ゆっくりお茶を楽しめる。
飲めない人もぜひ――ロンドン人に愛されているパブ
パブはビールなどのお酒を飲める場所だが、日本で言う「居酒屋」とは違う。食事をする必要はなく「ドリンクのみ」でOKな場所。また注文はバーカウンターで行い、セルフで運ぶ。一度飲み物を買ったら、客がどの席で何時間いようがお店側は「ほっておいてくれる」のがパブの特徴。友人と来て飲みながら話す場として、また一人の時間を楽しむ場としても使える「公共の場所(Public House=Pub)」、それがパブなのだ。
私はグラス1杯で朝まで酔っているほどお酒に弱いが、それでも雰囲気が好きでよく行っている。飲める人はもちろんだが、ソフトドリンク、コーヒーや紅茶類も充実しているので、飲めない人もぜひ「イギリスの雰囲気」を味わうために立ち寄ってみてほしい。
狭くて古い建物が魅力「 Ye Olde Mitre 」
細い路地の奥にあるパブ。1546年に建てられた建物であり、内部が区切られていたり、古い窓枠が今なお使われていたり、イギリス人が好きな「古い建物」を保っている。木・金曜の夕方から激込みになるので早めの時間の方がくつろげる。
バーカウンターに貼られた「パンプバッジ」がインスタ映えする「 The Harp 」
観光地コベントガーデンのすぐ近くにあるが、毎晩会社帰りのロンドン市民でいっぱいになるパブ。エール(上面発酵で醸造されるビール)とサイダー(=シードル。イギリスではビールの仲間)を中心に取り揃えた通好みの店。バーカウンターの上部は、かつて取り扱ったことのあるビールのパンプバッジ(ビールサーバーの前に貼られた、ビールのロゴプレート)がびっしり貼られている。鰻の寝床のような細い店内で、見知らぬ人と相席しながら飲むのが楽しい店。
アフタヌーンティー処に迷ったら・・・
「ヌン活」族なら、ロンドン滞在中に必ずアフタヌーンティーを体験したいはず。現在インフレもあり、アフタヌーンティーは大変高額なので驚くかもしれない。
下記以外にも、多くのホテルのカフェでアフタヌーンティーを提供している。5つ星ホテルであればどこでもおいしいのでご安心を。
伝統とモダンの両方を楽しめる「 Palm Court at The Langham Hotel 」
ロンドン中心部にあるLangham Hotelは1865年、初めてアフタヌーンティーを提供したホテルとして有名。このホテルのティーラウンジ「Palm Court」のアフタヌーンティーは洗練されたお菓子と盛り付けが特徴。伝統的なスコーンやサンドイッチに、おしゃれなデザインのケーキなど、新旧両方のおいしさを美しく提供している。80ポンド~とお高めだが「午後の紅茶」ではなく「立派な一食」なので、奮発する価値はあるはず。
豪華内装の中でリーズナブルなアフタヌーンティーを「 The Wolseley 」
こちらはロンドン中心部、Green Park駅のすぐ近くにあるブラッセリ―。素晴らしい内装のレストランで、午後3時半から時間限定でアフタヌーンティーをサーブしている。「Traditional Afternoon Tea」が1人44.50ポンドと5つ星ホテルの約半分の値段で味わえる。朝食、ランチ、ディナーもおすすめのお店。
お勧めしたいお店はまだまだたくさんあるが、きりがないのでこの辺で。ガイドブックに載っていない情報をお探しの方の一助になったら幸いだ。
感謝をこめて。またいつか会いましょう
最後に読んでくださった皆さまへのお礼の言葉を書いてお別れとしたい。
愛する読者の皆さまへ。
4年間、毎月「次は何を書こうかな?」と考えるのが楽しみでした。読者の方から直接メッセージをいただくこともあり、とても励みになりました。
連載開始直前にブレグジット(Brexit。イギリスの欧州連合からの離脱)があり、開始後すぐにコロナ禍となりました。この4年間は絶えず変化する風景を観察しながらなんとか乗り切る日々でした。楽しいことも大変なこともあるロンドン生活。目の前にある日常を、少しでもリアルに感じていただけたらと願いつつ記事を書きました。
読んでくださった皆さまと、機会をくださったENGLISH JOURNAL編集部にお礼を申し上げます。ありがとうございました。
これからも私はどこかでずっと執筆活動を続けます。またどこかでお目にかかれることを願っています。
ENGLISH JOURNAL読者、そしてすべての英語学習者に幸あれ!
Thank you very much, indeed.
トップ画像:Lucas Davies from Unsplash
本文3つめのロンドンの写真:Benjamin Davies from Unsplash
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