基本に忠実に考えよう!文の主語を判断する問題【難問クイズで学ぶ文法知識⑫】

Twitterで話題になった北村一真さん作成の英語クイズで文法知識&読解力を高める本連載。第12回は文の主語を判断する問題です。

クイズ

Among the numerous train of maladies, superinduced by that fatal and primary one which effected a revolution of so horrible a kind in the moral and physical being of my cousin, may be mentioned as the most distressing and obstinate in its nature, a species of epilepsy not unfrequently terminating in trance itself — trance very nearly resembling positive dissolution, and from which her manner of recovery was, in most instances, startlingly abrupt.

―Edgar Allan Poe: “Berenice”

文脈:エドガー・アラン・ポーの短編の冒頭近くから。語り手は、この部分の直前で快活で美しかった従妹のベレニスを襲った恐ろしい不治の病と、それにより変わり果ててしまったべレニスの様子を描写しています。

この文の主語は?

(1) the numerous train of maladies
(2) the most distressing and obstinate in its nature
(3) a species of epilepsy …itself
(4) trance very nearly…abrupt

単語・語句

  • malady:「病気、症状」
  • superinduce:「さらに誘発する」
  • moral and physical:「精神と肉体の、心身の」
  • distressing:「痛ましい」
  • epilepsy:「てんかん」
  • trance:「昏睡状態」
  • dissolution:「死、破滅」
  • revolution「大きな変化」

ヒント

主語になることができるのはどういう性質のものか。基本に忠実に考えよう。

つまずきポイント

最初はよくある倒置かなと読み始めるが、予想したところで主語になりそうな語句が出てこないため、焦る人もいるかもしれない

Among…という前置詞句から文が始まっています。最も基本的な形の場合、この前置詞句が終わったところでSVの形が登場するはずですので、まずはその前提で読んでいきます。amongの目的語であるthe numerous train of maladiesの後ろに複雑そうな修飾語句が入り込んでいますが、注意深くパンクチュエーション(句読点)に目を向けると、maladiesの後ろとcousinの後ろにコンマ(,)が1つずつあることに気がつきます。ここで、このコンマ(,)が挿入句をくくる働きをしているのではないか、と考えることができれば、文の骨格らしきものが見えてきます。

前置詞句が終わったところで出てきたのは、当初想定していたSVという形ではなくmay be mentionedという動詞句ですが、そこそこ英語を読みなれている人であれば、among…is included S「…にはSが含まれる」、among … is counted S「…にはSが数えられる」といった倒置構文の形はさほど珍しいものではないため、同様のパターンと考え、さほど問題なく読み進められるでしょう。

ただし、このタイプの倒置構文の場合、be+動詞の過去分詞の後に主語となる名詞句が登場するはずですが、今回の英文ではmentionedの後にas the most distressing and obstinate…という前置詞句が登場します。前置詞句は主語にはなれないため、これを主語と考えるのは無理です。では、ここはどのように考えればよいでしょうか。

ひょっとしたら最初の解釈が誤っている可能性もあるので、全体の構造を見直すことももちろん重要です。しかし、改めてコンマ(,)で挟まれた挿入句も含めて目を向けてみても、主語となるような独立した名詞句は見つかりません。挿入句の部分も過去分詞句の中に関係代名詞節が入り込んで長くなっているだけです。

とすると、Amongの前置詞句から始まり、その後に動詞句が続いて主語につながる倒置構文であるという分析は基本的に正しいと考えざるをえません。であるならば、主語はやはり後ろにあるはずです。このような発想で、as the most distressing and obstinate…の後ろに目を向けると、a species of epilepsyというこれまでに出てきていた情報とは異なる名詞句が登場し、これが本文の主語だろうと見当をつけることができます。

このタイプの倒置構文では、動詞句のmay be mentionedの直後に主語名詞句が出てくることが一般的ですが、この英文ではその前にas the most distressing and obstinate in its nature「最も痛ましく頑固な性質のものとして」という修飾語句が入ることでより複雑な構造になっているというわけです。なお、a species of epilepsyの後に続くnot unfrequently terminating in trance itselfは後置修飾の現在分詞句であり、ダッシュ(―)以降のtranceはこの部分に出てくるtranceを言い換えて、さらに詳しく説明した形になっています。言い換えのtrance自体にもvery nearly resembling…とfrom which…という2つの後置修飾語句がかかって複雑な名詞句になっていることに注意しましょう。

正解 (3)

訳例

心身に恐ろしい変化を引き起こしたこの致命的な最初の病に誘発され、数多くの症状が生じたが、このうち最も痛ましく頑固であったものとして、一種のてんかんのような症状が挙げられる。この症状が出るとじきに昏睡状態になってしまうことが多かったが、これは死にも非常に似た状態で、回復する時はたいてい驚くほど唐突だった。

前回までのクイズはこちらから

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北村一真(きたむら・かずま)
北村一真(きたむら・かずま)

1982年生まれ。慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得満期退学。学部生、大学院生時代に関西の大学受験塾、隆盛ゼミナールで難関大受験対策の英語講座を担当。滋賀大学、順天堂大学の非常勤講師を経て、2009年に杏林大学外国語学部助教に就任。2015年より同大学准教授。著書に『英文解体新書』(研究社)、『英語の読み方』(中公新書)、『知識と文脈で深める 上級英単語ロゴフィリア』(共著、アスク出版)、『ジャパンタイムズ社説集2022』(解説執筆、ジャパンタイムズ出版)、『英文読解を極める 「上級者の思考」を手に入れる5つのステップ』(NHK出版新書)など。Twitter:@Kazuma_Kitamura

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