「ノーメイク」や「スキルアップ」。難しい英語が簡単になる魔法の和製英語

英単語に「ノー」や「アップ」を組み合わせると立派な和製英語が誕生する?日本人同士のコミュニケーションを促進するカタカナ言葉を、今回もアンちゃんが全力で紹介します。

和製英語の大きな魅力って何?

最近、よく考えることがあります。日本語にはとても多くの外来語があるのに、それに加えてなぜ、わざわざ新たに和製英語を作る必要があるのでしょうか?

理由はたくさんあります。以前、この連載でもその理由を2つ書いたことがあります。

1つ目の理由は、和製英語は外来語より発音しやすく、想像もしやすいことです。英語の「treadmill」がそのまま外来語として定着していたら「トレッドミル」となっていたでしょう。もちろん、発音できないわけではありませんが、和製英語の「ランニング・マシーン」のほうがずっと言いやすい気がします。

そして2つ目の理由は、日本人には英語の土台があるから、例えば「ランニング・マシーン」という和製英語を聞けば、それがどんなものかを誰もが想像できることです。

理由は他にもあります。「ノーメイク」という素敵な和製英語を例に挙げて説明しましょう。

「ノー+〇〇」の和製英語

まず、「化粧」を表す「メイク」は和製英語です。英語では、makeupと言わないといけない。Makeには「作る」という意味しかありません。

では「ノー」は?英語には、何かを否定する表現がたくさんあります。

例えばnot、less、no。その他、anti-、un-、など言葉の頭に付けて否定することもあります。文脈によって、否定の仕方は変わっていきます。

「ノーメイク」を英語で説明すると「to not be wearing any makeup」と言うことができますが、長いですね!英語では6語も必要ですが、和製英語なら「ノー+メイク」の2語で同じ概念を表すことができます。

I’m not wearing any makeup, so I don’t want to go out.
ノーメイクだから外に行きたくない!

「ノー+〇〇」の和製英語はほかにもいろいろあります。

  • sleeveless:ノースリーブ
  • unpaid、volunteer:ノーギャラ
  • to not get involved in something:ノータッチ
  • to not have one’s own car:ノーマイカー

That job is unpaid, but it is good community service, so I want to do it.
あの仕事はノーギャラですが、社会貢献なのでやりたいです。

外来語と和製英語が入り混じる「〇〇+アップ」

「ノーメイク」の仲間の和製英語として最もよく目にするのは、「アップ」が入っている言葉です。山ほどありますよね?「スキルアップ」「レベルアップ」「ポイントアップ」「キャリアアップ」・・・。「アップ」を含む新しい和製英語が、毎日現れている気がします。

「でも、アンちゃん!『アップ』が入っている言葉が全部、和製英語というわけではない!と言いたいんですよね?」

はい、その通りです。

例えば「ピックアップ」「キャッチアップ」「クリーンアップ」などは、本当の外来語です。英語でpick up、catch up、clean upと言います。でも「スキルアップ」「モチベーションアップ」「レベルアップ」は和製英語です。

どうやって区別できると?誰か、助けて!

区別するのは難しいですが、一つヒントがあります。pick upやcatch up、clean upは動詞句で、一つの動詞として働きます。一方、和製英語の「レベルアップ」「スキルアップ」「モチベーションアップ」などの場合、アップが付いている単語は名詞です。

「ノー」のときと同じように、「アップ(する)」という意味合いを含む英語はたくさんあります。

  • improve:改善する
  • advance:前進する
  • grow 成長する
  • increase:増加する
  • get better:改善する
  • raise:引き上げる
  • make:増大する

だから、名詞に「アップ」を付けると、英語では難しい表現がとても簡単になります。例えば、

  • to get motivated、to motivate yourself:モチベーションアップ
  • to increase your skills in a certain area:スキルアップ
  • to wear clothes that help to bust look firmer and more shapely:バストアップ
  • to get a raise:ベースアップ
  • to improve on something:レベルアップ
  • to write down、 to make a list:リストアップ
  • to improve one’s image:イメージアップ

I really want to improve my English, so I read ALC’s articles every day.
英語をレベルアップしたいので、アルクの記事を毎日読む。

You should make a list of all the reasons you want to go.
行きたい理由をリストアップしたほうがいいよ。

The company has spent millions to improve its image.
その企業はイメージアップのために多額のお金を使った。

英語の場合、「ノー」と同様に、「アップ」を表す単語は文脈によって変わります。また、語数も多くなりがちです。一方、和製英語の方はというと、「アップ」を付けるだけで言いたいことを簡単に表すことができます。

英語圏の人々の中には、日本人のこの想像力あふれる言葉の作り方が気に入らない人がいるかもしれません。でも、日本人同士が理解しやすい言葉になっているのですから、それでいいと思いませんか。

数字を使う和製英語

私は個人的に「ツーショット」という和製英語が大好きです。これを英語で表そうとすると、「a photo with two people in it」と言わなければなりません。

長い!

「ツーショット」のように英語の数字を使って、難しくて長い英語を短くするのも、和製英語の特徴の1つです。ちなみに、「スリーショット」「フォーショット」も言います。

では、これをどうやって自然な英語で言うのでしょうか。例を見てみましょう。

Hey, let’s take a picture together!
ツーショットを撮ろう!

That picture of the two of you is really cute.
あなた達が写っているツーショットがバリかわいい。

I want a picture of me with my mom and sister.
母と妹と一緒にスリーショットを撮りたい。

英語だと文脈によって言い方が変わってきますが、日本語ではいつでも「ツーショット」「スリーショット」で対応できます。

ちなみに4人以上の場合、英語ではgroup picture、group photo、group shotと言います。日本語の「集合写真」です。

Hey before we go, let’s get a group photo.
Let’s take a group shot before we go.
最後に、集合写真を撮りましょう。

他にも数字を使った和製英語は多いです。「オンリーワン」も私のお気に入りの一つです。

SMAPの大ヒット曲『世界に一つだけの花』(2003)の歌詞に「もともと特別なOnly one」という表現があったことを覚えていますか?「オンリーワン」の意味は、もちろん「1つしかない」という意味です。

人の場合、英語では次のような言い方がいいと思います。

There is no one like you.
You are special.
You are unique.
You are one of a kind.

そういえば「オンリーいち」「オンリー1つ」「オンリー1人」って聞いたことがないですね!「2人ショット」「3人ショット」も聞いたことがありません。数字は英語で言う方が、やっぱりカッコイイ!

英語の数字と言えば、若者用語の「ワンチャン」にも使われています。「1つのチャンス」とは言いませんよね。

ちなみに、若者が使う「ワンチャン」は、もともとone chanceの意味でしたが、今は「もしかしたら」という意味になっています。例えば「僕は、ワンチャン行けるかも」の意味は「僕は、もしかしたら行けるかもしれない」です。

でも、この「ワンチャン」は最近、さらに変化したようです。先日、わが子がこんな文を言いました。

「ワンチャン行ける説(せつ)」

お笑い芸人、ダウンタウンの影響で、「説」は「かもしれない」という意味で、全国に流行したようです。

和製英語と若者用語のコラボ!言葉は面白すぎる!

まとめ

和製英語にはいろいろな役割があります。日本人同士のコミュニケーションツールとして生まれているので、日本人が発音しやすく、想像しやすいように作られています。そして、難しい英語の表現は和製英語によって簡単になります。

悪く言う人もいますが、和製英語はかなり深い意味を持つ日本語だと思います。

日本人が作った、日本人のためにある和製英語、最高!これからも楽しく勉強しましょう!

アン・クレシーニ
アン・クレシーニ

アメリカ生まれ。福岡県宗像市に住み、北九州市立大学で和製英語と外来語について研究している。著書に『アンちゃんの日本が好きすぎてたまらんバイ!』(合同会社リボンシップ)。自身で発見した日本の面白いことを、博多弁と英語でつづるブログ「アンちゃんから見るニッポン」が人気。Facebookページも更新中! 写真:リズ・クレシーニ

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