連載「絶対英文法」の2回目は、スピーキングとリスニングに生かせる「過去形」の基本をニュアンスを紹介します。過去を示す場合に限らず、丁寧表現や仮定法でも登場する過去形。共通するニュアンスを押さえて、実践に生かしましょう。
過去形で表現できる3つのニュアンス
基本時制の一つである過去形ですが、単純に「・・・しました」と、過去のことを表現するとは限りません。なぜ助動詞の過去形が「丁寧な表現」になるのか?なぜ仮定法で過去形が用いられるのか?
実は、過去形の基本ニュアンスである「3つの距離感」で整理しておくと便利です。
距離感のニュアンス | 時制 | |
---|---|---|
1 | 「現在」との時間的な距離感 | → 過去形 |
2 | 「人」との心理的な距離感 | → 助動詞の丁寧表現 |
3 | 「現実」との心理的な距離感 | → 仮定法過去形・仮定法過去完了形 |
「現在」との時間的な距離感
過去という「時」を表す基本用法。現在と切り離して考えるイメージで、過去に完了した出来事や、現在とは異なる過去の状況・習慣を示します。
I stayed in Nagano for a few weeks.
私は長野に数週間滞在した。
例文では、長野にいたのは過去の状況で、現在は別の場所にいることを示唆したものです。
「人」との心理的な距離感
親しい人同士に比べ、社交の場において、気を遣う相手(丁寧に接する必要がある相手)に対しては、心理的な距離感があります。助動詞will / canのいわゆる過去形would / couldは、相手と距離を置く(自分が引き下がる)ニュアンスになるため、ストレートな物の言い方ではなく、婉曲(遠回し)な響きに聞こえ、その結果、丁寧な印象になるというわけです。
ちなみに、Will/Would you . . .?は相手の意志確認(・・・する意志はあるかどうか)、Can/Could you . . .?は相手の能力確認(・・・できるかどうか)の違いがあり、「お願い」する状況としてはCan/Could you . . .?を用いるのが自然です。
Would you help us with this?
これを手伝っていただけませんか?
Could you just give me five minutes?
5分だけお待ちいただけませんか?
「現実」との心理的な距離感
私たちは物事や事象を全てありのままにとらえているわけではなく、その時の状況や自分の気持ちに合わせた自信の強弱があります。「こうだろう」と仮定する場合もたくさんあるわけです。そうした確信を持てない事柄に対しては現実的にとらえる意識が低くなり、話し手の中で、描写する対象との間に心理的な距離感が生じます。この感覚もまた過去形にもともと含まれるニュアンスです。
If you were me, would you do that?
もし君が僕なら、それをするだろうか?
例文では、youがmeであるというのは現実の話ではないので、まさに仮定法過去形の定番パターンです。相手の意志を尋ねるWill you . . . ?もWould you . . . ?になっています。
時制は、日本語で考える「時」の概念と同じではありません。そのために、日本語に頼らず、状況や場面、気持ちといったcontext(背景、文脈)に、よく注目してください。
次回は、完了時制ついて紹介します。どうぞ、お楽しみに。
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