早稲田大学には数多くの学生サークルが存在しますが、その中にはWikipediaに関する活動を行う『早稲田Wikipedianサークル』もあります。このサークルでは学生たちが積極的に知識を広め、編集作業を通じて学内外のコミュニティに貢献しています。本記事では、彼らがどのようにしてこれらの活動を行っているかを探ります。
目次
早稲田の多様なサークルとWikipedianサークル
早稲田大学には多種多様な学生サークルが存在します。野球部やラグビー蹴球部のような名門サークルから、かくれんぼ同好会、仮面浪人・再受験交流会、といったユニークなサークルまで、さまざまな団体が思い思いの活動を展開しています。そしてもちろん、われらがウィキペディアのサークルも存在します。
ということで今回の連載では、早稲田大学在学時に私が立ち上げた「早稲田Wikipedianサークル」についてご紹介します。
ウィキペディアとの最初の出会い
2018年12月15日、私はウィキペディアのとりこになってしまいました。そのきっかけとなったのは、本連載の前任者でもある北村紗衣さんが武蔵大学で開催した「研究・教育関係者向けウィキペディア記事の書き方講習会2018」です。
講習会では、ウィキペディアの編集方法や方針に関するレクチャーが実施された後、各自が好きな記事を編集したのですが、これがとにかく面白く「これは一生モノの趣味になるな」と感じました。自分が愛する音楽に関する記事を編集するのは楽しかったですし、参考文献を示しながら情報を整備することにやりがいを感じたのです。
また、ウィキペディアの編集イベント(エディタソンと呼ばれます)そのものにも興味を持ちました。そこで、このようなイベントを行うための学生サークルを作ろうと思い立ち、2019年8月に「早稲田Wikipedianサークル」を設立。当初メンバーは私一人のみで、大学の正式な認定もありませんでしたが、北村さんをはじめとするウィキペディアンの皆さまにご協力いただき、イベントを開催できる方法を模索しました。
図書館と提携したウィキペディア編集活動
その後は着実にサークルメンバーも増え、ありがたいことに図書館や美術館と提携したイベントを実施できるようになりました。これまでに三康図書館、東京国立博物館、東京外国語大学などにご協力いただきましたが、特に雑誌専門図書館の大宅壮一文庫とは緊密な関係を築くことができました。
同館では WikipediaOYAと題した編集イベントを何度か開催しています。このイベントでは「パン」「飲食店」などのテーマのもと、大宅壮一文庫が所蔵する雑誌を活用してウィキペディア記事を編集するのですが、これまでにフルーツサンド、キッチンオトボケ、配膳ロボットといった、雑誌出典ならではの一風変わった記事が作成されています。また、これらの記事は「良質な記事」に選出されるなど、ウィキペディアコミュニティ内でも高く評価されました。
さらに「ウィキペディアの編集を通して、大宅壮一文庫独自の検索システムやレファレンスサービスの魅力を発見する」という姿勢も評価され、前述の北村紗衣さんや大宅壮一文庫職員の鴨志田浩さんが、エッセイや論文でイベントを紹介してくださいました。早稲田Wikipedianサークルのプロジェクトが様々な方に受け入れてもらえたのは非常にうれしかったです。
国際交流拡がるウィキペディアンの輪
早稲田Wikipedianサークルは、国際交流も盛んに行っています。2023年にはトルコのイスタンブール・ビルギ大学ウィキペディアクラブと姉妹協定を結んだほか、マレーシアの学生ウィキペディアンたちとさまざまなイベントを共催しました。特に東京外国語大学、マレーシア国際イスラーム大学で同時開催した編集イベントは、ウィキメディア財団、在マレーシア日本大使館の協力を得た他、日本ASEAN友好協力50周年事業に選定されるなど、大成功を収めました。
さらに、2024年には、世界各国の学生ウィキペディアクラブから成るExtracurricular Wikimedia organizationsに参加し、情報交換をするようになりました。マレーシア、トルコの他にも、バングラデシュ、ギリシア、インドなどのクラブと交流を深めています。今後、国際的なイベントをいろいろ展開できればと思います。
まとめ
今回は早稲田Wikipedianサークルの活動についてご紹介しました。出典の明記、検証可能性などが要求されるウィキペディアの編集は、大学での学習にも非常に役立ちます。今後、さまざまな大学でウィキペディアクラブが活動することを願っております。
次回は、早稲田Wikipedianサークルのメンバー Lakka26 さんへのインタビューを行います。辞書オタクとして百科事典のウィキペディアを編集する意義や、ウィキペディアンとして感じる辞書文化についてお話を伺います。どうぞお楽しみに。