英語にありそうでない「ベビーベッド」「チャイルドシート」【赤ちゃん関連の和製英語】

「和製英語は面白くて魅力的!」――そう力説するアンちゃんの連載「最高に面白い和製英語」第10回。今回は、日本での出産、子育てでアンちゃんが触れた、ベビー用品関連の和製英語を取り上げます。

分からないことだらけだった日本での出産

私が1人目の子どもを産んだのは14年前のことです。周りの人が話す言葉は日本語ばかり。そんな外国で子どもを産んで育てることは不安でいっぱいでした。

「日本人はなんで無痛分娩をしないの?」「なんで赤ちゃんと一緒に寝るの?」「知らない人が何で急に授乳のことを聞いてくるの?」など疑問だらけでした。

今まで習ったことがない育児用語もたくさん覚えないといけませんでした。つわり(morning sickness)、おむつ(diaper)、離乳食(baby food)・・・。

ちなみに私は、どうしても「離乳食」を発音することができません。私の口の筋肉はどうやってもこの言葉に合わせられないようです。

私にはもう2つ、苦手な発音の単語があります。それは「ウルトラマン」と「ポルトガル語」。この記事にはまったく関係ありませんが・・・(笑)。

育児用語、ベビー用品用語にも和製英語はたくさんあります。毎日、新しい発見があり、そのわくわく感は大きかったです。今日は、そのことを話そうと思います。

では、始めましょう!

英語ではあまり使わないベビーグッズの「グッズ」

まず、「ベビーグッズ」という言葉から始めましょう。日本語で「グッズ」(goods)という単語をよく耳にします。でも、英語ではそれほど頻繁には使われません。「グッズ」と言いたいとき、英語ではthingsやstuffという単語をよく使います。

I have to buy a lot of baby stuff before the baby is born.
I need to get a lot of things for the baby before he/she is born.
赤ちゃんが生まれる前に、赤ちゃんグッズとたくさん買わないといけない。

英語のstuffはオールマイティーな単語です。場合によって「グッズ」「物」「やること」など、さまざまな意味になります。例えば、

I bought a lot of Arashi stuff at the concert.
ライブで嵐のグッズをたくさん買った。

I have so much stuff to do.
やらないといけないことが多い。

No matter where I look, I see your stuff, so please pick it up!
どこを見てもあなたの物があるから、片付けなさい!

粉ミルクは「ミルク」じゃない?

次にベビーグッズを取り上げます。今度はベビーグッズという言葉ではなく、具体的なベビー用品の話です。なんだかややこしいですね(笑)。

まず取り上げるのは「ミルク」。英語のmilkは「(牛)乳」の意味しかありません。赤ちゃん用の「粉ミルク」のことはformulaと言います。

I went back to work pretty soon, so I started feeding my baby formula from six months.
仕事にすぐ復帰したので、生後6カ月から粉ミルクに変えた。

日本語の「スキムミルク」(脱脂粉乳)は英語でpowdered milkと言います。そして英語のskim milkは低脂肪乳のことです。これもややこしいですね・・・。

ちなみに日本語では、母乳やミルクを「飲ませる」と言いますが、英語ではfeed(食べさせる)と言います。

I have to feed my baby every three hours.
3時間おきに赤ちゃんに飲ませないといけない。

赤ちゃんとは関係ありませんが、「薬を飲む」の「飲む」も言語によって動詞が変わってきますね。英語ではtake medicineですが、日本語の意味はdrink medicineに近く、中国語の場合はeat medicineに近くなります。

英語っぽく聞こえる「チャイルドシート」

さて、出産後に必要なものに「チャイルドシート」があります。チャイルドシートは英語っぽく聞こえますが、実は和製英語です。英語では、car seatと言います。child safety seatと呼ぶところもありますが、car seatが最もオーソドックスな呼び方です。

チャイルドシートの代わりにクーファン(赤ちゃんを移動するためのかご)を使う人もいます。「クーフォン」はフランス語で、英語ではMoses basket(モーゼバスケット)と言います。

キリスト教の旧約聖書によると、モーゼの母は、モーゼの命を守るため、彼を小さなバスケットに入れて川に流しました。そのバスケットを王女が見つけ、モーゼを自分の子として育てました。この話から、赤ちゃんを運ぶかごはMoses basketと呼ばれるようになりました。

Make sure you install the car seat properly!
チャイルドシートを正しく取り付けてね!

In America, if you don’t use a car seat, you’ll get a ticket.
アメリカでは、チャイルドシートを使わないと違反切符を切られます。

最近「ベビーシート」という言葉も耳にしますね。これも英語ではcar seatです。

そして、子どもがちょっと大きくなると、ジュニアシートを使えるようになります。この「ジュニアシート」も和製英語です。英語ではbooster seat(補助椅子)と言います。

Since your kid is getting bigger, don’t you think you can use a booster seat now?
お子さんは大きくなってきているから、ジュニアシートに換えたらどうですか。

英語が難しくて生まれた?「ベビーベッド」

「ベビーベッド」は英語でcribと言います。きっとcribの発音が難しすぎて「ベビーベッド」という和製英語が生まれたんだと思います。

あるとき、友人に「cribと言ってみて」と頼んだことがありますが、彼女はcryptと発音してしまいました。残念!cryptの意味は「遺体安置所」です。

Most Americans don’t sleep with their baby, instead putting him/her to sleep in his/her own crib in another room.
多くのアメリカ人は添い寝せず、赤ちゃんを別室のベビーベッドで寝かせます。

英語にもあるといい「ベビーカー」

「ベビーカー」も和製英語です。アメリカ英語ではstroller、イギリス英語ではpramとか carriageと言います。いろいろな言い方がありますが、英語圏で「ベビーカー」と言う人はいないと思います。strollerやcarriageよりもbaby carは発音もしやすいので、使う人がいたらいいのに・・・と思います。

That station doesn’t have an escalator or an elevator, which always causes problems for parents using strollers.
あの駅には、エスカレーターもエレベーターもなく、ベビーカーを利用する親はいつもは困っています。

A double stroller is really convenient but super heavy.
2人乗りのベビーカーはとても便利ですが、めちゃくちゃ重たい。

After my baby was born, I bought a jogging stroller. Now I can exercise whenever I want to!
子どもが生まれた後、私はジョギング用のベビーカーを買いました。だから、好きな時に運動できます!

英語だとおむつが主役の「マザーズバッグ」

出かけるときにはミルクや着替え、タオルやおむつを持っていかなければなりません。これらを全部入れるのが「マザーズバッグ」ですが、この言葉も立派な和製英語です!

「マザーズバッグ」は英語でdiaper bagと言います。diaperはおむつのこと。つまり英語では、主役はママではなくておむつだということです(笑)。

このdiaperという単語は、日本人にほとんど知られていません。でもある日、ショッピングモールのお手洗いで、「ダイアパーボックス」という表示を見たことがあります。「おむつ入れ」ではなく「ダイアパーボックス」とカタカナで書かれているのを見たのは初めてで、とても驚きました。

しかしたら、それが何の意味かわからずに、おむつではない別の物を入れた人がいるかもしれませんね(笑)。

日本語でも英語でもない「スタイ」

次は、私がずっと不思議に思っている「スタイ」です。最近の若いママは「よだれかけ」や「エプロン」ではなく、「スタイ」という言葉を使うようになっています。

「スタイ」の語源は謎ですが、どうやら和製英語ではなく、海外のメーカーが使った商品名が、そのまま定着したようです。いずれにせよ「スタイ」は英語圏では通じません。英語ではbibまたはbaby bibと言います。

Taro slobbers like crazy, so make sure you put a bib on him, OK?
太郎はよだれをいっぱい垂らすから、必ずスタイを着けてね。

American baby bibs are so cute!
アメリカ製のよだれかけはとてもかわいい!

英語にstyという単語は存在しますが、意味はまったく違います。「目のできもの」と「汚れている場所」という2つの意味があります。例文を見てみましょう。

Since you have a sty on your eye, you shouldn’t wear your contacts.
目にできものができたから、コンタクトは着けないほうがいい。

This room is filthy! It’s a pig sty!
この部屋は不潔だ!豚小屋だ!

まとめ

子育てを通じて私が学んだのは、人は必要に応じて言葉を習得するということです。妊娠する前は、日本語の赤ちゃん用語を知る必要がありませんでした。それらを意味する英語の単語ですら知りませんでした。

新しい言葉を学ぶのはとても楽しいこと。そして、どんなことをしていても、そこには和製英語が1つ2つと登場します。

今度、皆さんが「和製英語かな?怪しいな」と思うカタカナ言葉に出合ったら、ぜひGoogle検索などで調べてみてください。きっと新しい発見が待っています!

アン・クレシーニ
アン・クレシーニ

アメリカ生まれ。福岡県宗像市に住み、北九州市立大学で和製英語と外来語について研究している。著書に『アンちゃんの日本が好きすぎてたまらんバイ!』(合同会社リボンシップ)。自身で発見した日本の面白いことを、博多弁と英語でつづるブログ「アンちゃんから見るニッポン」が人気。Facebookページも更新中! 写真:リズ・クレシーニ

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