ENGLISH JOURNAL ONLINE

近所で見かけるあの人は・・・英語でキャラクタースケッチに挑戦してみよう!

クリエイティブライティング

連載「クリエイティヴ・ライティング入門講座」では、立命館大学の吉田恭子さんが、英語で書く文芸創作エクササイズを出し、読者の皆さんに実際にクリエイティヴ・ライティングに挑戦していただきます。さらに、応募作品の一部を吉田さんが記事内で講評してくださいます。英語での表現力を広げるチャンスです!ぜひチャレンジしてみてください。

第4回の応募の中から作品を講評

この連載は、英文創作のエクササイズに挑戦して、第二言語で空想的文章を書く楽しみを体験してもらうのが目的です。読者の皆さんからの投稿を毎回紹介します。

前回の課題は、英語の慣用句からインスピレーションを得て、自由に場面を描いたり、話を創作したりする、という課題でした。本来は人々の印象に訴えるために生み出された表現も、慣用句になると手垢(てあか)がついた表現となり紋切り型となってしまいます。そんな言葉に新鮮な力を再び与えてみようという試みです。慣用句の少し意外な言葉遣いをうまく利用して新たな想像の世界を展開することが求められました

今回は少なめの応募数でしたが、どれもハイレベルでした。近年の猫ブームのおかげでしょうか、 “Cat got your tongue” (黙り込む)が一番の人気でした。応募作の中から、スケールの大きな世界を軽いタッチでユーモアたっぷりに描いてくれたLauさんの作品を選びました。

Lauさん

Out of the Blue, a Pie in the Sky

Out of the blue, the space was born. Out of the red, the fire was created. Out of the yellow, the sun cried out, ‘Hello!’ Out of the light blue, the sea spread out ... Or was it out of the deep blue?
Under the outer space, the sky sighed with the heaviness it was holding. The land, sprung out from the brown, consoled its partner up there.
‘Are you alright?’
‘You know, I want to change my colour.’
‘What? But you always change your colour! Pink or purple early in the morning, then light blue, normal blue, deep blue, then orange, sometimes red, dark, dark, and black. Grey or white on a cloudy or rainy day. What’s eating you?’
‘Birds, birds, birds ...’
‘Are they so hungry?’
‘They prefer my taste to worms.’
The land frowned at its best friend’s remark.
‘And they like blue.’
‘That’s why they look so depressed.’
‘Yeah. Depressed and starved. They’re so hungry that they could eat a horse.’
Then you’ll be finally free. They like meat better than a colour after all. Good. No danger. No worries. Such a comfort. Congratulations.’
Well, thanks.’
‘Look!’
The land urged the sky to turn around, which made the air dance around for ten seconds.
Look at that! Pie in the sky!’
‘You’re right! Is that an apple pie?’
‘Perhaps. ... Is an apple red? Or yellow? Or green? Even blue? Black?’
‘It should become brown when it’s burned.’
‘Will birds eat the pie? Or shall we have a bite before they find it?’
As you like it.’
‘What’s “it”? The pie? An apple? Or a bird?’
The outer space laughed. The sea envied them. The sun sang. The fire tried to say a word or two or words, words, words ... And then they all blended in to become colours again.

「青から宇宙が生まれた。赤から炎が造られた。黄色から太陽が大声を上げて『やあ!』水色から海が広がった。いやそれとも群青から?」

ポップなトーンで創世神話が始まります。色鮮やかで、明るいエネルギーに満ちていますね。主人公は、重い宇宙を背負っている空さんと、親友の大地さん。

さっそく冒頭の文で慣用句のひとつ “out of the blue” (唐突に)が使われていますout of the blue の「青色」を、赤や黄色や水色と様々な色に変化させることで世界を作り上げていく様子は、おろしたての極太クレヨンや水彩絵の具で大胆に風景を描いていくような、気持ちよさを覚えます。文字通り「色」から世界が生まれると同時に、その誕生の瞬間は “out of the blue” に突然でもあります

作品の表題は “Out of the Blue, a Pie in the Sky” となっているので、どこかでもうひとつの慣用句 “a pie in the sky”(絵空事・絵に描いた餅)が出てくるのだな、と期待しながら読み進めると、この物語には仕掛けが仕込まれていることに気がつきます。用いられている慣用句は表題のふたつだけではないのです。

change color” 赤面する・蒼白(そうはく)になる

“what’s eating you?” 何を心配しているの?

“I could eat a horse” 腹ペコだ

As you like it” お好きなように

これらの慣用句が時には本来の慣用句の意味で、時には文字通りの意味で、そして時には両方の意味で用いられています。それが空さんと大地さんの掛け合いのようなやりとりに、テンポのよさとナンセンスな言葉遊び的面白さを与えています。

空の青い色を鳥がパクパク食べてしまう、という光景もいいですね。空さんは文句を言うのですが、それに対する大地さんの反応は人の話を聞いているような、聞いていないような。

空「鳥は馬でも食べられるほど腹ペコだからね」

大地「だったらついに自由の身だね。鳥は色よりもお肉の方が好物だろ。めでたしめでたし。危険なし。心配なし。大安心。おめでとー」

このように、空さんがある意味で慣用句を使うと、大地さんが別の意味に受け止める、というやりとりが愉快です。また、空さんと大地さんの仲のよさもじんわり伝わってくる、そんな暖かさが感じられる語り口調となっています。

そうこうしているうちに、なんと、空にアップルパイが現れます。ふたつめの慣用句がこの掌編のクライマックスとなっています。

りんごは赤か黄色か緑か…と大地さんが自問するところは、冒頭の色彩のテーマを引き継いでいる箇所ですね。この巨大アップルパイのおかげで、空さんは自分の色を鳥たちについばまれずにすむのですが、すんなりめでたしめでたしとならず、あいかわらずの掛け合いが続きます。空さんと大地さんのキャラクターが読者の記憶に残るのも、この最後の掛け合いのふたりの描き分けがうまく行っているからでしょう。そして、そんなふたりのいつ終わるとも知れぬやりとりを、宇宙に海に太陽に炎が暖かく見守っています。海はふたりの仲のよさを羨ましく思っている様子。生まれたばかりの世界は鮮やかだけれど、だだっ広くて孤独でもあるのです。

宇宙の孤独に負けないように、言葉だけでにぎやかな世界を創り出していく喜びといえば、イタリアの小説家イタロ・カルヴィーノの1965年の短編連作集『レ・コスミコミケ』を思い出します。宇宙が生まれた瞬間を目撃したというQfwfq老人が語る物語には、言葉の浮揚力(ふようりょく)で重力に抗う魔法のような魅力が詰まっています。

さてLauさんの作品に戻りましょう。最後の段落はこの作品のモチーフを繰り返す形でうまく締めくくっています。

「宇宙が笑った。海はふたりを羨ましく思った。太陽が歌った。炎はひとことふたこと、言葉を言葉を言葉を……そうして再びみな色に溶けていった。」

短い作品ですが、Lauさんの作品は、私たちの想像の中とはいえ、言葉が世界を創り出すことを示してくれています。そのプロセスの中で、空さんの言葉を大地さんが混ぜっ返すことで、紋切り型である慣用句が生き返り蘇(よみがえ)ります。そうやって世界に、言葉に、生命を吹き込む歓喜を、宇宙全体が祝福している。言葉で遊ぶ楽しさこそが生命力をみなぎらせる。最後は冒頭の鮮やかな色彩に戻るという円環的な物語でもあります。

今回次点に選ばれたのは、micchieさん、milfoilさん、町娘です。次点に選ばれた方々には、吉田さんからの講評コメントをメールでお送りいたしますので、ぜひそちらもチェックしてみてください。

今回の文芸創作エクササイズのテーマは?

皆さんも英語創作エクササイズに挑戦してみましょう!応募作品の一部を吉田さんが選定し、次回の記事内で講評してくださいます。ぜひチャレンジしてみてください。

【課題】英語創作エクササイズ5:よく見かける近所の……

名前も住んでいるところも知らないし、言葉を交わしたこともないけれど、近所や学校や職場の近くでよく見かけるあの人のことを考えてみる。

その人について、知っていることを5つ、知らないことを5つ箇条書きにしてみよう

知らないことについて、自由に空想してさらに箇条書きを加えていく。徐々に、その人は「近所でよく見かけるけれど知らないあの人」から別人となり、「自分はよく知っているけれどまだ出会ったことのないあの人」に変化していく。もはやその人はあなたが想像で創り出した人物だ。

その人のキャラクタースケッチを書いてみよう。その人には名前があってもいいし、なくてもいい。人物紹介的な文章でもいいし、その人が登場するある場面でもいい。三人称でもいいし、その人以外の人物が語り手の一人称でもいい。スケッチには表題をつけること。(約200〜300ワード)

まずは自由な発想で課題にチャレンジしてみてください。どうしても難しいなあというときや、書き終わってからほかの例を見たいときには、以下の回答例を見てくださいね。

【参加方法】

課題に従って英語の文章を作成し、以下のGoogleフォームからご応募ください。

ご応募はこちら

【募集期間】

2021年7月16日(金)~8月9日(月)

※2021年8月20日(金)公開予定の次回の記事で、応募作品の一部について吉田さんが紹介し、講評します。

こちらの記事もおすすめ

ej.alc.co.jp

ej.alc.co.jp

ej.alc.co.jp

吉田恭子

吉田恭子(よしだきょうこ)立命館大学教授。英語で小説を書く傍ら、英語小説を日本語に、日本の現代詩や戯曲を英語に翻訳している。著書に短編集『Disorientalism』(Vagabond Press、2014年)、翻訳にデイヴ・エガーズ『ザ・サークル』(早川書房、2014年)など。