職場でスムーズに英語でコミュニケーションがとれてしまう理由

英語による音楽と教育ワークショップに 取り組む 非営利団体「ヤングアメリカンズ」。この団体のキャストとして世界で活躍している日本人や、キャストを経て、人生を切り開いた人によるリレーコラムをお届けしています。最終回は、ヤングアメリカンズで培った英語力を生かし、大学で講師を務めている、増岡 希望 (ますおかのぞみ)さんです。

こんにちは。増岡 希望 です。2012年から2015年までの4年間、ヤングアメリカンズのキャストを経て、現在は岡山県にある大学で表現教育の講師として勤務しています。今回は、学生と一緒に授業で行っている英語を使った「表現教育」についてご紹介します。

ヤングアメリカンズの経験で得た英語力と表現力

相手に分かりやすい英語を選んで伝える

ヤングアメリカンズ入団後、英語で苦戦していたときに私を救ってくれたのは、ルームメートやクラスメートでした。 私の分かるような英語で 常に説明のフォローをして、私の英語の理解を助けてくれました。

英語はコミュニケーションのツールだから、英語を話すときは相手に親切に分かりやすい言葉を選んで伝えることが重要なんですね。伝えたいことを、言い方を変えて相手に伝える練習にもなります。

英語で質問すれば、英語を話す機会が増えてくる

ヤングアメリカンズのリハーサルでは、 分からない英語があっても辞書などで調べている暇はありません 。とにかくその場で、「分からない英語は英語で質問をして、英語で理解をする」ということをしていました。そうすることで自然と英語を話す機会も増え、英語の実用力も身に付いたのかと思います。

たった1つ他言語を習得するだけで、得られる情報量が変わる

英語は私にとって、いわゆる「勉強しなくてはいけないもの」ではなく、自分の選んだを進んでいく上で必要なものでした。

たった1つ他言語を習得するだけで、コミュニケーションをとれる人、得られる情報の幅が大きく広がります。

たくさんの人と関わりたい!世界のフィールドで自分自身を試したい!そんな思いが強かった私にとって、英語の習得は不可欠だったのだろうと思います。

大学で「表現教育」を教えています

2015年にヤングアメリカンズを卒業した後、天職とも思える現在の職業に就けたのは、ヤングアメリカンズのキャストとしての経験があったからだと思います。

今振り返るとヤングアメリカンズでは、非現実のような現実が目の前で毎日起きていたように思います。ワークショップに参加している子どもたちが、自分の殻を破り変わっていく様子や、自信とエネルギーに満ち溢れていく様子に衝撃を受ける教員や保護者の方々がいました。

これを日本の教育として取り入れていきたいと考え、大学で教える道を選びました。

ヤングアメリカンズの教育活動「アウトリーチ」を大学に取り入れたい

「世界共通の言語である音楽を通して子どもたちが共に学び、お互いの強みを尊重し、自分の 可能性 を発掘する体験を提供する」これが、ヤングアメリカンズの教育活動「アウトリーチ」です。学校やコミュニティを訪れ、小・中・高校生たちと一緒にわずか3日間で歌やダンスのショーを作り上げます。

ヤングアメリカンズが第1幕を、そして第2幕では参加者の子どもたちがヤングアメリカンズと共演し、観客席の家族、友達、先生方や学校関係者を驚かせます。

この「アウトリーチ」を実践できる大学生を育てたい。日本の大学でも科目として実現することができないだろうか。ヤングアメリカンズ での経験を生かし、大学で独自の表現教育プログラムを立ち上げる日々が始まりました。

「学校」という教育現場でのジレンマ

大学で「表現教育」の科目を立ち上げるために採用されたのですが、学校という教育現場へ、ヤングアメリカンズのスタイルをそのまま持ち込んだところで通用しないであろうことは分かっていました。

初めは、うまくいかないことだらけでした。「自分の目指すもの」と「やりたいこと」ばかりしていても周囲が付いてこない。でも、従来通りの授業をこなすだけでは自分がここに来た意味がない。

そんなジレンマの中でも前に進むことができたのは、常に隣に確実に学びを吸収し成長していく学生たちの姿があったからでした。プログラムを確立することに悩んでいる場合ではない。学生たちの成長に沿った新しい 取り組み に果敢にチャレンジしていくことが大事だと気付かされました。

大学の授業で、ヤングアメリカンズのようなワークショップを実現

大学では、学生たちに、ヤングアメリカンズのキャストのような役割を果たせるスキルを身に付けさせることを目標とした授業を 展開 し、その集大成として年度末に小学校や地域の子どもたちに、ワークショップを行っています。

  • 1年目クラス
歌・ダンス・即興演劇を通して身体や声を使った自己表現に慣れてもらうことから始め、学年末には全員で1つのショーを完成させます。
  • 2年目クラス
2年目以降は歌やダンスを用いた教授法や創作に 取り組み 、学年末には、授業で得たことを実用し地域の学校やコミュニティを訪れて、子どもたちと一緒に歌やダンスのショーを作り上げるワークショップを行います。
  • 小学校とろう学校でワークショップ
今年度はろう学校でワークショップにチャレンジしました。そのため大学のクラス全員で一から手話を学び、ダンスの振り付けにも手話の動きを取り入れるなどの挑戦をしています。

職場での共通言語は英語

職場には、私と同じヤングアメリカンズ出身の外国人講師もいます。表現教育を担う チーム内での会議は主に英語で行い、学科や学校全体など日本語で進行される会議では資料の英訳や会議中の同時通訳も行います。

また、私のクラスには留学生の履修者もおり、 教員も含めると異なる4カ国の言語を母国語とする人々がいます 。そのため授業は日英のバイリンガルスタイルで行い、シラバスやワークブックなど授業教材の翻訳も全て私が担当しています。

英語力が役立っていると思うこと

  • 会議で通訳する
  • 教材を翻訳する
  • 外国人講師を雇う際の人事課とのパイプ役になる
  • 新任外国人講師の生活をサポート(ビザ 取得 手続き 、住民票の 取得 、口座開設、緊急時の病院での通訳など)
海外で暮らすことの大変さは私も理解しているので、言語面での手助けはもちろん、彼らが日本や日本の教育をよりよく理解した上で外国人メンバーならではのユニークなアイディアや才能を生かせるようなサポートができるよう心掛けています。

最後に

先日ある学生が、学年末の面談の中でこんなことを言っていました。

自分がステージに立ち、音楽と一緒にパフォーマンスをすることが好きなんだと 改めて 分かりました。

そして今までは無関心であった「教える」ということ に関して も、今では誰かの成長を見ることが楽しいと思えています。

教師という職業は今まで一度も考えたことがなかったけれど、中学高校生のころにもしこんな体験をしていたら考えていたかもしれません。

心の中で、ガッツポーズです。大学で、人生を変えるような体験ができる風変わりな授業、そんな授業をこれからも目指していきたいです。私の仕事はヤングアメリカンズでの経験、そしてこの2年間ここにいる学生たちと向き合ってきたからこそできる、世界一幸せな仕事です!

トリビュート | ヤングアメリカンズ・ジャパンツアー2018春

ヤングアメリカンズ・ジャパンツアー2018夏

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文:増岡 希望
中学3年の夏に母の紹介でヤングアメリカンズに出会い、以降学生ボランティアとしてツアーに関わる。2012年にヤングアメリカンズへ入団後、約4年間活動したのち2015年秋の東北ツアーをもって退団。翌2016年4月より、現在勤務している大学で表現教育を担当。

編集:honeybun

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