「You are grounded!」ってどういう意味?子育て中に使う英語表現4選

アメリカで生まれ、日本で暮らし、博多弁を操る言語学者のアンちゃんことアン・クレシーニさんが、「日本語に訳しづらい英語」と、その裏にある文化の違いを考察します。第8回では、「be/get grounded」「time out」など、子育てにまつわる表現を取り上げます。

「反抗期」は英語でなんて言う?

ティーンエイジャーの子どもを持つママ友に、よく「ねぇ、英語で反抗期ってなんて言うの?」と聞かれます。

日本語の「反抗期」にぴったり当てはまる英単語はないと思います。「反抗」はrebellionなので、「He’s in a rebellious phase.」みたいに言うこともあるけれど、日本語ほど言わない気がします。日本語の「反抗期」は毎日のように耳にしますし、私も言いまくっています!

反抗期に当てはまる英単語がないからといって、アメリカの若者に反抗期がないわけじゃありません。私の子どもも含め、成長するにつれて親の言うことを聞かなくなるきらいがあります。

「反抗期」は、一つの英単語に訳すよりも、文で表したほうがいいと思います。

He’s giving his parents a hard time.
彼は親に苦労をかけている。

He’s going through some teenage angst(*1).
彼は10代の悩みを抱えています。
(*1 angst:漠然とした不安、懸念のこと)

He doesn’t listen to anything his parents say these days.
最近、彼は親の言うことを何も聞かない。

He’s being super rebellious these days.
最近の彼は超反抗期だ。

He’s in a rebellious phase right now.
彼は今、反抗期の最中です。

反抗期にまつわる「日本語に訳しづらい英語」

逆に、日本語に訳しにくい英語の「反抗期用語」もたくさんあります。今回は、子育てのあり方の違いから生まれる言葉の違いについて話していきたいと思います。

さて、始めましょう。

be/get grounded

You are grounded!

こんな英語の表現を聞いたことがありますか?「外出禁止!」という意味で、ほとんどのアメリカの若者が親に言われたことのある言葉でしょう。

子どもが親の言うことを聞かなかったり、嘘をついたり、親をだましたりした時に受ける罰で、「親が決めた期間中、学校に行く時以外は家から出たら駄目」というものです。遊びに出掛けることはもちろん、友達が遊びに来ることも禁止です。

You are grounded for two weeks for disobeying me!
私の言うことを聞かないから、2週間外出禁止だよ!

A: Hey, you wanna go to the movies on Friday night?
ねぇ、金曜日に映画を見に行かない?

B: I can’t. I ’m grounded.
行けない。外出禁止なの。

飛行機が悪天候などのために飛べなくなった時、英語で「The plane is grounded.」と言います。そのため、「You are grounded!」は、悪いことをした子どもを、飛行機と同じように動けなくするというイメージです。

家族によって外出禁止の内容や期間は違いますが、1週間~1カ月がいちばんオーソドックスだと思います。スマホやテレビを禁止する家庭もあり、反抗の程度によって罰は変わります。多くの10代にとって、スマホは友達関係を維持するためのライフラインなので、外出禁止より厳しい罰と言えます。

My mom took my phone away from me for two weeks.
母に2週間スマホを取り上げられた。

I got caught sneaking out while I was grounded, so my Dad took my phone away from me.
外出禁止の間にこっそり外出したのがバレて、父親に携帯を取り上げられた。

Please don’t take away my phone!
頼むよ!スマホを取り上げないでよ!

もちろん家庭によって違うけれど、日本では、子どもが悪いことをしてもあまり罰を受けることがない気がします。私の周りには、親に叱られたり、注意されたりという程度の家庭が多かったです。

基本的に、アメリカでは「子どもは親が言うことを従わなければならない」と考えられていて、これに反するとすぐに罰を受けます。

外出の自由やテレビ、スマホ、友達と遊ぶことなど、子どもの好きなことを取り上げれば、子どもが反省すると思っているからだと思います。

日本でもこういう考え方はあるかもしれませんが、多くの人は「まぁ、そういう年頃(=反抗期)だから仕方がない」みたいに考えているのではないでしょうか。

time out

アメリカで子どもが反抗した時に親がすることに、「time out」もあります。子どもが言うことを聞かなかったり、わがままを言ったりすると、親は「I’m going to put you in a time out!」と脅かします。

このtime outとは、子どもを別の部屋に行かせたり、部屋の壁を向かって座らせたりして一人にし、とにかく自分の行動を反省させることを言います。

I am gonna put you in a time out if you don’t pick up your toys!
おもちゃを片付けないと、タイムアウトになるよ!

I put my kids in time out if they don’t listen to me.
子どもが私の言うことを聞かない時は、タイムアウトにしている。

兄弟喧嘩をしてしまった時の「hug time out」もあります。仲直りするまで、喧嘩した兄弟はお互いをハグしないといけません。

子どもが幼い時はかわいいhug time outでも、成長するにつれてget groundedになります。もしくは「自分の部屋で反省しろ!」みたいにしつけられます。

おそらく全てのアメリカの若者は、「You’re grounded!」か、「Go to your room right now!」と言われたことがあるでしょう。

私以外はね!私は、反抗期なし大人になりましたから(笑)。

curfew

日本語に「限」という言葉はありますが、あまり聞かないような気がします。皆さんはどうですか?子どもの頃、門限はありましたか?

私はバリお利口さんだったのでもちろんなかったけれど、アメリカの家庭でも普通に門限はあります。門限を繰り返し破ると、get groundedとなります。

英語で「門限」はcurfewと言います。門限を破ることはbreak curfewと言います。

I have to be home by my 11 p.m. curfew.
夜11時の門限があるので、それまでに家に帰らないと。

I got grounded for two weeks because I kept breaking my curfew.
何回も門限を守らなかったから、2週間外出禁止になった。

What time’s your curfew?
門限は何時ですか?

If you break your curfew again, you are grounded.
次に門限を破ったら、しばらく外出禁止にするよ。

punish

日本人の友達と反抗期の私の娘について話していた時、友達が「日本人は、あまり反抗期の子どもに罰を与えないなぁ」と言っていました。もしかすると、日本では「反抗期」は成長過程で当然のことなので、それを罰することは適当でないと考えられているのかもしれません。

「罰」は英語でpunishmentで、「罰を与える」はto punishと言います。

日本で親が子どもに「罰を与えるよ!」と言っているのはあまり聞いたことがありませんが、アメリカでは普通にpunishという単語が使われます。

I’m being punished for disobeying my parents.
親に逆らって罰を受けています。

My parents are punishing me by not letting me use my phone.
両親からスマホ禁止という罰を受けています。

I am punishing you for hitting your brother.
弟を殴ったからあなたを罰しているんだよ。

You have to be punished for what you did.
自分がやったことに対して、罰を受けなければならない。

What do you think is a good punishment for what you did?
自分がやったことに対して、どんな罰がふさわしいと思う?

Do you think you need to be punished?
罰を受ける必要があると思う?

親子で話し合ってから適切な罰を決める家庭もあります。子どもが自分のやったことを反省して、自らふさわしい罰を考えることで、二度と同じようなことをしないようにするためです。

ちなみに私は、子どもの時には反抗期がなかったけれど、40代になって反抗期に入りました。母親は、私がクレイジーな髪型にしたりピアスをたくさん開けたりしたことに対して全然好ましく思っていないみたいだったけど、うれしいことに、40歳になればもうget groundedの心配はありません!それに、故郷から数千キロ離れた日本に住んでいるので、「外出禁止だよ!」とはなかなか言えませんよね。

子育てのあり方と言葉の違いは面白い!

アメリカでは、日本ほど「反抗期だから仕方がない」と考える親が多くありません。親の言うことに従うことは当たり前だとされています。

この世界観の違いが、子育てやしつけの違い、そして言葉の違いにつながるので、私はものすごく面白いと思っています。

日本語の「反抗期」に「期」が付いているのは、「全ての若者が通る道だ」と思われているからかもしれません。だから英語には「反抗期」を表す言葉がないのかも。

もちろん10代は大変な時期だということは認めますが、大変な時期だから親の言うことを聞かなくてもいいわけではありません。

反対に、be/get grounded、time out、punished、curfewなど、英語の世界観から生まれた単語は、なかなか日本語には訳せません。

私はアメリカと日本両方の世界観に影響を受けているので、時々子育てに悩むことがあります。

実は今、私の娘は人生初のget grounded中です!私もうまくいくかどうか分からないので、また報告しますね。

アン・クレシーニ
アン・クレシーニ

アメリカ生まれ。福岡県宗像市に住み、北九州市立大学で和製英語と外来語について研究している。著書に『アンちゃんの日本が好きすぎてたまらんバイ!』(合同会社リボンシップ)。自身で発見した日本の面白いことを、博多弁と英語でつづるブログ「アンちゃんから見るニッポン」が人気。Facebookページも更新中! 写真:リズ・クレシーニ

アンちゃんの本、電子書籍で大好評発売中!

アン・クレシーニさんの連載

語彙力&フレーズ力を磨く、おすすめの本

ネイティブと渡り合える、知的で洗練された英単語力。

本書は、アルクの『月刊ENGLISH JOURNAL』(1971年創刊~2023年休刊)に掲載されたネイティブスピーカーの生のインタビューやスピーチ、約300万語のビッグデータから、使用頻度の高い英単語300個を厳選し、一冊に編んだものです。

すべての英単語は日本語訳、英英定義、例文と共に掲載、無料ダウンロード音声付きで、読んでも聞いても学べる英単語帳です。また、難易度の高い単語をしっかり定着させるため、穴埋め問題やマッチング問題、さらに構文や使用の際に気を付けるべきポイント解説も充実しています。伝えたいことが明確に伝えられる、上級者の英単語力をこの一冊で身に付けましょう!

英語中級者と上級者の違いは、的確で、気の利いたフレーズ力!

50余年の歴史を持つ、アルクの『月刊ENGLISH JOURNAL』(1971年創刊~2023年休刊)に掲載されたインタビューやスピーチ約300万語というビッグデータの中から、頻出する英語フレーズ300個を厳選。日常会話やemail、SNSではよく使われているのに、日本人が言えそうで言えない、こなれたフレーズを例文と英英定義と共に収載しました(全音声付き)。

厳選した300種類の穴埋め問題&マッチング問題を通して、「見てわかる」のレベルから「自分でも使える」ようになるまで、しっかり定着させます。上級者への壁をこの一冊で打ち破りましょう!

難関大を目指す受験生が英単語を「極限まで覚える」ための単語集

大学入試などの語彙の問題は、「知っていれば解ける、知らなければ解けない」ものがほとんど。昨今の大学入試に登場する単語は難化していると言われており、文脈からの推測や消去法では太刀打ちできない「難単語の意味を問う問題」が多数出題されています。こうした問題をモノにして、周囲に差をつけるには、「難単語を知っていること」が何よりのアドバンテージです。

SERIES連載

2024 04
NEW BOOK
おすすめ新刊
観光客を助ける英会話
詳しく見る
メルマガ登録